報道発表資料

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2015年07月24日
  • 総合政策

稚内市・豊富町における風力発電事業に係る計画段階環境配慮書に対する環境大臣意見について(お知らせ)

 環境省は、24日、北海道で計画されている「稚内市・豊富町における風力発電事業計画段階環境配慮書」(エコ・パワー株式会社)に対する環境大臣意見を経済産業大臣に提出した。
 本事業は、北海道稚内市及び天塩郡豊富町において、最大で総出力70,000kWの風力発電所を設置するものである。
 環境大臣意見では、対象事業実施区域の設定にあたり、特定植物群落等の環境保全上重要な区域を原則除外すること、風力発電設備への衝突事故や移動経路の阻害等による重要な鳥類への重大な影響を回避すること等を求めている。

1.背景
 環境影響評価法及び電気事業法は、出力10,000kW以上の風力発電所の設置又は変更の工事を対象事業としており、環境大臣は、提出された計画段階環境配慮書(※)について、経済産業大臣からの照会に対して意見を言うことができるとされている。
 今後、経済産業大臣から事業者であるエコ・パワー株式会社に対して、環境大臣意見を勘案した意見が述べられ、事業者は、意見の内容を検討した上で事業計画を決定し、事業段階の環境影響評価(環境影響評価方法書、準備書、評価書)を行うこととなる。

※計画段階環境配慮書:配置・構造又は位置・規模に係る事業の計画段階において、重大な環境影響の回避・低減についての評価を記載した文書。

2.事業の概要
 本事業は、北海道稚内市及び天塩郡豊富町に、最大で総出力70,000kWの風力発電所を設置するものである。事業実施想定区域の周辺は、ラムサール条約湿地であるサロベツ原野、国指定鳥獣保護区及び北海道指定鳥獣保護区、利尻礼文サロベツ国立公園等の保護地域等が集中している自然環境上重要な地域である。また、事業実施想定区域は、A~Dの4区域に分かれている。

3.環境大臣意見の概要
[1]対象事業実施区域の設定
(1)計画段階配慮事項に係る環境影響の重大性の程度を整理し、事業実施想定区域からの絞り込みの検討経緯を明確にし、比較すること。

(2)以下の区域については、原則として除外すべき。

①特定植物群落
②自然環境保全基礎調査の現存植生図における植生区分が「自然植生」の区域
 なお、今後の方法書以降の手続きにおいて第7回自然環境保全基礎調査と同等以上の科学的・客観的な詳細調査により明らかにした上で、対象事業実施区域から除外すること。

[2]各論
(1)騒音等について

 事業実施想定区域A~D:周辺に住居地域が存在することから、風力発電設備及び付帯設備を住居等から離隔すること等により、騒音等による影響を回避又は極力低減すること。

(2)風車の影について

 事業実施想定区域A~D:周辺に住居地域が存在することから、風力発電設備を住居等から離隔すること等により、風車の影による影響を回避又は極力低減すること。

(3)地形について

 事業実施想定区域A:「日本の典型地形」が含まれていることから、重要な地形への影響を回避又は極力低減すること。

(4)鳥類について

 事業実施想定区域A~D:周辺にガン・カモ類や猛禽類等の餌場、越冬地、繁殖地等となっている湿地、池沼、河川、海岸等が広く分布し、また、渡り時期にガン・カモ類の集団飛来地となるラムサール条約湿地のサロベツ原野及び重要野鳥生息地(IBA)が近接していることから、重要な鳥類の生息環境の劣化及び渡りへの影響等が懸念される。このため、風力発電設備への衝突事故や移動経路の阻害等によるこれら鳥類への重大な影響を回避するため、以下を実施すること。
① サロベツ原野に生息するコハクチョウやガン・カモ類等の渡りの経路及び餌場への移動経路となっていることから、適切な時期・回数の調査を実施し、渡りの経路及び餌場への移動経路を明らかにした上で、経路下を避けるとともに、可能な限り距離を確保すること。
② 多数の海ワシ類の越冬や隣接する既設風力発電所におけるオジロワシの衝突が確認されていることから、海ワシ類のねぐらや餌場等の利用範囲や移動経路は避けるとともに、可能な限り距離を確保すること。

(5)動物(鳥類除く。)について

 事業実施想定区域A~D:重要な動物の生息地の改変を回避又は極力低減するとともに、可能な限り当該生息地から距離を確保すること。
 また、工事実施時の土工量を抑制し、土砂の流出を最小限に抑えること等により、重要な水生生物への影響を回避又は極力低減すること。

(6)植物について

 事業実施想定区域A~D:重要な植物種の生育地の改変を回避するとともに、取付道路等の附帯施設の設置等による地形改変が最小となるよう配慮すること。

(7)生態系について

 事業実施想定区域A~D:沢・河川等の水域、自然植生及び保安林等に指定された森林が存在し、豊かな自然環境のまとまりの場となっていることから、既存道路や無立木地等を活用することにより、これらまとまりの場を回避又は極力低減すること。

(8)景観について

 事業実施想定区域B:重要な景観資源である利尻島を眺望した際の景観への影響が懸念されることから、重要な眺望景観への影響を回避又は極力低減すること。
また、主要な眺望点からの風力発電施設の垂直見込角を可能な限り小さくすること。

[3]事業計画の見直し
 上記[1](2)並びに[2](4)~(8)により、重要な動植物及びその生息・生育地、生態系、並びに景観への影響を回避又は十分に低減できない場合は、事業実施区域の見直しや基数の大幅削減を含む事業計画の抜本的な見直しを行うこと。

[4]その他
(1)環境保全措置の検討

 環境保全措置の検討に当たっては、環境影響の回避・低減を優先的に検討し、代償措置を優先的に検討することがないようにすること。

(2)累積的な影響

 本事業の事業実施想定区域及びその周辺においては、本事業者及び他事業者による複数の風力発電所が設置済及び環境影響評価手続中であることから、本事業との累積的な環境影響について予測及び評価をすること。

【参考】

○事業概要
・名称 稚内市・豊富町における風力発電事業
・事業者 エコ・パワー株式会社
・計画位置 北海道稚内市及び天塩郡豊富町(事業実施想定区域面積:約7,920ha)
・出力 最大70,000kW(2,000~3,300kW級 発電設備を設置)
○環境影響評価に係る手続
・平成27年6月8日  経済産業大臣から環境大臣への意見照会
・平成27年7月24日  環境大臣から経済産業大臣に意見提出

添付資料

連絡先
環境省総合環境政策局環境影響審査室
室長:神谷 洋一(内6231)
室長補佐:相澤 寛史(内6233)
審査官:日下 崇(内6248)
電話:03-3581-3351(代表)
   03-5521-8237(直通)

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