報道発表資料

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2016年08月18日
  • 総合政策

成田空港の更なる機能強化に係る計画段階環境配慮書に対する環境大臣意見の提出について

 環境省は、18日、「成田空港の更なる機能強化に係る計画段階環境配慮書」に対する環境大臣意見を国土交通大臣に提出した。
 本事業は、成田国際空港株式会社が、成田空港において、C滑走路の新設及び既存のB滑走路の延長を計画するものである。
 環境大臣意見では、より低騒音な航空機の一層の導入促進等航空機騒音対策の引き続きの強化、航空機騒音に係る環境基準の達成状況の改善に向けたロードマップの速やかな作成・公表による計画的かつ着実な取組、その取組の専門家や地域住民等の関与による実効性及び透明性の確保、取組状況の毎年度の公表等を求めた。
 また、国土交通省に対して、成田空港をはじめとする空港整備計画の環境保全上の最適化に向けた検討、航空機騒音に係る環境基準の最大限の達成に向けた一層の対策推進等を求めた。

1.背景

 環境影響評価法は、滑走路の新設(2,500m以上)又は延長(延長後の滑走路2,500m以上かつ延長500m以上)を伴う飛行場及びその施設の変更の事業を対象事業としており、環境大臣は、送付された計画段階環境配慮書※について、国土交通大臣からの照会に対して意見を述べることができるとされている。本件は、この手続きに沿って意見を提出するものである。
 今後、国土交通大臣から事業者である成田国際空港株式会社に対して、環境大臣意見を勘案した意見が述べられ、事業者は、意見の内容を検討した上で事業計画を決定し、事業段階の環境影響評価(環境影響評価方法書、準備書、評価書の作成)を行うこととなる。

※計画段階環境配慮書・・・位置・規模に係る事業の計画段階において、重大な環境影響の回避・低減についての評価を記載した文書。

2.事業の概要

・事業者

成田国際空港株式会社

・事業地

成田空港(千葉県成田市、香取郡多古町、山武郡芝山町)

・事業規模

C滑走路の新設(2,700m又は3,500m)及びB滑走路の延長(延長後の滑走路3,500m、延長1,000m)

 なお、本配慮書では、C滑走路の新設の配置に係る複数案(案1-2、案2)を設定し、B滑走路の延伸について北伸案及び南伸案の環境影響を比較評価している。

3.環境大臣意見の概要

 本事業者は、成田空港を含む事業実施想定区域及びその周辺における環境保全の最適化に向け、以下【1】及び【2】の措置を適切に講ずること。

 また、国土交通省においては、本事業の実施に伴う環境負荷を最大限低減する観点から、以下の事項に取り組むこと。

(1)航空需要予測及び社会状況の変化等に応じ、成田空港をはじめとする空港整備計画が、環境保全上最適なものとなるよう検討すること。

(2)成田空港の機能強化について、今後、四者協議会等の場を活用しつつ、環境保全面も含めた最適な計画に向け、十分な検討がなされるよう配意すること。

(3)本事業者の航空機騒音対策の強化に係る支援等を通じ、成田空港周辺における航空機騒音の環境基準の最大限の達成に向けて、一層の対策推進に努めること。

(4)国際民間航空条約の附属書16に基づく騒音及び排出物規制について、規制基準の強化への積極的な関与、同基準の国内における遵守等により、航空機による環境負荷の低減を一層推進すること。

【1】総論

○ 環境保全の最適化に向けた対象事業実施区域の設定及び事業計画の検討

(1)滑走路の新設及び延伸に関する複数案のいずれについても、本事業の実施に伴う重大な影響が生ずるおそれがあることから、対象事業実施区域の設定並びに滑走路及び関連施設等の位置・配置等の検討に当たっては、環境保全上重要な次の(i)~(iv)について本事業の実施に伴う影響を極力回避又は低減し、成田空港を含む事業実施想定区域及びその周辺における環境保全の最適化を図ること。

(i)市街地、集落、学校・病院等配慮が特に必要な施設及び住居

(ii)河川、水路及び湧水地

(iii)鳥獣保護区、天然記念物及び巨樹・巨木林

(iv)人と自然との触れ合いの活動の場及び条例に基づく里山活動協定認定箇所


(2)今後、社会状況の変化に応じた航空需要予測の精度向上、オフピーク時間帯の活用等現在の成田空港の空港設備を最大限有効活用するための方策及び国土交通省交通政策審議会航空分科会に設置された首都圏空港機能強化技術検討小委員会の検討状況等を踏まえ、環境保全上最適な計画となるよう精査すること。

○ 今後の手続きにおける留意事項

(1)対象事業実施区域の設定及び事業設備等の位置等の決定に当たっては、計画段階配慮事項に係る環境影響の重大性の程度を整理し、反映させること。

(2)環境保全措置の検討に当たっては、環境影響を回避又は低減させる措置を検討し、その結果を踏まえ、必要に応じ、代償措置を検討すること。

(3)地元自治体の意見を十分勘案し、環境影響評価において重要である住民等の関係者の関与についても十全を期すこと。

【2】各論

○ 航空機騒音

 成田空港周辺の測定地点における航空機騒音の環境基準の達成状況は平成26年度時点で61%であり、環境基準の達成に向けた具体的な道筋が立っていない状況下で本事業を実施することは、航空機の発着回数の増加に伴い騒音が影響を及ぼす範囲の拡大及び飛行経路周辺における騒音レベルの増大が生じ、周辺の生活環境が更に悪化するおそれがある。周辺地域の生活環境の更なる悪化を防止するため、本事業の供用後における航空機騒音の環境基準の達成状況の改善に向け、以下の事項に取り組むこと。

(1)より低騒音な航空機の一層の導入促進等、航空機騒音対策を引き続き強化すること。その際、環境基準の達成状況の改善に向けた各種対策の取組時期や具体的な数値目標等を設定したロードマップを速やかに作成・公表し、計画的に着実に取り組むこと。また、その取組は、専門家、関係機関、地域住民等の関与により透明性及び実効性を確保し、その取組状況を毎年度公表すること。

(2)上記(1)の取組状況及び夜間飛行制限の緩和の検討状況を踏まえ、本事業の供用時における航空機の騒音レベルを的確に予測及び評価し、供用開始以降の環境基準の達成状況の改善に向けた環境保全措置を検討し、評価書に記載すること。

(3)評価書までの段階で、環境基準の達成状況に改善が見られない場合には、地元自治体や住民等の関係者の意見等も踏まえつつ、改善のための航空機騒音対策の検討を改めて行い、最大限の対策に取り組むこと。

(4)中長期的に抜本的な航空機騒音対策となりうる方策について、今後の技術開 発の状況を踏まえ、航空会社や関係機関等と連携しつつ、最大限検討すること。

○ 温室効果ガス

 2030年度に2013年度比26%減という我が国の温室効果ガス削減目標を規定した「日本の約束草案」に基づき、当該目標達成に向けた対策・施策や長期的目標として2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指すとの方向性を盛り込んだ地球温暖化対策計画が平成28年5月に閣議決定された。このため、温室効果ガスの削減目標の達成に向け、以下の事項に取り組むこと。

(1)国際的な二酸化炭素排出基準の策定に係る動向を踏まえ、エネルギー効率の良い航空機材の導入促進、地上動力装置(GPU)の使用率向上等により、二酸化炭素の排出量を最大限抑制すること。また、二酸化炭素排出量の大幅な削減が期待される代替航空燃料について、導入及び普及促進に向けた検討を行うこと。

(2)既設設備の更なる省エネ化や最新の省エネ技術の導入等によりエネルギー使用量を最大限抑制するとともに、二酸化炭素排出係数の小さい電力の購入、再生可能エネルギーの導入推進等により使用電力の低炭素化を図ること。

○ その他、大気質、水環境及び土壌環境、動植物及び生態系、景観及び人と自然との触れ合いの活動の場、廃棄物及び建設発生土に関しても、環境への影響を回避又は極力低減するための措置を求めている。

(参考)環境影響評価に係る手続き

・平成28年7月 4日  国土交通大臣から環境大臣への意見照会

・平成28年8月18日  環境大臣から国土交通大臣への意見提出

添付資料

連絡先
環境省総合環境政策局環境影響審査室
代表 03-3581-3351
直通 03-5521-8237
室長  :大井通博 (内6231)
室長補佐:伊藤史雄 (内6233)
審査官 :岸田周  (内6253)
担当  :知名光太郎(内6209)

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