報道発表資料

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2008年08月07日
  • 再生循環

プラスチック製容器包装の再商品化に伴う環境負荷の削減効果について(お知らせ)

 容器包装リサイクル法に基づき、容器包装廃棄物、とりわけプラスチック製容器包装については、様々な手法により再商品化が実施されています。
 今般、プラスチック製容器包装の再商品化に伴う環境負荷削減効果のライフサイクルアセスメントによる分析(以下「LCA分析」という)について、前提条件の精査による再商品化手法ごとの環境負荷削減効果の比較や、容器包装リサイクルによる日本全体での環境負荷削減効果について検討を行い、その結果を取りまとめました。
 その結果、再商品化手法ごとの環境負荷削減効果の比較・優劣の判断には、環境負荷を評価する範囲の設定や、比較対象の設定などの点で、現時点においてはなお課題が多く、既存の検討結果も踏まえつつ引き続き検討を進めることが重要であることが分かりました。また、容器包装リサイクル全体での環境負荷削減効果は、リサイクルを行わず焼却・埋立処理や廃棄物発電を行う場合と比較して一定の効果を上げている(例えば、現状の再商品化量で、最終処分量削減効果は約10.4万t、二酸化炭素排出削減効果は日本の廃棄物部門からの総排出量の最大約3%分に相当)ことが明らかになりました。

1.検討の背景

 プラスチック製容器包装の再商品化については、いわゆる材料リサイクルや、油化、高炉還元剤化、コークス炉化学原料化、ガス化など様々な手法による再商品化が行われている。そのLCA分析については、近年行われた代表的な検討である(財)日本容器包装リサイクル協会の「プラスチック製容器包装再商品化手法に関する環境負荷等の検討」(平成19年6月、以下「協会報告書」という)の報告を踏まえ、平成19年6月に今後の再商品化の在り方を示した中央環境審議会プラスチック製容器包装に係る再商品化手法専門委員会及び産業構造審議会プラスチック製容器包装に係る再商品化手法検討会合同会合の取りまとめにおいて、「現状では、手法ごとに一層の改善を図る際の参考指標としては活用し得るものの、各手法間の比較を行うに当たっては、環境負荷の項目等の比較対象や比較範囲、前提条件の設定、根拠となるデータのばらつきといった観点から、なお精査が必要である。このため、このようなLCAの分析については今後も継続的に検討を行っていく必要がある。」と指摘されている。
 今般、協会報告書等の既存研究を踏まえ、「前提条件の精査による再商品化手法ごとの環境負荷削減効果の比較」、「容器包装リサイクル全体での環境負荷削減効果」について検討を行った。

2.前提条件の精査による再商品化手法ごとの環境負荷削減効果の比較

 プラスチック製容器包装のリサイクルに伴う環境負荷について、前提条件の精査を行い、再商品化手法間の比較について検討を行った。  具体的には、協会報告書を題材に精査すべき論点を整理し、再商品化の実態等を踏まえた考え方のオプションを挙げ、それぞれ環境負荷を算出して比較を行った。

(1)論点と考え方のオプション

 協会報告書では、各手法について、容器包装リサイクル法に基づく再商品化製品や、これを原料として加工・成形される容リ利用製品を用いるリサイクルシステムと、容リ利用製品により代替される製品(オリジナル製品)を製造するオリジナルシステムとの比較により、環境負荷・資源削減効果を算定している。
 協会報告書の設定に関し精査すべき論点としては、[1]オリジナルシステムについて、オリジナル製品との同等性を確保するための機能代替の設定方法や、環境負荷を評価する範囲(システム境界)の設定方法の見直し、[2]リサイクルシステムについて、削減ポテンシャルを見込んだ評価が挙げられた。
 これらの論点について、既存文献の調査結果、有識者の意見、再商品化事業者への実態調査を行い、妥当と考え得るオプションを提示し、それぞれ環境負荷の分析結果の違いを整理した。

[1] 機能代替とシステム境界の設定方法

 協会報告書では、ケミカルリサイクル手法の一つであるコークス炉化学原料化について、評価範囲をコークス、コークス炉ガス、炭化水素油の生成までとし、コークス炉ガスは重油の代替になっているとしている。一方で、他の既往研究,稲葉らの論文,:廃棄物学会論文誌 Vol.16, No.6, 2005 によると、コークス炉ガスや、コークスを高炉に投入した際に生じる高炉ガスは、最終的に発電利用され電力を代替していると考えられていることから、電力利用まで評価範囲を拡張する設定について検討を行った。この場合、リサイクルにより節約される電力の原単位によって効果が異なることから、全電源平均、火力平均の2通りの原単位を設定した。

[2]削減ポテンシャルを見込んだ評価
(a)再商品化製品(利用製品)の品質向上

 協会報告書では、現状の材料リサイクルにより得られる再商品化製品がバージン樹脂よりも品質が低いことを前提に、ある製品についてバージン樹脂由来のものと同一の品質を保つためには、より多くの再商品化製品を必要とすると設定されている(代替率が低く設定されている)。しかし、現在、再商品化製品の品質の向上を図っていることから、代替率が段階的に向上した場合について検討を行った。
 具体的には、再商品化製品であるパレットが同一品質を保ったまま軽量化されたケース、及びコンクリート型枠用パネルについて同一品質を保ったまま製品寿命が伸びたケースについて検討を行った。

(b)再商品化時の残渣処理方法の改善

 ベール品質の向上等によって再商品化時に発生する残渣割合が低減された場合、より多くの再商品化製品が製造できるとともに、残渣処理に伴う環境負荷が低減するため、リサイクルによる環境負荷削減効果が向上する。また、残渣の処理方法によっても環境負荷の低減度合いが異なることから、残渣処理の構成割合が変化した場合についても考慮が必要である。
 ここでは、再商品化事業者への実態調査を踏まえ、ワンウェイパレットおよびリターナブルパレットの環境負荷の変化を分析した。

(c)焼却・エネルギー回収する場合の発電効率の改善

 協会報告書では、市町村における廃棄物発電(発電効率10%)についてもエネルギーリカバリーの一手法として環境負荷削減効果を分析しているが、廃棄物発電の発電効率が10%から20%に向上した場合について検討を行った。

 以上の各論点における考え方のオプションを整理すると表1のとおりとなる。

(2)環境負荷削減効果の整理

 各オプションにおける各種資源節約効果と二酸化炭素排出量の削減効果は図1のとおりとなった。
 再商品化手法間の環境負荷削減効果の比較に当たっては、再商品化の実態及び今後の見込みと整合した前提条件を設定するとともに、データの精度・代表性の向上を図ることが不可欠であるが、現時点では前提とする評価範囲の設定方法、再商品化製品の品質等に課題を残している。今後も、既存の分析結果も参考にしつつ、再商品化製品の使途明確化等を通じて、更なる評価・検討を進めることが必要である。

3.プラスチック製容器包装の再商品化全体での環境負荷削減効果について

(1)評価ケースの設定

 容器包装リサイクル法に基づくプラスチック製容器包装のリサイクルに伴う日本全体での環境負荷削減効果を定量的に把握するため、ライフサイクル全体で見て、リサイクルを実施しない場合に比べてどの程度の環境負荷削減効果があるか試算を行った。
 具体的には、容器包装リサイクル法に基づきプラスチック製容器包装を分別収集してリサイクルする場合(A)を、分別せずに現状の廃棄物処理・処分(焼却および埋立)を行う場合(B)、シナリオBにおいて焼却施設が全て廃棄物発電を行う場合(C:エネルギー効率10%、D:エネルギー効率20%)と比較した。また、経年変化を捉えるため、2006年度と2003年度の比較も行った。これらを整理すると下のとおりとなる。
 試算に当たっては、既存文献等を基にプラスチック製容器包装のマテリアルフローの推計を行った上で、2.で分析した環境負荷削減効果の原単位を利用した。

想定した3つのケース
比較した2つのシナリオ
ケース1 A.容リ法に基づき分別収集・再商品化が実施されている場合(=容リ法実施の現状)
v.s.
B.容リ法ルートに回っている全量が分別されずに(現状の廃棄物発電、単純焼却、埋立等による方法で)自治体で処理・処分されると仮定した場合(=自治体処理処分(現行))
ケース2 A.容リ法に基づき分別収集・再商品化が実施されている場合(=容リ法実施)
v.s.
C.容リ法ルートに回っている全量が分別されずに自治体で焼却・埋立され、かつ、自治体の焼却施設が全て発電付き焼却(発電効率10%)に置き換わった場合(=自治体処理処分(ごみ発電10%))
ケース3 A.容リ法に基づき分別収集・再商品化が実施されている場合(=容リ法実施)
v.s.
D.容リ法ルートに回っている全量が分別されずに自治体で焼却・埋立され、かつ、自治体の焼却施設が全て発電付き焼却(発電効率20%)に置き換わった場合(=自治体処理処分(ごみ発電20%))

(2)環境負荷削減効果の整理

 各ケースの環境負荷削減効果の試算結果は表2のとおりとなった(なお、各プロセスにおける環境負荷データは図2のとおりとなった)。
 この試算結果から、2006年度におけるプラスチック製容器包装のリサイクルにより、最終処分量が約10.4万t削減され、また、二酸化炭素の排出量を見ても、現状の廃棄物処理との比較で41~99万t-CO2、廃棄物発電との比較でも発電効率10%の場合との比較で34~91万t-CO2、20%の場合で18~75万t-CO2の削減効果(現状の再商品化量で、日本の廃棄物部門からの二酸化炭素総排出量の最大約3%分に相当)があること、また、年々分別収集量が増加していることに伴い、2003年度に比べて2006年度の容器包装リサイクルによる環境負荷削減効果が増大していることが明らかになった。

※ 個々の再商品化手法に複数のオプションが設定されているため、試算結果は幅を持った値となる。

4.今後

 更なる評価・検討が必要とされていることから、今後ともプラスチック製容器包装のリサイクルに伴う環境負荷について調査を継続して行う。

(参考)検討体制

○森口 祐一
独立行政法人国立環境研究所 循環型社会・廃棄物研究センター長
 稲葉 陸太
独立行政法人国立環境研究所 循環型社会・廃棄物研究センター 
 尾上 俊雄
独立行政法人産業技術総合研究所
ライフサイクルアセスメント研究センター
 中谷 隼
東京大学 工学系研究科 化学システム工学専攻 助教
 藤井 実
独立行政法人国立環境研究所 循環型社会・廃棄物研究センター 

○:座長

添付資料

連絡先
環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部企画課リサイクル推進室
直通:03-5501-3153
 代表:03-3581-3351
室長:上田 康治(内線:6831)
室長補佐:平尾 禎秀(内線:6823)
室長補佐:酒井 輝久(内線:6822)
担当:九反田悠妃(内線:6823)

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