報道発表資料

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2017年02月28日
  • 自然環境

モニタリングサイト1000サンゴ礁調査の平成28年度調査結果(速報)について

 環境省では、日本におけるさまざまな生態系の変化を調べるため、全国に約1,000カ所のモニタリングサイトを設置し、各生態系の基礎的な情報を長期間に渡って継続的に収集し、活用を図っていくことを目的とした重要生態系監視地域モニタリング推進事業(以下、「モニタリングサイト1000」という。)を実施しています。
 この度、モニタリングサイト1000の一環として実施している「モニタリングサイト1000サンゴ礁調査」について、平成28年度の調査結果(速報)をとりまとめました。

1.「モニタリングサイト1000」について

・日本におけるさまざまな生態系の変化を調べるため、全国に約1,000カ所のモニタリングサイトを設置し、各生態系の基礎的な情報を長期間に渡って継続的に収集し、活用を図っていくことを目的とした重要生態系監視地域モニタリング推進事業(以下、「モニタリングサイト1000」という。)を平成15年度から実施しています。

・モニタリングサイト1000サンゴ礁調査について、平成15年度の試行調査を経て、平成16年度よりモニタリングを実施しています。

2.平成28年度 モニタリングサイト1000サンゴ礁調査について

(1) 調査地点

・モニタリングサイト1000サンゴ礁調査では、日本沿岸域をサンゴ礁の分布状況から、屋久島・種子島以北の「高緯度サンゴ群集域」と、トカラ列島以南のサンゴ礁地形が見られる「主なサンゴ礁域」の2海域に分け、全国に24のモニタリングサイトを設置しています(参考資料1)。

・平成28年度は、トカラ列島の小宝島周辺を除く、計23サイトで調査を実施しました。

(2) 調査時期 

平成28年6月~平成29年1月(各サイトにより異なる) 

(3) 調査方法

・サイト毎におよそ50m四方の調査地点を複数設定し、15分間のスノーケリングを行い、サンゴ被度※1、白化率※2、死亡率※3等の各調査項目の目視観察(スポットチェック法)を行いました(調査回数は各地点1回)。

(4) 調査結果

・「高緯度サンゴ群集域」および「主なサンゴ礁域」それぞれの概況は、次のとおりです。

・平成28年度調査における各サイトの平均サンゴ被度、平均白化率、平均死亡率は、資料1のとおり。なお、下記の概況に関する記載では、資料1に記載されている数値を元にしていますが、小数点以下を四捨五入した数値としています。

・各サイトまたは海域の概況(平均サンゴ被度の経年変化、調査代表者のコメント、写真)は、資料2のとおりです。

【高緯度サンゴ群集域】

①平均サンゴ被度

・平均サンゴ被度は、海域全体で例年並みでした。ただし、壱岐周辺では、平均サンゴ被度が前年から10%以上減少(48%→37%)しました。

②平均サンゴ白化率

・鹿児島県南部沿岸、屋久島・種子島周辺などでは、白化現象の発生が確認されました。しかし、白化から回復したと考えられる調査地点も多く、最終的な被害は全体として少ないものでした。

③平均サンゴ死亡率

・平均サンゴ死亡率は0~2%程度でした。

④その他(かく乱要因)

・オニヒトデやサンゴ食巻貝の大発生等によるサンゴへの顕著な影響は確認されませんでした。ただし、四国南西岸の調査地点となっている高知県大月町尻貝では、オニヒトデが準大発生※4となっており、注意を要する状況でした。

・壱岐周辺ではガンガゼによる食害が顕著に見られ、サンゴ被度が大きく減少していました。

・天草周辺では、多くの調査地点でホワイトシンドローム※5が確認されましたが、罹患した群体数は昨年度より減少しました。

【主なサンゴ礁域】

①平均サンゴ被度

・沖縄島周辺離島の水納島・伊是名島・伊平屋島では、サンゴの新規加入と成長により、平均サンゴ被度が10%以上増加(44%→58%) しました。

・次のサイトでは、昨年度に比べ、平均サンゴ被度が10%以上減少した。その他のサイトにおける平均サンゴ被度は例年並みでした。

-八重干瀬(宮古島離礁)    (35%→ 9%(-26%))

-小浜島周辺(石西礁湖)    (37%→23%(-14%))

-カタグァー周辺(石西礁湖)  (31%→ 9%(-22%))

-シモビシ~仲間崎沖(石西礁湖)(34%→19%(-15%))

-黒島~新城島(石西礁湖)   (39%→18%(-21%))

-崎山湾(西表島西部)周辺   (49%→32%(-17%))

②平均サンゴ白化率

・奄美群島から八重山諸島にかけての広い海域で、夏季の高水温が主な要因と考えられる白化現象の発生が確認されました。このうち、次のサイトでは、いずれも50%以上の高い白化率を示しました。

-宮古島周辺          ( 0%→69% (+69%))

-八重干瀬(宮古島離礁)    (13%→70% (+57%))

-川平~大崎(石垣島)     ( 0%→63% (+63%))

-小浜島周辺(石西礁湖)    (56%→92% (+36%))

-カタグァー周辺(石西礁湖)  (62%→100%(+38%))

-シモビシ~仲間崎沖(石西礁湖)(65%→95% (+30%))

-黒島~新城島(石西礁湖)   (66%→98% (+32%))

-崎山湾(西表島西部)周辺    (41%→94% (+53%))

・特に宮古島周辺及び石垣島内の2サイトでは、昨年度の白化率は0%もしくは一部の調査地点で白化現象の発生が確認されたのみでしたが、今年度は大きく増加しています。また、石西礁湖(石垣島と西表島の間に広がる日本最大のサンゴ礁海域)内の4サイトは、50%以上の白化率であった前年度に引き続き、90%以上の高い白化率となりました。崎山湾(西表島西部)周辺も40%以上の白化率であった前年度に引き続き、90%以上の白化率となりました。

③平均サンゴ死亡率

・次のサイトでは、いずれも30%以上の高い死亡率となりました。いずれのサイトも数パーセントの死亡率であった昨年度に比べ、大きく増加しています。   

-宮古島周辺          ( 0%→31%(+31%))

-八重干瀬(宮古島離礁)    ( 0%→68%(+68%))

-小浜島周辺(石西礁湖)    ( 3%→47%(+44%))

-カタグァー周辺(石西礁湖)  ( 3%→68%(+65%))

-シモビシ~仲間崎沖(石西礁湖)( 3%→50%(+47%))

-黒島~新城島(石西礁湖)   ( 3%→50%(+47%))

-崎山湾(西表島西部)周辺    ( 2%→35%(+33%))

その他(かく乱要因)

・オニヒトデやサンゴ食巻貝の大発生等によるサンゴへの顕著な影響は確認されませんでした。ただし、小笠原諸島の調査地点となっている二見湾では、オニヒトデの密度が高いことが確認されており、注意を要する状況でした。

・宮古島周辺や八重干瀬、石西礁湖、崎山湾(西表島西部)周辺では、ホワイトシンドロームの発生が確認されており、注意を要する状況でした。

・海水温について、最も平均サンゴ死亡率の高かった宮古島離礁の八重干瀬では7月下旬から8月下旬にかけての間、石西礁湖のカタグァー周辺では6月下旬から9月上旬にかけての間、30度を超える高海水温が続いていました(資料3)。

※1 サンゴ被度
  調査地の海底に占める生きたサンゴ面積の割合。平均サンゴ被度はサイト内の各調査地点の平均値となります。

※2 白化率
  少しでも白化現象が見られる群体を対象とし、白化前まで生きていたと思われるサンゴ全体(白化により死亡したサンゴ+白化したサンゴ+生きているサンゴ)に占める、白化したサンゴおよび白化により死亡したサンゴの割合です。

※3 死亡率
  白化前まで生きていたと思われるサンゴ全体(白化により死亡したサンゴ+白化したサンゴ+生きているサンゴ)に占める、白化により死亡したサンゴの割合です。

※4 オニヒトデの発生状況の目安
  15分間で観察されたオニヒトデの個体数をもとに発生状況の目安を設定しており、5-9個体で「準大発生」、10個体以上で「大発生」となります。

※5 ホワイトシンドローム
  サンゴに発生する病気の一種。サンゴの組織が白くなって壊死します。

3.その他

 ・平成28年度年次報告書は、平成29年4月中を目処に公表予定です。

 ・モニタリングサイト1000サンゴ礁調査の過年度報告書等の資料は、下記Webサイトで公開します。

   ・モニタリングサイト1000サンゴ礁調査 過年度報告書

   http://www.biodic.go.jp/moni1000/findings/reports/index.html

   ・モニタリングサイト1000サンゴ礁調査 調査マニュアル

   http://www.biodic.go.jp/moni1000/manual/index.html

添付資料

連絡先
環境省自然環境局生物多様性センター
直通:0555-72-6033
センター長:川越久史
担当:串田卓弥

環境省自然環境局自然環境計画課
直通:03-5521-8274
代表:03-3581-3351
課長:奥田 直久(内線 6430)
課長補佐:岡野 隆宏(内線 6435)
担当:山崎 麻里(内線 6492)

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