報道発表資料

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2015年01月16日
  • 総合政策

宇久島風力発電事業に係る環境影響評価準備書に対する環境大臣意見の提出について(お知らせ)

 環境省は、16日、長崎県で実施予定の「宇久島風力発電事業」(グリーンパワー株式会社、風力開発株式会社)に係る環境影響評価準備書に対する環境大臣意見を経済産業大臣に提出した。
 本事業は、長崎県佐世保市宇久町(宇久島、寺島)において、総出力100,000kWの風力発電設備を設置するものである。
 環境大臣意見では、近隣住民の生活環境、動植物及び主要な眺望点からの景観に対する影響が強く懸念される風力発電設備及び取付道路について、配置の変更又は設置の取りやめを求めるとともに、その上で騒音等の影響を回避・低減するため低騒音型の風力発電設備の採用や稼働時間の調整等の適切な環境保全措置を講ずることを求めている。

1.背景

 環境影響評価法及び電気事業法は、出力10,000kW以上の風力発電所の設置又は変更の工事を対象事業としており、環境大臣は、事業者から提出された環境影響評価準備書(※)について、経済産業大臣からの照会に対して経済産業大臣に意見を言うことができるとされている。
 本件は、グリーンパワー株式会社、風力開発株式会社の「宇久島風力発電事業」に係る環境影響評価準備書について、この手続に沿って意見を提出するものである。
 今後、事業者は、環境大臣及び関係自治体の長の意見を受けた経済産業大臣勧告を踏まえ、法に基づく環境影響評価書の作成等の手続が求められる。

※環境影響評価準備書:環境影響評価の結果について環境の保全の見地からの意見を聴くための準備として、調査、予測及び評価、環境保全対策の検討を実施した結果等を示し、環境の保全に関する事業者自らの考え方を取りまとめた文書。

2.事業の概要

 本事業は、長崎県佐世保市宇久町(宇久島、寺島)に、総出力100,000kW(2,000kW×50基)の風力発電設備を新設するものである。
 本事業の対象事業実施区域には、ミサゴやハヤブサの繁殖地やハチクマ等の渡りのルート、希少な草原性チョウ類の生息環境、ヒゴタイやノヒメユリ等の希少な草本類の生育環境が存在する。また、対象事業実施区域の周辺は、西海国立公園に指定されている。

3.環境大臣意見の概要

(1)総論

 下記①、②、③の風力発電設備及び取付道路については配置の変更又は設置の取りやめにより、④の風力発電設備については設置の取りやめにより、影響を回避又は極力低減すること。

①騒音

  • ・静穏な環境を要する夜間において近隣住居への影響が懸念されるもの

②風車の影

  • ・風車の影による近隣住居への影響が懸念されるもの

③動植物

  • ・「佐世保市レッドリスト2013年改訂版(佐世保市、平成25年)における「保全することが望ましい地域」として抽出された崖地や草地に設置するもの

④景観

  • ・西海国立公園内の主要な眺望点から見た本国立公園方向の垂直見込角が5度を超えるもの
  • ・「城ヶ岳展望所」からの俯瞰景において、俯角が-8~-10度を越える位置よりも手前で視点に近い領域となるもの

(2)各論

「(1)総論」に記載の措置を講じた上で、以下の措置を講ずること。

[1] 騒音について

 低騒音型の風力発電設備の採用等の環境保全措置を講ずること。また、事後調査の結果に応じ、稼働時間の調整等の追加的な環境保全措置を講ずること。

[2] 風車の影について

 事後調査の結果に応じ、稼働時間の調整等の追加的な環境保全措置を講ずること。

[3] 動物への影響について

 これまでに実施した調査結果及び専門家等の助言を踏まえ、工事期間中の環境モニタリング及び供用後の事後調査を実施すること。また、事後調査等において、重大な影響が認められた場合には、専門家等の助言も踏まえ、風力発電設備の稼働停止等の追加的な環境保全措置を講じ、その内容等を公表すること。
 なお、事後調査により鳥類の誘引等が判明した場合には、専門家等の助言を踏まえて、適切な環境保全措置を講ずること。併せて、死亡・傷病個体の確認を高い頻度で適切に実施し、原因の分析及び傷病個体の救命を行うため、関係機関と連絡・調整、個体の搬送、原因分析への協力を行うこと。

[4] 植物への影響について

 工事着手前にセンダイスゲ等の生息状況を再確認し、可能な限り影響の回避に努めること。また、やむを得ず代償措置として、これらの種の移植を実施する際には、専門家等の助言を踏まえ慎重に実施するとともに、その結果及び経過等を公表すること。

[5] 景観への影響について

 西海国立公園内の主要な眺望点から見た本国立公園方向の垂直見込角が1~5度となる風力発電設備について、できる限り垂直見込角を小さくするための配置の変更や機種の選定、又は、基数削減を行うこと。
 また、「大浜海水浴場」、「城ヶ岳展望所」等からの長崎鼻から堂ケ鼻への眺望に介在する風力発電設備については、配置の変更又は基数削減を行うこと。
 この他、風力発電設備の色彩については、関係地方公共団体の意見も聴取の上で各風力発電設備近傍の自然景観等を勘案して、選定すること。

[6] 事後調査

 事後調査を適切に実施し、その結果を踏まえ、追加的な環境保全措置を講ずること。
 なお、事後調査結果については、環境影響を分析し、講ずる環境保全措置の内容、効果及び不確実性の程度について報告書として取りまとめ、公表すること。

[7] その他

 世界遺産暫定リストの「長崎の教会群とキリスト教関連資産」の構成資産である旧野首教会堂を景観に係る調査地点として選定の上、これらの地点からの景観について調査、予測及び評価を行い、結果に応じて適切な環境保全措置を講ずること。また、これらの検討に当たっては、地元自治体と十分調整を行うこと。

4.その他

 本件は、「発電所設置の際の環境アセスメントの迅速化等に関する連絡会議中間報告」(平成24年11月27日、環境省・経済産業省)に基づき、審査期間の短縮に取り組むこととした案件である。

[参考]

○事業概要

  • 名称 宇久島風力発電事業
  • 事業者 グリーンパワー株式会社、風力開発株式会社
  • 計画位置 長崎県佐世保市宇久町(宇久島、寺島)
  • 出力 100,000 kW(2,000kW×50基)

○環境影響評価手続(環境影響評価法及び電気事業法に基づく手続)

【方法書の手続】

  • ・縦覧 平成25年3月29日~平成25年4月30日(住民意見 70件
  • ・経済産業大臣勧告 平成25年9月25日

【準備書の手続】

  • ・縦覧 平成26年8月1日~平成26年9月1日(住民意見 72件
  • ・長崎県知事意見提出 平成27年1月15日
  • ・環境大臣意見提出 平成27年1月16日

※:環境の保全の見地からの意見の件数

添付資料

連絡先
環境省総合環境政策局環境影響評価課環境影響審査室
室長  :神谷 洋一(内6231)
室長補佐:相澤 寛史(内6233)
審査官 :田中 友之(内6236)
電話  :03-3581-3351(代表)、03-5521-8237(直通)

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