報道発表資料

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2016年05月23日
  • 総合政策

「名古屋港で発生する浚渫土砂の新たな処分場計画」の環境影響に関する検討書に対する環境大臣意見の提出について

 環境省は、23日、愛知県及び三重県で計画されている「名古屋港で発生する浚渫土砂の新たな処分場計画」の環境影響に関する検討書に対する環境大臣意見を国土交通大臣に提出した。
 本事業は、名古屋港で発生する浚渫土砂約3,800万㎥を処分することを目的とし、伊勢湾内及び伊勢湾近傍海域において、約250~350haの公有水面を埋め立てるものである。
 環境大臣意見では、①候補地区域の選定において、複数案ごとに生態系、動物、水質等について重大な環境影響が回避できない場合等は、除外を含めて慎重に検討すること、②浚渫土砂を埋め立てる際は、海防法を遵守すること、③規模、形状等の複数案による環境影響の極力回避・低減、④伊勢湾全体への影響について予測・評価の実施、⑤長期的、総合的な視点から、浚渫土砂量の低減等を検討し、新たな海域処分は可能な限り回避すること等を求めている。

1.背景

 本事業は、平成22年から候補地の設定や、候補地の比較評価等の段階において、パブリックインボルブメントによる検討が行われた。
 また、本検討書は、平成23年に改正された環境影響評価法の附則により、法改正の経過措置として同法第3条の3で定める計画段階環境配慮書とみなされる。
 このため、本件は、名古屋港で発生する浚渫土砂の新たな処分場計画に係る計画段階環境配慮書類(検討書)に対して、環境大臣が意見を述べるものである。
 今後、国土交通大臣から事業予定者である国土交通省中部地方整備局に対して、環境大臣意見を勘案した意見が述べられ、国土交通省中部地方整備局は、意見の内容を検討したうえで、詳細計画を決定し、事業段階の環境影響評価(環境影響評価方法書、準備書、評価書の作成)に係る手続きを行うこととなる。

※計画段階環境配慮書:配置・構造又は位置・規模に係る事業の計画段階において、重大な環境影響の回避・低減についての評価を記載した文書。

2.事業の概要

 本事業は、名古屋港で発生する浚渫土砂約3,800万㎥を処分することを目的とし、伊勢湾内及び伊勢湾近傍海域において、約250~350haの公有水面を埋め立てるものである。
 伊勢湾は、生態系が豊かな湾であるとともに、閉鎖性海域であり、水質に関する環境基準が未達成である。

3.環境大臣意見の概要

(1)候補地区域a~d案の選定について

 候補地である区域a~dの4案の中から新たな土砂処分場を選定するに当たっては、以下の点について配慮した上で、重大な環境影響が回避できない場合等は、除外を含めて慎重に検討すること。また、潮流や水質の変化については、各案の潮流や水質変化に及ぼす影響を極力定量的に比較評価した上で、重大な環境影響を回避する必要がある。また、浚渫土砂を埋め立てる際は、海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律(以下「海防法」という。)を遵守すること。
① 区域a案について
 中部国際空港沖の海域を埋め立てることにより土砂処分を行うもの。伊勢湾の中でも、区域aとその周辺は特に生物の生産性が高く、底生生物の種類も多いことに加え、希少生物も生息していることが明らかになっている。
 区域aに土砂処分場を設置することは、生態系・動物に重大な環境影響を引き起こすことが懸念されるため、候補地の決定にあたっては、伊勢湾漁業影響調査委員会の調査の取りまとめ結果等を踏まえ、可能な限り定量的に予測・評価し、生態系・動物への影響を明らかにした上で、重大な環境影響を回避すること。
② 区域b案について
 四日市港港内を埋め立てることにより土砂処分を行うもの。四日市港の沿岸部は、土砂処分場設置により更に閉鎖性が高まることによる、水質、底質及び海生生物に対する影響が懸念される。また、周辺の干潟はシギ・チドリ類の渡来湿地となっている。
 このため、水質、底質及び海生生物に対する影響や、シギ・チドリ類への影響の他、潮流の変化に伴う干潟環境への影響について、可能な限り定量的に予測・評価し、重大な環境影響を回避すること。
③ 区域c及びd案について
 海域において船舶から浚渫土砂を排出するもの。当該行為は、船舶から排出される浚渫土砂が廃棄物に該当する場合は、海防法において、原則禁止されている。

(2)候補地の決定後における配慮事項について

 候補地が決定された後、特に以下の事項に配慮すること。

① 土砂処分場の施工位置、規模、形状等の決定に当たっても実現可能な複数案を設定し、環境影響の比較評価を行い、環境影響を極力回避又は低減すること。
② 各案の環境影響については、野生動植物について詳細な現地調査、予測及び評価を行うとともに、詳細な潮流及び水質シミュレーション等を実施し、局所的な影響のみならず、伊勢湾全体への影響について予測及び評価を行うこと。
③ 浚渫土砂処分によって失われる海域環境に係る適切な代償措置について検討・評価すること。具体的には、伊勢湾の環境の再生及び創造等を図る必要があること。
④ 多数の鳥類が生息するポートアイランドに仮置きされている土砂の搬出により、鳥類への影響が懸念されるため、詳細な調査を行った上で、必要な環境保全措置を講じ、鳥類への影響を回避又は極力低減すること。

(3)長期的、総合的な視点からの海域処分抑制について

 名古屋港内の開発的な浚渫のほか、泊地や航路の維持のためには永続的に浚渫が必要となることから、長期的、総合的な視点から、浚渫土砂量の低減、陸域における処分、有効な利活用等を検討し、新たな海域処分は可能な限り回避すること。

添付資料

連絡先
環境省総合環境政策局環境影響審査室
代  表:03-3581-3351
直  通:03-5521-8237
室  長:神谷 洋一(内6231)
室長補佐:相澤 寛史(内6233)
審査 官:吉澤 泰輔(内6248)

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