環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和元年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第1部第3章>第2節 我が国の取組

第2節 我が国の取組

1 我が国におけるプラスチック資源循環等の状況

我が国における資源循環は、びん、缶、紙、工業用資材等、民間主導による有用資源の再使用・再生利用が進められてきた一方で、天然資源の消費を抑制し、環境への負荷ができる限り低減される循環型社会の形成を目指し、循環型社会形成推進基本法(平成12年法律第110号)に基づいて3Rの取組が進展してきました。加えて、適正処理の確保や最終処分量の抑制の観点とも相まって、容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(平成7年法律第112号)、特定家庭用機器再商品化法(平成10年法律第97号)、使用済自動車の再資源化等に関する法律(平成14年法律第87号)等の個別リサイクル法等の法的基盤が整備され、使用済み資源の3R及び熱回収が進められてきましたが、これらはいずれも製品の品目に着目したものでした。

このため、環境省では、これまでの各種リサイクル法における個別の製品単位のリサイクルに留まらず、素材に着目して、特に質的及び量的な観点から見て十分なリサイクルが実現されておらず、かつ、温室効果ガス並びに最終処分量削減ポテンシャルがあると見込まれるプラスチック等を対象に、今後どのようにリサイクルを進めていくか、どのように製品への再生資源の利活用を進めていくか、3Rとその結果としてのCO2排出削減を同時に進め、循環型社会と低炭素社会の統合的実現をいかに達成するかという観点で調査・検討を実施し、2016年3月に「マテリアルリサイクルによる天然資源消費量と環境負荷の削減に向けて」を取りまとめました。プラスチックについては、年間排出量が約1,000万トンあり、現状ではその多くが焼却(エネルギー回収含む。)されており、それに伴うCO2の排出量を約1,800万トンと見積もり、一層のマテリアルリサイクルの推進とそれに伴う環境負荷削減に向けて、高度選別(単一樹脂選別)の導入による高品質な再生プラスチックへのリサイクルを進めるとともに、カスケードリサイクルやケミカルリサイクルを適切に組み合わせ、製品横断的なリサイクルシステムを構築することの重要性が示されました。

2 第四次循環型社会形成推進基本計画

2018年6月に、循環型社会形成推進基本法に基づく第四次循環型社会形成推進基本計画(以下、循環型社会形成推進基本計画を「循環基本計画」という。)を閣議決定しました。第四次循環基本計画では、循環型社会の現状を踏まえて、第三次循環基本計画(2013年5月閣議決定)で掲げた質にも注目した循環型社会の形成、低炭素社会や自然共生社会との統合的取組等を引き続き中核的な事項として重視しつつ、さらに、経済的側面や社会的側面にも視野を広げました。

第四次循環基本計画では、循環型社会の形成に向けた中長期的な方向性として、[1]経済的側面、社会的側面との統合を含めた「持続可能な社会づくりとの統合的取組」、[2]「多種多様な地域循環共生圏形成による地域活性化」、[3]「ライフサイクル全体での徹底的な資源循環」、[4]「適正処理の更なる推進と環境再生」、[5]「万全な災害廃棄物処理体制の構築」、[6]「適正な国際資源循環体制の構築と循環産業の海外展開の推進」を掲げ、これらを支える[7]「循環分野の基盤整備」を進めることとしています。また、これらの方向性の実現に向けて、おおむね2025年度における数値目標を設定するとともに、国が講ずべき施策を示しています。

さらに、アジア諸国による廃プラスチック類の輸入規制の状況も踏まえ、「資源・廃棄物制約、海洋ごみ対策、地球温暖化対策等の幅広い課題に対応しながら、中国等による廃棄物の禁輸措置に対応した国内資源循環体制を構築しつつ、持続可能な社会を実現し、次世代に豊かな環境を引き継いでいくため、再生不可能な資源への依存度を減らし、再生可能資源に置き換えるとともに、経済性及び技術的可能性を考慮しつつ、使用された資源を徹底的に回収し、何度も循環利用することを旨として、プラスチックの資源循環を総合的に推進するための戦略(プラスチック資源循環戦略)を策定し、これに基づく施策を進めていく。具体的には、[1]使い捨て容器包装等のリデュース等、環境負荷の低減に資するプラスチック使用の削減、[2]未利用プラスチックをはじめとする使用済プラスチック資源の徹底的かつ効果的・効率的な回収・再生利用、[3]バイオプラスチックの実用性向上と化石燃料由来プラスチックとの代替促進等を総合的に推進する」こととしています。

3 プラスチック資源循環戦略

(1)背景

環境省では、第四次循環基本計画の閣議決定を受けて、プラスチック資源循環戦略の策定に向けた検討を行うべく、2018年7月に、プラスチック資源循環戦略の在り方について諮問を行い、中央環境審議会循環型社会部会の下にプラスチック資源循環戦略小委員会を設置しました。同小委員会は、プラスチックの資源循環に知見のある学識者に加え、地方公共団体、産業界、NGOの立場から計18名が参画しています。2018年8月以降2019年2月まで、パブリックコメントを経て計5回小委員会を開催、同年3月に中央環境審議会から環境大臣宛てにプラスチック資源循環戦略の在り方について答申がなされました。

本答申を受け、今後、6月のG20までに政府としてプラスチック資源循環戦略を策定します。

(2)基本原則

プラスチック資源循環戦略(案)においては、基本的な対応の方向性を「3R+Renewable」としています。すなわち、[1]ワンウェイの容器包装・製品をはじめ、回避可能なプラスチックの使用を合理化し、無駄に使われる資源を徹底的に減らすとともに、[2]より持続可能性が高まることを前提に、プラスチック製容器包装・製品の原料を再生材や再生可能資源(紙、バイオマスプラスチック等)に適切に切り替えた上で、[3]できる限り長期間、プラスチック製品を使用しつつ、[4]使用後は、効果的・効率的なリサイクルシステムを通じて、持続可能な形で、徹底的に分別回収し、循環利用(リサイクルによる再生利用、それが技術的経済的な観点等から難しい場合には熱回収によるエネルギー利用を含め)を図ることとしています。特に、可燃ごみ指定収集袋など、その利用目的から一義的に焼却せざるを得ないプラスチックには、カーボンニュートラルであるバイオマスプラスチックを最大限使用し、かつ、確実に熱回収するとしています。いずれの対応に当たっても、経済性及び技術可能性を考慮し、また、製品・容器包装の機能(安全性や利便性等)を確保することとの両立を図ります。

また、海洋プラスチックごみ問題に対しては、陸域で発生したごみが河川その他の公共の水域等を経由して海域に流出することや直接海域に排出されることに鑑み、上記の3Rの取組や適正な廃棄物処理を前提に、プラスチックごみの流出による海洋汚染が生じないこと(海洋プラスチックゼロエミッション)を目指し、違法行為である不法投棄・ポイ捨ての撲滅を徹底するとともに、清掃活動を推進し、プラスチックの海洋流出を防止します。また、海洋ごみの実態把握及び海岸漂着物等の適切な回収を推進し、海洋汚染を防止します。さらに、国際的には、こうした我が国の率先した取組を世界に広め、アジア・太平洋、アフリカ等の各国の発展段階や実情に応じてオーダーメイドで我が国のソフト・ハードの経験・技術・ノウハウをパッケージで輸出し、世界の資源制約・廃棄物問題、海洋プラスチックごみ問題、気候変動問題等の同時解決や持続可能な経済発展に最大限貢献します。

これらの取組に当たっては、国民レベルの分別協力体制や優れた環境・リサイクル技術など我が国の強みを最大限生かし伸ばしていくとともに、国、地方公共団体、国民、事業者、NGO等による関係主体の連携協働や、技術・システム・消費者のライフスタイルのイノベーションを推進し、幅広い資源循環関連産業の振興により、我が国経済の成長を実現していきます。

(3)重点戦略

プラスチック資源循環戦略(案)では、以上を基本原則としつつ、[1]資源循環(リデュース等の徹底、効果的・効率的で持続可能なリサイクル、再生材・バイオプラスチックの利用促進)、[2]海洋プラスチック対策、[3]国際展開、[4]基盤整備という柱立てで重点戦略とし、具体的な施策の方向性を記載しています。

これらの戦略的展開を通じて、我が国のみならず、世界の資源・廃棄物制約、海洋プラスチックごみ問題、気候変動等の課題解決に寄与すること(天然資源の有効利用、海洋プラスチックゼロエミッションや温室効果ガスの排出抑制)に加え、動静脈にわたる幅広い資源循環産業の発展を通じた経済成長や雇用創出が見込まれ、持続可能な発展に貢献していくことを狙いとしています。

また、同戦略の展開に当たっては、以下のとおり世界トップレベルの野心的な「マイルストーン」を目指すべき方向性として設定し、国民各界各層との連携協働を通じて、その達成を目指すことで、必要な投資やイノベーションの促進を図ることとしています。

○リデュース

○リユース・リサイクル

○再生利用・バイオマスプラスチック

4 海岸漂着物処理推進法の改正及び同法に基づく基本方針の改定

2009年に公布・施行された、美しく豊かな自然を保護するための海岸における良好な景観及び環境の保全に係る海岸漂着物等の処理等の推進に関する法律(平成21年法律第82号。以下「海岸漂着物処理推進法」という。)及び同法に基づき2010年に閣議決定した海岸漂着物対策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針(以下「海岸漂着物処理推進基本方針」という。)に基づき、国は、海岸漂着物等の実態把握調査を行うほか、都道府県等が実施する海岸漂着物等の処理や発生抑制のための取組に対して財政的な支援等を行ってきました。しかし、海岸漂着物処理推進法施行後約10年が経過した現在においても、我が国の海岸には、国内外から多くの海洋ごみが漂着し、また我が国の沿岸海域において漂流し、又はその海底に存するごみが船舶の航行の障害や漁業操業の支障となっており、海洋の環境に深刻な影響を及ぼしています。このような状況を受け、2018年6月に海岸漂着物処理推進法が改正されました。海岸漂着物処理推進法の改正では、海岸における良好な景観及び環境の保全並びに海洋環境の保全を図るとともに、国際的な課題に取り組むため、海岸漂着物処理推進法の目的に、海岸漂着物等が海洋環境の保全を図る上でも深刻な影響を及ぼしている旨及び海岸漂着物等が大規模な自然災害の場合に大量に発生している旨を追加し、マイクロプラスチック対策について新たな規定が設けられるなど、海岸漂着物対策を一層推進する内容が盛り込まれています。同法の改正を踏まえ、海岸漂着物処理推進基本方針を改定します。

5 プラスチック・スマート

環境省では、プラスチック資源循環戦略の策定に向けた検討と並行して、世界的な海洋プラスチックごみ問題の解決に向けて、あらゆる普及啓発・広報を通じて海洋プラスチックごみ汚染の実態の正しい理解を促しつつ、国民的気運を醸成し、個人・地方公共団体・NGO・企業・研究機関など幅広い主体が連携協働して“プラスチックとの賢い付き合い方”を進めることを後押しするため、2018年10月に「プラスチック・スマート」と銘打ったキャンペーンを立ち上げました(図3-2-1)。このキャンペーンでは、地方公共団体・NGO・企業・研究機関等から、不法投棄・ポイ捨ての撲滅の運動、散乱ごみや海岸漂着物の回収、リデュース(例:ワンウェイのプラスチックの排出抑制)、リユース(例:イベントでのリユース食器の利用)、リサイクル(例:再生プラスチックを使用した製品の開発・利用)、代替素材(紙やバイオマスプラスチック等)を使用した製品の開発・利用等の取組をキャンペーンサイトを通じて募集し、登録された事例を国内外に発信するとともに、個人に対しては、ごみ拾いイベントへの参加、マイバッグやマイボトルを活用したワンウェイのプラスチックの使用抑制、再生プラスチックを使用するなど環境に配慮した商品の購入等の取組・アイディアに関する写真・コメントをSNS(Instagram・Facebook・Twitter等)上で「#プラスチックスマート」のハッシュタグをつけてシェアすることを呼びかけています(図3-2-2)。

図3-2-1 プラスチック・スマートのロゴ
図3-2-2 プラスチック・スマートのキャンペーンサイト

また、「プラスチック・スマート」キャンペーンを更に強化することを目的として、2019年1月に、本キャンペーンに参加した企業・団体をはじめ、海洋プラスチックごみ問題に取り組む多くの企業・団体の対話・交流を促進する「プラスチック・スマート」フォーラムを立ち上げました。このフォーラムでは、環境月間やG20等の機会を捉えて、最新の科学的知見や取組を共有するシンポジウム等のイベントの開催、「プラスチック・スマート」に関する優れた取組に対する表彰、海岸清掃等の全国各地でのイベント等を関係団体とも連携して実施するとともに、参加団体が実施する勉強会・研究会等の自発的な活動に対するサポートも行います。

写真3-2-1 プラスチック・スマートフォーラム発足式の様子

コラム:「かながわプラごみゼロ宣言~クジラからのメッセージ~」(神奈川県)

2018年夏、神奈川県鎌倉市由比ガ浜でシロナガスクジラの赤ちゃんが打ち上げられ、胃の中からプラスチックごみが発見されました。神奈川県では、これを「クジラからのメッセージ」として受け止め、持続可能な社会を目指すSDGsの具体的な取組として、深刻化する海洋汚染、特にマイクロプラスチック問題に取り組む「かながわプラごみゼロ宣言」を発表しました。

プラスチック製ストローやレジ袋の利用廃止・回収などの取組を市町村や企業、県民とともに広げていくことで、2030年までのできるだけ早期に、リサイクルされない、廃棄されるプラごみゼロを目指すこととしています。また、こうした取組を通じて、SDGsを多くの方々に「実感」していただくことを目指しています。

1.コンビニエンスストア・スーパーマーケット・レストラン等と連携し、プラスチック製ストローやレジ袋の利用廃止や回収などの取組を進めていきます。

2.県内で行われる環境イベント等において、プラスチック製ストローの利用廃止や回収などを呼びかけていきます。

3.海岸利用者に対して、海洋汚染の原因となるプラごみの持ち帰りを呼びかけていきます。

かながわプラごみゼロ宣言ロゴマーク、「かながわプラごみゼロ宣言」賛同企業等との連携