報道発表資料

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2015年10月05日
  • 地球環境

「気候変動に係る日印政策研究ワークショップ」の結果について(お知らせ)

 9月29日(火)、30(水)にインド・ニューデリーにて「気候変動に係る日印政策研究ワークショップ」が開催されました。主要排出国から提出された約束草案、各国の気候変動政策・対策、国際協力のあり方、気候変動に係る2020年以降の枠組みのあり方について、両国の政策担当官・研究者が意見交換を行いました。

 「気候変動に係る日印政策研究ワークショップ」は、気候変動に関する日印の研究面からの知見について、それぞれの国の政策担当官・研究者が意見交換を行うため、環境省がインド・エネルギー資源研究所(TERI)の協力を得て開催したものです。我が国からは環境省、国立環境研究所(NIES)、地球環境戦略研究機関(IGES)等、インドからは鉄道省、TERI、気候変動に係る研究機関等の政策担当官・研究者が参加しました。

1.開催地

インド・ニューデリー インディアン・ハビタット・センター内

2.開催日

平成27年9月29日(火)、30日(水)

3.議題

 主要国から提出された約束草案による効果、日印ほかの気候変動政策・対策、国際的・地域的な協力のあり方、気候変動における2020年以降の枠組みのあり方 等

4.出席者

日本側:環境省、IGES、NIES、国際協力機構(JICA)等

インド側:鉄道省、再生可能エネルギー省、TERI(気候変動、エネルギー分野研究者)等

その他:パリ政治学院・持続可能な開発と国際関係研究所(IDDRI)、世界資源研究所(WRI)、世界銀行、ドイツ開発公社(GIZ)、在インドEU大使館、フランス大使館、等

5.概要

開会セッション

 インド側より、スマートグリッドや再生可能エネルギーなど低炭素技術の普及促進に関する評価がなされるとともに、炭素貯留(CCS)等の技術開発が遅れている旨指摘がなされ、引き続き、エネルギー・低炭素技術への投資など、技術面、経済面での期待が示された。また、緑の気候基金(GCF)を通じた支援への期待が示されるとともに、最近アジア開発銀行が発表したアジア・太平洋地域への気候関連支援額の倍増に対して言及があった。

セッション1:主要国から提出された約束草案(Intended Nationally Determined Contributions: INDCs)の効果

 4つの研究機関より、モデルを使った主要国のINDC分析結果、その結果と長期目標とのギャップ等について見解が示された。2030年までの主要国の排出削減の道筋が、2020年の目標よりは進展があるが、長期目標の観点からは依然ギャップがあること、一方で、長期目標の設定の際に必要な経済成長率やGDPなどは将来予測が困難であることが指摘された。INDCを達成するための主要な政策は、GDP比エネルギー使用量の改善(省エネ)と、再生可能エネルギー等による電力部門における低炭素化であり、低炭素技術のブレークスルー、地域や都市レベルでの低炭素イニシアティブの推進、気候資金の拡大などが有用であり、低炭素社会に向けた技術・経済・社会システムのタイムリーな移行が成功のカギを握ることが議論された。また、この移行に際しては、南南協力における技術・知見の移転、技術ポテンシャルと政治的な意思のギャップを埋めていくことなどが重要だと確認された。

セッション2:主要国の気候変動政策

 日本からINDC及び最近の気候変動対策、EUから、パリCOPに向けた現状認識とINDC、印から、交通分野における省エネ対策及びエネルギー消費量の現状及び将来の見込みについて紹介され、INDCを実施するための政策の有用性、長期の政策の不確実性などについて議論された。

セッション3:(長期目標とのギャップを埋めていくための)国際協力・地域協力のあり方

 二国間開発援助機関、研究機関、民間セクター、国際的な金融機関等における様々な取組や成功事例の紹介が行われた。日本からは、アジア地域で行ってきたAIMモデリングの能力構築、インドにおける再エネ・省エネ分野における中小企業や中小金融機関向け融資事業の成果、インドからは、中小企業セクターにおける省エネや、ローカルコミュニティにおけるバイオマス発電等の取組、ドイツからは、廃棄物、森林の分野における国別緩和行動(NAMA)に対する支援経験、民間コンサルタントからは、10数カ国向けINDC策定支援の経験、国際的な金融機関からは、グローバルレベルで導入が加速する炭素の価格付け(カーボン・プライシング)についてのイニシアティブや民間企業への導入状況などが共有された。

セッション4:パリ合意の有効性・効果

 研究機関、政府から、気候変動国際交渉の現状分析、INDCのタイムフレームや透明性の考え方、日本が推進する二国間クレジット制度の現状、パリ合意の主要な要素等について発表が行われた後、パリ合意が持続的なものであることの必要性、法的合意とCOP決定で合意する中身のバランス、緩和と適応の究極的な行動と実施の手段の関係、長期目標の扱い、各国から提出されたINDCの法的な扱い(パリ合意との関係)、新しい差異化のあり方等について活発な議論が行われた。

セッション5:研究コミュニティの役割

 市民レベルでのライフスタイルの根本的な改善、低炭素技術のイノベーションの促進と協力の強化、モデリングにおける経済や社会の理解促進、適応分野における事例や教訓の共有、脆弱なグループ含むローカルコミュニティとの連携、将来の不確実性に対する理解など、研究コミュニティが対応を強化していくべき点、政策決定者にインプットを行っていくべき点について議論が行われた。

※当日の発表資料等については、発表者の了解が得られたものについて当省のホームページ(https://www.env.go.jp/earth/ondanka/post_8.html)に後日掲載する予定。

連絡先
環境省地球環境局地球温暖化対策課
直通:03-5521-8330
代表:03-3581-3351
室  長:大井 通博(内線6772)
室長補佐:浦上亜希子(内線6774)