環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和元年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第1部第3章>第3節 プラスチック資源循環体制の構築に向けて

第3節 プラスチック資源循環体制の構築に向けて

第1節で述べたとおり、地球規模での資源・廃棄物制約や海洋プラスチックごみ問題への対応が求められているところであり、世界全体の取組として、プラスチック資源循環体制を早期に構築するとともに、海洋プラスチックごみによる汚染の防止を、実効的に進めることが必要です。プラスチック資源循環体制を構築するために、再生不可能な資源への依存度を減らし、循環資源や再生可能資源を活用することによって、天然資源の投入とそれに伴う資金の域外への流出を抑制し、廃棄物の最終処分量を減少させるとともに循環産業の成長等による地域の活性化に寄与することも期待されます。第3節では、こうした資源循環体制の構築に向けた考え方や新しい技術の活用により、循環型社会を形成、地域資源を活用した地方公共団体、民間企業等による具体的な取組を紹介します。

1 3Rの推進・海洋プラスチック対策

(1)3Rの普及啓発

2009年頃まで増加傾向にあった循環型社会構築に向けた個々人の意識は、2010年頃を境に減少に転じています。

3Rの意識を具体的に見ると、3Rの認知度やごみ減量への配慮、グリーン購入に対する意識は減少の一途をたどっています。一方で、循環型社会形成への移行に肯定的な割合は8割に達し、物の所有を控える、不用品を売る、レンタルやシェアリングの利用率も増加するなど、物の所有にこだわらないライフスタイルが形成されつつあります。また、地域コミュニティにおける3Rの取組に主体的に参加する割合も4割を超えるなど、循環型社会形成にも結びつく行動は徐々に根付き始めています(表3-3-1、表3-3-2)。こうした3Rへの意識の醸成や行動喚起を促すには、国や地方公共団体、民間企業等が密接に連携し、社会や国民に向けて3Rの意識醸成、行動喚起を促す継続的な情報発信等の活動が不可欠です。

表3-3-1 3R全般に関する意識の変化
表3-3-2 3R全般に関する主要な具体的行動例の変化

具体的には、国民レベルでの分別協力体制、優れた環境技術等の我が国の強みを最大限生かしながら、効果的・効率的で持続可能なリサイクルシステムを構築します。このため、分別協力、違法行為である不法投棄・ポイ捨ての撲滅等を含めた文化、コミュニティ、制度・仕組み、各主体の連携協働体制、選別・洗浄・原料化等のリサイクル施設・設備、取組を下支えする静脈システム等のソフト・ハードのインフラ整備やサプライチェーン構築を図ります。また、資源循環の担い手となる動脈から静脈にわたる幅広いリサイクル・資源循環関連産業の振興・高度化、国際競争力の強化や、これらの産業における人材の確保・育成等を多面的に支援・振興します。

事例:海底ごみの「つながる化」プロジェクト(山陽女子中学校・高等学校地歴部)

岡山県の私立山陽女子中学校・高等学校地歴部では、閉鎖性海域である瀬戸内海においては、沿岸域の意識と行動の変化が良い影響を及ぼすと考えられることから、海底ごみの「つながる化」プロジェクトを立ち上げ、瀬戸内海で深刻な環境問題となっている海底ごみの問題の解決に向けて、海底ごみの回収活動と啓発活動に取り組んでいます。啓発活動に取り組む中で、海底ごみの認知度が海岸部に比べて内陸部の方が低いなどの地域差があることが明確になり、瀬戸内海へ注ぐ河川流域が一体となって取り組むことが、この問題の解決を加速させると考えました。このプロジェクトでは、内陸部での出前授業、博物館での4か月にわたる展示会、河川の漂着ごみに関する調査等、お互いの地域を結びつけるための相互理解と共通認識を十分に浸透させる取組が実施されています。また、海底ごみ問題の解決には、廃プラスチック類のマイクロプラスチック化を未然に防ぐ狙いもあり、海底ごみ等から派生するマイクロプラスチックの国際問題とも関係していることから、国際会議でのプレゼンテーションによる情報発信も行っています。

この取組は、2016年度の第4回グッドライフアワードにおいて、実行委員会特別賞を「環境と学び」部門で受賞しました。

海底ごみ回収作業の様子、第11回世界閉鎖性海域環境保全会議
(2)リデュース等の徹底

海洋プラスチックごみ問題等の解決に向けて、ワンウェイのプラスチック製容器包装・製品のリデュース等、経済的・技術的に回避可能なプラスチックの使用を削減することが重要です。ワンウェイのプラスチック製容器包装・製品については、不必要に使用・廃棄されることのないよう、消費者に対する声掛けの励行等はもとより、レジ袋の有料化義務化(無料配布禁止等)をはじめ、無償頒布をやめ「価値付け」をすることなどを通じて、消費者のライフスタイル変革を促します。その際には、中小企業・小規模事業者など国民各界各層の状況を十分踏まえた必要な措置を講じます。また、国等が率先して周知徹底・普及啓発を行い、こうした消費者のライフスタイル変革に関する国民的理解を醸成します。国民一人一人が賢い消費行動を選択することで、小売店側の意識も変わり、社会全体として意識変革が進むと考えられます。さらに、ワンウェイのプラスチック製容器包装・製品の環境負荷を踏まえ、軽量化等の環境配慮設計やリユース容器・製品の利用促進、普及啓発を図ります。代替可能性が見込まれるワンウェイの容器包装・製品等については、技術開発等を通じて、その機能性を保持・向上した再生材や、紙、バイオマスプラスチック等の再生可能資源への適切な代替を促進します。

このほか、モノのサービス化、シェアリング・エコノミー、修繕・メンテナンス等による長寿命化や再使用など、技術・ビジネスモデル・消費者のライフスタイルのイノベーションを通じたリデュース・リユースの取組を推進・支援します。

事例:ペットボトルの軽量化(日本コカ・コーラ株式会社)

日本のコカ・コーラシステムでは、2009年から再生可能な植物由来素材を一部使用した次世代型ペットボトル「プラントボトル」を導入し、環境負荷の軽減に取り組んできました。「プラントボトル」は、形状・重量・強度が変わらず、既存のリサイクル工場で100%リサイクルできるのが特徴であり、導入による効果は、2009年から2017年末までに約1万5,365kℓ相当の原油使用量削減と同等の効果と推計されています。

米国のザ・コカ・コーラ・カンパニーは、2018年1月に廃棄物ゼロ社会の実現を目指す新たなグローバルプランを発表し、2030年までに容器の数量100%相当分の回収・リサイクルを推進するグローバル目標を立てました。日本コカ・コーラでは、これに合わせる形で「容器の2030年ビジョン」を発表し、その中で、ペットボトル1本当たりのリサイクル素材又は植物由来の素材の含有率を2030年までに50%以上に引き上げること、関係者と協働してより着実な容器回収・リサイクルスキーム構築と維持に取り組むこと、清掃活動を通じた地域の美化の取組や、容器ごみ、海洋ごみに関する啓発活動に積極的に参画することを掲げました。

含有率を50%に引き上げるためのリサイクル樹脂の確保や、ペットボトルの更なる回収・リサイクル率の向上、社員の意識改革など、目標達成のための課題はありますが、同社は、様々な主体を巻き込みながら目標達成に向けて取組を加速していくこととしています。

日本のコカ・コーラ社製品の容量軽量化の変遷
(3)効果的・効率的で持続可能なリサイクル

使用済みプラスチック資源の効果的・効率的で持続可能な回収・再生利用を図るため、「分ければ資源、混ぜればごみ」の考えに立って、資源化のために必要な分別回収・リサイクル等が徹底されるよう推進を図ります。このため、プラスチック資源について、幅広い関係者にとって分かりやすく、システム全体として効果的・合理的で、持続可能な分別回収・リサイクル等を適正に推進するよう、その在り方を検討します。また、漁具等の海域で使用されるプラスチック製品についても陸域での回収を徹底しつつ、可能な限り分別、リサイクル等が行われるよう取組を推進します。

そして、分別回収、収集運搬、選別、リサイクル、利用における各主体の連携協働と全体最適化を通じて、費用最小化と資源有効利用率の最大化を社会全体で実現する、持続的な回収・リサイクルシステム構築を進めます。この一環として、分別が容易で、リユース・リサイクルが可能な容器包装・製品の設計・製造、市民・消費者等による分別協力と選別等の最新技術の最適な組合せを図ります。また、分別・選別されるプラスチック資源の品質・性状等に応じて、循環型社会形成推進基本法の基本原則を踏まえて、材料リサイクル、ケミカルリサイクル、そして熱回収を最適に組み合わせることで、資源有効利用率の最大化を図ります。さらに、生産拠点の海外移転の進展や、アジア各国の輸入規制をはじめ国際的な資源循環の変化に迅速かつ適切に対応し、我が国のプラスチック資源の循環が適正かつ安定的に行われるよう、国内におけるリサイクルインフラの質的・量的確保や利用先となるサプライチェーンの整備をはじめ、適切な資源循環体制を率先して構築します。また、易リサイクル性等の環境配慮設計や再生材・バイオマスプラスチックの利用等のイノベーションが促進される、公正かつ最適なリサイクルシステムを検討します。

事例:携帯電話リサイクルの推進(KDDI株式会社)

携帯電話には、金・銀・銅・アルミ・プラスチックなど20種類以上の素材が使用されています。しかし、携帯電話を機械で分解した場合、焼却処理によりプラスチック類は再資源化されず燃焼してしまいます。

KDDI株式会社では、ユーザーから回収した使用済み携帯電話を、セキュリティの施された室内で、手作業によって、基板、液晶、カメラ、プラスチック、ネジ、鉄、アンテナ、モーター、スピーカー等に分解します。基板から金、銀、銅、パラジウム等が採取され、ネジやアンテナは鉄製品に、プラスチックは可能な範囲でプラスチック製品にそれぞれリサイクルしています。これらの作業は、できる限り無駄なく再資源化を行うために全ての分解を手作業で行うことを徹底しています。2017年度には、315万台の携帯電話を回収し、再資源化率99.8%を維持するなど、不要となった携帯電話を資源として有効活用するマテリアルリサイクルを実施しています。

携帯リサイクルの基本的な流れ

事例:「リサイクリエーション」(花王株式会社、徳島県上勝町・神奈川県鎌倉市・宮城県石巻市・宮城県女川町・北海道北見市)

花王株式会社では、プラスチックの資源循環を目的とし、2015年から「リサイクリエーション」という新しい考え方を提案しています。「リサイクル」と「クリエーション」を合わせた新しい言葉で、使い終えたものに技術や知恵・アイデアを加え、新たな価値を創り出すという意味を込め、生活者を主体に様々な企業・行政もその輪に入り、価値検証と新しいモデル構築の検討を始めています。

2016年からは、複数の地域コミュニティで実証実験に取り組み、洗剤やシャンプー等の使用済みつめかえパックを回収し、パートナー企業と協働して再生樹脂に加工。「クリエーション」を象徴するモジュールとして「おかえりブロック」に形を変え、地域の生活者と一緒に新しい町づくりや暮らしづくりに役立てる活動を進めています。2019年3月時点で、徳島県上勝町、神奈川県鎌倉市、宮城県石巻市、同県女川町、北海道北見市及び花王社内にて、使用済みつめかえパック累計4.5トン(約25万1,300枚)を回収、それぞれの地域で、学校での環境授業や観光オブジェ、パブリックスペースなど、様々な用途でおかえりブロックが活用されています。

鎌倉市では、鎌倉市・NPO法人カマコン共催で、市役所前に等身大江ノ電とオチビサンのベンチをつくることを目標に、2017年10月~2018年5月の期間、つめかえパックの回収を実施しました。鎌倉市のリサイクル意識の更なる向上を目指して、市民、学校、企業、行政が一丸となり取り組み、2018年5月末時点で4万1,025枚が回収されました。完成式典の様子は計62のメディアにも取り扱われ、プロジェクトの市内認知度が高まり、現在も市民の回収が継続しています。SDGs未来都市である同市の、経済・社会・環境の三側面における新しい価値創出を目指して継続的に取組が進められています。

つめかえパックのリサイクリエーション、おかえりブロックでできた等身大江ノ電が完成した様子

事例:ペットボトル自動回収機(株式会社セブン&アイ・ホールディングス)

株式会社セブン&アイ・ホールディングスでは、セブン&アイグループのセブン-イレブン、イトーヨーカドー等の各店頭にペットボトル自動回収機を設置しています。店頭で回収したペットボトルは、国内で再資源化され、ペットボトルなどに再生されます。また、回収したペットボトルのリサイクル素材をプライベートブランドの商品パッケージに使用する取組も進めており、商品パッケージには、店頭で回収したペットボトルがリサイクルされた素材を使用しているという説明を印刷しています。2019年2月末時点で、ペットボトル自動回収機は759台設置されており、2018年度は約8,965トンのペットボトル(約3億本)が回収されました。

店頭で自動回収機に投入されたペットボトルは、自動的に異物の除去・減容されるため、店舗からリサイクル工場まで一度で大量に輸送することができ、配送回数を削減できます。そのため、配送に関わるCO2排出量の削減につながります。加えて、国内で循環型リサイクルを一貫して行うものであり、地域環境に貢献します。

ペットボトル回収にご協力いただいた方には、電子マネーに交換できるポイントを付与しており、「環境に貢献していること」を実感いただけるような普及啓発を進め、リサイクルの推進を図っています。

ペットボトル自動回収機、ペットボトルの循環型リサイクルの流れ

コラム:プラスチックのリサイクルの更なる推進に向けた取組

我が国におけるペットボトルの2017年度のリサイクル率は84.8%、回収率は92.2%であり、これは世界的にも高い実績ですが、業界団体である全国清涼飲料連合会では、この実績から更に、2030年度までにペットボトルの100%有効利用を目指すこととしています。ペットボトルのリサイクルについては、我が国において、使用済ペットボトルから食品トレー等に利用されたり、ペットボトルを再生するいわゆる「ボトルtoボトル」の技術が実用化されており、生産を拡大しています。そのほかにも、回収したペットボトルから製造したリサイクルポリエステルを素材に使った世界的なサッカーチームのユニフォームなど、環境への影響に配慮しつつ高いレベルの機能性を実現している例があります。

(4)海洋プラスチックごみ対策

違法行為である不法投棄・ポイ捨ての撲滅に向けた措置を強化し、また、各地域で行われている不法投棄・ポイ捨て防止アクション、美化・清掃活動と一体となって、陸域から海へのプラスチックの流出を抑制します。流出抑制には、特に流域単位で連携した取組が有効であり、各主体による連携協働の取組を支援します。また、海岸漂着物対策については、海岸漂着物処理推進法に基づき、都道府県や市町村等が海洋ごみに関する地域計画の策定、海洋ごみの回収・処理、発生抑制対策を行っており、国は、これらの事業に対し財政的な支援を行っています。各地域における海岸漂着物対策をさらに拡大、効率化し、加速化させるためには、科学的なデータに基づき、他の地域や分野での施策の成功事例を取り入れながら、内陸地域から沿岸地域までの各主体が連携し一体となって複数主体の取組を有機的に組み合わせて進めることが必要です。海外由来も含め、我が国近海沿岸における漂流・漂着・海底ごみの実態把握のため、モニタリング・計測手法等の高度化及び地方公共団体等との連携強化を図ります。

また、マイクロプラスチックについては、含有・吸着する化学物質が食物連鎖に取り込まれ、生態系に影響を及ぼすことが懸念されています。2014年度から環境省が実施している調査では、我が国沿岸海域において多くのマイクロプラスチックが確認されています。そのため、マイクロプラスチックの分布実態に関する調査については、沿岸海域における調査を引き続き行うとともに、海域のみでなく、河川、湖沼等の公共の水域も広く調査対象に加えた上で実施し、その結果の速やかな公表に努めます。そして、2020年までに洗い流しのスクラブ製品に含まれるマイクロビーズの削減を徹底するなど、マイクロプラスチックの海洋への流出を抑制します。

さらに、プラスチック原料・製品の製造、流通工程はじめサプライチェーン全体を通じてペレット等の飛散・流出防止の徹底を図ります。海岸漂着物処理推進法に基づく海岸漂着物対策推進協議会等を活用しつつ、都道府県・市町村間又は都道府県間の連携と併せて、各地域の民間団体、事業者等の関係主体間で広く情報を共有し、連携・協力を図ることが期待されます。

そのほか、地球規模のモニタリング・研究ネットワークの構築を進めていきます。具体的には、我が国としてモニタリング・計測手法等の高度化や地球規模での海洋プラスチックごみの分布・動態に関する把握・モデル化、生態影響評価等の研究開発を率先して進めるとともに、モニタリング手法の国際調和・標準化や東南アジアをはじめとした地域におけるモニタリングのための人材育成、実証事業等による研究ネットワーク体制の構築を通じて、海洋ごみの世界的な削減に貢献していきます。

事例:ごみの分布把握事業(株式会社ピリカ、一般社団法人ピリカ)

プラスチックごみによる海洋汚染問題は、海への流出経路をはじめ、未だ不明点が多い状況です。株式会社ピリカ及び一般社団法人ピリカでは、実態把握と問題解決に向けて、プラスチック流出量調査手法の開発に着手をしています。調査においては、河川や港湾、下水処理施設等での調査が必要となるため、様々な場所や場面で利用可能なプラスチック浮遊量調査装置「アルバトロス」を開発し、実態究明に向けて、関東及び関西圏の河川、港湾、水再生センター等でのアルバトロスを使ったプラスチック浮遊量調査を行っています。マイクロプラスチック浮遊量調査では、採取した水からプラスチック片を取り出し、重量、サイズ、成分等の分析、結果の考察により、流出経路の絞り込みや対策の検討を行うとともに、調査結果をウェブサイト上で公開し、マイクロプラスチック問題の解決に向けて、情報提供を行っています。

ピリカでは、プラスチックごみによる海洋汚染問題の解決へ向けて、ごみ減量とポイ捨ての抑止の研究に向けた調査システム「タカノメ」や散乱ごみの早期回収に向けたごみ拾いSNS「ピリカ」の開発等も行っています。「タカノメ」や「ピリカ」のサービスは10以上の県庁や市役所で導入され、地域美化施策の効率化やボランティア清掃人口の拡大に寄与しています。これまでに「ピリカ」を通じて延べ70万人が清掃活動に参加し、国内から1億個以上のごみが回収されました。「科学技術の力であらゆる環境問題を克服する」をモットーに、ごみ問題の解決に向けて取組を進めています。

「アルバトロス」を用いた調査の様子、ごみ拾いSNS「ピリカ」の写真

2 イノベーションの推進

(1)持続可能な資源有効利用技術の開発

技術や消費者のライフスタイルのイノベーションを促すため、

などを総合的に支援・後押しします。

事例:カネカ生分解性ポリマーPHBH(株式会社カネカ)

カネカ生分解性ポリマーPHBH(PHBH)は、微生物が植物油を摂取し、微生物体内にポリマーを高度に蓄積させ、それを精製して取り出した、100%植物由来の材料です。PHBHはもともと微生物によってつくられたものなので、生分解性が優れ、微生物が存在する自然環境下での嫌気性・好気性いずれの雰囲気でも生分解されます。好気性の環境下では、最終的には炭酸ガスと水になります。特に、海洋中でも生分解することが認められています。PHBHは、使用済み製品を回収し、コンポスト化等によって分解することで発生した炭酸ガスがまた大気中に戻り、最終的には植物が光合成によって、また炭酸ガスを固定するという炭素循環サイクルを構築できることが特徴です。

用途例としてはフィルムに成形して包装材として用いたり、カラトリーやトレー等の射出成型品があります。現在植物由来の生分解性ポリマーが最も使用されている領域としてはごみ袋があります。フランスなどのヨーロッパでは、果物や野菜を購入した際に入れる袋に使われており、生ごみとして一緒に回収してコンポスト化されています。こうした植物由来の生分解性ポリマーのブレークスルー技術を通じて、持続可能で低環境負荷の社会の実現に貢献しています。

PHBHの使用例

事例:地域連携・低炭素水素技術実証事業(使用済プラスチック由来低炭素水素を活用した地域循環型水素地産地消モデル実証事業)(昭和電工株式会社)

昭和電工株式会社と神奈川県川崎市は、低炭素水素社会の実現に向けて連携・協力することについて合意し、2015年7月に協定を締結しました。この協定に基づく取組の一つとして、使用済プラスチック由来の水素を川崎臨海部でエネルギーとして利用する実証を進めています。

昭和電工川崎事業所は2003年から、ガス化手法によるケミカルリサイクル「川崎プラスチックリサイクル(KPR)」によって、アンモニア製造の原料となる水素を使用済プラスチックから利活用する技術を導入しています。KPRは、川崎市が推進する「川崎エコタウン事業」の一環として導入したものですが、両者は2015年3月に川崎市が「水素社会の実現に向けた川崎水素戦略」を策定し、取組を進めていることもあり、同技術をアンモニア製造以外の領域に展開することを検討してきました。

今回の実証では、KPRを利用して、地域で発生した使用済プラスチックから水素を製造し、パイプラインで川崎臨海部のホテルへ送り、純水素型燃料電池で電力と温水に変換してエネルギーとして利用したり、水素ステーションに供給し、燃料電池自動車の水素燃料として利用するなどの新たな地産地消モデルの構築を目指しています。

今後は、実証事業で得られた知見も踏まえ、リサイクル可能な資源の有効利用を図る低炭素水素サプライチェーンモデルを構築するとともに、他地域への普及拡大を目指していきます。

KPRガス化設備の外観
実証事業のスキーム図
(2)プラスチックの代替製品の開発

バイオプラスチックの実用性向上と化石燃料由来プラスチックとの代替促進を図るため、リサイクル等の技術革新やインフラ整備支援を通じて利用ポテンシャルを高めるとともに、バイオプラスチックについては低コスト化・生分解性などの高機能化や、特に焼却・分解が求められる場面等への適切な導入支援を通じて利用障壁を引き下げます。可燃ごみ用指定収集袋等の燃やさざるを得ないプラスチックについては、原則としてバイオマスプラスチックが使用されるよう、取組を進めます。その他、バイオプラスチックについては、環境・エシカル的側面、生分解性プラスチックの分解機能の評価を通じた適切な発揮場面(堆肥化、バイオガス化等)やリサイクル調和性等を整理しつつ、用途や素材等にきめ細かく対応した「バイオプラスチック導入ロードマップ」を策定し、静脈システム管理と一体となって導入を進めていきます。また、2019年度には、プラスチック代替素材の普及やそのリサイクルを促進するため、設備補助や技術実証を通じた社会実装化を進めていく事業(「脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環システム構築実証事業」35億円)を実施します。

そのほか、再生材・バイオプラスチック市場の実態を把握しつつ、国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(平成12年法律第100号。以下「グリーン購入法」という。)等に基づく国・地方公共団体による率先的な公共調達、リサイクル制度に基づく利用インセンティブ措置、マッチング支援、低炭素製品としての認証・見える化、消費者への普及促進等の総合的な需要喚起策を講じます。

事例:紙化ソリューション(日本製紙グループ)

海洋プラスチックごみ問題がクローズアップされている昨今、再生可能な資源である「木」を原料とする「紙」にプラスチック代替素材としての期待が寄せられています。こうした背景から、日本製紙グループでは、低炭素・循環型社会の構築に貢献する新たな領域に向けた紙製品開発を推進しています。

その開発製品の一つが、紙製バリア素材「シールドプラス」です。この商品は、木質素材100%から成る基材に製紙用水系塗工技術を活用したバリア塗工層を付与することで誕生した、環境にやさしい紙製のバリア素材であり、アルミやプラスチックしか選択できなかったバリア素材に、新たな選択肢を提示するものです。そのほかにも、「紙化」推進組織となる「紙化ソリューション推進室」の設置や、プラスチックストロー代替となる紙ストローの製品開発など、「紙でできることは紙で。」をスローガンに様々な取組を加速させています。

紙の領域拡大を目指す製品開発、シールドプラスの活用イメージ

事例:プラスチックを代替する新素材(株式会社近江)

株式会社近江では、廃棄されるホタテの貝殻を使用したバイオマス素材を主原料としたプラスチックの製造をしています。この素材は原料の51%以上がホタテの貝殻から製造されたものであり、加工業者等が廃棄費用の経済的負担に困っていたホタテの貝殻を有効な資源として使用することで、プラスチックの原料となるポリプロピレンの使用量を大幅に減じた環境に配慮した素材です。ホタテの貝殻から製造することで、現プラスチック製品の代替が可能であり、石油の使用量を減らすことが可能です。同社では、この素材を使用した「ホタテ箸」の販売も進められています。

ホタテ箸

コラム:ストローの種類

全世界でプラスチックごみによる海洋汚染の問題が注目を集める中、各企業では、環境保全のためにプラスチックストローを代替ストローに切り替える動きが進んでいます。では、プラスチックの代替ストローには、どのようなものがあるのでしょうか?

製紙会社各社では、紙製のストローの開発が進められています。紙製のストローは、紙のにおいで風味を損なったり、時間経過により水分を吸って使いづらくなったりするといった難点がありましたが、日本製紙グループでは、「安全・安心」のコンセプトの下、そのような弱点を克服した耐久性の高い試作品を作成しました。

株式会社アキュラホームでは、間伐材など国産材を使った木製ストローを開発し、ザ・キャピトルホテル東急のレストランで2019年1月から試験導入を始めました。平成30年7月豪雨による土砂災害を受け、森林の多面的機能の発揮のためには適正な管理が重要であり、間伐材の活用促進、災害防止など持続可能な森林経営の一助になればという思いから、木製ストローの開発に至りました。材料は飲み物に木の匂いが移らないよう、香りの穏やかなスギを選んでおり、0.15mm程度にスライスしたものを斜めに巻きあげて、つくられています。使い捨てで繰り返し使うことはできませんが、ザ・キャピトルホテル東急では、継続的な環境保全につながる仕組みを評価し、導入を決めました。

ほかにも食品で作られた食べられるストローの開発等も進められており、使い捨てだけではなく、洗って何度も使えるマイストローとして、金属製ストローやシリコン製ストロー等の開発、販売も拡大しています。

木製ストロー、紙製ストロー

事例:生分解性プラスチック「BioPBS」(三菱ケミカル株式会社)

三菱ケミカル株式会社は、環境負荷の少ない生分解性プラスチックを開発、タイ国PTTグループとの合弁企業であるPTT MCC Biochem社に技術ライセンスし、該社は「BioPBS」という商標で生産販売を行っています。「BioPBS」は植物由来の生分解性プラスチックであり、土中の微生物によって水とCO2に分解されることから、自然環境への負荷が少ない特徴を持っています。

この素材を活用した紙コップが2018年10月に発売されており、完全生分解性、リサイクル性を謳っています。このほかにもコーヒーカプセルやカトラリー、ストローといった食品に関係する製品や、農業用被覆材(マルチフィルム)など、様々な用途開発を続けています。例えば、プラスチック製ストローの代替として使った場合も、ストローとして使うための強度も十分です。

これらの開発や実証は国の支援を受けており、こうした官民学協奏のイノベーションによる新素材の開発は、プラスチック資源循環を一層進めるために重要です。特に、最先端の素材事業の拠点を、国内にとどまらず海外の要所にも置くことで、我が国発の技術が世界の資源循環を促すことに貢献しています。

一方、「BioPBS」の事業は、社内外を問わず、関わりを持つ方々の環境意識を高める契機となっています。生分解性、植物由来、かつ成形加工が容易という性質を持つので、環境対応の素材を求めている多くの企業に機会を提供しています。また、地域のごみ問題への対応策として、一部の地方自治体がコンポスト設備とのセットでこの素材を使った回収袋の採用を開始しているほか、農業用マルチフィルムでは使用後にそのまま土中に鋤(す)き込んで水とCO2に分解させることで、プラスチックごみの削減に貢献するとともに、特に高齢農業者の作業負担を低減し、新たな社会システムの一部になりつつあります。生産拠点のあるタイでは、雇用の創出だけでなく、大学の学食でこの素材を使った紙コップを使用し、キャンパス内でコンポスト化を行うことで生分解性プラスチックがどのように循環型社会に貢献するかを学生に説いています。さらに、タイの業界団体の協力により全国のカフェ、地方のコンビニエンスストア等にも展開しており、民間レベルでも同様の計画が進んでいます。このような活動が契機になり、地域でソーシャルビジネス起業につながる日も近いと考えられます。

生分解性プラスチック「BioPBS」の展開例
(3)資源循環のための基盤整備

質が高いプラスチック資源の分別回収・リサイクルを促す観点から、回収拠点の整備推進を徹底しつつ、事業者や地方公共団体など多様な主体による適正な店頭回収や拠点回収の推進、最新のIoT技術も活用した効果的・効率的で、より回収が進む方法を幅広く検討します。また、生産拠点の海外移転の進展や、アジア各国の輸入規制をはじめ国際的な資源循環の変化に迅速かつ適切に対応し、我が国のプラスチック資源の循環が適正かつ安定的に行われるよう、国内におけるリサイクルインフラの質的・量的確保や利用先となるサプライチェーンの整備をはじめ、適切な資源循環体制を率先して構築します。

(4)国際展開

我が国として、プラスチック資源循環及び海洋プラスチックごみ対策を率先垂範することはもとより、そこで得られた知見・経験・技術・ノウハウをアジア太平洋地域はじめ世界各国に共有しつつ、必要な支援を行い、世界をリードすることで、グローバルな資源制約・廃棄物問題等と海洋プラスチックごみ問題の同時解決に積極的に貢献していきます。このため、開発途上国における海洋プラスチックごみの発生抑制など、地球規模での実効性のある対策支援を進めていきます。具体的には、各国に適した形での適正な廃棄物管理システムを構築し、資源循環の取組を進めていくことが喫緊の課題であり、我が国の有する

の支援など、アジア太平洋地域、アフリカ等の相手国ニーズ・実情に応じたオーダーメイド輸出により、我が国産業界とも一体となった国際協力・国際ビジネス展開を積極的に図ります。関係する府省庁が緊密に連携しつつ、国際協力機構(JICA)、国際協力銀行(JBIC)、アジア開発銀行(ADB)、地方公共団体や我が国の企業等とも協力しながら、我が国の有する知見・経験や優れた環境技術、リサイクルシステムや廃棄物発電等の世界各地へのソフト・ハードのインフラ・技術、人材育成等も含めた総合的な環境インフラ輸出を強力に展開します。

3 プラスチック使用削減の取組の広がり

(1)各府省の取組

海洋プラスチックごみ問題への対応に関して、「まず隗(かい)より始めよ」として、環境省として率先してワンウェイのプラスチックの使用削減に取り組んでいるところです。具体的には、「プラスチックとの賢い付き合い方」を実践するため、審議会や検討会など、環境省のあらゆる会議において、今後、ストロー、カップ、かき混ぜ棒など、ワンウェイのプラスチックを使用しないよう徹底して取り組んでいます。また、本庁舎の食堂においても、同様に取り組んでいるところです。これに合わせて、庁舎内のコンビニエンスストア、テナント等に協力を要請し、ワンウェイのプラスチックの使用自粛のための声掛け等を徹底していただいています(図3-3-1)。

図3-3-1 ワイズ・コンサンプションの率先的取組

さらに、グリーン購入法等の仕組みを活用して、こうした“プラスチックとの賢い付き合い方”を各府省に率先して提案し、広げるため、ワンウェイのプラスチックの使用削減に関する環境省の取組内容について、原田義昭環境大臣から、2018年11月の閣僚懇談会において紹介し、政府一丸となって推進すべく、各府省においても率先した取組の実施をお願いし、理解を頂きました。農林水産省では、食堂や会議においてワンウェイのプラスチック食器・カップ等を使用しないよう徹底すること、また、弁当容器その他のプラスチック製容器包装等について、リサイクルできる製品の分別回収がきちんとなされるよう、職員の意識徹底を図るとともに、回収ボックスの増設など回収方法を改善することなどに取り組んでいます。外務省では、外務省が主催する、国際会議を含む各種会議やレセプションにおいて、今後、使い捨てのストロー、カップ、マドラー等の使用をやめるなど、可能な限りワンウェイのプラスチック製品を使用しないよう取り組んでいるところです。

(2)地方公共団体の取組

地方公共団体においては、海洋プラスチックごみ問題や資源循環に対応するため、街中・河川・海浜等の清掃活動への参画やポイ捨て防止対策の強化、環境に優しい循環型社会づくりや海洋ごみ問題に関する環境教育の実施等を行っています。また、6月の「環境月間」や5月30日の「ごみゼロの日」に合わせ、マイバッグ等の持参の声掛けなどPR活動も行っています。そのほか、独自の条例の制定やプラスチックごみ削減の取組宣言などを行い、小売業者とレジ袋無料配布中止に係る協定を締結するなどの取組を実施しているところもあります。

事例:レジ袋無料配布廃止の先駆け(富山県)

世界的に問題となっているプラスチックごみを減らすため、レジ袋等のワンウェイのプラスチックを削減する動きが全国的に広がっています。その流れに先駆け、富山県では、2008年4月から「レジ袋無料配布廃止」の取組を全国に先駆けて県内全域でスタートしました。

取組のきっかけは、買い物の際に袋を持参するマイバッグ運動を進めていた消費者団体等の要請を受けた県が、事業者、消費者団体、行政の3者が参加する「富山県レジ袋削減推進協議会」を立ち上げたことです。事業者からは懸念の声もありましたが、プラスチック削減の効果等について啓発に努め、県内全域で一斉に活動を始めることができました。新聞折り込みチラシの全戸配布や県内各地での説明会の開催等を経て、2008年4月にスーパーとクリーニング店28社208店舗で始まったレジ袋無料配布廃止の取組は、2019年3月時点で53社514店舗に拡大し、ドラッグストアやホームセンターにも広がっています。

2013年には「とやまエコ・ストア制度」を創設し、レジ袋無料配布廃止に加え、食品トレイやペットボトル等の資源回収、店内を弱冷暖房に設定することでのCO2削減等のエコ活動に取り組む小売店を登録し、環境配慮行動の推進に努めています。取組開始前は10~20%程度と見られていたマイバッグ持参率は、10年が経過した現在では95%と高い水準を維持しており、県民に取組の定着・拡大が見られています。この取組は、レジ袋を契機としてライフスタイルの見直しを図るものですが、直接的なごみやCO2排出量の削減にもつながっており、県の試算では、レジ袋削減枚数は約14億枚となり、CO2排出量は約9万トン削減されました。さらに、利用者側の意識向上にも取り組んでおり、携帯型マイバッグの配布やコンビニエンスストアと連携してマイバッグ利用を呼びかける「いつでも、どこでもマイバッグ運動」も展開しています。

県を挙げた取組は、2016年5月に富山市で開かれたG7富山環境大臣会合でも評価され、資源を効率的に利用する枠組みとして「富山物質循環フレームワーク」が採択されました。富山県では、環境保全に率先して取り組むフロントランナーとして、これらの取組を持続・発展させ、環境に優しい生活スタイルへの後押しを進めています。

「レジ袋無料配布廃止」の啓発の様子、とやまエコ・ストア制度統一シンボルマーク、無料配布された携帯型マイバッグ

事例:内陸部も含めた海底ごみの回収・処理システム(香川県、県内市町、漁業者)

香川県では、国、県、市町(内陸部を含む全市町)、民間団体で構成する「香川県海ごみ対策推進協議会」を中心に、海ごみの回収・処理や発生抑制対策など、総合的な海ごみ対策に連携・協働して取り組んでいます。

海底ごみは全国的に対策が遅れており、瀬戸内海でも漁業等への影響をはじめ、その対応が地域の課題となっています。瀬戸内海の海底ごみは、その多くが人々の生活ごみ由来であることから、香川県では、まず自分たちの地域の海ごみを地域のみんなで協力して回収・処理していこうと、2013年度から香川県方式の海底ごみ回収・処理システムによって、漁業者、市町(内陸部を含む全市町)、県が協働して、本格的な回収・処理の取組をスタートさせました。

このシステムは、漁業者が、底引き網漁等で網にかかった海底ごみをボランティアで陸に持ち帰り漁協等で保管し、そのごみを行政(沿岸市町と県)が運搬・処理するもので、その処理費用については、沿岸地域だけでなく、内陸部を含めた全市町、県が負担するという、全国初の取組です。

これは、海は川を通じて内陸部とつながっており、海底ごみの処理は沿岸地域だけでなく内陸部も一緒に取り組む必要があるという考え方に基づくもので、特に香川県では、県内全域が瀬戸内海の流域であり、海との一連の生活空間があるといった特長を生かして、県内全ての地域を一つの大きなエリアと捉えた「里海」づくりに取り組んでおり、海ごみ対策についても、回収・処理だけでなく、排出抑制の取組も含めて、沿岸地域・内陸部一体となって推進しています。

海底堆積ごみの回収・運搬・処理の作業の流れ、海底堆積ごみの保管の様子
(3)グローバル企業・国内企業の取組

航空業界・ホテル業界では、使い捨てプラスチック製ストロー・マドラーの廃止やプラスチック製容器包装・製品から紙・バイオマスプラスチック等への代替を実施しています。また、飲料業界では、リサイクル率や再生材利用率等の設定、リサイクル素材の利用や容器回収・リサイクルスキームの構築等に取り組んでいます。飲食業界においては、プラスチック製ストローの提供廃止や、容器包装の改良やリサイクル推進に向けた目標の設定を行っています。アパレル業界では、プラスチック製の買い物袋の紙製化移行の実施やマイバッグの推進に取り組んでいます。化粧品業界・化学業界では、ボトルの薄肉化や詰め替え・付け替え用製品、再生材の利用など環境配慮設計の促進により、プラスチック使用量削減の取組が行われています。

事例:野外フェスティバルを通じた環境保護活動(帝人グループ)

2018年9月に福岡県福津市で開催された「宗像フェス」は、「世界遺産を守り伝える環境保護活動」等をコンセプトとした野外音楽フェスティバルで、環境問題に触れ合う機会の提供と、音楽を切り口により幅広い世代へ、より深く環境問題を考えるきっかけ作りを目的として、様々な環境保護活動が行われています。帝人フロンティア株式会社もこの活動に賛同し、リサイクル活動「ecoチケット広域清掃プログラム」を実施しました。

フェス開催前の勝浦海岸で海岸清掃を行うecoチケット広域清掃プログラムでは、清掃活動で集められたペットボトルをオリジナルストラップへとリサイクルし、フェス当日の会場にて清掃活動参加者へとプレゼントされました。自分で集めたものが商品となって手元に戻る、”Recycled by yourself”を体験し、環境問題への意識啓発につながることが期待されます。

また、帝人フロンティアは、エイベックスグループの夏の野外ライブイベント「a-nation(エイネーション)」に協賛し、ライブ会場で展開されるリサイクル活動「LOVE.PEACE & CLEAN」もサポートしています。

LOVE.PEACE & CLEANは、環境に優しい野外フェスティバルであることを来場者及び地元住民にアピールしています。会場内で発生した使用済みペットボトルの回収をはじめとしたエコアクションに取り組むもので、環境に優しい活動を世の中に発信し、その継続と拡大を目指しています。これまでにこの活動で回収されたペットボトルの累計重量は1万1,140kgに及び、500mℓのペットボトル445,600本相当をリサイクルしたことになります。また、ペットボトルの回収に協力した来場者には、ペットボトルのリサイクル繊維を使用したミサンガを配布して、環境問題に対する意識啓発も図っています。

帝人フロンティアでは、このように野外イベントの会場で出たごみを資源としてリサイクルする「地産地消」リサイクルプロジェクトを各所で進めています。また、帝人グループ全体でも、2018年9月にプラスチック海洋ごみ問題に取り組む姿勢を示すため、「プラスチック海洋ごみ問題解決に向けた宣言」を行いました。今後もリサイクルをはじめとする地球環境に優しい活動を積極的に推進することにより、さらに「地球環境に優しい企業」を目指しています。

宗像フェスの清掃活動の様子、配布されたミサンガ

事例:プラスチック製ストローからの転換

コーヒーチェーン大手のスターバックスは、2018年7月に、使い捨てのプラスチック製ストローの使用を、2020年までに世界で展開している全ての店舗で段階的に廃止していくと発表しました。同社は世界で約2万9000店舗を展開しており、年間約10億本のプラスチック製ストローが使用されていると推計されていました。また、この発表の直前には、同社が本社を置く米国ワシントン州シアトル市において、飲食店や食料品店等でプラスチック製の使い捨てストロー等の提供を禁じる条例が施行されています。

マイクロプラスチックによる海洋汚染の問題が注目を集める中、環境保全のためにこうした動きが世界的に広がっており、マクドナルドでも同様に、一部地域で紙製のストローに切り替える方針を公表しています。

我が国でも、外食産業を中心にこうした方針を表明する企業が増えています。例えば、すかいらーくホールディングスは、2018年8月に、2020年までに全ての店舗で使い捨てのプラスチック製ストローを原則廃止することを発表し、自然分解するプラスチック素材等を使用した代替ストローの導入を検討することとしています。こうした企業の取組を後押しするため、政府においても、石油由来のプラスチックから紙、植物由来のバイオマスプラスチックなどの再生可能資源に切り替えるための技術実証を行い、コスト面、供給面での課題の解消に努めています。

プラスチック製ストロー