総合環境政策

地方公共団体実行計画(区域施策編)策定マニュアルに関する検討会(第1回) 議事要旨

日時

平成28年8月23日(火) 9時00分~11時00分

場所

TKP東京駅日本橋カンファレンスセンター ホール2A
東京都中央区八重洲1-2-16 TGビル別館 2階

参加者

(委員)
佐土原委員(座長)、小林委員(副座長)、榎原委員、風見委員、川中子委員、久保田委員、澤木委員、瀬田委員、松行委員、
桜井様(山本委員代理:ニセコ町 企画環境課 環境モデル都市推進係 係長)
(環境省)
総合環境政策局 奥主局長、総合環境政策局環境計画課 新原課長補佐
(事務局)
中外テクノス株式会社 岩崎
エム・アール・アイリサーチアソシエイツ株式会社 池田

議事要旨

(1)地球温暖化対策を巡る国内外の動向について

 資料2に基づき事務局より説明を行った後、以下の質疑応答を行った。

  • (小林委員)地球温暖化対策計画の目標設定においては、地方公共団体の取組で追加的に削減される量は見込まれているか。見込まれていない場合は、地方が頑張れば地球温暖化対策計画の目標が早くあるいは一層大幅に達成することにはなるが、国の計画が地方の足を引っ張るというようなことは懸念されないか。また、電力の排出係数はどのように考えたらよいか。
  • (環境省)地球温暖化対策計画においては、区域施策編が、政策として定性的には位置付けられているが、26.0%削減目標の内訳には入っていない。区域施策編は地球温暖化対策計画に即して策定するものとされているが、目標値に関して26.0%に止める必要はなく、より野心的な目標設定をすることも可能である。その意味でも国の計画が地方の足を引っ張ることはないと考えている。また、電力の排出係数は、2030年度における目標として0.37kg-CO2/kWhがある。これは地球温暖化対策計画の策定に先立つ、日本の約束草案の議論に際して検討・設定された数値である。

(2)地方公共団体実行計画(区域施策編)策定マニュアルに関する主な論点について

①「地方公共団体実行計画(区域施策編)策定マニュアルの在り方」及び「地方公共団体に期待される役割等」について

 資料3に基づき事務局より説明を行った後、以下の議論を行った。

  • (澤木委員)マニュアル策定の基本的な方向性として、各地域の事情・意向を反映させる余地を残すために原則的・基本的な考え方を示すという方向性は良いと思う。都市の大きさによってその自治体が担うべき役割は異なると考えられるので、その役割をどのように記載すべきかについて今後議論したい。
  • (久保田委員)北海道においてはそのほとんどが10万人以下の小規模自治体である。小規模自治体に対しては温暖化対策の動機付けが弱いように思う。温暖化対策が地域の利益につながることを示すことが必要と考える。経済的に強い基盤を作る・維持することにつながることを示すべきであり、そのようにしないと政策の優先度は上がらない。
  • (榎原委員)総量目標の意味付けについて考える必要がある。電力の排出係数の影響など、自治体ではどうしようもない要因で温室効果ガス排出量が増減することがある。宮崎県においては排出量が大きく削減されているが、ある企業がN2Oの排出量を減らしたことが要因であり、自治体の政策対象以外の取組で影響を受けることもある。この傾向は基礎自治体の方が大きい。自治体が対策をとりやすい民生部門を中心としてその取組をほめてあげるような手法(目標設定)を考える必要がある。
  • (風見委員)つくば市には、研究機関などが多く、それぞれが対策に取り組んでいるが、内部的なものに留まっている。行政がコーディネートして各主体や住民を巻き込むことが重要と考える。
  • (松行委員)温暖化対策が地域の利益につながることを示すのは重要である。以前区域施策編に係るアンケートをとったことがあるが、ほとんどの計画は民生部門の取組(普及啓発)であり、住民への働きかけが中心になると考えられる。地域全体の利益だけでなく、個々の住民にとって利益になることを示すべきである。
  • (小林委員)地球温暖化対策を「自分ごと化」することやコベネフィットが重要である。自治体が縦割りで、環境部局は環境に係る施策しか扱っていない。経済や健康の話もできれば効果的であるが、環境部局がカバーする範囲が狭く、地域のメリットを説明できていない。マニュアルにおいて大事なのは、あえて環境以外の施策も広く書くことである。また、行政の責任でできるところとそうでないところ(特に大企業からの排出)を分ける議論があったが、自治体による企業誘致や税制優遇などが結果的に排出増を招くと見ることもできるので、自治体の責任が全くないわけではない。公害防止協定や計画書制度により対策を行う自治体もある。環境部局の縦割りを超えたアイディアをマニュアルで示すべきである。
  • (佐土原座長)マニュアルを策定する背景にある社会情勢が変わってきている中で、広い視野での横断的な施策の検討・実施が以前よりも重要、あるいはできる状況になってきているため、それらを踏まえて取組の在り方について考える必要がある。
  • (瀬田委員)区域施策編を含めた地方の努力に対して国は何をするのかを検討する必要があるのではないか。それとも既に支援策は検討済みであるか。
  • (環境省)こうした区域施策編のマニュアル策定・提供についても国からの技術的な助言という一つの支援策である。また、地球温暖化対策に関する情報提供も行っていく。さらに、エネルギー特別会計の活用等により、地方公共団体における再エネの導入、省エネの推進等に対する補助金の交付なども行っている。
  • (藤野委員:電子メールによる御意見)若手職員向けは必須かと思うが、より意欲的な取組を行いたい自治体を支援する仕組みはどこで考えたらよいか。都道府県は長野県が行っている取組等を参考にしながら、民生部門の省エネ、地域資源を生かした再エネ活用、温暖化の影響・緩和の普及啓発などを、基礎自治体と連携しながら進める仕組みについて支援するマニュアル作りを検討するのはどうか。基礎自治体には、より具体的な取組を収集しつつ、省エネ・再エネの推進の現場を担うことを期待できたらと思う。
  • (谷口委員:電子メールによる御意見)想定する主な読者は、"地球温暖化対策を所管する部署に初めて配属された職員"もしくは、"地球温暖化対策を専管する部署を有しない地方公共団体の職員"としたい。
②「地方公共団体実行計画の目標」について

 資料3に基づき事務局より説明を行った後、以下の議論を行った。

  • (川中子委員)目標年度についてであるが、栃木県においては総合計画の改定に合わせて区域施策編を改定することとなっている。これは、温暖化対策を一人歩きさせず、県の全体施策に合わせて検討する狙いであり、温暖化施策を総合計画にも織り込むことができるという点で一定の効果があると考えている。一方で目標値の設定であるが、地方公共団体には施策効果をボトムアップするデータが少ない。国レベルではデータが整備されていても地方公共団体レベルではデータが無いものもある。栃木県では、国と一緒に頑張っていくという考えの下で、国と同レベルの目標を設定することとした。
  • (澤木委員)市民等から、真に取組の効果が上がっているのか分かりにくいとの指摘がある。区域施策編は(総量)目標値に対して、市民や事業者の取組の効果がわかりにくいところが課題である。横浜市では、区域全体の削減量目標だけでなく、家庭の電力使用量の目安も示した。家庭での取組の促進のために指標を示すことで市民に分かりやすくした。全体の目標は都市として必要と考えるが、分かりやすく行動しやすい、色々な「尺度」での目標や指標があるとよい。
  • (瀬田委員)地球温暖化対策計画に示された26.0%減という目標は、最後は国がバックキャストで管理するべき。独自の目標や目安を出すのが難しい自治体は、削減すること自体に力を向けた方がよいのではないか。
  • (小林委員)施策を打てる範囲、温室効果ガス排出量に影響を与えられる範囲が自治体によって異なるため、まずはそれぞれの施策について管理することが重要と考える。総排出量は「結果として出てくる」もの。まずは、自分でコントロールできる範囲、責任の持てる範囲で考えることが第1歩だと思う。例えば、電力の排出量のうち、自地域に供給されている電力量分を管理するというようなSCOPE2、また、製品を多く輸出をしているような自治体においてはSCOPE3が入るのも、自治体が影響を及ぼす範囲であれば面白いと思う。自治体の排出量を足し上げて国の総排出量を算定するわけではないので、自治体が「元気が出る」目標の設定が重要と考える。また、今般の国の目標は、森林吸収量がグロスネット方式で算定されていると思われる。ネットネット方式でなければ適切でないはず。吸収量の取扱いについては技術的課題ワーキンググループで検討する必要があると思う。
  • (環境省)排出量の算定方法の在り方、森林吸収量の計算の在り方については、技術的課題ワーキンググループを中心にして議論させていただく。
  • (藤野委員:電子メールによるご意見)現状値および目標に関して、委員会の議論の半分程度を占めることもある一方、次のPDCAにも関わるが、設定した目標の検証が難しい。そちらに時間を使うよりも具体的な取組を検討する時間を増やすために、国や第三者機関が目標づくりのための基礎情報を提供する仕組みを作ることを考えるのはどうか。国際標準となりつつあるGPC(Global Protocol for Communities)との互換性を勘案した現状値および目標値の設定に関するガイドラインも必要ではないか。
  • (谷口委員:電子メールによる御意見)温室効果ガス排出削減目標の設定の方法については、現状で実施可能な対策・施策を積み上げていくフォアキャスティングの方法もあれば、実施可能性を積極的に評価する野心的な目標設定、また、目指したい水準からバックキャスティングで設定する方法もある。目標設定の根拠を分かりやすくし、また、誤解を招かないため、そうした手法を明示するもしくは併用することも有効ではないか。区域外の削減効果を評価するような独自の設定で行う場合、条件を説明することで許容するか、他の算定手法と異なることで、大幅な数値の差が表れる場合は、参考扱いにするか検討が必要。
③「温室効果ガスの排出の抑制等のための施策」及び「地方公共団体実行計画のPDCA」について

 資料3に基づき事務局より説明を行った後、以下の議論を行った。

  • (松行委員)PDCAは目標設定にも大きく関わる。目標は26%と言っても、施策の積み上げもシミュレーションの設定を少し変えると結果が大きく変わる。施策の事後評価もやり方によってかなり幅が出る。細かい数字(桁)に至るまで決定する必要はないのではないか。施策の評価の仕方も全体目標に合わせて引っ張られてしまう。定量的な評価ができない施策も定性的に評価すべき。
  • (榎原委員)都道府県・指定都市とその他の市町村は、別のフェーズで考えるべき。特に基礎自治体については、細かく計算しても数値自身にあまり意味がない。地域として特徴ある取組に注力することが重要である。一方で、数値の精緻さとは別に、目標があること自体は重要。市長や担当が変わっても、計画の中に目標があることで継続的な取組が行えるので重要。特有の対策・施策については、例えば、長野県では、どのような再エネ事業を促進するかを自治体としてスクリーニングし支援している。また、みやま市では自治体がPPSを立ち上げ、電力事業と併せて高齢者福祉の視点で、高齢者見回りサービス(電力供給を通じて様々な情報が分かるため)を行う新しい価値を生み出している例もある。また、緩和は適応と合わせると地域の理解を得られやすい。再エネを防災拠点に入れるなど、防災のためという説明であれば分かりやすい。「どのような施策でどのくらい削減効果がある」と国が示すのもよい。
  • (久保田委員)全体(総量)目標については「スローガン」的な位置づけとしても必要と考える。その上で重要なのは地方公共団体の努力が見える進捗評価・管理であり、マニュアルではプロジェクト目標を強く推奨すべきと思う。環境教育や普及啓発といった基盤的施策は非常に重要である。効果測定は困難ではあるが、だからといって目標が不要なわけではなく、困難であるからこそ戦略を持って取組むことが必要であり、その必要性をマニュアルに示すべき。PDCA体制については、協議会や審議会などの会議をもって体制を構築する場合が多いが、区域内の人だけで構成することに拘るために、施策を評価できる人材が不足している区域では、きちんと議論できる体制となっていないこともある。これを課題として認識した上で実効的な進行管理の体制構築の必要性をマニュアルに書いてはどうか。県市連携の一つとして、都道府県や温暖化センターが体制構築に協力するのも一案である。また、温暖化対策に対する関心を喚起するところから行動を喚起するまでの各段階の戦略・作戦を考える必要がある。現状では自治体の区域施策編のパブコメの結果、意見はゼロという関心の小ささを示す結果も見られる。施策については、役所内部だけで作っている場合が多いが、住民の関心が集まらない。特に基礎自治体は住民参加(住民とのコミュニケーション)を意識して策定することを原則とするべき。一方で、役所のリーダーシップが重要であり、率先的取組として事務事業編の成果をもっと住民に伝えるべきだと考える。
  • (藤野委員:電子メールによるご意見)自治体の現場の問題に即して、温室効果ガス排出量削減だけでなく省エネや再エネを進めることで現地で回るお金を増やすことを支援するなどの、いくつものベネフィットがある取組を支援していく具体的な取組について分析し、いくつかの自治体で実施する支援が必要ではないか。それをマニュアルの材料にしていき、実施の支援の流れを作っていけたらと思う。PDCAについても、目標値設定に関係するが、経済動向やエネルギー供給の変化などの外部要因により温室効果ガス排出量が大きく変わる場合があるため、そのような分析を行うことを支援する仕組み(ツール)についても調査し、マニュアルの中に組み込むことはできないか。マニュアルの有効性に関するPDCAについても随時行い、改定していくことが必要ではないか。
④ その他の地方公共団体実行計画(区域施策編)に関する御意見について

 以下の議論を行った。

  • (小林委員)③のテーマについてであるが、区域施策編がカバーすべき施策として様々な関連計画との連携は重要である。様々な計画の連携により施策の効果が現れる。条例を根拠とした計画や施策は強い。このため、条例についてもマニュアルで触れるべきと考える。東京都のように、地方が条例でCO2を規制対象にすることも違法ではないため、「このような条例もできる」という事例をマニュアルに書くと良いと思う。榎原委員の長野県の例においても、特に肝心なのは条例を根拠にしていることである。また、PDCAについては、特に民生部門については、モニターを設置することも考えられる。100とか1,000とかのモニターでも精度をもった推定ができるため、モニターの設置についてマニュアルに示すと良い。また、国は省エネ法等のデータがある。国で交渉して電力やガスの販売量などの情報をディスクローズしてほしい。
  • (川中子委員)策定マニュアルは、区域施策編の策定が義務付けられた自治体に対するものか、義務付けのない小規模な自治体にも計画の策定を促すものかによって議論の方向性が変わってくると思う。策定が義務付けられていない自治体の方々に計画を作りやすくなるようなマニュアルを策定していく方向性かと感じた。
  • (環境省)基本的には計画策定が義務付けられている自治体を主とするが、実際は義務がかかっていない自治体についても入りやすいマニュアルとしたい。自治体規模ごとに記載を工夫する予定であり、今後の議論においてもその点を意識したいと考えている。
  • (桜井様)策定マニュアルは、日本全体の温暖化対策につなげるためにも義務のある自治体を中心としつつも、義務のない自治体も対象としたものとしていただきたい。ニセコは、観光のまちであり、自然を生かした産業が重要。過去には具体的なアクションプランが欠けていたが、環境モデル都市に選ばれたことを機にアクションプランができた。また、ホテルなど事業者へ対して温暖化対策に関する働きかけを行う場合にも、その本社は地方自治体内になく、地元にいる支配人にかけあっても反応が思わしくないこともある。国から本社への働きかけもお願いしたい。事業者の取組においては、投資回収が重要。設備導入をする際、投資回収が3年程度でなければ導入が進まない。補助金を増やせばよいということだけではないと思うが、その点も議論いただきたい。
  • (佐土原座長)自治体の大きさ、役割、特性によって取り組む内容が違う、目標の立て方、評価の仕方が違うため特性をしっかり計画に反映をすべきということについて多くの意見をいただいた。また、自治体の特性を生かして、元気が出る、活力の出るような計画策定につながるマニュアルにすべきという意見もあった。その他にも多くの貴重なご意見を頂いた。事務局は、本日の意見について要点をしっかりまとめて、欠席の委員にもよく理解していただけるよう情報共有すること。