報道発表資料

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2016年11月14日
  • 総合政策

(仮称)稲庭岳風力発電事業に係る計画段階環境配慮書に対する環境大臣意見の提出について

 環境省は、14日、岩手県で計画されている「(仮称)稲庭岳風力発電事業に係る計画段階環境配慮書」(日立造船株式会社)に対する環境大臣意見を経済産業大臣に提出した。
 本事業は、日立造船株式会社が、岩手県二戸市において、最大で総出力180,000kWの風力発電所を設置するものである。
 環境大臣意見では、対象事業実施区域の設定にあたり、①騒音等、風車の影、生態系、景観及び人と自然との触れ合いの活動の場に係る重大な環境影響が避けられない区域を除外すること、②事業実施想定区域内で環境影響評価手続中の他2事業者と情報共有・情報収集を行い、実現可能な事業の内容を検討し、方法書に記載すること、③累積的な環境影響を予測・評価すること等を求めている。

1.背景

 環境影響評価法及び電気事業法は、出力10,000kW以上の風力発電所の設置又は変更の工事を対象事業としており、環境大臣は、提出された計画段階環境配慮書※について、経済産業大臣からの照会に対して意見を述べることができるとされている。
 今後、経済産業大臣から事業者である日立造船株式会社に対して、環境大臣意見を勘案した意見が述べられ、事業者は、意見の内容を検討した上で事業計画を決定し、事業段階の環境影響評価(環境影響評価方法書、準備書、評価書)を行うこととなる。

※計画段階環境配慮書:配置・構造又は位置・規模に係る事業の計画段階において、重大な環境影響の回避・低減についての評価を記載した文書。

2.事業の概要

 ・事業者  日立造船株式会社
 ・計画位置 岩手県二戸市(事業実施想定区域面積 約4,008ha)
 ・出力   最大180,000kW(2,000~3,000kW × 60基)

3.環境大臣意見の概要

[1]総論

(1)対象事業実施区域の設定
 対象事業実施区域の設定に当たっては、環境影響の重大性の程度を整理し、検討経緯を明確にすること。
 特に風力発電設備等の設置位置次第では、重大な環境影響が懸念されることから、下記区域を除外すること。
 ・騒音等及び風車の影に関して生活環境への重大な影響が避けられない住居等及びその近傍
 ・改変により生態系への重大な影響が避けられない区域
 ・景観への重大な影響が避けられない区域
 ・人と自然との触れ合いの活動の場への重大な影響が避けられない区域
 また、風力発電設備等の設置が困難である既設風力発電所の区域を除外すること。

(2)累積的な影響
 本事業の事業実施想定区域では、他の2事業者による風力発電事業が環境影響評価手続中であることから、本事業の内容が変更になった場合、新たな環境影響の発生及びその環境影響が適切に評価されない可能性が懸念される。このため、他事業者との情報共有・情報収集を行い、実現可能な事業の内容を検討し、方法書に記載すること。
 また、本事業との累積的な影響が懸念されるものについては、適切な予測及び評価を行い、風力発電設備等の構造・配置又は位置・規模を検討すること。

(3)事業計画の抜本的見直し
 [1](1)及び(2)並びに[2](1)、(3)、(4)及び(5)により、騒音等及び風車の影による生活環境への影響並びに鳥類、植物及び生態系に対する影響を回避又は十分に低減できない場合は、事業計画の抜本的な見直しを行うこと。

(4)環境保全措置の検討
 環境保全措置の検討に当たっては、環境影響の回避・低減を優先的に検討し、代償措置を優先的に検討することがないようにすること。

[2]各論

(1)騒音等に係る環境影響
 事業実施想定区域及びその周辺には、住居等が存在することから、風力発電設備等の配置等の検討に当たっては、住居等から離隔した配置等を十分に検討すること等により、騒音等による影響を回避又は極力低減すること。

(2)地形及び地質に対する影響
 事業実施想定区域には、非火山性高原とされている「白樺野」「高曲原」が含まれていることから、必要に応じ環境保全措置を講ずること等により、重要な地形及び地質への影響を回避又は極力低減すること。

(3)風車の影に係る環境影響
 事業実施想定区域及びその周辺には、住居等が存在しており、風車の影による生活環境への重大な影響が懸念されることから、風力発電設備等を住居から離隔した配置等を十分に検討すること等により、風車の影による生活環境への影響を回避又は極力低減すること。

(4)鳥類に対する影響
 事業実施想定区域及びその周辺は、希少猛禽類の生息が確認され、ガン・カモ類等の渡り経路となっている可能性があることから、専門家等からの助言を踏まえ、環境影響を評価すること等により、鳥類への影響を回避又は極力低減すること。

(5)植物及び生態系に対する影響
 事業実施想定区域は、豊かな自然環境のまとまりの場となっていることから、風力発電設備等の配置等の検討に当たっては、緑の回廊及びそれから連続性を持ち動植物の移動経路を確保する上で重要な森林の分断を回避すること。また、自然度の高い植生及び保安林に指定された森林等の改変を回避又は極力低減すること。

(6)景観に対する影響
 事業実施想定区域には、主要な眺望点である稲庭岳及び稲庭高原等が位置していることから、客観的な予測及び評価を行い、眺望景観への影響を回避又は極力低減すること。また、専門家等からの助言に加え、関係地域の意見を踏まえること。

(7)人と自然との触れ合いの活動の場に対する影響
 事業実施想定区域には、稲庭岳、稲庭高原等が存在することから、稲庭岳キャンプ場、稲庭岳の山頂等をはじめとする重要な人と自然との触れ合いの活動の場の直接改変を回避すること。また、設置者、管理者及び利用者等からの意見を踏まえて、影響を回避又は極力低減すること。

(参考)環境影響評価に係る手続き

・平成28年9月30日 経済産業大臣から環境大臣への意見照会

・平成28年11月14日 環境大臣から経済産業大臣に意見提出 

添付資料

連絡先
環境省総合環境政策局環境影響審査室
代表 03-3581-3351
直通 03-5521-8237
室長  :大井通博 (内6231)
室長補佐:伊藤史雄 (内6233)
審査官 :吉澤泰輔 (内6248)
担当  :桜庭恭司 (内6239)

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