報道発表資料

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2015年04月28日
  • 自然環境

(お知らせ)改正鳥獣法に基づく指定管理鳥獣捕獲等事業の推進に向けたニホンジカ及びイノシシの生息状況等緊急調査事業の結果について

 環境省では、改正鳥獣法に基づく指定管理鳥獣捕獲等事業の推進に向けて、都道府県による科学的・計画的な鳥獣の管理を支援するため、統計手法を用いて、(1)ニホンジカ(都府県単位)及びイノシシ(広域ブロック単位)について、平成24年度末までの個体数の推定等を実施しました。その結果、ニホンジカについてはほとんどの都府県で増加傾向であり、イノシシについては広域ブロックによって傾向が異なるものの長期的には増加傾向であることが明らかになりました。さらに、平成35年度までの個体数の推移について将来予測を実施しましたので、これらの結果を都府県で活用し、鳥獣の管理に取り組んでいただきたいと考えています。
さらに、全国的な生息状況の動向を把握するため、(1)を踏まえて(2)全国のニホンジカ及びイノシシの個体数の推定等を実施しました。平成24年度末についてみると、全国(北海道を除く)のニホンジカの推定個体数は中央値約249万頭となり、増加傾向が続いていることが明らかになりました。また、イノシシの推定個体数は中央値約89万頭となり、長期的には増加傾向であるものの、前年度からはほぼ横ばいであることが明らかになりました。ニホンジカについて平成35年度までの個体数の推移について将来予測を実施したところ、個体数を半減するためには、現行の2倍以上の捕獲を行わなければならないことが明らかになりました。
 また、(3)最新のニホンジカ及びイノシシの地理的な生息分布の拡大状況調査を実施したところ、過去の調査とは手法が異なるものの、分布域(分布メッシュ数)がニホンジカは昭和53年度から平成26年度までの36年間で約2.5倍、平成23年度から26年度の3年間では約1.2倍に拡大し、イノシシは昭和53年度から平成26年度までに約1.7倍に拡大していることが明らかになりました。

1.趣旨

 近年、ニホンジカ等の鳥獣については、急速な生息数の増加や、生息域の拡大により、自然生態系、農林水産業及び生活環境に深刻な被害を及ぼしており、積極的な捕獲による個体群管理が不可欠となっています。

 このため、環境省と農林水産省は「抜本的な鳥獣捕獲強化対策」(平成25年12月)を共同で取りまとめ、「ニホンジカ、イノシシの個体数を10年後(平成35年度)までに半減」することを当面の捕獲目標としました。

 これを達成するため、平成26年5月30日に公布された鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律の一部を改正する法律(平成26年法律第46号。以下「改正鳥獣法」という。平成27年5月29日施行。)において、集中的かつ広域的に管理を図る必要がある鳥獣を、国が「指定管理鳥獣」として指定して、都道府県等が主体となって捕獲を行う「指定管理鳥獣捕獲等事業」を創設するとともに、この事業を実施する都道府県を交付金により支援することとしました。なお、指定管理鳥獣については、全国的な生息状況や被害状況を勘案して、ニホンジカ及びイノシシを指定しました。

 抜本的な捕獲の強化にあたっては、生息数を把握して鳥獣の管理の目標を明らかにする必要があることから、全国的な観点から科学的・計画的に指定管理鳥獣の管理を強力に推進するため、平成25年度補正予算により甚大な被害を及ぼしている鳥獣の生息状況等緊急調査事業を実施しました。今般その結果を取りまとめたので公表します。

2.調査の概要

(1)ニホンジカ(都府県単位※1)及びイノシシ(広域ブロック単位)の個体数推定等

 指定管理鳥獣の地域ごとの生息数の動向を把握するため、統計手法を用いてニホンジカ(都府県単位)及びイノシシ(広域ブロック単位)について、平成24年度末の個体数の推定(中央値及び90%・50%信用区間)を行うとともに、平成35年度までの個体数の推移について、①平成23年度の捕獲率※2を維持する場合及び②平成35年度までに個体数を半減する場合について、将来予測を実施しました。

 個体数推定及び将来予測の方法並びに結果の捉え方に関する注意点については、資料1-1、ニホンジカの都府県毎の結果については資料1-2を、イノシシの広域ブロック毎の結果については資料1-3をご参照ください。

 なお、本調査は、捕獲数等の既存のデータをもとに「階層ベイズモデル」を用いた統計的な手法による推定方法により実施しました。既に生息状況調査等を基に個体数推定を実施している先進的な都府県の独自の推定結果と本調査の推定結果は一致しませんが、推定方法や使用するデータの種類等が異なるため、結果に違いが生じたものです。

 また、得られた結果を踏まえ、都府県に対し、本結果の解釈及び活用方法、今後の生息密度指標調査のあり方や個体数推定の実施に関する助言を行いました。

 本結果については、都道府県において、指定管理鳥獣捕獲等事業実施計画の作成、指定管理鳥獣の捕獲目標の設定及び達成状況の評価等に活用いただくとともに、今後、都道府県において、本調査を参考に、指定管理鳥獣の生息状況調査や、その結果を活用した個体数推定及びその将来予測が継続的に実施されることを期待しています

※1 北海道については、独自に同様の手法を用いた調査を実施(北海道のニホンジカの個体数は、平成24年度末時点で約59万頭と推定)しているため、本調査の対象外としています。また、ニホンジカの生息がない又はわずかの県(青森県、秋田県、山形県、茨城県、佐賀県、沖縄県)については、本方法による推定ができないため実施していません。

 ※2 捕獲率とは、推定個体数に対する捕獲数の割合を指します。

(2)全国のニホンジカ及びイノシシの個体数推定等(詳細は資料2

 指定管理鳥獣の全国的な生息数の動向を把握するため、(1)の結果を踏まえて、最新の情報と知見に基づき統計手法の検討を行い、全国(北海道を除く)のニホンジカ及びイノシシの個体数推定及び将来予測を実施しました。

 その結果、平成24(2012)年度末の全国(北海道を除く)のニホンジカの個体数は中央値約249万頭(90%信用区間約188万~358万頭)イノシシの個体数は中央値約89万頭(90%信用区間約65万~126万頭)と推定されました。昨年度末との比較でニホンジカは増加し、イノシシはほぼ横ばいとなりました。※※

 さらに、ニホンジカについて平成23年度(抜本的な鳥獣捕獲対策の10年半減目標の基準年)と同じ捕獲率で捕獲を続ける場合、平成35年度には中央値で約402万頭(平成24年度の個体数の約1.6倍)まで増加すると予測され、平成35年度に平成23年度の中央値で半数以下にするためには、平成27年度以降に平成23年度の捕獲率の約2.2倍の捕獲を続ける必要があると予測されました。

 本調査については、環境省が今後も手法の改良を重ねながら毎年継続的に実施し、「抜本的な鳥獣捕獲強化対策」に定めた目標の進捗状況の確認に活用して、順応的な管理を実施していくこととしています。

※北海道のニホンジカの個体数は、平成24年度末で約59万頭と推定されています。

※※平成25年8月に平成23年のニホンジカの個体数は約261万頭(90%信用区間約155万~549万頭)と推定しましたが、今回新たな方法で推定を行い、過去の推定値も修正されており、昨年度から増加したとの結果になっています(詳細は資料2をご覧ください)。

(3)ニホンジカ及びイノシシの生息分布の拡大状況調査(詳細は資料3

 指定管理鳥獣の全国的な生息分布の状況を把握するため、新たな生息分布の拡大を把握して、最新の分布図を作成しました

 ニホンジカの分布メッシュ※※数は、1978年から2014年までの36年間で約2.5倍に、直近で分布図を作成した2011年から2014年までの3年間では約1.2倍に拡大し、全国的にニホンジカの分布域の拡大が続いていることが分かりました。イノシシの分布メッシュ数については1978年から2014年までの36年間で約1.7倍に拡大していることが分かりました。

 本調査については、基礎データとして、国及び都道府県等において、指定管理鳥獣の管理に活用して参ります。

※1978年の調査は自然環境保全基礎調査、2011年の調査は都道府県等から報告のあった狩猟登録及び捕獲許可による捕獲位置情報による新たな分布メッシュの把握調査、2014年の調査は都道府県、市町村及び森林管理署等へのヒアリング等による目撃情報(捕獲位置情報を含む)による新たな分布メッシュの把握調査を実施。

※※分布メッシュは5倍地域メッシュ(約5㎞×5㎞)

添付資料

連絡先
環境省自然環境局野生生物課鳥獣保護業務室
代表:03-3581-3351
 直通:03-5521-8285
鳥獣保護管理企画官:堀内 洋(内線6470)
     室長補佐:東岡 礼治(内線6475)
     室長補佐:道明 真理(内線6471)
     担  当:山崎 麻里(内線6474)
     担  当:山崎 貴之(内線6473)

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