総合環境政策

環境報告の促進方針に関する検討会第6回議事概要

日時

平成15年2月6日(木)10:00~12:00

会場

経済産業省別館8階827号会議室

出席委員

稲岡、大竹、大塚、河野、上妻、児嶋、菅野、瀬尾、辰巳、平井、山本、渡邉(敬称略、50音順)

議事内容

はじめに~第1章 討議

(河野座長)事務局より説明があった部分についてご意見、ご質問等があればどうぞ。

(児嶋委員)5ページに環境報告と環境報告書について定義してあるが、二つのパラグラフにまたがって2回出てきているので、まとめてはどうか。

(大竹委員)7ページの「2.環境報告の普及のあり方」の一番最後の段落に「・・・事業者にとって大きなインセンティブ・・・」とあり、また、16ページの3段落目において「一定のインセンティブを付与する」とあるが、この二つのインセンティブの付与の意味は違うと思う。誤解を招くので、言葉の使い分けが必要だと思う。

(河野座長)前者については「大きな推進力」等の表現に修正するのが適当ではないか。

(平井委員)1ページにある

(2)の2行目に、「・・・環境に関する取組については・・・」とあるが、社会貢献的な取組から、エコビジネス的取組に移行する前に、社会的責任の遂行という概念があるのではないか。社会的責任の遂行というのは必ずしも社会貢献と同義ではなく、社会貢献の一つから社会的責任の遂行へ、そして更にエコビジネス的な取組になるのだと思う。

(河野座長)今のご意見はそのとおりだと思う。社会的責任があるからこそ企業は取り組んでいるのであり、単に社会貢献の一つだけではないと考えられる。

(大塚委員)社会的責任はもう終わって次の段階にいくというのは、この報告書全体の関係でやや問題があると思う。社会的責任はやはり社会的責任として引き続き取り組んでもらうことは非常に重要なことなので、社会的責任はもう終わってしまって次の段階に進むというような表現にしない方がいいと思う。

(河野座長)今の大塚委員のご意見は、平井委員がいわれた、社会貢献があり、社会的責任があって、更に進んで環境経営という方向に動いていると理解すると、次の段落に記載がある社会的責任としての説明責任と上手く繋がらないということか。

(大塚委員)社会的責任としての説明責任は依然として残るので、誤解を招かないようにしてもらえると有り難い。

(河野座長)社会的責任として環境への取組があると整理したい。

(大塚委員)まさにそのためにここで取扱っているということであると思う。

(山本委員)そのような意味であれば、「社会貢献の一つ」の前に書いたほうがいいのではないか。

(河野座長)貢献というのがなくても社会的責任と記載するほうが、すっきりしてよいということでよいか。

(辰巳委員)
3ページの「2.検討の内容」の上から3段落目において「・・・特に上場企業及び相対的に環境負荷の大きい事業者を念頭に検討を行った。」とあるが、このよう具体的な話し合いがこの場であっただろうか。私としては企業全体のことをイメージしていたので、これは分けすぎているような気がする。

(事務局) 環境報告書はできれば全ての事業者が作成・公表してもらいたいと考えており、当面は大多数と表現している。この検討会にご参画いただいている委員の企業の環境報告書はかなりレベルが高く、「現実的にどのような規模の企業を対象として考えているのか」とのご質問があったので、この文章を付加した。誤解がないように、表現を工夫したい。

(河野座長)「環境報告書ガイドライン」は大企業向けとしているので、これはその延長線上の議論であり、今、事務局より返答があったように書き直して貰いたい。
特にご意見がないようなので、次に行きたいと思う。

第2章~第5章 討議

(河野座長)事務局より説明があった部分についてご意見、ご質問等があればどうぞ。

(渡邉委員)11ページの(1)と(2)の一番の大きな違いは、「審査」に関しては独立性が要件であることだと思う。「評価・勧告」に関しては、独立している場合もあれば、独立していない場合もある。従って、(1)において「第三者が、利害関係者に・・・」とあるが、例えば「独立した第三者の立場から・・・」とした方が意味が明確になるのではないか。
 13ページの(2)課題に関する記述において、後半の部分においては、作成者を事業者、読者を利用者、審査する人を環境報告審査人と呼んでいるが、前半の部分では、事業者を受審者、利用者を利害関係者、環境報告審査人を実施者と使っている。文章を読み進めれば文脈で読み取れるが、全体を通して事業者、利用者、環境報告審査人というような言葉で統一したほうが、読み手に誤解が生じないのではないか。
 17ページに作成開示基準に関して、作成開示基準が作成者にとっては作成の基準になり、利用者にとってはその内容を読み取る基準になり、審査人にとっては判断の基準になるという、この3点をはっきりと記載したほうがよい。
審査基準に関しては、環境報告書の利用者にとって審査でどのようなことを実施しているのかについて理解するのに役立つという面と、審査の限界や手続きの限界を明示するものであるという2面を少なくとも記載したほうが、それぞれの意味が明確になってよいと思う。具体的には、審査の限界を示すことが重要であり、審査基準には「手続きとしてこれだけのことをした結果、このような結論を得られた」ということを理解するための基準としての意味があると思う。
また、28ページの脚注6は、審査する側が証拠を提出するような意味合いに取られてしまう気がするので、「審査を実施するにあたり、事業者から必要な根拠資料が障害なく提供されるとともに・・・」というように表現したほうが、文の意味が明確になると思う。
 22ページの(1)ウにおいて、GRIや国際会計士連盟で検討しているのは環境報告書だけではないので、「環境報告書等の・・・」というように「等」をいれたほうがいいのではないか。

(河野座長)渡邉委員から、独立性という用語を第三者の前にいれるということ、同義と思われるが、事業者、利用者、実施者等と違う言葉で表現されているので、文章上統一できないところもあるかもしれないが、出来るだけ統一すること、作成基準と審査基準について、事業者からの見方、利用者からの見方があることを書き分けること、脚注6の証拠という部分を根拠資料という言葉にすること等、幾つかのご指摘があったが、このことについて何かあればどうぞ。

(事務局) 評価・勧告タイプはそもそも独立性が必要ないということなのか、或いは別添2にあるように独立性があったほうが望ましいのか、ここについてのご意見をお聞きしたい。

(渡邉委員)審査であっても、評価・勧告であっても、主観的な判断であることには違いないが、評価・勧告の場合には、良い、悪いというような価値判断的な内容が含まれると思う。審査タイプの場合にはどの利害関係者からも独立していることが要件となるが、評価・勧告タイプの場合は、必ずしも特定の利害関係者から独立している必要はないと思う。それは、消費者の立場や地域住民の立場からみてどうであったか、こういうこともやるべきではないか、というような価値判断もあると思うからである。独立性は要件ではないが、あっても差し支えがないというようなものであり、むしろ独立していないどこかの利害関係者集団に属している方が意味がある場合もある。

(辰巳委員)例えば流通であれば、お客様の立場のというものがあり、その立場が全ての利害関係者から独立しているかというと確かに難しいと思う。

(山本委員)評価・勧告タイプは自由な部分を残しておかないと、例えば、有名人がコメントをするようなこともできなくなってしまい、あまりにも審査タイプのものに近づいてしまうと思う。

(河野座長)審査タイプのものを、独立した第三者という表現にして、評価・勧告タイプのものには特に触れないというのも一つの案だと思うが。

(大塚委員)独立性というのは、まさにその人が自由に意見を表明することが独立しているということなので、消費者の立場からというのも、消費者一般の主張に一定の傾向が多少あったとしても、その人が自分の価値に基づき、特定の人の意見に制約、或いは拘束されないで自分の意見を表明することをここでは意味している。独立性がないとここでは何のために評価・勧告しているかわからないと思うので、評価・勧告タイプにも「望ましい」程度の表現でよいので、残しておいたほうがいいと思う。

(河野座長)評価・勧告タイプのものにも「独立性」を残していたほうがよく、自由な立場から意見を表明できれば独立しているというご意見と、特定の集団に属していれば独立していないという理解もありうるというご意見があった。

(児嶋委員)どちらも筋が通っていると思うが。

(河野座長)評価・勧告タイプのものに独立という言葉が入ると、特定の集団の立場からは、そもそも独立していないという理解もありえるが。

(児嶋委員)評価・勧告タイプは報告書をみて利用者が意見を表明した人の立場が判断できるような形で書けばいいのではないか。必ずしも独立性を入れなくてもいいような気がする。

(河野座長)個人的には山本委員の言われたように、「独立」という用語をいれると、それによって消費者などが意見を表明しにくくなり、評価・勧告タイプの第三者レビューをしなくなる可能性があるように感じる。

(大塚委員)NGOの立場で意見を表明するといっても、NGOの人が誰でも同じ評価をするわけではなく、その人の責任で評価をする。独立というのはそのような意味である。

(辰巳委員)29ページの2にある文章の説明はそのままでよいと思う。ただ、タイトルが独立性となっており、25ページでも同じ用語が使われているので、むしろ29ページのタイトルそのものを違う言葉に変えてはどうか。

(山本委員)29ページの2の文章をみると「望ましい」とあり、これが誤解を招くような気がする。「自由に意見を表明すべきである」というように明確に書いたほうがいいのではないか。

(渡邉委員)山本委員がいわれたように、利害関係者というと消費者の代表等も含まれるが、それが事業者を代理して広告等に近いものになってしまうことは当然あってはならないことだと思う。そういった場合は除くとしても、もともと利害関係者には消費者や地域住民など色々な属性があり、そのうちある組織に属していてもよいという意味合いでは独立性がなくてもいいと思う。

(事務局) ご指摘のとおりだが、独立性という一つの単語で表現することが難しいので、その点については考えさせていただきたい。
評価・勧告タイプは、自由な発展を期待するという観点からいうと、自分の立場を明らかにした上で、色々な立場の人に色々な意見を言ってもらうのが望ましいと思う。
また、55ページにイトーヨーカ堂の第三者レビューの例として社内の方の意見がある。立場的には社内環境・社会活動監査人というのは独立しているのだと思うが、事業者からの独立という観点では独立しておらず、これを第三者レビューの例示として記載しておいてよいものか、ご意見をお聞きしたいが。

(河野座長)イトーヨーカ堂の例は第三者による評価・勧告タイプの事例として本検討会の報告書に記載することが妥当かどうかというご質問か。

(事務局) 54ページの社外環境・社会活動監査人の意見は第三者のものだと思うが、社内環境・社会活動監査人の意見は、先程の渡邉委員の事業者から独立するということは最低限必要であるということを厳格にあてはめると、検討会報告書に取り上げる例としては不適切ではないかと考える。

(山本委員)これは第三者評価ではなく第一者評価なので、第三者による評価・勧告タイプの事例としては、確かに誤解を招くかもしれない。

(平井委員)監査所見といっているが、監査所見全体を第三者といっているわけではない。社外環境・社会活動監査人は第三者であるとする一方、社内環境・社会活動監査人は社内と明確に区分しているのだから、全体に問題ありというのはおかしいと思う。

(上妻委員)ワーキンググループの中では評価・勧告タイプのものガイドラインについては十分に検討しなかった部分もある。基本的な趣旨としては、今後の自由な発展に委ねるということで、基本的に規制をしないという立場である。その際には、形としては第三者レビューであるが、審査タイプのものとは違うことが明示されることが重要であるという意味で、ガイドライン案が必要だということであった。
ガイドライン案が、審査タイプのものをかなり流用して作られているので、誤解を生じるところがある。例えば29ページにあるレビュー実施者の専門的能力や実務経験がなければならないとするのであれば、有名人がコメントを述べることはとてもできないと思う。
このようなことは将来の発展を阻害してしまうと思うので、もう少し緩やかなものにしたほうがいいと思う。どのような人がどのような立場で実施したかが明示されていることが必要最低限のことであり、その先は第一者の立場であれ、第三者の立場であれ、今後どのようになっていくかわからないので、発展の余地を残しておいたほうがよいような気がする。

(河野座長)評価・勧告タイプの発展を妨げないことと、独立性の捉え方、及び29ページの(1)、(2)に関わる議論も含めて、事務局で検討の上、取りまとめてもらいたい。

(山本委員)評価・勧告タイプの事例の中に、イトーヨーカ堂の社内環境・社会活動監査人の事例を載せておくのは少々誤解を招くと思うので、この取組自体は評価できるものであるが、検討会報告書からは除いたほうがいいと思う。

(河野座長)それでは55ページのほうは除くということにしたい。

(辰巳委員)評価・勧告タイプのものは、基本的には環境報告書の中身が正しいという前提の上で評価・勧告をするという文面があったと思う。報告書がある程度正しいということは審査人が審査したものをみて勧告することも有り得るということで、どちらか選択するのではなくて、両方実施されることがあるという理解をしているが、それでよろしいか。

(上妻委員)ワーキングでは将来そのような発展があるという方向性を前提に検討した。だから審査タイプの正確性等のチェックが重要になってくる。

(瀬尾委員)「審査」タイプの仕組みについてであるが、審査は、審査対象事項に対して行われ、審査対象事項は環境報告書の中の一部である。その審査した結果として、環境報告書そのものを民間非営利団体に登録する仕組みとなっているが、それで誤解を招かないか検討する必要がある。
また、参加事業者にロゴマークの使用を認めることも、誤解を生じる可能性がある。今後、サステナビリティレポートの方向にいくと考えられるので、この点の検討も必要である。これらに関しては、もう少し慎重で、誤解を生じさせないような表現が望ましいと思う。

(河野座長)例えば、ロゴマークにおいての誤解というのはどのようなものが考えられるか。

(瀬尾委員)事務局から想定しているロゴマークの使用方法を聞きたい。

(事務局) 特に想定はしていないが、基本的に環境報告書に表示するイメージである。環境報告書の一部の審査をするのはまさにその通りなのだが、環境報告書自体の発展を阻害しないように当面は最低限の部分の審査対象とすることを考えており、登録される環境報告書自体はその最低限のものを満たしているものということになると思う。当初はそれでいいのではないかと思っている。

(瀬尾委員)そのロゴマークが環境報告書全体にかかっているかのような誤解が生じるのではないか。

(事務局) 最低限を満たしているという意味でのロゴマークということである。

(瀬尾委員)ISOでも同じような誤解はあるのだが、ここをきちんと整理していかないと、また誤解を生じるのではないかという懸念がある。

(河野座長)もう少し誤解を招かないような表現に修正するということにしたいが、よろしいか。

(瀬尾委員)そうである。誤解を招かない使い方をもう少し書くべきだと思う。

(児嶋委員)17ページの4段落目にある「併せて審査の同質性を確保するものである。」という部分はいらないと思う。審査の同質性を確保するのは審査基準であって、作成基準ではない。誤解を招かないためにもこの部分は削除して、先程、渡邉委員が指摘されたように、作成基準は審査人だけではなくて、作成者と利用者のためにも必要であるということを付け加えて欲しいと思う。

(渡邉委員)私は残しておいてもよいと思う。審査の同質性といっているので、そのように受け取られるかもしれないが、審査手続きの同質性等は審査基準だと思うが、環境の世界でも判断の基準にぶれがあることがあるので、判断基準として一定の審査の質を保つ為に、クライテリアを決めておくことは意味がある。そのあたりはもう少し丁寧に書いたほうがいいと思う。

(児嶋委員)それならば、併せて審査の同質性の前提となるものであるという意味だと思うが。

(河野座長)そのように修正したい。先程の実施者、作成者、利用者、という観点からの意義についても盛込むということにしたい。

(菅野委員)今回の仕組みが世界の最先端で、世界の模範になるようなものであるという点を報告書の中に盛り込むべきであると思う。

(河野座長)「はじめに」に盛り込むか、又は「今後に向けて」に盛り込むかということになると思う。この仕組みそのものは他にはないということを含めてどこかに記載するということにしたい。

(大竹委員)基本的にこの制度が発足した段階において、事業者がコスト負担することになるが、今の企業を取り巻く経済情勢は厳しいものがあるので、やはりインセンティブは必要だと思う。ただ、そのインセンティブとしてロゴマークだけが適当かどうか検討の余地があるので、インセンティブについては、今後、さらに検討することが必要であり、第5章に記載してはどうか。

(河野座長)ロゴマークの使用を認めることについてと、他に何等かのインセンティブを与えるということについて、それらを第5章の課題の一つとして追加することとしたい。
他に何もないようであれば、時間もきたので終わりにしたい。

(事務局) 今後の報告書の取りまとめについてであるが、本日の議論を踏まえた修正を事務局が行い、それを各委員に送付してご意見をいただきたい。その後の最終的な報告書の取りまとめについては、座長と事務局にご一任いただきたいが、よろしいか。
では、そのように報告書の取りまとめをさせていただく。
長い間ご協力ありがとうございました。               

以上