環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和元年版 環境・循環型社会・生物多様性白書>平成30年度 環境の状況 平成30年度 循環型社会の形成の状況 平成30年度 生物の多様性の状況>第1部 総合的な施策等に関する報告>はじめに

平成30年度 環境の状況
平成30年度 循環型社会の形成の状況
平成30年度 生物の多様性の状況
第1部 総合的な施策等に関する報告

はじめに

2018年4月、我が国の今後約5年間の環境施策の方向性を定めた第五次環境基本計画を閣議決定しました。この計画で提示した「地域循環共生圏」は、地域資源を持続可能な形で最大限活用しつつ、地域間で補完し支え合うことで、人口減少や少子高齢化の下でも環境・経済・社会の統合的向上を図りつつ、新たな成長につなげようとする概念です。

地域循環共生圏は、環境・経済・社会の統合的向上及び脱炭素化の実現を目指すものであり、これは、2015年9月に国連総会で採択された持続可能な開発目標(SDGs)及び同年12月に採択されたパリ協定という国際動向も踏まえた課題解決の考え方だと言えます。

近年、環境問題の性質は大きく変容し、気候変動やプラスチックごみによる海洋汚染など、地球規模の危機であると同時に地域課題とも密接に関わる問題が生じています。これらの問題は一人一人が影響を受けるとともに、その原因者ともなっているため、数多くのステークホルダーが関わり、各地域において取り組む必要があります。

そこで本白書では、こうした背景を踏まえ、地域循環共生圏の具体化という切り口から、気候変動影響への適応とプラスチック対策の取組に焦点を当てることにしました。

気候変動の影響に対処するには、温室効果ガスの排出の抑制等を図る「緩和」に取り組むことが当然必要ですが、既に現れている影響や中長期的に避けられない影響による被害を回避・軽減する「適応」もまた不可欠なものです。気候変動による影響は様々な分野・領域に及ぶため関係者が多く、更に気候変動の影響が地域ごとに異なることから、適応策を講じるに当たっては、関係者間の連携、施策の分野横断的な視点及び地域特性に応じた取組が必要です。気候変動の影響によって気象災害リスクが増加するとの予測があり、こうした気象災害へ対応していくことも「適応」ですが、その手法には様々なものがあり、生態系を活用した防災・減災(Eco-DRR)もそのひとつです。具体的には、遊水効果を持つ湿原の保全・再生や、多様で健全な森林の整備による森林の国土保全機能の維持を通じて、自然が持つ防災・減災機能を生かすといったことが挙げられます。これは、適応の取組であると同時に、人口減少が進む我が国における課題への対応、すなわち社会資本の老朽化等の社会構造の変化に伴い生じる課題への対応にもなり、更には生物多様性の保全にも資する取組でもあります。適応策を講じるに当たっては、複数の効果をもたらすよう施策を推進することが重要とされています。

また、プラスチックごみによる海洋汚染が、世界的に危機意識をもって捉えられています。プラスチック製品は利便性も高く、開発途上国では衛生管理に大きな役割を果たすなど、我々の暮らしを便利にした側面もあります。一方で、適正に処理されずに海にたどり着いた廃プラスチック類が海洋環境を悪化させている状況、更には廃プラスチック類が劣化し破砕され、マイクロプラスチックとして広く海に広がり、生態系への悪影響も懸念されているという状況を踏まえれば、日頃のプラスチックとの付き合い方を改めて見直さなければならない時機に来ていると考えられます。その見直しに当たっては、3R(リデュース・リユース・リサイクル)等これまで取り組んできたことを更に強化するだけでなく、ライフスタイルの転換やイノベーションの推進を図ることが肝要です。これは、資源の有効利用という環境負荷軽減のみならず、地域資源の活用による産業の活性化にもつながり得るものであり、資源循環体制の構築は地域経済にも資すると考えられます。

気候変動影響への適応、プラスチック対策ともグローバルな課題ですが、地域特性に応じ、地域資源を活用して課題解決を図る「地域循環共生圏」の考え方を活用することで、複数の課題解決にも資する取組とすることが可能になります。

本白書では、以上の観点を踏まえ、まず第1章では、地域循環共生圏の創造を具体的な事例を交えながら概説します。そして、第2章では気候変動影響への適応について、第3章ではプラスチック資源循環について、それぞれ国内外の動向や地方公共団体・事業者等の取組等を紹介します。第4章では、東日本大震災からの復興に向けた取組を紹介します。