報道発表資料

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2015年08月21日
  • 総合政策

(仮称)宗谷丘陵風力発電事業に係る計画段階環境配慮書に対する環境大臣意見について(お知らせ)

 環境省は、21日、北海道で計画されている「(仮称)宗谷丘陵風力発電事業計画段階環境配慮書」(株式会社道北エナジー)に対する環境大臣意見を経済産業大臣に提出した。
 本事業は、北海道稚内市及び猿払村において、最大で総出力170,000kWの風力発電所を設置するものである。
 環境大臣意見では、対象事業実施区域の設定にあたり、特定植物群落等の環境保全上重要な区域を原則除外すること、風力発電設備への衝突事故や移動経路の阻害等による重要な鳥類への重大な影響を回避すること等を求めている。

1.背景
 環境影響評価法及び電気事業法は、出力10,000kW以上の風力発電所の設置又は変更の工事を対象事業としており、環境大臣は、提出された計画段階環境配慮書(※)について、経済産業大臣からの照会に対して意見を言うことができるとされている。
 今後、経済産業大臣から事業者である株式会社道北エナジーに対して、環境大臣意見を勘案した意見が述べられ、事業者は、意見の内容を検討した上で事業計画を決定し、事業段階の環境影響評価(環境影響評価方法書、準備書、評価書)を行うこととなる。

※計画段階環境配慮書:配置・構造又は位置・規模に係る事業の計画段階において、重大な環境影響の回避・低減についての評価を記載した文書。


2.事業の概要
 本事業は、北海道稚内市及び猿払村に、最大で総出力170,000kWの風力発電所を設置するものである。事業実施想定区域の周辺は、北海道指定鳥獣保護区及び重要野鳥生息地(IBA)等の保護地域等が集中している自然環境の保全上、重要な地域である。


3.環境大臣意見の概要
[1]対象事業実施区域の設定
(1)計画段階配慮事項に係る環境影響の重大性の程度を整理し、事業実施想定区域からの絞り込みの検討経緯を明確にし、比較すること。

(2)以下の区域については原則として除外すべき。
  ①特定植物群落
  ②自然環境保全基礎調査の現存植生図における植生区分が「自然植生」の区域
   なお、今後の方法書以降の手続きにおいて第7回自然環境保全基礎調査と同等以上の科学的・客観的な詳細調査により明らかにした上で、対象事業実施区域から除外すること。

[2]各論
(1)騒音等について
  事業実施想定区域の周辺に、住居地域が存在することから、風力発電設備及び附帯設備を住居等から離隔すること等により、騒音等による影響を回避又は極力低減すること。

(2)風車の影について
  事業実施想定区域の周辺に、住居地域が存在することから、風力発電設備を住居等から離隔すること等により、風車の影による影響を回避又は極力低減すること。

(3)地形について
  事業実施想定区域に、「日本の典型地形」が含まれていることから、重要な地形への影響を回避又は極力低減すること。

(4)鳥類について
  事業実施想定区域及びその周辺は、ガン・カモ類や海ワシ類等の餌場、越冬地、繁殖地等となっている湿地、池沼、河川、海岸等が広く分布し、また、渡り時期にガン・カモ類の集団飛来地となる重要野鳥生息地(IBA)の声問大沼が近接していること、海ワシ類の渡りの経路が存在することから、重要な鳥類の生息環境の劣化及び渡りへの影響等が懸念される。このため、風力発電設備への衝突事故や移動経路の阻害等によるこれら鳥類への重大な影響を回避するため、以下について実施すること。
  ① 周辺の池沼等に生息するコハクチョウやガン・カモ類等の渡りの経路及び餌場への移動経路となっていることから、適切な時期・回数の調査を実施し、渡りの経路及び餌場への移動経路を明らかにした上で、経路下を避けるとともに、可能な限り距離を確保すること。
  ② 多数の海ワシ類の渡来や隣接する既設風力発電所におけるオジロワシの衝突が確認されていることから、適切な時期・回数の調査を実施し、海ワシ類のねぐらや餌場等の利用範囲及び渡りの経路を避けるとともに、可能な限り距離を確保すること。

(5)動物(鳥類除く。)について
  重要な動物の生息地の改変を回避又は極力低減するとともに、可能な限り当該生息地から距離を確保すること。
  また、工事実施時の土工量を抑制し、土砂の流出を最小限に抑えること等により、重要な水生生物への影響を回避又は極力低減すること。

(6)植物について
  重要な植物種の生育地の改変を回避又は極力低減するとともに、取付道路等の附帯施設の設置や、工事に必要な一時的な施設及び地形改変を含む工事全体による地形改変が最小となるよう配慮すること。

(7)生態系について
  事業実施想定区域には、沢・河川等の水域、自然植生及び保安林等に指定された森林が存在し、豊かな自然環境のまとまりの場となっていることから、既存道路や無立木地等を活用することにより、これらまとまりの場を回避又は極力低減すること。


[3]事業計画の見直し
 上記[1](2)並びに[2](4)~(7)により、重要な動植物及びその生息・生育地並びに生態系への影響を回避又は十分に低減できない場合は、事業実施区域の見直しや基数の大幅削減を含む事業計画の抜本的な見直しを行うこと。

[4]その他
(1)環境保全措置の検討
  環境保全措置の検討に当たっては、環境影響の回避・低減を優先的に検討し、代償措置を優先的に検討することがないようにすること。

(2)累積的な影響
  本事業の事業実施想定区域及びその周辺においては、本事業者及び他事業者による複数の風力発電所が設置済及び環境影響評価手続中であることから、本事業との累積的な環境影響について予測及び評価をすること。

【参考】

○事業概要
・名称 (仮称)宗谷丘陵風力発電事業
・事業者 株式会社道北エナジー
・計画位置 北海道稚内市及び猿払村(事業実施想定区域面積:約141.81㎞2
・出力 最大170,000kW(2,000~3,400kW級 発電設備を設置)
○環境影響評価に係る手続
・平成27年7月6日  経済産業大臣から環境大臣への意見照会
・平成27年8月21日  環境大臣から経済産業大臣に意見提出

添付資料

連絡先
環境省総合環境政策局環境影響審査室
室長:神谷 洋一(内6231)
室長補佐:相澤 寛史(内6233)
審査官:日下 崇(内6248)
電話:03-3581-3351(代表)
   03-5521-8237(直通)

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