総合環境政策

環境報告の促進方針に関する検討会第4回議事概要

日時

平成14年11月29日 10:00~12:00

会場

経済産業省別館8階827号会議室

出席委員

稲岡、大竹、大塚、河野、上妻、児嶋、菅野、瀬尾、辰巳、平井、藤村、山本、渡邉
(敬称略、50音順)

議事内容

○資料1、2討議

(河野座長)最初に資料1、2に基づいて、第三者レビューの仕組みとしては検証タイプのものを対象とし、評価・勧告タイプのものについてはガイドラインということに留めておくという方向性について議論したいと思う。何か意見があればどうぞ。

(事務局) ワーキンググループ(WG)では上妻委員を座長として検討を進めている。前回のWGの検討結果について資料1にまとめているが、上妻委員より補足説明をお願いしたい。

(上妻委員)現在行われている第三者レビューの実態をWGで考えてみた。第三者レビューには検証、評価、勧告の3つのタイプがある。検証タイプでは現状の財務諸表監査とかなり近いものが行われているが、財務諸表監査とは保証の水準が異なり、かなり低い水準の保証がされており、各企業の第三者レビューの実態も様々である。また、評価・勧告タイプのものが検証タイプのものに混在することもある。
3つのタイプがあるにもかかわらず、情報の利用者、作成者及び検証の実施者の間で、その役割について大きな期待ギャップがある。情報の保証の程度がよくわからず、また、何を行っているのかよくわからないという指摘がある。その辺りの透明性を高めていく方法を考えていくことが議論の出発点だと思う。
WGでは検証タイプと評価・勧告タイプの役割は異なるということで合意された。検証タイプは事実の確認が可能な領域なので、その事実確認をしっかりすることにより、一定水準の情報内容の正確性を保証することができる。また、制度的に何らかの情報を保証することによって、評価や勧告等の有用性を高めていくことも可能となる。
検証タイプのものについて、何らかの制度を作ることを前提にすると、信頼性を確保するためには、どのような枠組みで、何を行うのかということが問題となる。情報は各企業で適正に作成されているが、作成者でもなく利用者でもない第三者が、独立した立場でしっかりとチェックすることが重要になってくると思う。そのためには、検証手続きやその実施者に求められる要件等を検討する必要がある。
実施者には、ある一定の能力や実務経験を有する者が好ましいという結論となり、それを担保するためには、ある程度緩やかな一定水準の資格制度が必要ということになった。それに付随して監査に関する一般的な指針も必要だと思われたので、このような監査基準案等を作成した。
評価・勧告タイプに関しては、規制等をするのではなくて、実務の発展に委ねていくという共通の理解が得られた。また、活動が容易になるように、評価・勧告で表明された意見の特性が明確になるように、ガイドラインを作るという方向性で議論を行った。

(河野座長)上妻委員から本日の資料のもととなった背景について説明があった。これも含めてご意見があればどうぞ。

(藤村委員)質問が3つある。1つ目は、監査人制度とあるが、制度にするのか。日本の企業は横並びをみる傾向があり、検証を受けた企業の方がレベルが高いという印象を与え、かつ検証を受けることを強いられているように感じられ、評価・勧告タイプでやりたいという企業を抑えてしまうのではないか。
2つ目は、環境報告監査人の資格或いは制度等が資料に出てきている。このようなものはおかしいのではないかという議論が前回されたと思うが、このようなものが出来た背景としてどのようなことがあるのか。
3つ目は、資料3において、事実の確認といわれたが、例えば(4)の環境に関する知識・能力というのは、しっかりした算出基準を確立しなければ、事実の確認ということにはならないのではないか。

(河野座長)3つ質問があったが、資質に関しては資料3のところで取り上げたいと思う。

(上妻委員)今のご質問の1つ目については、私は全く逆だと思う。現状では、例えば評価・勧告タイプのようなものの正確性の度合が問題になると思う。評価・勧告タイプにおいては、実施者の個人的な資質や能力で行っているとともに、企業が出した情報は正確であるという前提で行われているということを認識しなければいけない。その前段階で、基本的なデータ等の正確性の検証がしっかりとされることで、むしろ評価・勧告タイプの有用性が増すとともに、かえって安心して実施できることになり、評価・勧告の特性が活かされると思う。
我々は将来的には検証タイプと評価・勧告タイプが同時にあることが、環境報告書と第三者レビューの信頼性を高めていく、というスタンスで考えてきた。

(藤村委員)これを推奨するのではなくて、必ずこれらの並存ということが前提なのか。

(上妻委員)それが望ましいということである。

(藤村委員)2つ目の質問についてはどうか。

(事務局) 仕組みを作るには、ある一定の基準が必要だと思う。その場合、一定の資質が必要であるが、資料3にある資質を全て満たす人はいないということだったので、新たな資格制度あるいは仕組みを作るということに至った。

(上妻委員)WGは原案を作って示す性格のものであり、何かを決める場ではない。このような結論に至った背景としては、ある一定の検証業務などを行うには、ある一定の能力や経験が必要となる。
色々な団体或いは個人の方が検証に類するものを行っているが、現状ではあまり信頼性が担保されていないので、情報の信頼性をある一定水準に保つ為には、資格制度が一番望ましいということとなった。

(事務局) 第3回の議事録にもあるように、前回の検討会において、座長に取りまとめていただいた結論に基づき、WGで検討をした。いつの間にかこのようになったのではなく、全体の議論を踏まえた上で、ある一定の必要性が認められたので、このような結論に至ったことを確認してもらいたい。

(辰巳委員)環境報告書の作成者に、第三者レビューをする理由を聞いてみた。理由としては、「数値の正確性等を出す際、場合によっては誤りを見落とす可能性があるので、その確認の為にしている。第三者レビューによって環境報告書の利用者の信頼性を得ようという意識は全くない。企業の信頼性は、自らの行動やコンプライアンス等をしっかりとすることで高めたい。」といっていた。こうしたことはこの中では触れられていないが、そのような視点も必要ではないか。
もう1つは、環境ラベルのタイプIIには企業の自己主張や自由に宣言するといったことも盛込まれているが、そのような自由行動をかなり抑制してしまう可能性はないか。そのようなことにならないように、検証の受審は任意であることが適切に表現される必要がある。

(河野座長)2つ目についてはご意見を述べたという理解でよいか。信頼性に関しての質問は、収集したデータ等に関して、企業独自の確認だけでなく、外部のチェック受けたいという意向がある企業もあり、そのような意味で、ご発言中の信頼性の確保というのは外部向けというよりは内部向けのためということか。

(上妻委員)恐らく視点が全く違うと思う。もし内部での信頼性を確保する為の手段として第三者レビューをするなら、環境報告書に第三者レビューを実施したことを、そもそも記載する必要が全くないと思う。環境報告書に記載されているということは、外部に向けてのメッセージであると思う。
問題は環境報告書の利用者は、第三者レビューを実施している環境報告書は、それによって著しく信頼性が高まっているような印象を受けるということである。利用者と第三者レビューの実施者とのギャップが非常に大きいので、このギャップを埋めるためには、どのようなことをやっているのかがよくわかるように、手続きを標準化し、ミニマムの条件だけはきちっと決めて、それをみてもらうということが必要である。
実務が成熟していないので、検証タイプ、評価・勧告タイプ以外のものが今後色々と出てくるかもしれないが、それを阻害しないことが、制度作りの基礎だと思う。
今の状態ではどれも信頼性がないので、全く影響のない必要最低限の部分だけはしっかりと決めていくことが大事だと思う。後は実務の発展に委ね、その先はまた考えていくというのがWGのスタンスである。

(辰巳委員)実際に環境報告書を作っている企業の方に、環境報告書そのものの信頼性を確保するために第三者レビューをしているのか、お聞きしたいが。

(菅野委員)パフォーマンス部分の完全な検証は難しいと思う。1000以上にも及ぶ化学物質の出入りが本当に正しいのか、CO2の排出量がどうなのか等、私達が自分のデータを取りまとめるだけでもものすごく手間をかけている。
もう1つは、実際検証できるのは自社の事業所の出入りだけになるが、本来は、LCA的に全体を検証することが望ましいとは考えている。
ここで言われている検証というのは、環境報告書の記載内容が正しいかどうかということであるが、弊社で行っているのは、第三者意見書ということで、自分達が行っている環境に関する活動が、第三者からみてどうなのかというところに、弊社としては一番力をいれている。

(平井委員)弊社の場合、第三者レビューで期待していることは、環境報告書のガイドラインや業界で作っているもの等に沿って、主に環境会計においてその準拠性をみてもらうことである。環境活動等のパフォーマンス部分は、環境報告書による外部への情報開示のあり方をみてもらった。環境報告書に掲載した指摘事項(今後検討すべき事項など)は、第三者レビューの意見としてではなく、別途最後にお話を伺ったことを私共として掲載しているので、評価・勧告タイプに類すると思う。このようなやり方で、我々としては外部からの指導を受けた内容を環境報告書の中で公表している。

(藤村委員)消費者や一般の人は、企業がいかに環境に配慮した行動をしているかを見たいので、それがこの情報の正確性の検証制度とは上手く噛み合っていないと思う。

(上妻委員)私はどちらかというと情報の利用者の立場であると思う。授業で環境報告書の分析等をする際、一番面倒なのは第三者レビューがあるかどうかである。第三者レビューにより環境報告書の中身の信頼性が確保できるかが分からないだけでなく、色々なタイプのものが混在している状況で第三者レビューがあると誤解を生じるので、今のような状況ならば、個人的には全部やめてほしいと思う。
評価・勧告タイプのものには非常によいことが書かれているが、1つ何かを見落としていると、全部がだめであるようにいわれてしまう。だが、情報のデータについての一定の水準を確保するための必要最低限の仕組みなどがあれば比較が可能である。
取組に対するデータの検証あるいは適切性の保証は、莫大な費用をかけてもできるかどうかわからない。だが、NGOや学識経験者等が費用をさほどかけずにやっていくことが望ましいという体制が作られていくと思うので、評価・勧告タイプのものが今後必要不可欠になってくると思う。

(藤村委員)算出基準やCO2の出し方を統一することが一番の前提だと思うが、最後のページにある「事業者の環境パフォーマンス指標に関する検討会」では、そのようなことはやっているのか。

(事務局) そのようなことも含めてやっている。まず指標をコア指標とサブ指標に分けて、標準的な算定方法を示すという方向性で作業をしている。
 資料2の2ページ目にあるように環境パフォーマンス指標は、そのまま環境報告書の基準になるものではないが、その考えの多くは取り入られていくと思う。第三者レビューをするときに、第三者レビューのことだけではなくて、第三者レビューを実施する側にも、その判断基準となる環境報告書の基準が必要である。自由な方向性を残しつつ、環境報告書の基準と監査基準がセットになることを、この図で確認して欲しい。
企業が内部目的に環境報告書を作成するだけの場合には、内部監査と同じ話なので要らないと思うが、外部に公表する場合には、別途、監査のようなことが利用者の立場から必要という理解でWGでは議論をしている。第三者レビューの仕組みを作ることにより、環境報告書の作成基準自体が必要になるので、最低限の項目は比較ができるようになるということを期待している。監査基準も同様の理由で担保できるのではないかということを確認させてもらった。

(大竹委員)基本的に第三者レビューのガイドラインは結構だと思う。第三者レビューをしていない事業者にとっては、これから検証を受ける為の1つの指針になると思うが、これから環境報告書を作ろうとしている事業者にとっては、第三者レビューがあるからといってあまり促進策にはならない気がする。ただ、最低限の記載事項、基本的な仕組みや数値の捉え方、内部的な正確性等についての基準をしっかりと作るならば促進策になるとは思う。
先程辰巳委員が言われたように、正確性その他の内部目的的な信頼性の担保は絶対にあるが、外部に環境報告書を出す以上、検証の実施により多少なりとも信頼性が担保できればと思っている。
併せて、別途、環境報告書の普及促進策も必要であると思う。

(事務局) まさに言われる通りだと思う。環境報告書の作成基準が最低限の項目になると思う。これから環境報告書の作成に取組むような事業者は、その最低限の項目を手始めとし、余裕ができたら独自の取組を増やしていって欲しいと思う。一定の比較可能性と信頼性が確保されることによって、事業者が適正に評価されることが期待されるが、そのような意味での普及促進も期待している。
「事業者の環境パフォーマンス指標に関する検討会」においては、事業者が把握すべき項目や算出方法も含めて、なるべく取り組みやすいように、山本委員に座長をお願いして検討を進めている。
それとは別に、環境報告書ガイドラインがあるが、コア指標などのパフォーマンス指標を見直せば、このガイドラインも見直すことになると思う。
この検討会との関係だが、それらがベースにあるという前提で、データの正確性と信頼性の確保、勧告や評価の部分で第三者が係わる部分を整理してもらい、その中で仕組みに馴染むものについてはそのような方向で進めていきたい。この検討会で、私達が行っている環境報告書を巡る議論が全てされているのではないということを、確認していただきたい。

(菅野委員)比較可能性という時に、サプライチェーンを含めLCA的に全ての環境負荷を見ない限り、事業形態で比較されてしまう。中国で製品を生産したら中国での電力使用量やCO2排出量などの取扱いかたの問題が出てくるだろうし、外からみた業態では同じでも、中を見たら違うという場合があるので、その辺をどのように考えるのかをしっかりとしたほうがいいと思う。

(河野座長)今のはバウンダリーについてのご意見で、業種によっても違うので比較が難しいということである。ここでそのような議論をするとかなり時間を要すると思われるが、このバウンダリーについてはパフォーマンス指標の検討会では議論されているのか。

(事務局) 環境パフォーマンス指標の検討会で企業行動のパフォーマンスを検討している。LCA的に製品が与える環境への負荷を、製品の切り口からみていく方法もあるだろうということで、企業が環境に与える負荷という面から指標を定めて、インプットとアウトプットというエコバランス的な視点からみている。

(上妻委員)比較可能性については色々な考え方があり、何が比較可能かということは非常に難しい。この検討会では、比較可能な体制を作るには、どのような仕組みを作ればよいかということを議論しているのであり、比較可能な数字を作るための情報を作成する部分については、別のところで話し合われている。
ライフサイクル全部についての数字をだすということであればそれでよいし、もしそうでなければそれは業界ごとに考えればいいと思う。情報の出し方や手続きが同じであることを保証する仕組みとして作ろうとしているだけなので、それから先については、他の検討会で検討することである。

(藤村委員)私も同感である。比較できるデータの根拠やその仕組みが一緒であるということさえ揃っていれば、後は比較するのは消費者など見る側の能力だと思う。最低限比較できる仕組みやデータの算出方法等はしっかりとして欲しいと思う。

(瀬尾委員)今議論している中身は、我々が目指している企業の社会責任を報告して行こうという方向の中ではほんの小さな部分である。私共のレポートでは評価や勧告といった第三者の意見を載せているが、それをもって誤解を与えるというならば、むしろ私は何もしないで出す方向がいいのではないかと思う。
検証というものが制度的にできても、全体の一部についての検証でしかないのに、サステナビリティレポート全体が「検証された」かのように出すのであれば、それ自体がやはり誤解を招く。
私個人としては、コストの問題等も考えると、検証制度は使わないと思う。

(河野座長)ご意見ということで留めておきたい。これは登録制度であり、参加は自由なので、そのような企業も場合によってはあり得ると思う。

(児嶋委員)最初に事務局から説明があったように、環境報告書の第三者レビューは信頼性を高めていく為の有力な方法の1つであり、これが有力な方法ではないということでない限り、堂々巡りの議論は止めるべきである。第三者レビューが信頼性を高めていく為の有力な方法の1つであるということについては既に合意が得られたものとして進めてよいと思う。
気付いた点が1つある。第三者レビューをすることで比較可能性が高められるのではなく、比較可能性は作成基準の問題だと思うので、この文章から比較可能性を取ってしまったほうがすっきりしていいと思う。

(河野座長)仕組みを制度というのは正確ではないとは思うが、ある仕組みを動かすために色々な要件を揃えると、それは制度ともいえる。第三者レビューの仕組みの対象は検証タイプのもので、評価・勧告タイプのものについてはガイドラインで自由にやってもらう、というような報告がWGからあった。ここではそのような方向を確認するということでよろしいか。
特に意見がないようなので、資料1、2に基づく議論について、WGでの検討のまとめの通り合意が得られたということにさせてもらいたい。
引き続き資料3に進みたい。資料3についてご意見がある方はどうぞ。

○資料3 討議

(藤村委員)監査人の資質について、このような幅広いことまで、誰が認証できるのか疑問である。検証という意味での範囲を限定すべきだと思う。例えば(4)の環境に関する知識・能力は、これを全て持つのは難しいと思う。

(渡辺委員)前回の議事録にもあるが、算出基準や報告をするルールの同意を得たとしても、同意を得たルールがあるだけでは何も保証されないと思う。それを担保するため、作成者や利用者にもとらわれない第三者が検証することがひとつの有用な方法だと思う。それがここで提案されている仕組みだと思うが、それに代わるような方法があるとすればどのようなものがあるのか教えていただきたい。

(藤村委員)前回似たようなことをいわれていたようなので、山本先生に質問したい。

(山本委員)エコラベルのタイプIIIの認証、認定の審査員の制度が始まった。その審査員の試験をした際、318名もの応募者がいた。資料に提示されているような知識、能力をクリアする人材は日本全国にたくさんいるので、心配は無用だと思う。

(上妻委員)ここにある全部を相当の水準で有する人はいないと思う。ここで言っているのは、例えば環境報告書の監査をするときに色々な領域の人とチームを組むと思うが、最後に監査報告書にサインをする責任者になる人は、ある程度のことは全ての領域において知っていないといけないという意味である。この水準をクリアするのはそれ程難しくはないと思う。最後にサインをする人、最終的な結論を表明する人は誰なのかということである。

(辰巳委員)話が逆だから混乱してしまうのだと思う。先に範囲が決まり、その範囲に対して監査出来る人はどういう人か、というように考えると自分としては整理できる。

(河野座長)範囲は資料4にあるところから出てくるのだろうという理解をしているが。

(事務局) どの程度まで検証するのかという基準の中身が決まらないと、資格の水準は決まらないとは思うが、知識が必要とされる分野は想像がつく。試験項目等、それ以上についての議論は、今後の課題と考える。

(藤村委員)資格がたくさんあるが、その中で役に立っている資格や制度がどれだけあるか、という疑問が常にある。役に立たないような資格を作ること自体、無駄に思える。厳しい試験を課し、実効性がある仕組みならわかるが。

(渡辺委員)資格制度は避けては通れないと思う。資料2の2ページにあるように、事業者が環境報告書を出して利用者にもっていく、ここのルールが作成基準である。作成基準も、企業が環境報告書を作るコストや読者の要請などを取り入れて、色々な人が納得できるところで開示のルールを作る。
次に今議論している監査人がどのような人かという主体の問題がある。例えば環境報告書の第三者レビューをする際、その認定レベルにおいて適当な水準が必要になる。
資格が要らないという議論であれば、最初に伺ったように別の方法でどのようなものがあるのか、ご提案を頂きたい。もし他によい方法があり、それでよいのであれば、それについて議論を進めていけばいいと思う。

(大塚委員)私も資格が必要だと思う。そして、これを立ち上げてしばらく様子をみることが必要だと思う。これを仮に法制度にした場合に、その一定の事柄でしっかりと審査をしていなかったということが明らかになる事情があれば、将来的には資格を取り消すということを制度として作っていくことが有り得ると思う。
一つ質問がある。例えばCO2の排出量などは検証のしようがないという話があったが、実際はどのような形でやっているのか。今すぐとはいわないが、少し具体的な話を聞かせてもらいたい。

(事務局) 一定のバウンダリーについて、ある一定の計算方法を用いれば算定できる。ある前提をおいて計算方法を統一すれば、計算することは可能である。

(大塚委員)検証もできるのか。

(事務局) ルールが統一されれば可能である。

(大塚委員)CO2の排出量としての数値は、正確には検証できないということか。

(山本委員)炭酸ガスの放出量が少なければそれ程影響はないと思うが、多い場合はしっかりと計測をしなければいけない。データの信頼性をチェックする必要性が当然でてくるので、バウンダリーや計算方法等をきちっと社会的に約束する必要があると思う。それを用いて計量・計測を算定してもらったものを、第三者がしっかりとチェックすることが必要な時代に入っていると思う。ぜひ、環境報告書の信頼性を少しでも高めるということで、今回ご提案をしていただきたいと思う。

(菅野委員)何百、何千箇所も調べられないと思うので、正しいかどうかはサンプリングでないと出来ないと思う。サンプリングに使われるようなデータは、ISO14001の体制がしっかりとしているから集められるので、ISO14001の体制と上手く論理づけて進めたほうがよいと思う。

(渡辺委員)菅野委員がいわれたことはその通りだと思うが、環境マネジメントシステムは経営管理の仕組みである。パフォーマンス情報が報告されてくる仕組みを環境情報システムとすると、そのシステムをしっかりと評価して、そこから出てくるパフォーマンス情報が正しいかどうか一部分をとることによって、全体を検証しようという方法がここで想定している環境報告書監査だと思う。資格者は、ルールを解釈でき、そのルールが正しく適用されていることをチェックできる能力が必要である。
作成基準等にも関わってくるとは思うが、作成基準があり、それに対する監査基準というのが出てくるので、むしろ次の段階ではそのような検討をするべきだと思う。また、そのようなことは、この検討会やWGだけではできないという方向性を確認していくことが大事だと思う。

(菅野委員)ISO14001と環境報告書の信頼性をうまくリンクさせれば、日本が環境負荷の低減と信頼性に結びつく新しい仕組みを世界に先駆けて発信することも可能になると思う。ISO14001を取っているのに、更に監査をするとなると二重の仕組みになるので効率が悪くなると思う。

(事務局) ISO14001と環境報告書の対象は全く違うと思う。ISO14001の場合は仕組みに対しての環境監査であり、環境報告書の記載事項や環境パフォーマンス指標が正しいかどうかをチェックするものでないと思う。
環境報告書の監査は情報開示のためのもので、その情報の正確性や基準準拠性をみるので、そのような意味では対象が違うと思う。内部監査で利用する場合は、第三者レビューは要らないと思うが、経営者が作成した環境報告書を外部の利用者に出す際に、利用者にとっては数字の正確性などがある程度保証されているほうが好ましいと思われるので、このような提案がある。

(菅野委員)チェックすることが目的ではないが、ISO14001の仕組みがしっかりと機能しない限り、提示されたデータが正しいかは数人の監査ではチェックできないと思う。

(渡辺委員)環境マネジメントシステムでそこまで考えているケースと、そうではないケースが企業にはあるのではないか。
パフォーマンスがしっかりと集計され、報告されて、誰かが間違いを犯してもそこが社内的に発見されるという仕組みがあるかどうかが、パフォーマンスの場合には重要である。それがISO14001のマネジメントシステムの仕組みのなかで担保されているのであれば、それを評価すればいいと思う。

(菅野委員)ISO14001の仕組みで情報が全てカバーされているとは思っていないが、情報の信頼性を担保するためにISO14001のレベルを高めていかないと、ISO14001の体制自体、意味がないと思う。監査のコストを安くしようとするならば、内部で集めている情報が信頼性のあるものでなければならないし、日本のISO14001をパフォーマンスの信頼性を高めるような形にレベルを高めていき、パフォーマンスも担保できるようなISO14001のマネジメントシステムになれば、今のような問題は少なくなるのではないか。

(大塚委員)EMASとISO14001の違いがそこにある。ISO14001を内部だけでやっているだけだと信頼性がないし問題もあるので、このように環境報告書の話がでてきたのだと思う。
ISO14001は国際規格なので、それほど高いレベルまでいかないと思う。企業の方が二重に投資するということが色々問題になるとは思うが、確かに日本ではISO14001が非常に普及しているので、それに何か付加できれば非常にいいと思う。これは国際規格なので、そのようなことは無理なのであろうか。 

(事務局) 国際規格に付け加えられるかどうかはわからない。二重投資になるということであるが、企業は合理的に行動すると思うので、環境マネジメントシステムを既に取っている企業に、このような情報の信頼性も必要と思ってもらえれば、そのシステムの中に組込むと思う。
何か監査する場合は、当然そのような情報システムがある企業の情報のデータだから検証が可能であって、それはシステムがあることが前提の検証という方向性だと思うが。

(河野座長)個人的には菅野委員からのご意見のように、やはり企業が内部での信頼性を高めていくことが重要かと思うが。他に意見はありますか。

(大塚委員)今の話だと、ここでの環境報告監査人というのは環境報告書のレベルだけでの監査ということになっているような気がする。ISO14001との関係のようなことをもしいうなら、企業の活動から関わっている必要が本当はあるのではないかという気がするが、その辺はどうなのか。

(事務局) 情報を作成する責任は、一義的には企業にある。それに加えて内部統制、組織といったものが有効に機能していれば、少しの費用や時間で監査することが可能だと思う。だが、内部統制が十分に機能していない場合には、データを逐一チェックすることが必要になるので、かなりの費用が必要になるので、そもそもそれは無理という結論になってくると思う。
ISO14001でも、日常的に全てのものを監査で見るわけではないので、恐らく監査する際には監査計画を策定するなどして、一定の内部統制が機能していることを評価すると思う。それが機能していることが確認できれば、直接監査する範囲は狭い範囲でよしとするのか、今後監査の手続き基準の中で検討していかなければいけない。

(藤村委員)私が一番関心があるのは、山本先生がおやりになられているパフォーマンス指標の算出基準であり、その辺がある程度見えたあたりで、能力や知識といったものを検討したほうがいいと思う。
上妻委員が最初、事実の確認だといわれたので、あまり範囲を広げるのではなくて範囲を限定したほうがよいと思う。

(平井委員)環境報告書の検証、監査というものは「~しなければならない」とあるが、このようになると、これはルールであり、ルール違反を犯した責任の結果として、どのような処罰を考えているのか教えていただきたい。

(事務局) 検討中ではあるが、これは登録制度なので、その場合は登録を取り消したり、虚偽記載があるということを何らかの形で公開する仕組みなどを構築することが考えられる。

(大竹委員)監査や検証等をしてもらうときに、契約を結ぶ。契約に盛込む事項というのは各企業によって法務的な規定があるので、そのような内容を盛込まなくてはいけないが、当然この基準の一部も入ってくると思う。そうした場合、最低限必要とされるものが見えたほうがよいのではないか。

(上妻委員)これから議論されるものはたくさんあると思う。今回のWGにおける結論は、監査をする仕組みをつくることと、それをするためにある一定の能力を有した人が必要という、全体の出発点になるものである。その内容については今後話し合うことになると思う。業務内容等に係わってくると思うし、そのときに作成基準をどうするか等を含めて色々な検討会で話し合われることになるとは思うが、前提としてはこのような方向性でいくという確認がなければ、先には進まない。今はその段階である。

(河野座長)時間がきたのでまとめたい。今、上妻委員がまとめてくれたが、第一に環境報告書の第三者レビューには、検証タイプと評価・勧告タイプという二つがあること。
第二に、検証タイプについては、一定の仕組みが必要であるということ。
第三に、検証タイプの第三者レビューの実施者は一定の能力を有し、その必要とされる能力を有する者であることを示す新しい資格を設ける必要があるということ。こういう方向性で合意を得られたと思うが、いかがか。
合意が得られたので、その方向でいきたいと思う。
まだ議論していない手続きに関する基準や比較可能性という要素をどう考えるか、資質や監査の対象についてなどは、次回に更に検討するということで進めさせてもらいたいと思う。
参考資料1に本報告書の構成イメージがある。これについて委員の皆さんに次回までに検討しておいていただきたい。これには今まで議論されていることが組込まれることになる。次回はこの報告書の構成イメージに添った形のドラフトが出されて、それに基づいて議論をさせてもらいたいと思う。

以上