報道発表資料

平成27年3月31日
自然環境
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モニタリングサイト1000サンゴ礁調査2008-2012年度とりまとめ報告書の公表について(お知らせ)

 環境省生物多様性センターでは、モニタリングサイト1000事業の一環として実施しているサンゴ礁調査の第2期(2008-2012年度)が終了したことから、これまでの10年間の結果をとりまとめました。
 とりまとめ結果から、わが国の主なサンゴ礁域(トカラ列島以南の海域)では2005年まで40%あった平均サンゴ被度が2006年に30%に減少し、その後も30%の状態が続いていることがわかりました。主なサンゴ礁域のうち、石西礁湖では2007~2008年に白化現象や台風の影響によりサンゴ被度が大きく減少しましたが、その後、回復傾向にあることや、沖縄島周辺のサンゴ被度が調査開始から緩やかに増加を続けていることがわかりました。一方、屋久島・種子島以北の高緯度サンゴ群集域では第1期・第2期を通して変わらず平均サンゴ被度が30%であることがわかりました。
 このほか、オニヒトデの集団発生が四国西南岸や石垣島、石西礁湖、西表島及び周辺離島で続いていますが、串本周辺においては収束したことがわかりました。

1.モニタリングサイト1000サンゴ礁調査

 モニタリングサイト1000(重要生態系監視地域モニタリング推進事業)はわが国を代表する様々な生態系の変化状況を把握し、生物多様性保全施策への活用に資することを目的とした調査で、全国約1,000箇所のモニタリングサイトにおいて、平成15年度から長期継続的に実施しています。

 モニタリングサイト1000サンゴ礁調査では造礁サンゴ類を指標とし、平成15年度の試行調査を経て、平成16年度から調査を実施しています。

 日本のサンゴ群集は、トカラ列島の宝島、小宝島以南沖縄県までのサンゴ礁域と、種子島・屋久島を含む大隅諸島以北から館山(太平洋側)及び佐渡島(日本海側)までの高緯度サンゴ群集域に広く分布しています。

 調査サイトは、サンゴ礁がよく発達し、わが国のサンゴ礁分布の中心であるトカラ列島以南のサンゴ礁域に17サイト、サンゴ礁のあまり発達しない高緯度サンゴ群集域に7サイト、全国24サイトを設置しています(図1)。

 調査は、サンゴ被度や白化現象、オニヒトデの発生状況などのモニタリング調査を、各地のサンゴ礁研究者をはじめ、研究機関やコンサルタント、ダイビング事業者等の専門家により、NGO/NPO等のボランティアによる協力も受けながら実施しており、約70名が関わっています。

図:モニタリングサイト1000サンゴ礁調査サイト位置図

図1 モニタリングサイト1000サンゴ礁調査サイト位置図

2.とりまとめ成果の概要

 10年間の調査結果を解析し、第1期(2003~2007)のとりまとめ成果との比較から生態系の変化をまとめました。

 サイト全体のとりまとめから、平均サンゴ被度の推移について、主なサンゴ礁域では第1期の2005年まで40%でしたが、2006年に30%に減少し、第2期終了時の2012年まで30%のままの状態が続いていることがわかりました。高緯度サンゴ群集域では、平均サンゴ被度は第1期・第2期を通して変わらず30%であることがわかりました。 

 サイト毎のとりまとめからは、石垣島周辺と石西礁湖周辺を含む八重山海域で2007年の高水温による大規模な白化現象と台風被害により被度の顕著な減少があったが、その後、回復傾向にあることや、沖縄島周辺が2004年に他のサンゴ礁域のサイトに比べて平均サンゴ被度が低い値(10%)だったが、第1期・第2期を通して緩やかに増加し、2012年には30%まで回復したこと、小笠原諸島が第1期を通して50%と比較的高い平均サンゴ被度を維持していたが、第2期の2009年に高水温による大規模な白化現象が観察され、その後2011年に40%に減少したことなどがわかりました。

 サンゴを食害しサンゴ被度に影響を与えるオニヒトデの大集団の分布と推移から、オニヒトデの大発生が石垣島、石西礁湖及び西表島を含む八重山諸島周辺海域において2007年から、四国南西岸において2008年から継続しています。一方、紀伊半島の串本周辺においては2004年から2008年までオニヒトデの集団がみられましたが、その後収束していることがわかりました。

 このほか、館山で串本以南に出現するエンタクミドリイシの小型群体の加入が観察されたこと、串本周辺の優占種であった卓状クシハダミドリイシ群集が縮小し、沖縄など亜熱帯域に優占する枝状のスギノキミドリイシの分布が拡大しつつあることがわかり、水温上昇に伴うサンゴ群集の北上傾向の可能性が考えられます。

3.トピックの紹介

概要で記述した内容から、いくつかについてその詳細を紹介します。

①石西礁湖におけるサンゴ被度減少とその要因

 石西礁湖・中央部(サイト15)で調査を行っている24地点の平均サンゴ被度は、調査を開始した2004年は50%の比較的高い被度でしたが、2007年から2008年にかけて10%まで減少し、その後やや回復し、現在まで20%程度で推移しています(図2左上)。同じサイトの白化率及びオニヒトデ発生階級、台風被害発生地点数の推移をみると、サンゴ被度の減少がみられた2007年は、白化率が60%を超え、翌年も50%を超えたこと(図2右上)、オニヒトデも通常より多く発生していたこと(図2左下)、2006年から連続で台風による影響を受けていること(図2右下)から、2007年から2008年にかけての急激な被度の減少は、これらの要因が重なったことによるものと推察されました。その後、白化現象は収まりつつあり、オニヒトデも通常分布で推移していることから、台風による連続被害などがなければ、サンゴ被度は回復傾向に向かうものと考えられます。

石西礁湖・中央部 サンゴ被度(サイト平均)の表 石西礁湖・中央部 白化率(サイト平均)の表

石西礁湖・中央部 オニヒトデ発生階級の表 石西礁湖・中央部 台風被害発生地点数の表

図2 石西礁湖・中央部(サイト15)24地点の平均サンゴ被度(%)、平均白化率(%)、

   オニヒトデ発生階級、台風被害発生地点数

   平均サンゴ被度グラフは増減傾向の把握のため、観察された最大・最小値をバーで表示しています。

   オニヒトデ発生階級は観察数により0:発生なし,1:通常(0-1匹),2:多い(2-4匹),3:準大発生(5-9匹),

   4:大発生(10匹以上)としています。

   台風発生地点数は当年台風による被害が認められた地点数としました。

②沖縄島周辺におけるサンゴ被度の回復

 沖縄島周辺のサンゴ礁は1998年に高水温のため起きた大規模白化により劇的に減少しており、調査を開始した2004年の平均サンゴ被度は沖縄島の東岸(サイト4、39地点)、西岸(サイト5、43地点)及び周辺離島(サイト6、6地点)とも10%という低い値でした。その後、東岸と西岸では、2011年の台風による被度減少がありましたが、30%まで回復し(図3、4)、沖縄島周辺の水納島、伊江島では、台風による影響もなく、順調に増加して50%まで回復していることが確認されました(図5)。

沖縄島東岸(サイト4) サンゴ被度(サイト平均)の表 沖縄島西岸(サイト5) サンゴ被度(サイト平均)の表

図3 沖縄島東岸(サイト4)           図4 沖縄島西岸(サイト5)

沖縄島周辺離島(サイト6) サンゴ被度(サイト平均)の表

図5 沖縄島周辺離島(サイト6)

③オニヒトデ発生状況の推移

 サンゴ礁調査ではオニヒトデの発生状況を15分間のシュノーケリングによる観察個体数で把握しています。調査を開始してから10年間の各海域の主なサイトごとのオニヒトデ観察数を、その個体数により色分けした図3の一覧表にまとめたところ、オニヒトデの大集団の分布と発生の推移がわかりました。

 石西礁湖及び西表島と周辺離島では2007年から10個体以上観察される大発生が連続してみられ、2010年からは近隣の石垣島へ拡大し、50個体以上観察されるサイトもみられるなど、大発生が継続しています。四国南西岸では2008年から50個体以上を含む大発生が続いています。一方、紀伊半島の串本周辺においても2004年から10個体以上観察される大発生がありましたが、2009年以降は収束しつつあります。

オニヒトデ発生状況の推移の表

図6 海域・サイト毎のオニヒトデ観察数の推移

連絡先
環境省自然環境局生物多様性センター
直通     :0555-72-6033
センター長  :中山 隆治
生態系監視科長:佐藤 直人
主査     :雪本 晋資

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