総合環境政策

環境報告の促進方針に関する検討会第3回議事概要

日時

平成14年10月25日 10:00~12:00

会場

中央合同庁舎5号館2階共用第6会議室

出席委員

大竹、河野、上妻、児嶋、瀬尾、辰巳、谷、平井、藤村、山本、渡邉(敬称略、50音順)

議事内容

○資料2、3、4 討議

(河野座長)資料1は昨年度の検討会の結果報告なので、今回は参考程度で済ませたい。
第2回検討会では認定制度について議論したが、その仕組みについて委員の間でかなり理解に差があった。第2回検討会では、「仕組みにはハードなものからソフトなものまであるので、WGで多様な仕組みについて検討し両方の案を出していただき、第3回はそれに基づいて議論するという方向でいきたい。」とまとめた。
そこで資料4が出ており、資料4の議論の前提として資料2と3があるので、資料2と3を議論し、そこで一応の意見や議論が収束すれば資料4について議論をするという方向でいきたいが、それでよろしいか。ご異論がないようなので資料2、3についてご意見等があれば出していただきたい。

(山本委員)資料2の第三者をどのように定義するか、というのが1つのポイントだと思う。2つめのポイントとしては、これは記載されたものについてのレビューであり、記載のないものについては何もいえないので、記載がない部分をどのように取扱うのかということがある。
3つめのポイントとして、レビューの一番基本にある用語の正確な定義と使用について是非いれて欲しい。
資料2、3に環境保全活動という言葉が頻繁に使用されている。本当の意味の環境保全であれば企業を潰したほうが環境保全になるのであり、やはり環境経営活動あるいは経営管理だと思う。雇用を確保して利益を上げて、なおかつ環境負荷を下げる活動があらゆる事業体に求められている。環境保全という言葉を乱発されると非常に違和感を覚える。

(河野座長)第三者の定義については資料3、注2にある。これが適切かどうかは今後議論すればいいと思う。用語についての定義や使用の仕方は、これから報告書をまとめていくときにきちんとそれぞれ確認していく必要がある。

(山本委員)参考資料2の事例に挙げられている企業は概ね環境先進企業であるが、私はむしろ環境対策が発展途上にある企業の環境報告書を誰が、どのように監査し、レビューしているのかを分析することも必要ではないか。

(河野座長)記載されていない部分の扱いについても、資料3の「環境保全上の必要性に照らした記載情報の妥当性及び取組レベルの適切性」に組み込まれていると思うが、事務局はどのように考えているか。    

(事務局) 作成開示基準を細かく決めていけば記載すべき事項を増やせるので、限りなく無限大にすることは理論的には可能かもしれないが、現実的ではなくなる可能性がある。資料4に出てくるが、環境経営活動において、重要な項目は全て網羅するというような包括的な基準を仮においた場合に、どこまでを対象にするかという重要性の判断は、第三者レビュー実施者の資質によると思う。恐らく現在よりは詳細な規程あるいは基準のようなものが必要なのだと思う。

(山本委員)例えば、非常に重大な案件についてこの報告書に書かなかったことはありません、というような署名をすればよいのではないか。

(事務局) 比較可能性があり、かつ企業側の負担ということを考えると、コア指標をある程度代表的なものに絞り込んで、その代わりバウンダリーの取り方や計算方法を含めて出来るだけ一元化してもらうことが必要だと思う。
各企業の重要事項がコア指標に限られるのかというと、そうとは限らない。その他重要な事項について記載することという基準を設ければ、それに照らしての判断になると思う。ただし、それを基準と呼べるのかという問題があり、我々は重要な事項について取りこぼしたくないと考えているが、画一的に決めることも困難である。それらを踏まえると何らかの基準を作っておくのがよいのか、それとも曖昧な基準であるなら基準は作らず学識や経験に基づく自由な判断の中でそれぞれ指摘が行われるのがよいのか、議論があると思う。
抽象的なものでも何か基準等があるほうが報告書の信頼性を高める意味では望ましいのではないかと思うが、そこは議論をしていただくべき課題だと思う。

(上妻委員)今の点についてだが、色々な考え方があると思うが、基準があり、必要な情報が全て網羅されていることはとても大事だが、どこまで含めればよいのかというのは業界、そのときの事情、あるいは社会的な合意によっても異なる。今それが作れるかというと、非常に難しいと思う。必要最低限のコアになるような部分をとりあえず作り、その先については、制度をスタートさせた後の実務の発展に委ねるのも1つの考え方だと思う。考えられないところについては考えないということではなく、これから逐次発展させていくことを常に念頭に置きながら、とりあえず必要最低限のところから始めるというアプローチが必要なのではないか。

(谷委員) 資料4のロゴマークの付与というところで企業全体という案になっているが、そこは少し見直したほうがいいと思う。企業全体を評価するのは、この審査あるいはレビューでは難しいと思う。

(河野座長)今の意見はこれを更に深めるとなると時間が掛かると思うので、問題点が指摘されているということに留め、本日はこの問題についてはこれ以上議論しないということにしたい。その他の質問があれば出していただきたいと思う。

(渡邉委員)資料3についてだが、検証、評価、勧告の3類型がある。類型2の評価には大林組と大成建設のケースがあり、類型3の勧告には東京ガスのケースがある。参考資料2にある実際の検証内容を見ると、例えば大成建設のものが参考資料の2-6ページにあり、この資料3に抜粋されている文章は4にある参考所見の(2)の第2パラグラフのところである。しかし、この意見書の結論は参考資料2-6ページの3にある意見だと思う。東京ガスの資料をみると、勧告というところに書いてあるのは、参考資料2-9ページの「今後検討すべき事項」の[1]に書いてあるものだと思う。しかし、この第三者審査報告書の結論は、参考資料2-8ページの3にある審査の結果だと思う。
第三者検証の報告書をみると、大成建設と東京ガスのケースは、資料3では評価や勧告に分類されているが、それらは、1の検証にあたる内容のものであると思う。では、その結論以外の部分は何か、ということになると思うが、これは両方の性格のものが混在しているものであるということを資料3で事例として整理したというように理解したが、そのような理解でよろしいか。

(事務局) 渡邉委員がいわれたとおりだが、東京ガスも大成建設も意見としてまとまっているところとは別に、それぞれ参考所見のような位置付けで書かれているものもある。別のケースだと、同じような内容が意見のように書かれているものもある。ここでは、それぞれの類型ごとに、第三者レビューの内容に則して整理した。

(大竹委員)参考所見は昨年からいただいている。意見書や参考所見などは、審査や検証が終わったあと、報告書に載せる前にお互いに検討することが有り得る。しかし、私共の場合、基本的には検証において得られたものについては、そのまま掲載させてくださいという立場でやっている。この資料ではマイナスの評価だけが特出されているが、そのような部分も含めて公表しようという立場である。情報公開や第三者検証をしている以上、そのような部分を含めて公表するのが前提だと思う。参考所見として記載したが、検証あるいは参考所見、どちらで表現していただいても構わない。検証、評価、勧告という部分があるが、全体として検証としてとらえていただいても全く問題はないと思っている。 

(平井委員)基本的には同じような感じである。第三者審査の契約に基づいて、環境報告書において審査機関が審査の結果として公表する、その責任を持つ部分は、まさに報告書という部分に限られている。しかし、折角の機会なので、審査の結果として色々と気付いた点は率直に述べてもらった。そのことについて審査機関の了解のもとに、そのまま環境報告書に掲載させてもらっている。

(事務局)大成建設の事例については、このようにマイナスの事例を載せてあるのは素晴らしく、そのこと自体が評価すべき点ということでこの表を整理させて頂いている。渡邉委員の質問は、このような形で審査の意見と参考所見が分かれているが、分かれていてもそこは検証と捉えることができるのではないかということだろうか。  

(渡邉委員)この3つの類型は本日初めて整理が提示されたので、実務の中ではあまりそのようなことを区別していない。従って、1と2の混成もあれば1と3の混成もあると思う。そのような前提で作成したのかということである。
例えば無限定で適正であるという結論を第三者レビューで出したとする。しかしその後に、このような点がいけないということを何点か書くとする。監査した側は、重要性の判断など色々なことがあり、些細な問題はあるがそれは取るに足らないものであるので、全体としては適正であるとみなしたと思うが、それを読者に見せたときに、そのような課題があるにも係らずなぜ適正であると言うことができるのか、という疑問がでてくることはないだろうか。
第三者検証の報告書自体がコミュニケーションのツールであり、全体としてはしっかりとやっているということを伝えたいのだと思う。大竹委員や平井委員からご説明があったように、それが環境報告書を読んでもらう時に、プラスになるという配慮から開示されているということだが、それがどのような効果を持っているのか、読み手としてはどちらが現実を正しく把握できるのかという観点での検討も必要だと思う。

(谷委員) 資料3のレビュー実施者の資質・基準というところで、モラル、専門性、独立性があるが、その他の領域もあると思う。例えば海外拠点まで含めてレビューできることは重要なことだと思う。企業は分社化により本体から離れる場合があるので、報告書に記載する内容もそれ全体を含んだものであるべきだと思う。海外についても全部含めたものとして数字は扱う必要があると思うので、そのような場合にグローバルに検証が出来るような機能が必要になると思う。

(上妻委員)資料3にはワーキンググループで話し合われたことが集約されており、この○印がついているところについては第3回目で話し合われる予定である。ワーキンググループにおいては、実務の対応を3つの類型に分けるということについて合意が得られている。また、細かい基準を作成し正確性をチェックできることは、数字で書かれていることや目で見てわかることなので、それだけは検証という形でやっていこうということになっている。取組が適切であるかについては個々の事例によって全く違い、これを基準化して作っていくのは現段階では非常に困難であるので、NGOや学識者の方々の個人の資質で、評価あるいは勧告というような機能を付与していただく。ただし、山本委員がご指摘になったように、重大な問題が欠落しているのに、それがあたかもないように所見で扱われていることには問題があるので、読者をミスリードしないためにも、報告したことについてどのような判断ポイントや根拠で書かれたのか、報告の部分だけは根拠を明示するということで対処しようという結論になった。

(河野座長)一番議論してもらいたいのは資料4だと思っている。私の理解では、資料3までは現在行われている検証についてのまとめである。そのまとめたものとして、いわゆる検証にあたるものと、評価にあたるものと、勧告にあたるものとに分類される。そして、検証をするとした場合、作成基準や第三者レビューの基準というものがあり、これで十分かどうかについては今後詰めていく必要があると思うが、検証制度を立ち上げるとするとおよそこのような枠組みであるということについて、特にご異論がなければ先に進みたいが。

(辰巳委員)そうすると類型1、2、3があり、類型1だけでいいのか、或いは1と2両方が必要なのか、1、2、3全てが必要なのか、そのような話はどうなのか。

(河野座長)それは次の議論である。これは実務がこのような形になっているということで分類してあり、それを前提として資料4でこれから議論になると思う。

(上妻委員)ワーキンググループでは、類型1、2、3全て必要だという認識である。類型1については今までの監査などのノウハウがそのまま使えるので、ここについては問題ないという結論がでた。類型2と3についても、積極的に添付していく方向で制度を作ることが望ましいのではないか、という方向で議論が行われている。

(辰巳委員)第三者レビューの基準を明確化するという話だが、報告書の作成基準も一緒に考えていかなくてはいけないという理解でよろしいか。

(上妻委員)そうだ。ただし、それは別途検討されることだと思う。

(河野座長)ここまでは、実務がこのようになっているということで、この次に、枠組みについて資料4で検討しようと思うが、それでよろしいか。

(児嶋委員)平井委員と大竹委員に抵抗のない範囲で教えていただきたいのだが、この勧告を載せるべきだと第三者の方がおっしゃったのか、それとも載せたいというように会社側が判断されたのか。そして、この全体のレイアウトは、第三者の方が望んでいることなのか、それとも会社の方が望んでいるのか。

(平井委員)いずれも会社側の判断である。これは、審査終了後の審査のまとめ段階で色々と指摘された内容であり、我々はこれを自らの縛りとして次のステップに望みたいので、環境報告書の最後に掲載させてほしいとの意向を伝え了解を得た上で、環境報告書の最後に掲載した。  

(大竹委員)当社も全く同じである。

(児嶋委員)財務諸表監査などの場合、監査人側は勧告などについては、社内だけで使用してもらうように言う。それは、勧告が表に出ると全体のイメージに影がかかってしまう恐れがあるからだが、こうしたことは第三者側も了解していることなのであろうか。

(平井委員)基本的にはそうである。

(河野座長)次にいきたい。資料3にある類型化には一応の合意があったということで、資料4についてご意見をお願いする。

(藤村委員)資料の後半で、環境報告書の基準やコア指標などを作るというところは、非常に良いと思っている。ただ、最初の監査・登録の仕組みのところで質問がある。民間資格の環境報告監査人(仮称)を創設する或いはロゴマークを付与するのは、誰が創設し誰が付与するものなのだろうか。どのようなものを考えておられるのか。

(事務局) 本来ならば運営組織や事務局などが必要なのだろうが、現段階ではそこまでは想定していない。

(藤村委員)これを見て、何か環境省の外郭団体ができて、監査人といった新制度を作り、それにあった人には資格を付与するという、今までと同じようなルートでいくのかとイメージした。それでは、今までの社会の仕組みと全く同じであり、少しも変わらないのではないかと思う。環境報告書が社会を持続的にすることに本当に役に立つものにするためには、誰が付与するのか、またこのような監査人やロゴマークというものが本当に必要なのかという議論がある。これから議論するということでよいか。  

(事務局) 議論するということであるが、例えば何かイメージしている案があれば、それをいただければと思うが。

(藤村委員)そもそも監査人のようなものが必要なのか、少し疑問に思う。

(事務局) 数値の正確性というのは確保する必要があると考える。それを特定の技術である一定以上の知見のある人がやるべきかどうか、というとこが判断の分かれ目ではないかと思う。  

(藤村委員)恐らくコア指標などを判断するには、このような専門の知識を持った人が必要なのではないか、ということでよろしいか。  

(事務局) 環境報告書の信頼性確保のために、記載されている数字の正確性などは担保する必要がないということであれば、監査人のようなものは要らないという結論に近いと思う。しかし、それについては第1回検討会から必要という方向でいる。それだけでは信頼性は確保されないとは思うが、報告書の信頼性をある程度確保する上でのスタートラインであると思う。

(藤村委員)必要最低限のコア指標の部分に限っていうなら、しっかりチェックできる人が必要だということに関しては同意である。しかし、このように環境報告監査人みたいな話では、そのコアの部分だけでなくもっと違うところまで監査する人というイメージにとれるので、そのようなものが必要なのかということを申し上げた。

(上妻委員)現在の監査法人の実務をみていただくとわかると思うが、そこまではコストが掛かりすぎるので、非常に限られた範囲でしか監査することが出来ない。ほかの領域については、例えば適切な行動をとっているかについては、少し違う枠組みで、例えばNGOなどに委ねるしかないのが現状だと思う。

(山本委員)今の点だが、上妻委員の言うこともわかるが私はやはりエキスパートが必要だと思う。現在、温暖化効果ガスの排出量の集計方法について、国際的な基準を定めようとする動きがある。温暖化効果ガスだけでも今後信頼性を確保していく必要が非常にあるが、同様に農薬や環境ホルモン等様々な問題があるので、監査人ということではなく、基本的なことを総合的かつ俯瞰的に把握して検証出来る人が必要だと思う。

(藤村委員)それには同感である。

(瀬尾委員)本日の議論は特に報告書を作成したことがある人は本当にこのような形で書くだろうかという感じがあり、机上の空論という感じが非常に強い。例えば正確性の部分についてだけ考えても、監査で保証できる部分は環境報告書の中のほんの一部分だと思う。それをあたかも、この例でいえば企業にロゴマークを付与するという形で、非常に短絡した形の第三者レビューあるいは保証になっている。ぜひ一度、全体的な企業の環境経営、或いはそれを示す環境レポートの中で、監査した結果として保証する部分は何処なのかを図示していただきたい。そのような形で、全体観をみないと一人歩きをしてしまう恐れがある。
もう一つワーキンググループ等で、レビューの制度を作るにしてもコアの基準を作るにしても、どちらか一方でなく両方平行して具体的に議論していただきたいと思う。

(河野座長)結局今いわれたのは資料3にある、検証、評価、勧告のうち、どの範囲でやるのかということか。検証ならかなり実現可能性はあるが、それは環境報告書の一部でしかないということであろう。今の点について何かありますか。

(辰巳委員)基準を設けて、それにあっているかどうかというような判定になると、作成側の自主性がかなり損なわれてしまう恐れがあると思う。この範囲は確かにやるが、その他は自由にやってもらうようにしないと、環境報告書だからこそある業種業態の違いがうまく出てこないと思う。何もかも基準を設けてただチェックするとなると、逆に報告する側はそれに合わせたものしかやらなくなるのではという気がする。それでは、報告書自体が薄っぺらなものになってしまうような恐れを感じた。

(児嶋委員)一つ提案だが、第三者による報告の問題と、資格、ロゴマークは分けて議論したほうがよく、この場では資格とロゴマークについての議論はしなくてもよいと思う。
資格については反対である。理由は、同じ資格を名乗っていても、その中でばらつきがあるのに、そのばらつきがあるものに同一の資格を与えることはとても考えられない。
ロゴマークについて反対する理由は、ロゴマークを与えた後で取り上げるときには、大変な訴訟問題になる。それは膨大な裁判を引き起こす可能性を含んでおり、社会的には無駄になると思う。そのような意味で、第三者の報告に焦点を当てて議論を進めていただきたいと思う。

(河野座長)第三者が報告書を何らかの形でレビューして、認定するということについて言っているのか。 

(児嶋委員)認定するかどうかではない。企業が第三者レビューを受けるのはそもそも自由なので、もし受けるならばこのような形がいいというのを出すのでよいと思う。もし第三者レビューをする場合に、基準を作る必要があるならば、それはワーキンググループで作られるものだろう。

(河野座長)そのような議論であろうかと個人的には理解しているが。 

(児嶋委員)資格とロゴマークがはいってくると、それで余計な時間を使ってしまうので、分けて議論したほうがいいという提案である。 

(辰巳委員)自由意志でやると言っても、結局環境報告書のガイドラインと同じで、ある程度環境省で作ったと言うことになれば、環境報告書の作成者は無視することはできないと思う。

(児嶋委員)この検討会は、第三者報告が必要だと、あると良いと仮定した上での議論であると理解している。

(上妻委員)制度の様々な問題点が出てきているが、基準を作るということは、その基準よりもより高い水準の報告をしようとする人達を阻害してしまうことは度々指摘されている。ただ、基準が無いときに、バラバラな実務を行っているところをある一定のところに引き上げる効果がある。
その基準の水準をどこに作るかによって全然違ってくるが、業界による事情等もあるので、絶えずそれは見直していかなければならない。ただ、水準をあまり高くすると誰もついてこられないし、低くするとそこに全部収斂されてしまう。そのようなことを避けるために、環境省でも環境パフォーマンス指標、環境会計など色々な検討会が継続的に行われ、進歩していると思う。
この検討会では、信頼性を担保するための枠組みについて話しているので、全てのところまで広げてしまうと議論の収拾がつかなくなってしまう。今のところ、基準を適正に定めて、なるべく良い情報開示の仕組みを作ることに関しては合意があるので、議論を区分して進めてはどうか。

(平井委員)資料4-2「監査内容の要素」に少し気になることがある。[1]から[3]は、作成開示基準との関係もあり、読み手が求める環境報告書で開示する情報の種類や、レベルが適切であるかどうかの視点であろうかと思う。しかし[4]は、例として削減目標とあり、考え方の所に「作成開示基準の作り方によって変動するものであり、絶対的なものではない」と確かに書いてあるが、これはまさに当該の主体が環境の取組をどのようにやっているかということそのものである。それを実際に監査することになると、監査側は物差しをどのように考えて監査するのか。多様性や自主性を損なうものではないと書いてあるが、二酸化炭素については自主行動計画や京都議定書などのメルクマールがあるのでわかり易いが、それ以外の要素になると、このような合理的な物差しはほとんどないと思う。そのような状況下でこのような監査をするのは、監査側にとっては大変なことという気がする。

(藤村委員)これを全てするということではなく、少なくとも[1][2]あたりをきちんとできる人を考えているのだと思う。先程山本先生がおっしゃられたプロが見なければ分からない部分が[1][2]であり、[3][4]等のその他のところは色々な人に関わってもらうことだと思う。そうすると環境報告書の幅や企業の違い、面白さなどが出て来ると思う。
情報の信頼性や比較可能性等を考慮すると、最低限のコア情報はしっかりしたものが必要だと思う。それが消費者にとって比較が出来る部分になると思う。
そういう意味でデータをみることのできる専門家が関わることは非常に大事なことだが、企業の自主性やがんばり、面白さやチャレンジ等の視点を加える意味で、色々な方が関わって作れるような環境報告書はすごく面白いというイメージがある。最低限のコアの部分をここで議論をするものだと理解している。

(河野座長)今の意見は検証、評価、勧告でいうと、検証に限って第三者の意見の仕組みが可能ということか。

(藤村委員)その部分でなくてはしっかりしたものは作り難いと思う。  

(事務局) 資料4の性質について述べさせて貰う。最初に素案ではないといったのは、議論がどこまでを対象とするのか、誰が判断するのかなど、その姿を一度整理しなければ、何が論点なのかもわからないだろうということで示したものであり、事務局として[1]から[4]までやらなくてはいけないと思いこんでいるわけではない。どこまでを対象にするかも含めて議論していただきたい。

(谷委員) 比較可能性は非常に大事で、それが現状では難しいという意見には同意である。正確性に関していうと、例えばCO2排出量についても正確性を保証するのは非常に難しいと思う。
例えばアメリカのグローバル企業には、開発と設計は自ら手掛けるが、生産は第三者にしてもらい、それを仕入れて販売するという事業方法がある。事業の売上などは増大していくが、その事業においての環境負荷は、第三者を含めないと減っていく。
この事業の領域において、CO2排出量の書かれている数字そのものが正しいかと言えば正しいが、これが比較できるのかというと、これは非常に難しいと思う。[1]でさえ非常に難しいという認識を持っていただきたい。

(児嶋委員)今の議論を反映したものが資料3にある。類型の評価の項目のレビューの手続き基準に横棒が引いてあるので、それほどこれについては考え方や捉え方がばらけているとは思えない。

(谷委員) 正確性を保証するのは、どのようにできるかということについてはどうか。

(上妻委員)それは報告基準の作り方によると思う。どのような環境パフォーマンス指標を取り上げるかという問題になってくる。ただしご指摘になられた問題点は現前として存在していると思う。  

(児嶋委員)今いわれたように、ソフトな感じで捉えられるといいと思う。例として、日本の財務諸表監査には50年の歴史があるが、財務諸表が企業の財政状態を適正に表示しているという「適正」とは何かということを、50年間議論しており、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準の定義が日本にはまだない。それでも50年間動いてきた。日本は、財務諸表監査の基準ですら定義がない状態で成り立っている社会なので、フレキシブルに考えていけばいいと思う。 

(谷委員) この検討会の基本である比較可能性と正確性に、難しさも含んでいるということなのか。  

(上妻委員)比較可能性には色々な側面がある。例えば企業によって事情や対応が異なるのに、CO2排出量の数字だけをみた時に、それが多いかどうかについての比較が可能かという問題がある。ある一定の手続きをして出された数字は比較が可能という捉え方もできる。問題のくくり方を極端にすると議論が成り立たなくなってしまう。

(事務局) 我々は、数字が正確であることは、比較が可能になる前提条件だろうと考えている。この企業は事業領域を広く生産まで手掛け、たくさん雇用して立派な会社だと読み手が判断するかは、読み手側の資質の問題である。

(谷委員) そうであれば、このような制度でなくても、今の色々な検証のやり方の中で、読み手がどう判断するかだと考えるが。

(藤村委員)現状では各社が構築または設定しているものに基づいて評価しているので、これをある程度一定のものにして比較できるようにする。消費者は数値のことだけではなく、もっと違う要素も含めて良いか悪いかを評価するので、最低限のところだけは基準を作り、その他は自由に企業にやってもらうということで理解している。

(辰巳委員)検証する範囲があると思う。その範囲において、「ここは組み立てだけなのでこのような状況でこうでした。この数字に関しては正しいです」というような表現方法が出てくるのではないか。 

(大竹委員)業種業態で全く違うので、例えばCO2についても業界である一定のものを決めていかないと、比較は絶対的に無理だと思う。ある一定のものを決める際には、業種にある程度委ねる必要があると思う。   

(河野座長)作り方にもよると思うが、財務会計の分野でも業種が違うと計算の仕方が違いうるという話があるので、業種別基準を作るというのは大変で難しいと思う。比較可能性を高める為の仕組み作りが難しいということが非常に強調されているが、それを作るためにこの場で議論しているのだと思う。先程児嶋委員より資料4に基づいてこの先の議論のあり方などを決めたほうがよいのではという提案があったので、少しまとめてみたい。
登録制度への参加は自由という合意があった。そして、何らかの作成基準に基づいて作成された報告書に対して、第三者がそれ見て意見を述べることについては合意があった。ロゴマークをつけるか証明書を出すだけに留まるのかについては、現段階では意見が一致していないと思う。環境報告書の記載内容をデータベースに載せることは特段問題がないと思う。新資格については議論がわかれるが、なんらかの専門家が要ることは確かだと思う。専門家がどのような人材かについてはワーキンググループのほうで議論して頂きたいと思う。
監査内容ついては、情報の正確性や基準準拠性は問題が少なく、これは検証にあたるところだと思う。評価と勧告をどこまで含めるかについては、全て含めるべきだという議論もあるが、比較可能性ということで更に高度な専門家にみてもらうということであれば、検証の部分しかできないと思う。誰が第三者レビューをするか、内容をどこまで含めるのかは、一体として議論していく必要があると思う。
今まとめたような内容で、一応の合意はえられるか。そうであれば、それをワーキンググループに検討してもらい、その結果に基づいたものを次の検討会で議論していきたい。  

(藤村委員)資格人制度が必要かどうかの議論はどうなるのか。

(児嶋委員)この場で資格が要ると思っている人はいないと思うが。

(河野座長)資格というか、誰が監査するかは決めなければならないと思う。

(児嶋委員)資質と資格に関して、資質が要ることには同意があるが、要するにクオリファイする必要があるかどうかについてはもうよいと思うが。

(河野座長)そこも含めてワーキンググループで考えて欲しいと思う。資格が要らないということはここでの合意であろうか。

(渡邉委員)議論の優先順位のことだと思うが、要は資質と言ってもその人がどのような人なのかは他人からは分からないので、それをわからせる手段として、肩書きがある。現実には、同一の資格を持っているが個人の資質にばらつきがあるという場合もあると認識している。それについて、どこかでは議論しなければいけないことだとは思うが、それは報告等の枠組みと並んで話すことではなく、その一構成要素として議論すればいいことだと思う。   

(児嶋委員)国家が新しい資格を作る必要はないといっているだけである。

(渡邉委員)例えば報告書について誰かが「適正である」と言っているとする。このとき、「適正である」言っている人がどういう人かわからないのに、読者は報告書を「適正である」と信用することができるだろうか。その辺りはどのように確保しようと考えておられるのだろうか。  

(藤村委員)それは、算出基準等を明確にすることで判断できるのではないか。

(渡邉委員)例えば、算出基準が明確になっていても、間違って集計したり、算出基準に従っていなかったりする場合があるかもしれない。それを何処の誰かもわからない人が「算出基準に従ってやったので合っている」といったとして、その際に、それを読んで本当に信用したものが何らかの損害受けた場合、どう考えればよいのか。 

(藤村委員)ある程度の専門性を持った人が見ることについては合意されたが、それを資格制度にするというのは少し違う話だと思う。

(上妻委員)多分資格制度が出来るとしても、検証の部分しかできないと思うので、検証の部分を担当する人とそれ以外の評価、勧告を担当する人を、仕組みのなかでどのように取り込んでいくかは別だと思う。両方とも一緒に協力して進めていくことにはなると思う。
確かに私も規制がかかることは好ましいとは思わない。しかし、何か非常に緩やかなレベルのものがあることのほうが、全体的な取組を高めていくことにはなると思う。弊害があるかどうかの問題だけなのだが、この程度の緩いものなら弊害よりもむしろメリットのほうが大きいと思う。

(河野座長)意見も分かれたので、資質と資格についてはワーキンググループで検討していただきたいと思う。その際、メリット、デメリット、どちらになるのか一応の結論を出していただきたい。もし結論がでなければ、またこの検討会で議論するというような方向でよろしいか。
ワーキンググループでは、登録制度の参加は自由であること、環境報告書について第三者のレビューをすること、その際ロゴマークについてはそれを採用するか否かについて議論又は結論は出ていないことなどを踏まえて、監査の内容について検証、評価、勧告等、どの範囲までいれるかを検討し、第三者レビューの資質並びに資格を明示するのかなども議論していただきたいと思う。次回の検討会は、提出された案に基づいて、第三者レビューについて議論を進めていきたい。

以上