報道発表資料

平成26年12月25日
保健対策
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化学物質の環境リスク初期評価(第13次とりまとめ)の結果について

 環境省は、化学物質による環境汚染を通じて人の健康や生態系に好ましくない影響が発生することを未然に防止するため、中央環境審議会環境保健部会化学物質評価専門委員会において審議頂いた上で「環境リスク初期評価(第13次取りまとめ)」を取りまとめました。その結果、健康リスク初期評価で3物質が、生態リスク初期評価で4物質が「詳細な評価を行う候補」とされました。  
 「詳細な評価を行う候補」とされた物質については、関係部局等との連携と分担の下で、詳細な評価の実施を含めた対応を図ることとしています。

1.はじめに

 世界で約10万種、我が国で約5万種流通していると言われる化学物質の中には、人の健康及び生態系に対する有害性を持つものが多数存在しており、適正に取り扱われなければ、環境汚染を通じて人の健康や生態系に好ましくない影響を与えるおそれがある。

 このような悪影響の発生を未然に防止するためには、潜在的に人の健康や生態系に有害な影響を及ぼす可能性のある化学物質が、大気、水質、土壌等の環境媒体を経由して環境の保全上の支障を生じさせるおそれ(環境リスク)について、科学的な観点から定量的な検討と評価を行い、その結果に基づいて、必要に応じ、環境リスクを低減させるための対策を進めていく必要がある。

 

2.環境リスク初期評価の概要

 (1) 実施主体

 環境省環境保健部環境リスク評価室では、平成9年度から化学物質の環境リスク初期評価に着手し、独立行政法人国立環境研究所環境リスク研究センターの協力を得て、その結果をこれまで12次にわたり取りまとめ、「化学物質の環境リスク評価」(第1巻~第12巻)として公表している。

 この環境リスク初期評価の結果の取りまとめに当たっては、中央環境審議会環境保健部会化学物質評価専門委員会に審議頂いている。

(2) 位置付け

 環境リスク初期評価は、多数の化学物質の中から相対的に環境リスクが高い可能性がある物質を、科学的な知見に基づいてスクリーニング(抽出)するための最初のステップである。

 環境リスク初期評価において、「詳細な評価を行う候補」及び「関連情報の収集が必要」と評価された物質については、関係部局等との連携と分担の下で、必要に応じた対応(「詳細な評価を行う候補」とされた場合には、より詳細なリスク評価の実施、規制法に基づく排出抑制等、「関連情報の収集が必要」とされた場合には継続的な環境濃度の監視、より高感度の分析法の開発等)を図ることとしている。

図:環境リスク初期評価による取組の誘導と化学物質に係る情報の創出

         図 環境リスク初期評価による取組の誘導と化学物質に係る情報の創出

 (3) 構成

 環境リスク初期評価は、人の健康に対するリスク(健康リスク)評価と生態系に対するリスク(生態リスク)評価から成り立っており、以下の3段階を経て、リスクの判定を行っている。

①有害性評価

 人の健康及び生態系に対する有害性を特定し、用量(濃度)-反応(影響)関係の整理

②曝露評価

 人及び生態系に対する化学物質の環境経由の曝露量の見積もり

③リスクの程度の判定

 有害性評価と曝露評価の結果を考慮

 (4) 対象物質

 環境省内の関係部局や有識者から、各々の施策や調査研究において環境リスク初期評価を行うニーズのある物質(非意図的生成物質や天然にも存在する物質を含む。)を聴取するとともに、環境モニタリング調査結果において検出率が高かった物質等の中から有識者の意見等を踏まえ、優先度が高いと判断されたものを選定している。

 (5) 評価の方法

 化学物質の環境リスク初期評価ガイドラインに基づいてリスクの判定を行い、リスクの判定ができない場合には情報収集の必要性に関する総合的な判定を実施している。

(参考1)リスクの判定(例)

 健康リスク:無毒性量等を予測最大曝露量(又は予測最大曝露濃度)で除したMOE(Margin of Exposure)を求めて判定する。

MOE判定
10未満 詳細な評価を行う候補と考えられる。
10以上100未満 情報収集に努める必要があると考えられる。
100以上 現時点では作業は必要ないと考えられる。
算出不能 現時点ではリスクの判定ができない。

 生態リスク:予測環境中濃度(PEC)と予測無影響濃度(PNEC)との比較により行う。

PEC/PNEC判定
1以上 詳細な評価を行う候補と考えられる。
0.1以上1未満 情報収集に努める必要があると考えられる。
0.1未満 現時点では作業は必要ないと考えられる。
情報不十分 現時点ではリスクの判定はできない。

 (参考2)情報収集の必要性に関する総合的な判定

 リスクの判定結果を踏まえつつ、化学物質の製造量、用途、物性、化学物質排出把握管理促進法による届出排出量を用いたモデル等による環境濃度の推定結果等の情報に基づいて、専門的な観点から、更なる情報収集の必要性について総合的な判定等を実施する。

 なお、初期評価を実施する際には、その趣旨に鑑み、環境リスクが高い物質を見逃してしまうことのないよう、有害性評価においては複数の種について毒性データが利用可能な場合には感受性がより高い種のデータを利用する、曝露評価においては原則として検出最大濃度を利用する等、安全側に立脚した取扱いを行っている。

3.環境リスク初期評価(第13次とりまとめ)の結果の概要

 (1) 対象物質

 今回の第13次取りまとめにおいては、健康リスクと生態リスクの双方を対象とした環境リスク初期評価を14物質について、生態リスク初期評価を4物質について、それぞれ取りまとめた。

 (2) 結果

 ①環境リスク初期評価(健康リスクと生態リスクの双方を対象)

 対象とした14物質の環境リスク初期評価の結果を、今後の対応の観点から整理をすると、以下のとおりとなる。

 今回の第13次取りまとめにより、これまでに231物質の環境リスク初期評価が取りまとめられたことになる。

健康リスク初期評価生態リスク初期評価
A.詳細な評価を行う候補

【3物質】

エチルベンゼン、クロトンアルデヒド、スチレン

【2物質】

3,4-ジクロロアニリン、チオ尿素

B.

関連情報の収集が必要

B1

リスクはAより低いと考えられるが、引き続き、関連情報の収集が必要

【3物質】

1,2,3-トリクロロプロパン、ニトロメタン、チオ尿素

【2物質】

エチルベンゼン、クロトンアルデヒド

B2

リスクの判定はできないが、総合的に考えて、関連情報の収集が必要

【0物質】

【1物質】

スチレン

C.

現時点では更なる作業の必要性は低い

【8物質】

イソプロピルベンゼン、2-クロロプロピオン酸、3,4-ジクロロアニリン、ジメチルスルホキシド、N-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン、銅及びその化合物**m-フェニレンジアミン、4-tert-ブチルフェノール

【8物質】

イソプロピルベンゼン**、2-クロロプロピオン酸、ジメチルスルホキシド**N-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン、1,2,3-トリクロロプロパン**、ニトロメタン**m-フェニレンジアミン、4-tert-ブチルフェノール

注)銅及びその化合物については、生態リスク初期評価は実施しなかった。

*ガイドラインに従い算出されたMOEやPEC/PNEC比では「現時点では更なる作業の必要性は低い」となるが、諸データ及び専門的な見地から総合的に判断して、引き続き、関連情報の収集が必要と考えられた物質。

**MOEやPEC/PNEC比が設定できず「リスクの判定はできない」となったが、諸データ及び専門的な見地から総合的に判断して、現時点では更なる作業の必要性は低いと考えられた物質。

 ②追加的に実施した生態リスク初期評価

 対象とした4物質の生態リスク初期評価結果を、今後の対応の観点から整理すると、以下のとおりとなる。

 今回の第13次取りまとめにより、上記環境リスク初期評価の231物質に加え、これまでに94物質の生態リスク初期評価が取りまとめられたことになる。

A.詳細な評価を行う候補

【2物質】

o-アミノフェノール、メチル=ベンゾイミダゾール-2-イルカルバマート

B.

関連情報の収集が必要

B1

リスクはAより低いと考えられるが、引き続き、関連情報の収集が必要

【0物質】

B2

リスクの判定はできないが、総合的に考えて、関連情報の収集が必要

【1物質】

トリエチレンテトラミン

C.

現時点では更なる作業の必要性は低い

【1物質】

m-アミノフェノール

(3)留意事項

 今回の結果から直ちに環境リスクの抑制が必要であると判断されるわけではない。

4.今後の対応

(1) 結果の公表

  • ○ 環境リスク初期評価の結果は、「化学物質の環境リスク初期評価:第13巻」として取りまとめるとともに、インターネット上で公表する(下記アドレス参照)。
       http://www.env.go.jp/chemi/risk/index.html
  • ○ また、環境リスク初期評価により得られた科学的知見を、一般消費者が日常生活において、企業が経済活動において、より容易に活用することができるよう、物質ごとに初期評価の結果を要約したプロファイルを作成し、インターネット上で公表する。

(2) 関係部局等の取組の誘導

  • ○ 「詳細な評価を行う候補」とされた化学物質については、環境省内の関係部局、自治体等へ情報提供を行い、緊密な連携を図ることにより、必要な取組(例:詳細なリスク評価の実施、環境調査の実施、より詳細な毒性情報の収集等)の誘導を図る。
     また「関連情報の収集が必要」とされた化学物質については、個々の評価の内容を踏まえて関係部局との連携等を確保し、環境中の存在状況や有害性に係る知見等の充実を図るものとする。
  • ○ 具体的には、以下のような取組の誘導等を行っていく。
    • ・健康リスク初期評価の結果「詳細な評価を行う候補」とされた3物質については、室内空気の吸入曝露によるリスクが高い可能性があるため、本評価結果を関係機関に連絡し対応を促すこととする。
    • ・生態リスク初期評価の結果「詳細な評価を行う候補」とされた4物質については、関係部局との連携と 分担の下で、生態毒性及び発生源や環境中の存在状況等に関する知見を充実させつつ、生態リスクのより詳細な評価を優先的に進める対象物質とすることの検討を行うこととする。

(3) 再度の環境リスク初期評価の実施

 「関連情報の収集が必要」とされた物質については、関連情報を収集の上、適宜、環境リスク初期評価の対象物質とすることについて検討する。

 また、既に初期評価を行った物質についても、その後内外で毒性データや曝露データの更新や評価手法の見直し等が行われたものについては、再評価を行い、逐次、再評価結果を公表する。

(4)今後の対応

  • ○ 環境リスク初期評価ガイドラインについて、今後も必要に応じて適切に見直しを図る。
  • ○ OECD等における試験法及び評価手法に関する検討状況を適切に把握し、新たな知見等を環境リスク初期評価に速やかに反映させる。
  • ○ QSAR(定量的構造活性相関)については既に諸外国で活用が進められているところであるが、環境リスク初期評価でも、生態リスク初期評価において今後活用を進めることとする。
      現在、生態リスク初期評価においては、生態毒性に関する試験を実施して得られた実測値に基づき評価を行っているが、当面は専門家判断の根拠の一つとしてQSAR予測値を活用していく。生態リスク初期評価について専門家判断による評価事例を積み重ねた後に、QSAR予測値の扱いを再度検討する。
  • ○ 改正化学物質審査規制法の下でスクリーニング評価及びリスク評価が進められていること等を踏まえ、以下に示す物質を母集団とし、用途ごとの規制法のみによる対応ではカバーできない物質や、用途が多岐にわたる物質など、総合的な化学物質管理が必要な物質等に重点を置き、さらに環境リスク初期評価を進める。

〈 化学物質の環境リスク初期評価を行う物質の母集団 〉

  • ・環境省内の関係部署から環境リスク初期評価を行うニーズのある物質
  • ・諸外国でリスク評価・管理の対象とされている物質
  • ・モニタリングにおいて検出され、その結果の評価が必要とされる物質
  • ・非意図的生成物質
  • ・天然にも存在する物質

添付資料

連絡先
環境省総合環境政策局環境保健部環境安全課環境リスク評価室
代表   03-3581-3351
室長   針田 哲 (内線 6340)
室長補佐 工藤 喜史(内線 6341)

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