総合環境政策

環境報告の促進方針に関する検討会第5回議事概要

日時

平成15年1月10日  10:00~12:00

会場

経済産業省別館11階1111号会議室

出席委員

稲岡、大竹、大塚、河野、上妻、児嶋、菅野、瀬尾、辰巳、谷、平井、藤村、山本、渡邉
(敬称略、50音順)

議事内容

資料1 検討会報告書骨子(案)はじめに~第3章 討議

(河野座長)事務局より説明があった部分について、ご意見等があればどうぞ。

(谷委員) 正確性の確保という言葉について、この正確性の定義や、確保のレベルなどについてよく読み取れない。

(事務局) 環境パフォーマンスデータについては、例えばCO2の排出量についても単純に比較ができないという実態がある。事業者が出したデータの集計過程などがきちんと開示されているかを、誰かが確認するという意味での正確性がスタートラインとして考えられる。絶対的な正確性という意味ではないという理解をしている。  

(谷委員) 国内と海外に事業拠点があるにもかかわらず、国内のものしか検証できていない等、検証の範囲にも色々なレベルが考えられるので、言葉によっては誤解を招く恐れがあると思う。検証された報告書の内容全てが正しいものと読者は思ってしまうのではないか。

(事務局) 第三者レビューといっても、前提によって全然違うものになるということが、もう少し理解できるような表現に変えていきたい。

(渡邉委員)例えば会計監査の世界でも作成者には作成の、監査人には監査の前提があるように、この環境報告書の審査という仕組みの中でも色々な前提がある。ここでの正確性というのは、基準に基づいて公表されているという前提のうえでの正確性である。

(谷委員) 正確性という言葉を使う前に、正確性を定義付ければいいと思う。  

(渡邉委員)私も全く同感である。 

(菅野委員)正確性に関しては今の説明で理解できるが、比較可能性となると事業形態そのものの違いが問題となる。例えば、事業形態が全く違うにもかかわらずCO2排出量が少なければよくて、多ければ悪い企業とされてしまうかもしれない。国内から開発途上国に事業活動の場を移せば国内の環境負荷が下がるが、それがよいことなのか疑問である。比較可能性という言葉は注意して取扱わないと、数字が独り歩きして、変な誤解を与えてしまう気がする。

(児嶋委員)環境報告書の記載情報の比較可能性と読めばいいのではないか。企業を比較するためではなくて、もし同じようなものだったら同じような情報を提供してはどうか、ということだと思う。

(谷委員) 数字を比較するという意味では、それにはあたらないと思う。数字はどの領域の数字を集めるかによって全く違ってくるので、それを比較することはできないと思う。

(児嶋委員)基本的には審査する側が確保するのではなくて、作成する側が同じ作成基準に準拠していたら比較が可能になると思う。

(谷委員) 要するに何を比較するかということである。基本的には数字を検証して、そしてその数字を比較するということと理解するが。

(河野座長)児嶋委員が言われた作成基準があれば比較が可能というのは、作成基準にバウンダリー等の記載があり、それを基にして作られた環境報告書について審査することになるからである。しかし、同じ作成基準に基づいても企業規模により排出量等も異なるので、その審査された情報については、その違いも含めて情報を利用する側が考えるという理屈になると思う。比較可能性の担保というのは作成基準の内容に関係があると思う。

(事務局) この検討会とは別に、環境パフォーマンス指標の検討会を行っているが、そこで指標を決めたとして、果たしてその数字で本当に比較ができるのかという議論もある。そこは、環境報告書の作成基準の中で考えていく必要があると思う。比較可能性という用語が、文字通りそのまま比較すると読み取られているようなので、そこは丁寧に説明していきたいと思う。

(谷委員) 比較可能性の確保とは何を確保するのかという問題がある。環境報告書について、記載項目の比較可能性だけでなく、さらに、その項目において数字がどうなっているかについて比較し、投資をするか否かを判断するための資料とした場合に、比較可能になるとの理解でよろしいか。

(事務局) ここでは、条件の一つを整備しているのにすぎないので、本当に比較するためには、このほかにもこうした条件を整備しなければならないということを書いたほうがいいのかもしれない。

(平井委員)表現としては、最低限記載すべき重要な基本情報はある程度確立すべきというような取り扱いになっていて、その上で、比較可能性を担保していくという意味だと思う。数字の高い低いで企業の良し悪しまで踏み込んで、比較可能というところまで議論しようということではないと思う。

(谷委員) ここでの比較可能性の確保という用語は、そこまで読めてしまうと思う。  

(児嶋委員)例えば業態の関係でイトーヨーカ堂と大成建設の財務諸表は簡単に比較できない。環境報告書も同じだと思う。

(谷委員) 同じ業態でも比較は難しいと思う。

(児嶋委員)情報が信頼性と比較可能性を向上させていく手段であるので、確保という言葉を向上という言葉で置き換えてはどうか。  

(谷委員) 基本的には確保はできないというのが私の感覚ではある。

(平井委員)新聞に資源生産性という言葉がでていた。谷委員が思われていることは、もし本当に数字のレベルの判断にまで踏み込むのなら、単なる数字のデータではなく、一定の加工をしてみればA社とB社の効率性のようなものがわかる、というアイテムまで付け加えるのかということだと思う。現段階ではそこまでは要求されていないと私は読んでいるが。

(河野座長)今の平井委員のご発言は、ご意見ということに留めておきたい。

(藤村委員)比較可能性等を企業の方は重視しているが、比較できる範囲は限られている。CO2排出量の多い少ないで単純に判断を下すような消費者ではなくて、一つの比較可能性のあるデータとして捉える、他の要素も色々考慮した上で判断できるような投資家や消費者等を育てることも、しっかりと踏まえてほしい。

(河野座長)ここでは比較可能性や正確性の用語だけが書かれているが、読む人のキャリアによって解釈の仕方も異なる。会計の分野では比較可能性は相対的比較可能性であり、正確性も絶対的なものではない。ある仕組みや前提を踏まえて検証するので、そのデータは比較が可能となるための基礎データにはなるが、データ自体が比較の対象そのものになるとは限らない。
  例えば、建設業と流通業におけるCO2排出量は業種の違いを念頭におけば比較の対象にはなりうるが、そのままでは比較ができないので、インプットやアウトプットなどで比率を用いて比較することになる。ただ、そのようなことを報告書には書き込めないと思う。素案のなかでどのように書き直すのかまだわからないが、そのようなことを念頭において書いて欲しい。この議論はここで終わりとしたい。この他に何かあればどうぞ。

(瀬尾委員)今の議論を前提として感想を述べさせて貰う。比較可能性と正確性が高まっていないから普及の妨げになっているというようなトーンだが、その書き振りが非常に弱いし、本当にそうなのかという感じがある。この検討会が「環境報告の普及促進のあり方に関する検討会」なので、これに触れないわけにはいかないのかもしれないが、私の感じとしては無理がある気がする。

(辰巳委員)私も瀬尾委員の意見に近いかもしれない。タイトルが第三者レビューに関しての検討となってもいい感じを受けるくらいに7ページから第三者レビューだけが目立ってしまい、今回の検討会でその他の方策についてほとんど検討がなされていないという印象がある。報告書の副題は基本的枠組みとなっているので、これに関する話し合いが薄かったのではないかという印象がある。

(藤村委員)環境報告と環境報告書というのが最初にあるが、第3章になると環境報告書となっている。私も環境情報の開示の為の方策には大賛成で、大いに環境情報の開示はやるべきだと思っているが、それが環境報告書を作ることを義務付けるとなってしまうのは無理があると思う。環境報告書の作成まで義務付けるのは大変だと思う人がいると思うので、文章の流れを無理のない形にする必要があると思う。

(河野座長)義務付けとはどこにもいっていないと思うが。

(藤村委員)第2章に諸外国の動向として環境報告書の義務化の動きがある、というような記載があるので、この辺は納得できるが、第3章になると急に環境報告書の促進となっているので、ここのつながりがもう少し上手くできればと思う。

(事務局) 瀬尾委員のご指摘もその通りなのだが、比較可能性や信頼性としているのは、環境報告書に記載した情報の価値を高めようという意味を別の言葉で表現したつもりである。環境情報として記載しているだけでは利用可能性はあまり向上しないと思ったため、一定の環境報告書に記載された情報の価値と利用可能性を高めることがここでは比較可能性、信頼性ではないかとしている。
  藤村委員のご意見に対しては、環境情報の開示は基本としてあるが、ここでは社会に普及させようとしており、その媒体として環境報告書が一般に広がってきているので、そこに焦点を当てた。

(大竹委員)内容的には第三者レビューの普及というイメージがあるが、基本的に環境報告書の普及ということになると、その普及がどのレベルを目指しているのかがよくみえない。逆にいうと1部或いは2部上場などの大企業のレベルでの普及を目指していると理解している。

(上妻委員)第三者レビューが色濃く取り上げられていることについてご指摘があるが、第三者レビューや信頼性確保、比較可能性等にスポットをあてた検討会を行うことについての記載があるので、そのあたりをもう少ししっかりと説明して、位置付けをはっきりさせることで十分だと思う。色々なところで色々な検討会が開かれていて、今後も色々な検討会が行われていくと思う。この検討会の趣旨に照らして、第三者レビューが取り上げられることは必然的なことだと私は思う。

(河野座長)上妻委員がいわれたことを盛込んで整理してもらえばよいと思う。

(児嶋委員)第2章は第三者レビューに直接結びつくかもしれないが、少し唐突な感じもするので、これについては別添或いは付録扱いにしてはどうか。

(上妻委員)恐らくここのところも書き足りないと思うが、推察するに、ヨーロッパでの義務化の流れとして、環境報告書を単独で作成することと年次報告書の中に盛込むという2つのパターンがある。その中に環境報告書の第三者レビューに近い監査のことも、環境報告書の作成を義務付けるのであれば、そのチェックのシステムのことも必然的に含まれる。
  だが、現段階ではオランダもデンマークも行政がやっており、第三者レビュー実施者の仕組みを法律或いは制度で義務付けるというところまでは進んでいない。オランダでは環境管理法の中に監査を受けることを義務付ける規定があるが、実務がまだ成熟していないので、その発効が停止されている状況である。

(河野座長)今の上妻委員の話では、書きぶりが少し足りないということだが。

(上妻委員)これを見た方、特に企業の方などは義務付けが始まるような感じを受けると思うが、決してそのような話ではない。EUなどでは全体的な論調として法律で義務付けるということは考えられず、自主的な取組だが、各国の取扱については各国が独自にやってもらうという姿勢だと思う。
  ヨーロッパの産業界も義務化に関しては反発が非常に強い。北欧やオランダなど環境上のリスクを多く抱えている国は、それぞれの国の中で義務化に対して非常に積極的になっているが、必ずしもそれが全てではない。

(藤村委員)環境省が将来的にどのようなことを考えているのかによるが、もし義務化のようなことを考えているのなら、早い段階から色々議論して理解を求めた方がいいと思う。全く考えていないのなら、このような書き方は誤解を招くと思う。

(平井委員)第3章の[4]に、はっきりと自主的なものであるという記載があるが。

(谷委員) 第4章にある第三者レビューの類型の検証では、具体的にどのようなことを行い、それによりどのくらい信頼性の確保に寄与するのかについて、少なくともこの場ではその内容を把握し理解した上で議論しなければいけないと思う。このなかで想定されている検証についてご説明いただきたい。

(河野座長)それについては第4章に入ってからお願いしたい。では第3章までの検討はここで終わりたい。

資料1 検討会報告書骨子(案)第4章以降の討議

(河野座長)事務局より説明があった部分について、何かご意見があればどうぞ。

(渡邉委員)第5章、18ページの図中と19ページの1.[4]で、審査においては環境報告書の作成開示基準が審査をする際の判断基準になるという記述をぜひ入れてほしい。 
  評価・勧告でも判断基準として作成開示基準を使う場合があるかもしれないが、評価・勧告の場合には作成開示基準への準拠性だけを見ているわけではないと思われる。審査タイプでは作成開示基準を判断基準とすることで、個々の環境報告審査人による判断のばらつきがでないようにすることが必要である。作成開示基準について別のところで検討する際に、これが審査における判断基準になり、それによって審査人の判断にばらつきがでないようなことを前提に検討を進めていくことを、書き込む必要がある。

(稲岡委員)環境報告監査人にはどのような人をイメージしているのか。例えばGRIではガバナンスの問題もでてくるので、その知識・技能を持ち、しかも環境問題の知識もあるような方がいるかどうかをお聞きしたい。

(河野座長)持続可能性報告は先進的ではあるが数量的には80社ほどしかないので、議事録にもあるように、この検討会では環境報告書に限って議論をすることになっていたと思う。持続可能性については配慮するという言葉があるが、これは将来的にという理解がなされ、ここでの議論では、環境報告審査人にはGRIの中に入っているガバナンスや社会的側面等入れていないという理解である。

(稲岡委員)25ページの1.C.にGRIやIFACなど環境報告書の審査関連の国際的動向との調和を図っていくこと、という記載があり、21ページにもGRIについて言及されているので、聞いたまでである。

(事務局) 仕組み全体についてはご指摘のとおり、持続可能性報告書を排除するのではなく、その環境部分は対象になるものとして検討していくつもりである。

(渡邉委員)持続可能性報告書を前提にしなくても、審査や監査などを実施する上では当然ガバナンスを見ざるをえないことは皆さんご承知だと思う。完全に合致する人はいないかもしれないが、現行の実務の中でも、監査の前提としてガバナンスに関する知識、分析、評価等というものが必要なので、それらはここでいう審査の知識・能力に含まれているという理解をしている。

(山本委員)環境報告の促進方策ということで大変熱心に検討されて、よい案が検討会報告書案として出てきていると思うが、タイムスケジュールが見えないことが少し気になる。世の中は急速に動いている。例えば元旦には日本経団連の奥田ビジョンが発表され、詳細はまだのようだが、環境を推進することが大きな柱として挙げられている。このような社会的情勢がこの検討会の報告書には見当たらなく、切迫性に欠けていると思う。企業の環境報告の必要性は自明の理であり、これをどのくらいのスピードでやるか、それがわかるように報告書に書いて欲しい。

(谷委員) グローバル対応、多国籍化に対応する検証については今後となっているが、現実的には海外での生産が多くなりつつある状況下で、国内だけを対象とするのはどうかと思う。私共も第三者の検証を受けているが、国内だけでなく、海外の生産工場、販売の統轄会社などまで検証の対象範囲としている。既に多くの企業が海外で事業展開をしているなかで、その環境負荷のデータについて国内のものだけ対象とするのは非常に問題が大きいように思う。

(事務局) 環境報告の対象範囲が海外を含むか、審査の対象範囲が海外を含むか、二段階の意味でバウンダリーがあると思う。連結ベースで環境報告書を発行している企業も出てきているので、環境報告書そのものは海外も含めたものになってきている。第三者レビューにおいても勿論海外に対応しているものもあると思うが、それだと莫大に費用がかかってしまう。海外も第三者レビューの対象とするかは費用との関係も問題となる。

(河野座長)グローバル対応には二つの意味があると思う。25ページにある今後の課題のグローバル対応は、GRIや国際公認会計士連盟等が第三者検証に関して、どのような動きをするかを踏まえておかなくてはいけないということだと思う。もう一つは、事務局からあったように、実際に検証をするときに海外も対象にするのかどうかという話になる。ここは作成基準、開示基準のところにいれるものであり、どの範囲でやるのかということの書きぶりや、実施するときの方法に関わってくるので、グローバル対応についての記載が必要である。

(谷委員) 25ページにおいて、検証のバウンダリーも海外については今後の課題ということになっている。会計でもそうだが、実際問題として海外でのデータを含んだ、企業グループの連結の方が重要である。実際に海外の検証はしないということであれば、先程の議論の正確性にも大きな影響がでてくることになると思う。海外にも700社ほど拠点があるが、実際に検証できるのはほんの10数社ぐらいになってしまう。それでも海外が必ず入っているという方向に進まざるを得ないと思う。それを海外は除いておくとすると、論理的に成り立たないと思う。

(菅野委員)日本の環境の評価は海外から見たときに低いし、環境報告書自体の評価も低い。ここで検討している監査がまた内向きのような気もする。やはり世界から日本の環境の先進性が認められるような環境報告書になるようにしていく必要がある。日本国内ではどの企業も正確に報告しているといっても、海外からみたら日本の評価は低いので、日本の評価が上がるようにしないと環境立国として成り立たない。せっかく仕組みができても世界から認められないような仕組みになってしまうと残念である。

(事務局) 事務局としても理想は高いが、一方で企業の方に受け入れられるかどうかを検討していく必要がある。日本国内だけの取組ではいけないと考えている。自主的参加という枠組みを提供するので、企業の方のどのようなニーズにどのようにお応えできるのかも含めて、少し実際にやってみる必要があると思う。

(菅野委員)今作ろうとしている審査の仕組みにも色々課題はあるが、日本がやっているこの仕組みが世界の先端をいく仕組みだということをアピールしないと意味がない。

(藤村委員)環境にいい企業活動或いは持続可能な企業活動を積極的にやっていきたいと思っている企業が元気になるような仕組み、或いはそのような社会を作りたいと思っているNGOや消費者にとって本当に役立つ仕組みなら、企業が反対するしないということではなく、環境省として自信をもって進めていってほしい。受け入れてくれるかどうかではなくて、もっと自信をもって、やろうと思っている人がやれる仕組みを作っていって欲しい。

(河野座長)25ページの課題については、作成基準を来年度以降に検討し、そこでバウンダリーも含めて検討し、うまくまとめれば可能な課題だと思う。今非常に心強いサポート発言を企業の方も含めていただいた。

(山本委員)一つの例として、韓国はタイプIIIのエコラベルを法制化したようで、プラズマディスプレーというエネルギーをたくさん消費するが、非常に売れている商品のライフサイクルインベントリーのデータが公表されている。法規制ということで、日本はある意味、韓国に抜かれてしまっている。やはり、閉塞感がある社会の中において、これを打破するためにも、今後、環境報告書の義務化を検討していく必要がある。

(河野座長)韓国では環境会計などもドラフトだが財務会計の中で基準案等を作っており、走り出したら意外と早いのかもしれない。

(山本委員)中国も早いと思う。

(藤村委員)もしこのような審査人を作るのであれば、きっちりした制度とし、厳しくてもそれをやることで企業が社会的信頼も得られて、環境活動がさらに進むように、中途半端な審査人制度にはして欲しくない。厳しいけど前向きにやろうと思うだろうし、社会的には信頼される制度になると思う。

(稲岡委員)同感である。厳しい審査制度にして、それこそガバナンスから環境までわかる人を環境審査人にするような資格制度にして欲しい。

(渡邉委員)25ページにおいて海外の話がでてきたが、国内に限ってもバウンダリーに関して検証する側として難解な問題が多いし、企業側にとってもなかなか触れたくない問題もあると思う。そのような意味でハードルを上げるのであれば、ここは明確に、バウンダリーの問題を今後、十分に検討しなければいけないと言い切ったほうが課題としてすっきりするのではないか。
  資格制度についても全く同感で、例えば国家資格にするくらい厳しい試験を課して、あまり免除試験を設けないようにして一定の質を保ったほうがいいと思う。ただ、このようなものを仕組みとして作るときは、インフラの整備等の問題があるが、厳しいものにした方がよいという意見には同感である。

(河野座長)第5章は審査タイプの第三者レビューに関わる仕組み、第6章はその他、となっているので、第6章は評価・勧告タイプの第三者レビューとしたほうが内容的には明確になると思う。何か付け加えることがあればどうぞ。

(谷委員) 審査領域の対象が明確になっているものと、環境負荷等がある場合のそのバウンダリーがどのようなものかによって、数字が全然違ってくるので、正確性、比較可能性のためにもバウンダリーは極めて重要だと思う。

(事務局) これまで「検証」或いは「監査」等と呼んでいたものを、本報告書では「審査」とした。これはワーキンググループでその呼称について色々議論があり、どの委員からも反対がなかった審査という言葉にとりあえずしたが、時間があればこの場で議論していただきたいと思う。

(河野座長)前回までの言い方とは異なり、審査という言葉を用いている。ISO14001では審査と呼んでいるが、この言葉遣いについてどうか。

(上妻委員)検証と評価・勧告タイプの分け方については特に問題がなかったが、環境報告書の検証人なのか監査人なのか審査人なのか、そこについて議論があった。積極的に反対がなかった審査という言葉に落ち着いたのでワーキングとして素案を出したが、ネーミングに関しては検討会のほうで別途考えていただければと思う。

(河野座長)GRIのほうでは監査可能性という言葉になっているが、個人的には監査といってよいのか判断しかねるので、ご意見があればどうぞ。

(山本委員)中国では「審」という言葉を使うほうが厳しくなる。

(渡邉委員)会計監査の中では、通常の監査とか中間監査という概念と用語があり、○○監査と、それぞれに名称を付け、区別することもできると思う。個人的には環境報告書監査という概念があって、その環境報告書監査という概念は必ずしも会計監査のような非常に高いレベルの保証をするものではなく、もう少し低い保証をするものであってもよいという意味で、そのような用語を使ってもよいと思った。ただ、監査という言葉が出てくると、他の色々な思惑も感じられるという意見があったので、審査という言葉に異論がなければそれはそれでいいと思う。

(上妻委員)英語ではAuditを使っている。国際会計士連盟ではAssurance Provider、保証付与人という呼び方が使われている。

(渡邉委員)会計士協会では環境報告書保証業務指針において、保証業務と呼んでいる。またその主体は、Assurance Providerの意味で保証付与人と呼んでいる。しかし、日本語で「保証」とか「保証人」という言葉にはすでに固有の意味があり、ここでいうAssurance Providerの持つ意味とは違ってくるような気がする。

(藤村委員)保証とすると確実に責任も負うという理解でよいか。

(渡邉委員)責任はもちろん監査でも負うことになる。

(事務局) 海外のことを考慮にいれると、英語に訳せるものがよいと思っている。

(藤村委員)正式な名称というのはどの範囲でどのようなことをやるのかが決まらないと監査のレベルなのか審査のレベルなのかここでは決められないと思うが。

(児嶋委員)内容が決まってから名称をつけたほうがいいという意見があるが、内容は常に進歩していくものなので、どこかで決めていかないと進まないと思う。

(藤村委員)そうであれば、厳しいもので、かつ責任ある人を審査人とすべきだと思うので、審査という用語を用いることに賛成である。

(河野座長)特に異論がないようなので、審査という用語をこの報告書では用いることにしたい。他に特にないようなので、本日の検討会はここまでとしたい。概ね報告書骨子案については、ご了解をいただけたと思う。本日の議論を踏まえて、事務局で報告書骨子案を報告書案にしていただき、次回、最終回の検討会で、報告書案を検討したい。

     以上