総合環境政策

環境報告の促進方針に関する検討会第2回議事概要

日時

平成14年9月30日(月) 10:00~12:00

会場

中央合同庁舎5号館2階共用第6会議室

出席委員

稲岡、大竹、河野、上妻、児嶋、菅野、瀬尾、辰巳、谷、平井、藤村、渡邉(敬称略、50音順)

議事内容

○資料1、資料2 討議

(河野座長)資料1及び2において、第三者レビュー制度の検討の方向性について事務局より説明があった。今の説明についてご意見等あればどうぞ。

(辰巳委員)資料2の1、関係者の三角形の図についてだが、利害関係者からレビュー実施者或いはその企業に対しての矢印もあってもいいと思う。また、企業の経営者に対しては、利害関係者が意思決定するということは結局その企業の評価をするとか、あるいは企業の評価にあたらなくても意思表明するということであり、そのような矢印があってもいいと思う。関係者の図中で、その部分の矢印が双方向になっていないのが気になった。

(事務局) この図は簡素化したものであり、求められている目的に対して経営者が情報を発信しているわけだから、その求められている目的は当然利害関係者から発信されるものだと思う。

(河野座長)個人的な意見として、社会的な合意というのは双方向のものであり、暗黙の合意であると思うが、それを見つけ出すことが難しいのだと思う。

(菅野委員)今の意見に同感だ。環境報告書は、環境コミュニケーションの手段という位置付けで考えている。双方向性を確保したいという思いがあるため、アンケート用紙を環境報告書の中に入れたり、ウェブでご意見をいただいたりしている。

(藤村委員)私達はNGOとして環境報告書作りに関わったが、別に数字の信頼性を確保するという立場で携わったわけではないし、コンサルティング・アドバイスという立場で携わったわけでもない。NGOとして、企業と一緒に作りながら読者に分かり易く、かつ企業にも変わってもらいたいという目的で携わった。この図をみると、きっちりとわけているが、この中間にあるというのも有り得ると思う。

(事務局) 各企業で実施している第三者レビューのパターンには様々なパターンがあると思う。この図は単に分かり易いように、両極端に大きく二分解して説明してあるが、厳密には色々なパターンが存在すると思う。

(河野座長)藤村委員の話は、制度をどうするかというところでまた議論になると思う。

(児嶋委員)私はこの表をみてもあまり抵抗がない。敢えて双方向ということに関していうと、例えば企業の財務諸表、決算書の監査において、情報が不適切、不適正であった場合、それによって損害を被ったら損害賠償責任を追求する。その代わりその企業が発信する決算書を利用する際に、なんらかのコストを負担している。そのため、企業には、損害賠償責任もあるというような考え方がある。
 それと、社会的合意というのは、企業が環境報告書を作成するときにどうやって作るかという基準を作る際に、或いは第三者がみるときの基準をつくる際に、基準作りに利用者側から参加をすることで、形成されると思う。
 コンサルティングと第三者レビューとを分けてスタートするのはやむを得ず、中間がどういう形ででてくるかというのは後でわかるのではないか。
 また、「レビュー」という言葉は、まだ日本には正式には入ってない。監査に対してレビューというものがあり、監査等の世界ではレビューとは、見た限りでは間違いがあるとは思わなかった、間違いが見つけられなかった、間違いには気づかなかった、という報告書を出すものであり、専門的には消極的保証といわれている。それに対して、公認会計士が決算書に対して意見を述べるのは積極的な保証という概念をもっている。この検討会がスタートした時点では第三者レビューでいいと思うが、そのうち第三者意見なのか審査なのか、用語をどこかで決めていく必要があると思う。事務局へ質問だが、信頼性の確保という言葉は報告書に載っていましたか。

(事務局) 保証になっているが、事務局で信頼性の確保としてとらえた。

(河野座長)今のご指摘は重要で今後取り上げることもあると思う。

(上妻委員)双方向性が重要なポイントになると思う。
 環境報告書を作って情報を発信する、双方向性を確保するということは、現在でも行われていることだと思うが、レビューにしろ検証にしろ、そうした業務に関しては、恐らく情報を利用する人の意見等が直接レビューの実施者には届いていないと思う。また、そういう仕組みにはなっていない。その辺が非常に大きな問題となっている。

(谷委員) 色々な種類の利害関係者を一括りにしているため、非常に分かりにくいものになっていると思う。最終的な消費者や投資家等に至るあいだに、各社の報告書を評価する、また、判断につなげるための格付け機関等が実際にはある。そういう機能を果たしているものがこの間にあるということが表現されていると、より分かり易いと思う。

(児嶋委員)この利害関係者とは、環境報告書を利用する利用者という意味でよろしいのではないか。

(河野座長)経営者はそういう利用者を念頭に置いて、この利用者にはこういう内容というように、利用者ごとに暗黙の合意というものを想定するということだろうか。今の話だと、双方向という矢印についてはどうか。

(谷委員) 双方向であるべきだと思う。

(児嶋委員)公認会計士の本来の業務は、企業の決算書に対して監査をすることだ。しかし、外国では会計士の業務が非常に広がっていて、例えば世界的な会計事務所のホームページにアクセスすると、「Audit(監査)」という言葉はもう出てこない。会計士が何かある情報に信頼性を与えることを、アシュアランス業務という呼び方をしている。この資料にある次世代会計士保証業務研究会の「保証」というのは、「保証」という言葉を本当に使ってよいかどうかということから出発しており、発信される情報の価値を高める、という意味合いもあるというように取っていただければと思う。もう一つの次世代会計士保証業務研究会の前提としては、もし公認会計士が何らかの信頼性を与える業務を行う場合は、このような基準が必要だろうというのを念頭に置いてこの報告書は作られている。だから、次世代会計士保証業務は当然公認会計士だけの仕事ということではないが、ただ発想としては、企業の財務諸表を監査する経験の延長線上でこうした概念図が作られている。

(河野座長)保証についての話があった。信頼性を確保する機能ということで、これをどのように呼ぶかについては大きな議論になると思う。

(事務局) このような資料を用意したのは、環境報告書の機能自体が発展段階であるため、社会的に環境報告書にどういう情報を期待するのかということと、ここでは第三者レビューと呼ばせてもらっている機能に対して、社会的にどこまで期待するのかということを、むしろ従来の保証という概念から少し離れて議論していただいたほうがいいだろうということで、無理に「信頼性を確保するという機能」という言葉を使って資料を用意させてもらった。
 資料2の2についても「信頼性を確保する機能」というものを典型的に三角形で表して、三者の関係であること自体に新しい概念の整理ができたということで、敢えて二者の関係で捉えられる資料を用意させてもらった。河野座長もいわれたように、どの範囲でどういうところまで信頼性を確保するのか、また、この枠組みを構築すべきなのか、あるいは構築できるのか、ということについてこの場でご議論いただければと思う。

(河野座長)資料1と2の第三者レビューの検討、これからどういうことを検討するか、おおよその枠組みについてご了解をいただいたと思う。次に、この検討会にご参画いただいている各企業委員の環境報告書における第三者レビューについて、簡単に説明をお願いしたい。

○各企業の説明

(稲岡委員)環境報告書の作り手側として、どういう姿があるのか、どういう姿であるべきかを考えているプロセスの中にいる。企業として、今問われていることに、企業の社会的責任ということがある。経済誌の中の幾つかも、企業の社会的責任をテーマにしている。そういうトレンドの中で、私共はステークホルダーに対する説明責任を考えて仕事をしているつもりだ。
 このたたき台ペーパーの方向性として、環境報告書の第三者レビューの為の基準の明確化が必要だと記載されているが、企業の社会的説明責任をどう果たしていくかを考えている中で、第三者レビューのための基準の明確化となると随分細かい議論だというのが実感だ。
 監査であれ保証であれレビューであれ用語はともかく、事務局がいわれたような信頼性を確保する機能とコンサルティングとを分けるというのは、企業の側からいうと責任という一言でふられてしまう。細かな分野の細かな機能だけについて基準を明確化していくことの意味がどのくらいあるのかということになる。やはりもう少し議論を広げていただければ、というのが作り手側の率直な意見である。

(瀬尾委員)私共のものは第三者意見であり、NPOの代表者にレポートを読んで頂いて、必要なものについてはヒアリングを受け、それについてのご意見を書いていただいた。これにより、情報の中身について保証していただいているというような気持ちはないし、ご本人にもそういう認識はない。昨年初めて書いていただき、今年は2回目ということで、昨年いただいた意見に対して、私共が今年どのように取組んできたのかということも書いてあり、それも含めて今年の意見を頂いた。
 先程の整理からいうと、資料2の2のアドバイスというものに、敢えて言えばあたると思うが、情報の価値を向上させるという意味があるという認識もある。

(大竹委員)建設業はゼネコンということで、社会的なイメージは上位に位置するものではないので、こういう報告書を出す以上、ある程度何らかの形で信頼性を担保する必要があると考え、監査法人系の会社に、4年前に検証を受けた。しかし、検証自体がまだ模索状況で、内容的には、正直いうと非常にコストがかかるということが第一にある。検証自体コストがかかるため、建設業界では現在3社程検証を受けているが、積極的にこれが進展していくようには思えず、逆に後退のイメージがある。今後、こういう検証の仕組みそのものが根付くためには、コスト面とか、監査の段階・レベルがあってもいいと思う。一律に全業種横並びで比較というのは不可能だと思う。まず業種毎という考え方があり、それから企業の規模も大中小と大きさがあるので、そのような意味で監査のレベルがあってもいいと思う。
 また、我社が受けたものはかなりシビアな監査であって、多くは見ていただけないが、私共の作業場、作業場の実態、EMSの審査の実態、或いは廃棄物の問題もあるので処分場をみていただいたうえで、定性的、定量的データ等をみていただいた。客観的な情報に基づいた基準というものは、正直言って今のGRI、WICE、環境省ガイドラインなどがベースになっていると思う。そのうえで、客観性に基づいたアドバイスはいただいている。検証という実態の中には、信頼性の確保とだけ書いてあるが、現実には助言もある。基本的には意見書だけではなくて、参考所見という形で意見もそのまま記載しているのが現状だ。

(平井委員)様々な表現がでてきたが、東京ガスの場合は審査という言葉を使っている。第三者審査は4年受けていて、その間に若干の変遷がある。第1回は99年で、環境会計を導入してないためパフォーマンス、エコデータ、そして報告書全体の記述内容の信頼性を審査していただいた。第2、3回目は環境会計を導入しているため、パフォーマンス、エコデータ、環境会計、その他の記述内容を審査していただいた。今年は去年と違い、その他の記述内容はカットして、審査の中身をパフォーマンス、エコデータ、環境会計に絞った。その理由は、費用対効果というものももちろんあるが、従来過度に手間をかけてその他の記述内容について色々とチェックしていただいたが、去年の環境報告書では、審査結果の表現の中に「環境報告書に記載されている全ての指標の正確性、網羅性、並びにその他の記述内容について監査意見を表明するものではない」とはっきり書かれており、我々も、このように書かれたこととの関係において、全体をカバーするような審査というのはどういうものかと思い、今年はその他の記述内容等の全体をカバーしたような審査は行わなかった。
 参考意見的なものは、この資料の裏に色々と例があるが、審査は審査として別途審査報告書として記載し、その際に審査機関よりご指摘をいただいたものは環境報告書の中にそのまま掲載している。また、それをどうフォローしたかということについて、編集後記に載せている。それと、今年の環境報告書から各ページの記載内容について、第三者審査の対象になっているかどうかが全部わかるようにページ毎にマークを表示した。
 先程双方向性という話の中で、利害関係者の意見を伺うことが必要ということがあったが、全くその通りだと思う。今後の課題としては、審査機関だけではなく、作成段階から利害関係者の意見をいれて、作成をすすめるという取組が必要になってくるのではないかと思っている。

(菅野委員)第三者意見書ということで、特に持続可能性分析を実施している。一番のポイントは、やはり持続可能性という観点から、当社が進めている環境方針、環境活動、そして製品開発の方向性の妥当性を確認し、その質的な向上を目指すという意味での分析を実施している。グローバルな視点での持続可能性について、企業としてどうするべきか、それに対する見識をもっているスウェーデンのNPOに第三者意見を求めた。今日時点の数字も重要だと思うが、企業価値の維持向上という意味で、将来におけるリスクに備えるという観点から、色々アドバイスをいただくことも期待している。
 また、社内の経営者、従業員にグローバルな視点から環境をどうすべきか、ということを知ってもらうことも重要だと考え、この意見書に基づき、社内セミナーの実施などの取組をしている。また、リサイクルということでマグネシウム合金を大々的に採用しているが、その金属を採掘するときや精錬するときに、どれだけ持続可能性に対して厳しい批判的な目でみているか、また、難分解や自然にはない物質は基本的にはなくすことについてどのように考えているのか、開発途上国のニーズに合わせてどのような商品を開発しているのか等、日頃あまり考えていないところをきちっと指摘されている。そういう意味で、当社の方向性に対してしっかりと審査してもらうことを一番念頭において第三者意見書をもらっているというのが、当社の考えである。

(谷委員) 企業の社会的責任については稲岡委員と全く同じ考えである。報告書も審査もまだまだ途上である。我社の報告書は、環境経営報告書という名称で、英文ではサステナビリティレポートという呼び方をしている。環境経営という言葉だが、私共の社長が、外から示された形に報告することが報告の本質ではなく、その背景を十分に理解して、その上で自分達がどう考えてどう実践していくのかを説明するものが報告であるといっており、それに則った形で可能な限り表現した。そして環境報告原則というものをつくり、例えば正確性等を明確に記載している。
 その上で第三者検証であるが、昨年と一昨年の2回、監査法人にお願いしたが、これは環境会計の審査をしてもらうという流れからそのようにした。しかし、よりよいやり方を色々と模索した結果、今年からは環境マネジメントシステムの審査登録機関にお願いした。検証で重視したことは、平井委員と同様で、記載されている数値情報を正確に検証して貰うことと、指摘事項をポジティブにフィードバックして、継続的な改善につなげられるということを非常に重視した。資料1にある第三者レビューのあり方の中で「勧告・指導・助言ではなく」と断定されているが、これらの事柄は非常に重要なことだと考えている。また、事業がグローバルにまたがっているので、グローバルに検証できる能力のあることが必要ということ。そして、もう一つの選定理由として、環境関連のデータは、お金のデータやその他のものと比べてかなり特徴があり、正確性の内容についてもまだまだ途上にあること、データ一つにしても特徴を持っているということ等を理解したうえで正確性をみてもらえることが、より適正な検証とポジティブなフィードバックにつながるという視点により選定を行った。
 数値、図表の適切性と信頼性、遡及性についてお願いし、記述・表現は先程の原則に則り、社会環境本部で検証している。対象サイトとして、本社と国内および中国、オランダ、ノルウエーの生産や販売拠点の検証をお願いした。コストは非常にかかる。データに絞ったという理由の一部としてコストの部分もある。
 一つの意見として、環境報告書の促進策として、資料にあるような特定の検証方法に限定するタイプの第三者レビュー制度の必要性は少ないのではないかと思う。リコーグループで8つ環境報告書を発行しており、更に今年中に十幾つかに増えると思うが、検証を受けているのはリコー本体だけで、その他は受けていない。また、受けることを進める気もない。これは負担が非常に大きいことと、今の表現でサイトまたは関連会社の報告書として十分にコミュニケーションの機能を果たしていると考えるからである。それから、レビューというのはかなり多様なやり方があっていいのではないかと思う。それとグローバル性が非常に必要になると考えている。
 レビューを受ける現場の負担として、コストもそうだが、多種多様な審査をうけるため、時間的・人的な負担も大きい。他の制度との整合性或いは重なりというものを合理的に扱うことも必要だと思う。例えば、CO2に関しては、排出権等との関連においてもその数字の正確性などを検討することが非常に大切になるように、多くのことで重複がでてくることについての配慮が必要だと思う。

(河野座長)各社で意見書や検証、審査などそれぞれ言葉が違う。言葉が違えば内容が違うし、同じ言葉でも内容が違うという印象を受けた。レビューのあり方についてもご意見いただいたが、これは今後の課題で議論されるので、それぞれの委員の方からいただいた各社の第三者意見書等の説明について何かご質問等があればどうぞ。

(稲岡委員)各社の事例のことではないが、監査法人は法律で会計監査しかできず、環境監査は出来ないと思っているが、その辺はどうなのか。

(渡邉委員)多くの場合は別会社、株式会社でやっているので、公認会計士法に基づく監査法人がやっているというわけではないと思う。

(稲岡委員)監査法人の名前でやっているところもある。

(渡邉委員)当事者でないのでわからないが、そういう法人はいわゆる公認会計士法の2項業務と認識してやっているのではないかと思う。

(大竹委員)私達も選定するときは別会社を設けているところを選定した。

(藤村委員)環境のデータについてだが、これはそれぞれ担当者が現場にいって、どれだけの原材料を使い、どのようなことをしているか等、全ての数字のチェックをしているのか。レベルが色々あると思うが、すごくコストがかかったと言われたリコーはどうか。

(谷委員) 調査対象のデータ範囲は、関連会社をほぼ含んでいるものになる。

(藤村委員)それは現場の方が出してきたデータの妥当性をみるということか。

(谷委員) 本社と先程申し上げた世界の何箇所かにおいて、データの発生からまとめるところまでその連関の正しさを見てもらった。

(河野座長)他に質問がなければ、各社の実施内容が多様であるという理解を得たという事で、先に進ませてもらいたい。

○資料3 討議

(河野座長)第三者レビュー制度を検討するにあたり、レビューの内容がどういうものなのか、どのような資質や能力を持った人がレビューをするのかについての、検討すべき内容のたたき台が示されている。これらは、今後検討する上で大事なことなので、より理解を深めるためにご意見を頂きたいと思う。

(上妻委員)ここから先を進めるにあたって、一つ合意を形成しておかなければならないと思う。「第三者レビュー」というような用語で、その用語を使って皆さんが考えられている内容はかなりばらばらだと思う。事務局の方で用意されているものというのは、専門家が使っている「レビュー」という、先程児嶋委員もおっしゃっていたような消極的保証をする、といったような形のものにかなり近いと思うが、その前にここで紹介があった6社の第三者意見書に類するものは、相当程度内容にばらつきがある。大きく分ければ3種類、細かく分ければ4種類ある。
 最初のイトーヨーカ堂と損保ジャパンのものは、専門家がよくいう第三者所見といわれるもので、その報告書をみて感想を述べている内容に近い。大成建設、東京ガス、リコー、この3社に関しては、専門家がいうレビューに近い。ただし、リコーについては、その保証を付与しているところが監査法人ではなく、いわゆる環境コンサルタントなので、そういう意味で用語が少し違い、少し内容が違う。松下電器のものに関しては、第三者所見に近いが、その所見が業務の内容にかなり詳しく入っているということで、かなり目新しいものだと思う。これら全部を第三者レビューに含むのかというと、多分含んでいないと思う。
 事務局が示した第三者レビューに近いものは、大成建設と東京ガスのような監査法人系のところがやっているものである。これは多分、会社との契約の中のある一定の手続きの中で、決められた項目をチェックした段階では別に異常はなかったというだけで、例えば重要な項目が漏れているなど、その他のことに関しては関与・関知しないというもので、非常に保証のレベルが落ちる。そのようなものを第三者レビューと想定して、そのことについてこれから議論してくということについて、合意があるのか。合意がないものをやってしまうと、出来上がったものがこの検討会の期待するものとはかなり違ってくるかもしれない。もし専門家がいっているような第三者レビューといわれる手続きについて、これから色々な問題を考えていくという合意があったとしても、資料3を見ていただくとわかると思うが、その専門家が考えているレビューの内容よりもかなり突っ込んだところまで、ここには検討項目に入っている。多分専門家がレビューをするとき、取組レベルの適切性といわれるようなところはやらないと思う。コストが莫大にかかる上に、そこまでは出来ない。例えば、環境報告書の中の環境方針に、我社はこういうことやりますということが書いてある。それについて適切かどうか、適正かどうかなどチェックはできない。そういう概念の整理をきちっとせずに先に進めていくと、先にいって大きな齟齬を生じることになるので、そこはきちっと整理したほうがいいと思う。

(藤村委員)私も同感だ。そもそも「専門家」という言葉自体も、上妻委員が考えている「専門家」と私達が考えている「専門家」というものでは、また違うのではないか。ここでは環境監査をする方を専門家といっており、私達からするとそれはすごく違和感がある。それに先程から各委員の意見を聞いていても、そもそも、かっちりした仕組みを作る必要があるのかどうかということも一議論ありそうだし、個人的にもそう思うので、まずはそこを議論してからでないと、このような議論に入ってもいつまでたっても、行きつ戻りつをするのではないかという気がする。

(児嶋委員)前提の話になってしまうが、上妻委員がいったことには全く同感である。議論の前提に必要なのは、社会的にコストを誰が負担するかという問題である。公認会計士の財務諸表の監査だと、最終的には監査法人は会社からお金をもらうが、そのお金は会社が負担するのではなく、株主に分配する利益から支払うわけで株主が負担しているともいえる。例えば、多くの情報、信頼性の高い情報を提供すると、低い金利で資金調達できるとする。それは低い金利で資金調達をするために、高いお金をかけてその情報の信頼性を高めたことを、誰が負担するかというと、低い金利で資金を貸す貸し手が負担するわけである。環境報告書とそれを第三者が検証するコストを社会的に誰が負担するのか、というのも前提にして、誰が負担してどの程度負担するのかというイメージがあって、初めてどの程度の専門性が必要なのか、どの程度の開示の詳細さが必要なのかということが出てくると思う。

(稲岡委員)上妻委員、児嶋委員から指摘された問題点は、この検討会の存続にかかわる問題であり、その議論を整理しておく必要があると思う。
 事務局から説明されたこと、まさに資料3の[2]のaにあるようなことは、大変申し訳ないが何をいっているのかさっぱりわからない。
 先程から意見が出されている、制度そのものが必要かとか、レビューは多様であっていいとか、他の制度との整合性を考える必要がある等、私も同様のことを考えている。ここでは、第三者レビューがあたかも環境報告書の信頼性を確保するために必要不可欠な用件のように、その前提の上に議論が進められているが、例えばスイスで80%くらいのシェアがある私共の同業の会社では、非常に美しく見事な環境報告書を作っている。その環境責任者に「あなたのところでは、第三者レビューは考えていないのか」と聞いたら、「なぜ私達が第三者レビューを受ける必要があるのか。当社が、当社の責任でだしている環境報告書を、なぜ第三者にレビューされる必要があるのか」との答えであった。
 今まさに企業の社会的責任ということを真剣に考えているなかで、環境報告書だけ第三者レビューが必要なのか。企業の社会的責任について、日夜真剣に深刻に考えているが、そういうときに今のようなことは理解できないし、資料4をみてみると、基準作り、資格試験、試験制度の構築、基準策定とか、報告書ガイドライン及び環境パフォーマンス指標ガイドラインを発展させる等、あたかも環境省が既に行っている施策を発展させ、更に新たに制度を作るというように受け取られる。これは、われわれ事業者がみると、規制の強化であり、新しい仕事を作ることである。本来事業者に任せるべきことを、官が権限を拡大して作ろうとしているように映る。今までの議論を聞くと、皆さんの認識は、その辺をクリアにしないとこの検討会は全くフィクションではないかと思う。

(事務局) 今の稲岡委員の発言も重要だと思うが、冒頭に申し上げたように、比較可能性と信頼性をどうやって確保するかが我々に与えられた課題であり、それをどうやって確保していくかということをこの検討会でお願いしたい、ということではじめている。従って比較可能性を確保する必要がないとか、或いはそういうことは個々の企業が担保していれば足りるのであって、それについての客観的な指標がいらないとなると、そもそもこの検討会がいらないということになるのかもしれないので、非常に重要な問題だと思う。
 このような資料を用意したのは、信頼性及び比較可能性を確保しようとしたとき、基本的には定量的なデータや、ある程度それに類する定性的な記述は、信頼性の確保ということで確認することが可能だと思うが、例えば菅野委員が先程いわれたように、そもそも会社の方針が正しいのかどうか、現下の環境問題に対して適切或いは先進的であるか等について、広い意味で社会的に確認するのは無理だろうというのがある。逆にいうと、そこまで比較可能性を確保して欲しいとか、環境報告書の信頼性が社会的に求められているという前提でいうなら、誰かが保証してくれることが求められているといことではなかろうか。
 この検討会では議論をかなり絞った上で、具体的な検討をするというつもりでやっているが、その辺りの基本的な認識が違っているということであれば、そもそもの絞り方に間違いがあるといけないので、座長には申し訳ありませんが、そのあたりの議論をもう少しお願いします。

(河野座長)議事録にもあるように第1回目の検討会では、資料4に基づき環境報告書の第三者レビューによる認定制度について検討するとなっている。そういうものがいらないという話になると、第1回の方向性をひっくり返すような話になるかと思う。上妻委員の提案は、レビュー内容がどういうものになるかにより、認定制度の内容も決まってくるだろうから、認定制度そのものについて議論することは必要ないという話ではなく、レビューというものの内容を決める必要があるのではないか、というものだと理解しているが。

(上妻委員)私が言いたいのは信頼性というところの意味である。この検討会がやろうとしている、第三者レビューの制度を作っていこうという方針については、社会的な合意が得られるものだと思っている。何故かというと、情報の作成者が必ずしも信頼性の高いものを提供しているとは限らないからだ。皆さん自負をもって作成しているが、信頼性を確保する際に、信頼性の中身とは一体何だろうということである。
 専門家云々という用語の問題もあると思うが、監査法人系の保証業務を行っているところの考えからいうレビューという手続きだと、信頼性の範囲がかなり限定されている。つまり、コスト面、技術面、レビューの対象になっている事項の面など、色々なところで制約されていて、その制約されている範囲を超えることが出来ないというのが現状だと思う。
 例えば新しい制度を作るときに、日本だけ全く離れたものをつくるわけにはいかず、世界的な流れも考慮にいれる必要があると思う。国際会計士連盟が環境報告書の検証なりレビューのガイドラインを作ろうとしていて、そのための研究報告が最近でた。そこで語られている内容も、やはり監査ほど高い保証の水準があるものではなく、もっと低いかなり限定されたものであるということを前提に話が進んでいる。今実際に行われている実務もそうである。そのときに、果たしてそれで皆さん納得するのでしょうか、という話である。納得されるのであれば、よく言われる中位の水準の保証の内容について、どういう制度や資格要件が考えられるかといったような、細かいことを検討していくことが可能である。しかし、もっと過大な期待があって、その環境報告書に書かれている内容が、これからの地球環境の改善に大きく貢献できるかというレベルになってくると、それは我々の任務の範囲を超えているかもしれない。だから、今の実務の現状の範囲、つまりある程度の限定された範囲であるならばもう少し詰めることが可能であるが、そのあたりの合意を形成していけるかということだ。

(平井委員)まさに合意を形成するのがこの場なのではないのか。資料には、「下記のうちどこまでを第三者レビューの対象とするのが適当か」とある。これは最大限広げると、これぐらいが検討すべき事項であろうということで挙げられていて、多分一つ一つの中身の中で、これはいらないというのが議論の中からでてくるかもしれない。一つ一つの項目について、この程度にするということを議論のなかから見出していこう、というのがこの検討の場だと私は理解している。

(河野座長)今の上妻委員の話は、既に実務というか、会計の中での保証の水準ということを議論されていて、それにのるかのらないかということに聞こえた。今、平井委員もいわれたが、ここでの議論は、そういうことよりも広い、例えば第三者レビューを所見というようにする等というような話ではなく、第三者レビューをするとすれば、色々なことを考えなくていはいけない。そして、そういうことを考えた結果として、レビューの中身が決まってくるという議論があるかと思う。

(藤村委員)まだ資料4の説明はないが、そこに制度というものがぽんと出ているので、流れとしてその方向にいくのかと思ったため、稲岡委員や私から意見があったと思う。私はやはり制度までいくのは少し問題があると思うが、ただ信頼性や比較可能性などを担保することは必要だと思っているので、この検討会の意味はあると思っている。
 座長がいわれたように、ここにいる方が色々な立場で参加しているので、レビューの範囲が会計監査的なところだけにいくと、私がここにいること自体に疑問を感じてしまう。やはりもっと違う広い意味での第三者レビューが、どこまで可能かということを議論するのがこの場ではないかと思う。

(児嶋委員)国際会計士連盟での話が出たのは、公認会計士には企業の財務諸表を監査してきた長い経験があるため、その経験の蓄積から同じ手法の延長線上として、環境を見ていこうというもので、会計のことを言っているのではない。また、公認会計士側の説明をすると、技術的な長年の蓄積があるということ、それで培った独立性や品質に対する社会の信頼性があるためであり、最初に言ったように公認会計士だけがやる仕事ではないことは明らかである。独占業務ということを誰も保証しないから、誰がやってもいいわけである。
 また、第三者のレビューを受けるのは当然任意であるため、受けたい人が受ければいい。例えば、商社が毎月金を積み立てていく、貯蓄するようなものがあるが、何社かあるうちの一社は、それがきちんと金庫の中で分別管理されているという報告書を出している。そして、公認会計士はそれに対して確かにそれは分別管理されており、経営者の言っていることに誤りはないという、保証ではないが報告書をつけている。それはその会社が勝手につけているのであって、別に法律によって要請されているわけではない。それは、顧客の信頼性を得るためにコストをかけてやっているのであり、そういう方向性でよいのではないか。

(辰巳委員)随分前から環境報告書を見ながら考えているが、他の委員会で「第三者レビューはいらないのではないか」と言ったことがある。それは、まさに稲岡委員がいわれたように、大企業が責任をもって出すものに、企業のことがよくわからないかもしれない第三者が敢えてコメントをつけることは必要ないのではないかということである。しかし、そう思って信頼してきた大企業の信頼が、このところ崩れてきている。企業が持っている企業の名前に対しての自分達の公明正大さに対する信頼が私達にはあったが、それが崩れてきてしまったので、果たして第三者レビューは必要ないのか、という気がしてきた。やはりどこかでしっかりとそれが担保されるとよいのではないか、という思いうが今はとてもある。第三者レビューに対してのコストが随分かかるといわれたが、そのコストが保証ということになるのだということは、今日の話を聞きながらすごく納得できた。
 その範囲はよく分からないが、私達がみて安心できるものが何か欲しいという気はする。今まで何故いらないといってきたかというと、その数値に限ってのみの保証であり、それは算数の上での話であったからで、むしろそうでないところに信頼が欲しいと思う。そこが今後の範囲の検討になるのではないか。やはりそういう意味で、この検討会は意味があるのではないかと私は思う。

 

(菅野委員)まず、環境報告書に多様性を認めるか認めないのか、比較可能性と多様性を認めるのかどうかについてですが、環境報告書というものは毎年進化していくものだと思っている。創意工夫するところに企業として面白みがあるから環境報告書を作っているわけで、あまり比較可能性を追求するだけではいけないと思う。最低限網羅しなければいけないことと、独自性とのバランスをどのようにとっていくかということがある。もう一つ、記載事項やデータについての裏付けまでは検証できると思うが、それが正しいかどうかということになると、グローバルに事業を展開している企業に対しては、膨大な費用をかけてもほとんど検証不可能に近いと思う。
 また、前にも触れたが、企業はISO14001に膨大なお金をかけて維持をしている。ISO14001を維持していることが、環境報告書に記載している取組の適切性になるのか、ならないのか。ISO14001の取組を活性化させるためにも、上手くISO14001の維持と環境報告書の信頼性ということがマッチしてくれば、二重に費用をかける必要もなくなると思う。その辺の工夫がいるのではないか。

(大竹委員)菅野委員と同意見だが、環境マネジメントシステムを運用している中で、パフォーマンスは見てないが、遵法性はみている。今後、パフォーマンスの部分をどのように情報公開していくかを考えていく必要があると思うが、それに対する検証は、各社のレベルがまちまちだと思う。それについて、このような制度でなければいけないということはいえないのではないか。EMASのなかの環境声明書というのはどの程度のレベルかよく知らないが、かなり普及しているということは、多分それほど綿密な精査はされていないと類推している。普及ということを考えると、そのような仕組みでいったほうが、普及するのではないかと思う。

(瀬尾委員)感覚的な話で恐縮だが、環境報告書というものが非常に進化しているなかで、正確性或いは信頼性といって保証できる部分は極めて小さい部分であるという認識がまず必要だろうと思う。あたかも環境報告書又はサステナビリティレポートの全体を保証するというような誤解があるので、そこをきちっと明確にして、我々が保証する或いは保証しようとしている部分は一体何なのかを、明確にすることが必要だと思う。
 それと、我々からみればここでの議論は、会計士的な発想で何かをやっていく、或いは制度まで作ってしまおうというような前提にたった議論がされているような気がしてならない。そこのところを全部フラットにして、本当に比較可能性、信頼性確保のために何が必要なのかということを議論していくことには大賛成である。
 私共は、企業として環境報告書を作っているだけでなく、エコファンドで評価する立場でもあるので、今の様々な環境報告書をみて、比較ができないというジレンマを抱えているので、そのような点からすればこの検討会の必要性はあるとは思う。

(渡邉委員)上妻委員や児嶋委員が述べられた意見と一緒で、信頼性の意味を考えるときに、その信頼性の範囲を限定しているということがある。これは、私達は限定した範囲については責任がある、というように考えているから限定しているのである。つまり、全く責任をとらないつもりであれば、何も限定する必要はないということで、信頼性の範囲を限定するというと責任逃れをしているように聞こえるが、そうではなくて、むしろちゃんと責任をとるという前提で考えているのである。よって、資料3は、第三者レビューの対象と主体の問題に絞っているが、本来はこの背景に報告制度の問題がある。要するに信頼できる情報が利用者に伝わるという報告の制度があって、その枠組みの中では当然、作成基準や監査基準を、様々な利害関係者の合意を得ながら設定するということである。
 菅野委員からお話があった多様性を認めるのか認めないのかについては、当然認めるべきだと思うが、比較可能性を高めるためには、これは最低限出しましょうというのが必要だと思う。その部分については、算出基準を明確にする、或いは検証するというような担保を考えてはどうかと思う。そのような意味で、検証する部分と検証できない部分、言い換えれば比較可能性を担保する部分と、企業の自由度を認める部分とをはっきりさせて、そのなかで区切ってやるということが現実的であると思う。
 また、瀬尾委員からお話があったが、例えばアナリストの方や格付けする方というのは、公表される情報より、詳しい情報を入手する機会があると思う。一方で、公表されるということは不特定多数の目に触れるということで、不特定多数がこれをどのように利用するかを考えた時に、何が保証されている必要があるか、つまり、何が保証されているのかを読み手が知っていることが必要であり、そのために作成基準や保証、監査基準などが必要ということだと思う。
 2つ目にコスト面についてだが、保証業務基準と作成基準とを合意をもって形成するというのは、どこまでのコストを誰が負担するのかを前提において、何を監査するのか、或いはどのように作るのかを約束することだと思う。当然ここでいう網羅性を入れればコストは高くなると思う。例えば資料3の1、�Aのa「項目に対する網羅性」については、私は何を意味しているのか解らなかったが、例えばタイトルがあればよいということであれば、あまり意味がないと思う。だから、網羅性ということであれば、当然ここでいっているようなネガティブな情報も全部書いてあるということだと思う。そのためには、何を書かなければいけないかということを、詳細に作らなければいけないし、逆にいえば何を書かなければいけないかということについての検証をするということでないと、コストは無制限にかかることになる。基準化することは、むしろ作成者、検証を受ける側にとっても、ある程度コストを合意した水準に抑えることができる効果があると思う。
 3つ目に、資料3の2のd、資格要件のところにEMSの知識・経験というのがあるが、これはもちろん資質としてはよいと思うが、ここで重要だと思うことは、EMS―環境マネジメントシステムとEIS―環境情報システムが、本当に同様なのかということである。従って、それは他のところに入るかもしれないが、パフォーマンスの情報を検証するためには、そこに関するしっかりとした知識が必要で、それは必ずしもEMSの構築、或いは審査の能力だけではないという気がする。
 最後に、用語の問題についてだが、例えば国際会計士連盟の動きは、GRIのVerification Working Groupの活動とリンクしているところがあり、あるいはGRIのメンバーの中に公認会計士がたくさん入っているという実状がある。従って、国際的な環境ディスクロージャーの動向を見ていく時に、やはり国際会計士連盟或いはIASBのなかで検討されている環境報告書の保証業務・指針というものを無視するわけにはいかないと思う。これにとらわれる必要はないが、これを意識しながら、国際的な水準を保ちながら独自の制度を作っていけばいいと思う。

(谷委員) 会計的手法を使った検証・レビューという方向性については、瀬尾委員と全く同じ感覚を抱いている。私共は、昨年、監査法人にお願いし、今年は他の方にお願いしたが、その信頼性・正確性等について差があるとは全く思えない。そして、環境そのものについての理解度の深さからいうと、より適切な審査・レビューをしていただけたのは、後者であったということも含めて、方向性を限定するのはどうかと考えている。まずはフラットな状態で色々な議論をした上で、方向性を決めるのが大事だと思う。   

(藤村委員)私も同感だ。環境報告書が、持続可能な社会を作る一つの有効な手段という位置付けにあるとすると、やはり今いわれたようなところで限定するのはすごくアンバランスだと思う。本当は人間社会というところまで広げたいが、そこまではちょっとというのが前回の議論にあったので、そこは視野にいれつつだが、やはりもう少し広い範囲で考えていくということが、まず前提条件としてないとなかなか議論は進まないのではないか。

(児嶋委員)誤解を解かないといけないと思うが、どこに頼むかというのはもちろん企業の自由であり、誰が信頼性を確保するという業務をしようと自由である。これは何も法律で規制するものではない。

(河野座長)環境報告書等において、信頼性と比較可能性というものが必要だ、ということについては合意がある。そのための、なんらかの制度或いは仕組みが必要であることにも合意があると思う。上妻委員が最初にだされた意見がこのように広がっているのだが、この仕組みについて、ここで最初に合意しましょうというのは無理だと思う。むしろ、そういう仕組み或いは制度を考えるときの要素について、資料3の第三者レビューの対象、内容について挙げられたもので、その内容について詰めていく。それから、資格について詰めていき、その結果、レビューの仕組みがどのようになるかが決まってくる。今後の議論は、レビューの対象或いはレビュー実施者の資質などを議論する。
 本日の議論を踏まえて、ハードな仕組みソフトな仕組み、という言葉をとりあえず使わせてもらうが、カチッと出来上がっている資料4にあるようなハードなものから代表的には藤村委員がいわれたようなことを考慮した仕組みなど多様な仕組みをワーキンググループで検討し、両方出していただいたものについて、次回に議論できればと思う。
 もう一度言い直すと、レビューの内容については、レビューの対象となる環境報告書の内容や、レビュー実施者の資格というようなものを検討する。そして、レビューの類型については、大雑把なものだが、ソフトなものとハードなものという、両方についていくつか考えてもらい、次回に議論させてもらえればと思う。

(辰巳委員)最初からすごく気になっていたが、「レビューの実施者に必要な資質」というのがあるが、ここに書かれているのは、私はまさにハードな資質だと思っている。資質という単語そのものが人間を表すわけだから、ソフトな資質というのがあるかどうかわからないが、やはりそういうものが欲しいと思う。つまり公明正大さとか、その人の公正性とか、そういうものがここには入らないのか。

(稲岡委員)ここに書いてあることは、素人は要らない、消費者なんかいらない、といっているように思う。

(辰巳委員)私も同感で、そう思う。

(児嶋委員)この資料にあるような第三者レビューを使うかは任意であって、比較可能性を確保したい企業は使ってもらい、比較可能性を必要としない企業は使わなくてもいいということだ。

(河野座長)今、辰巳委員がいわれたことも、次回資質のところで述べてほしい。ソフトという言葉は非常にわかりにくいが、つまりカチッとしたものではなければどういうものにするのか、ということで考えて頂く。次回は本日の議論の繰り返しになることが多いと思うが、仕組みや制度について、もう一度きちっと議論をしないと先に進まないと思う。そういうことで次回議論をさせていただきたいと思う。

     以上