環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成30年版 環境・循環型社会・生物多様性白書>平成29年度 環境の状況 平成29年度 循環型社会の形成の状況 平成29年度 生物の多様性の状況>第1部 総合的な施策等に関する報告>はじめに

平成29年度 環境の状況
平成29年度 循環型社会の形成の状況
平成29年度 生物の多様性の状況
第1部 総合的な施策等に関する報告

はじめに

我が国は、本格的な少子高齢化・人口減少社会を迎えるとともに、地方から都市への若年層を中心とする流入超過が継続しており、人口の地域的な偏在が加速化し、地方の若年人口、生産年齢人口の減少が進んでいます。このことは、環境保全の取組にも深刻な影響を与えており、例えば、農林業の担い手の減少により、耕作放棄地や手入れの行き届かない森林が増加し、生物多様性の低下や生態系サービスの劣化につながっています。このように、環境・経済・社会の課題は相互に密接に連関し、複雑化してきています。

世界に目を転じると、2015年に、地球規模の環境の危機を反映し、持続可能な開発目標(SDGs)を掲げる「持続可能な開発のための2030アジェンダ」や「パリ協定」の採択など、世界を巻き込む国際的合意が立て続けになされ、転換点とも言える1年になりました。パリ協定の発効を受けて世界が脱炭素社会に向けて大きく舵を切り、ESG投資等の動きが拡大している潮流を踏まえれば、今こそ、新たな文明社会を目指し、大きく考え方を転換(パラダイムシフト)していく時に来ていると考えられます。

このような認識の下、2018年4月に環境基本法に基づく第五次環境基本計画を閣議決定しました。第五次環境基本計画では、こうした国際・国内情勢に的確に対応するため、今後の環境政策の方向性として、経済社会システム、ライフスタイル、技術といったあらゆる観点からイノベーションを創出するとともに、SDGsの考え方も活用し、環境保全上の効果を最大限に発揮できるようにすることに加え、諸課題の関係性を踏まえて、経済・社会的課題の解決(同時解決)に資する効果をもたらすようにデザインすることで、将来にわたって質の高い生活をもたらす「新たな成長」につなげることを目指しています。

また、情報通信技術(ICT)等の科学技術も最大限に活用しながら、経済成長を続けつつ、環境への負荷を最小限にとどめ、健全な物質・生命の「循環」を実現するとともに、健全な生態系を維持・回復し、自然と人間との「共生」や地域間の「共生」を図り、これらの取組を含め「低炭素」をも実現する、循環共生型の社会(「環境・生命文明社会」)を、私たちが目指すべき持続可能な社会の姿として位置付けています。

その具体化の鍵となるのが、自立・分散型の社会を形成しつつ、近隣地域等と地域資源を補完し支え合う考え方である「地域循環共生圏」です。地域は人口減少・少子高齢化等に起因する課題が顕在化している一方で、豊かな自然環境など地域ごとに多様なポテンシャルを有しています。そうした地域資源を持続可能な形で最大限活用することで、環境・経済・社会の統合的向上を図り、農山漁村も都市も活かす、我が国の地域の活力を最大限に発揮する考え方と言えます。

この概念は、第五次環境基本計画で提唱したものですが、実は、既にその機運は高まりつつあり、経済・社会の諸課題の影響を最も受けている地方部でも、豊かな自然など環境を活用した創意工夫により地域活性化を進めている地方公共団体、事業者、民間団体等が現れてきています。国はこれらの取組を発掘し、環境・経済・社会の統合的向上の具体化に資する優良事例を社会全体で共有し、広く国民へ普及することで地域の取組を応援することが求められています。

本白書では、そうした国内外の動向を踏まえ、「地域循環共生圏の創出による持続可能な地域づくり」を第1部のテーマに掲げました。第1章では、第五次環境基本計画の策定に至る国内外の動向を概観します。また、第2章では、上記のような「地域循環共生圏」の視点で、地域活性化を進めている地方公共団体、事業者、民間団体等の取組を紹介します。さらに、第3章では、ライフスタイルのイノベーションの創出に向けて、環境・経済・社会の同時解決にも資する新たなライフスタイルの取組を紹介します。

東日本大震災については、除去土壌等や放射性物質汚染廃棄物への対応、帰還困難区域内の特定復興再生拠点区域におけるインフラの再構築が進められています。また、東日本大震災、阪神・淡路大震災に次ぐ量の災害廃棄物が発生した平成28年熊本地震については、発災から2年が経過した2018年4月までに、災害廃棄物の処理がほぼ完了しました。第4章では、被災地における震災からの復興に向けた取組を紹介します。