報道発表資料

この記事を印刷
2016年12月19日
  • 自然環境

生物多様性条約第13回締約国会議、カルタヘナ議定書第8回締約国会合及び名古屋議定書第2回締約国会合(国連生物多様性会議 メキシコ・カンクン2016)の結果について

 生物多様性条約第13回締約国会議(COP13)、カルタヘナ議定書第8回締約国会合(COP-MOP8)及び名古屋議定書第2回締約国会合(COP-MOP2)からなる国連生物多様性会議 メキシコ・カンクン2016が、12月4日(日)~17日(土)にカンクン(メキシコ)で開催されました。日本からは、関芳弘環境副大臣が2日(金)~3日(土)の閣僚級会合(ハイレベルセグメント)などに出席した他、一連の会議に関係各省の担当者などが出席しました。
 閣僚級会合では、生物多様性の保全および持続可能な利用の主流化について閣僚間で議論や経験の共有が行われ、「カンクン宣言」が採択されました。
 これに引き続き、COP13本会議では、「とりわけ農林水産業および観光業における各種セクターへの生物多様性の保全および持続可能な利用の組み込み」を主要テーマとして、生物多様性の主流化を含む広範な事項について議論され、37の決定が採択されました。カルタヘナ議定書COP-MOP8では締約国から提出された第3次国別報告書などに基づき議定書の実施状況や課題などについて議論され19の決定が、名古屋議定書COP-MOP2では名古屋議定書の実施に関する事項について議論され14の決定が、それぞれ採択されました。

1.開催期間・場所

 閣僚級会合 平成28年12月2日(金)~3日(土)
 本会議 平成28年12月4日(日)~17日(土)
 (於 カンクン(メキシコ)、ムーンパレスおよび複合施設)

2.参加国・参加者数など

(1)COP13には締約国・地域、国連環境計画など関係する国際機関、先住民代表、市民団体など3,100人以上が参加しました。

(2)会期中、300以上のサイドイベントが開催されました。環境省は「国連生物多様性の10年の日(UNDB-DAY)」を含む約10のイベントを主催するなどし、ブース展示を行い日本の取組などを紹介しました。

3.日本からの参加者

 日本政府からは、関芳弘環境副大臣が政府代表団長として閣僚級会合などに出席するとともに、環境省の他、外務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省などの担当者が参加しました。また、このほか経済界、地方自治体、NGO関係者が参加しました。

4.主な成果

(1)閣僚級会合(ハイレベルセグメント)

 12月2日(金)~12月3日(土)に閣僚級会合が開催され、382人(閣僚50人を含む)が参加しました。
 同会合では、環境大臣のみならず生物多様性に関連するセクターの主務閣僚が集まり、農林漁業および観光業のテーマ別のラウンドテーブルが行われ、対話と成功事例の共有が行われました。また、「福利のための生物多様性の保全および持続可能な利用の主流化」に関する誓約を含むカンクン宣言(別添1)が採択されました。
 環境省からは関環境副大臣が参加し、日本の「エコツーリズム推進法」に基づく取組や「国立公園満喫プロジェクト」について紹介し「保全と利用を好循環させる仕組みづくり」の重要性を主張しました。またこの機会に、日本を含む9か国・団体から、2020年の愛知目標達成に向けたイニシアティブの表明がなされました。この中で、日本からは関環境副大臣より、生物多様性日本基金を通じた地球規模での取組の強化と国内での政府および各主体の連携により、以下のような取組の強化を行うことを表明しました。

(地球規模での取組強化)

・生物多様性日本基金(2010年に名古屋で開催したCOP10の議長国として条約事務局に設置した基金)を用いた、愛知目標達成取組の能力養成の集中的な実施。

(国内での取組)

・取組強化のため、国家戦略中間評価を行った上で関係省庁により一層加速させる施策のとりまとめと実施。
・多様な主体で構成される「国連生物多様性の10年日本委員会」(UNDB-J)による2020年に向けたロードマップの策定とその実施。
 また、関環境副大臣は、閣僚級会合の合間に国連環境計画のエリック・ソールハイム事務局長や地球環境ファシリティの石井菜穂子統括管理責任者(CEO)などとバイ会談を行い、自然環境分野における国際協力に向けて関係を強化しました。

(2)生物多様性条約COP13

 条約および戦略計画2011-2020の実施と愛知目標の達成に向けた進捗として、目標10、17が2015年の目標年までに達成できなかったこと、目標14、18の国レベルでの進捗などが限定的であることが確認されました。また、国別目標の設定や国別報告書の実施に当たっては、SDGsを含む他のプロセスの関連目標を考慮すること、国別報告書が多様なレベルにおける主流化に貢献するような政策となるよう位置付けること、著しい進捗があった目標についても、達成に向けた努力を更に強化することを締約国に求めることとなりました。
 条約および生物多様性戦略計画2011-2020の実施を強化する戦略的行動としては、農林水産業および観光業を含む様々なセクター内および複数のセクターにまたがる主流化に向けて、ステークホルダーの関与などにより努力を強化することを締約国に強く求めることとなりました。また次のカテゴリ別に具体的な勧告が提示されました。

・関連国際プロセスを通じた主流化の強化
・セクター横断的な主流化
・セクター別主流化(農業、林業、漁業および水産養殖業、観光業)
・主流化を強化するための主要主体の参画(企業、準国家および地方自治体、先住民および地域コミュニティー、科学コミュニティー、ジェンダー)

 この中で、我が国のUNDB-Jにおける取組の経験も踏まえ、取組多様なセクターによるプラットフォームを通じた主流化のための活動強化、取組業界全体の企業の取組を強化する観点からの事業者団体の重要性、地方自治体の参画と取組強化のための地方自治体ネットワークの有用性、といった内容が我が国からの提案により決定に盛り込まれました。
 上記のほか、合成生物学の潜在的な便益と悪影響の考慮事項や検討枠組、遺伝資源の塩基配列情報と条約実施に関する検討プロセス、花粉媒介者・花粉媒介および食糧生産に関するIPBESによる評価の活用、第6回国別報告書ガイドライン、地球規模生物多様性概況第5版の準備、生物多様性戦略計画2011-2020および愛知目標の指標、生態学的・生物学的に重要な海域(EBSA)の記載に関する科学的な手法およびアプローチの強化などに関する決定がなされました。(別添2)

(3)カルタヘナ議定書COP-MOP8

 カルタヘナ議定書の実施のための法的・行政的・その他の措置については、約半数の締約国のみしか導入できていないことが判明しました。このため、戦略計画2011-2020の残りの期間において、法令の整備などに関連する目標に優先的に対応することが決定されました。
 このほか、リスク評価に関するガイダンスの報告、社会経済上の配慮に関するガイドラインについての作業や名古屋・クアラルンプール補足議定書の発効と実施を早期化するための取組などが決定されました。(別添3)

(4)名古屋議定書COP-MOP2

 名古屋議定書についても、国内措置を実施している締約国が2割程度に限られていることが確認されました。このため、既締約国に対しても名古屋議定書の効果的な実施に向けて制度の構築等を進め、その情報を各国に共有することが求められました。
 このほか、名古屋議定書の効果的実施の促進、ABS(The Access and Benefit-sharing)クリアリングハウスの運用、議定書遵守委員会の手続き規則、2年後に予定されている議定書の最初の有効性評価に向けたプロセスなどについて議論されました(別添4)。

5.日本の貢献・取組

 日本は、COP10以降、生物多様性日本基金および名古屋議定書実施基金を設立し、途上国における取組に対して支援を行うとともに、国内でも愛知目標を踏まえた生物多様性国家戦略の改訂やその実施を通じて施策の充実を図ってきましたが、今次会議およびそれの準備のための補助機関会合の開催についても幅広い支援を行いました。
 さらに、日本は議長国であった期間を除いて初めて、アジア太平洋地域を代表してCOP12以降COP13までの間にCOPビューロー(幹事会)メンバーを務め、条約の実施に向けた締約国間の議論に積極的に貢献しました。
 このほか、今次会議において各議題の議論に積極的に参加・貢献するとともに、次のような取組を行いました。

(1)国連生物多様性の10年の日(UNDB-DAY)

 環境省、「国連生物多様性の10年日本委員会(UNDB-J)」(委員長 榊原定征 一般社団法人 日本経済団体連合会 会長)と生物多様性条約事務局は、COP13のサイドイベントとして、12月5日に「国連生物多様性の日(UNDB-DAY)」を開催し、世界各国から約50名の参加がありました。我が国からは、UNDB-Jのほか、愛知県、電機電子4団体、生物多様性わかものネットワークなどからの取組事例発表がありました。
 また、夕方のセッションでは、関環境副大臣をはじめ、ジアス条約事務局長、経団連自然保護協議会の二宮会長、その他NGOやユースの代表といった6名の登壇者の参加により、愛知目標の達成に貢献するリーダーによる決意表明が行われました。関環境副大臣からは、UNDB-Jにおいて2020年までの目標と具体的な取組をまとめたロードマップを策定しており、これに基づき、生物多様性の主流化に向けた取組を引き続き積極的に推進し、世界に発信していくとの決意表明を行いました。

(2)自然との共生に関する双方向対話

 12月13日(火)に総会で行われた「自然との共生に関する双方向対話」では、5名の有識者から経験の共有がなされました。
 その中で日本からは、総合地球環境学研究所 中静透教授が自然との共生に関する取組について科学的な観点から日本の経験を共有し貢献しました。その他、ボリビア開発計画省次官より先住民の権利の尊重がボリビアにおける自然との共生に向けた取組に果たす役割について、ウガンダのバトゥア発展連合組織より自然との共生においてジェンダーが果たす役割について、バチカン国務省長官より人間同士および自然や他の創造物との間の調和とそれら側面を統合する包摂的な戦略の必要性について、国連人権高等弁務官組織先住民問題特別報告官より権利に基づく協働による自然との共生の強化や持続可能で衡平な社会の構築への寄与について、共有されました。

6.次回以降の会議

 次回以降の会議開催国・時期については、次の通り決定しました。

・生物多様性条約第14回締約国会議、カルタヘナ議定書第9回締約国会合および名古屋議定書第3回締約国会合...エジプト、2018年第4四半期
・生物多様性条約第15回締約国会議、カルタヘナ議定書第10回締約国会合および名古屋議定書第4回締約国会合...中国、2020年第4四半期
・生物多様性条約第16回締約国会議、カルタヘナ議定書第11回締約国会合および名古屋議定書第5回締約国会合...トルコ(時期未定)


添付資料

連絡先
環境省自然環境局自然環境計画課生物多様性地球戦略企画室
代表 03-3581-3351
直通 03-5521-8275
室長   中尾 文子 (内 6480)
室長補佐 大澤 隆文 (内 6485)
主査   林  優里 (内 6482)

生物多様性施策推進室
室長   西山 理行  (内 6661)
室長補佐 鈴木 宏一郎(内 6662)
室長補佐 中山 直樹  (内 6668)
係長   中原 一成  (内 6666)

野生生物課外来生物対策室
室長   曽宮 和夫 (内6680)
室長補佐 立田 理一郎(内6681)
係長   平山 宗幸 (内6683)

Adobe Readerのダウンロード

PDF形式のファイルをご覧いただくためには、Adobe Readerが必要です。Adobe Reader(無償)をダウンロードしてご利用ください。