第11節 自然環境の保全に関する国際的枠組みの下での取組と新たな国際的枠組みづくり


1 生物多様性の保全

国際的に重要な湿地の保全を推進するため、ラムサール条約の第9回締約国会議(平成17年11月:ウガンダ)にあわせて、新たに20か所の国内湿地を登録しました。この結果、国内の条約湿地は33か所になりました。
アジア諸国の条約への加盟促進に努めるとともに、湿地管理に関するワークショップの開催など、渡り鳥のルート沿いの重要な湿地の保全のため、同地域における協力体制の一層の強化を図りました。
米国、オーストラリア、ロシア、中国及び韓国との二国間の渡り鳥等保護条約等に基づき、各国との間で渡り鳥等の保護のため、アホウドリ、ズグロカモメ等に関する共同調査を引き続き実施するとともに、会議の開催等を通じて情報や意見の交換を行いました。
平成13年より開始された第II期「アジア太平洋地域渡り性水鳥保全戦略」に基づき、シギ・チドリ類、ツル類及びガンカモ類の渡りルート上の重要生息地のネットワークへの参加を促進するとともに、同ネットワーク活動を推進しました。
平成17年7月から、国際サンゴ礁イニシアティブ(ICRI)の議長国をパラオ共和国と共同で実施し、10月31日〜11月2日には同国において、ICRIの総会を開催しました。

2 森林の保全と持続可能な経営の推進


(1)問題の概要
世界の森林は、陸地の約30%を占め、面積約40億haに及びますが、2000年(平成12年)から2005年(平成17年)にかけて、年平均732万haの割合で減少しました。特に、熱帯林が分布するアフリカ地域、南アメリカ地域及びアジア地域のうち東南アジアで森林の減少が続いています(図6-11-1)。

図6-11-1	世界の森林面積の年当たりの変化率(2000年〜2005年)

森林消失の原因として、農地への転用、非伝統的な焼畑移動耕作の増加、過度の薪炭材採取、不適切な商業伐採、過放牧、プランテーション造成、森林火災等が挙げられます。特に近年では、違法伐採が問題となっています。

(2)対策
平成18年2月に開催された国連森林フォーラム第6回会合(UNFF6)では、世界の持続可能な森林経営を推進するための今後の国際的枠組の強化について議論が行われ、2015年までは法的拘束力を伴わない枠組とすることや、森林の減少傾向の反転等2015年までの世界的な4つの目標などを内容とする文書が合意されました。
平成17年11月に横浜で開催された「アジア森林パートナーシップ」(AFP)第5回実施促進会合では、「AFPの強化のための組織事項と意思決定の仕組に関する発表」が採択され事務局や参加パートナーの役割が明確にされたほか、違法伐採対策や森林法の施行と統治に関連する取組事例が報告され、関連する国際的なプロセス等とのさらなる協調の必要性が確認されました。
国際熱帯木材機関(ITTO)においては、持続可能な森林経営の阻害要因の一つである違法伐採問題克服のため、合法な木材の適正な流通を図るための総合情報システムを開発するとともに、森林認証を推進する事業を含む持続可能な熱帯林経営を目的とした活動を行っています。
また、森林の保全と持続可能な経営を評価するための基準・指標について国際的な取組が進められていますが、日本は、欧州以外の温帯林・北方林を対象とした「モントリオール・プロセス」に参加しています。
違法伐採問題については、日本とインドネシアとの間で策定・公表した違法伐採対策のための協力に関する「共同発表」「アクションプラン」に基づいた取組を進めています。また、木材を輸入している諸外国における取組状況等の調査を行っています。平成17年7月には、G8グレンイーグルズサミットで合意された行動計画に、違法伐採対策を推進することが盛り込まれました。また、同サミットにおいて、日本は、政府調達等を通じて違法伐採対策に取り組むことを盛り込んだ「日本政府の気候変動イニシアティブ」を発表しました。
さらに、平成17年11月には、欧州・北アジア森林法の施行及びガバナンス(ENA-FLEG)に関する閣僚会合が開催され、同会合の閣僚宣言の中では、合法的に伐採された木材の貿易を促進するため、国際的な協力の強化に取り組むこと等が宣言されました。
上記の取組のほか、ITTO、国連食糧農業機関(FAO)等の国際機関への拠出、国際協力機構(JICA)等を通じた協力、民間団体の植林活動等への支援、熱帯林における生態系管理に関する研究等を行いました。

3 砂漠化への対処


(1)問題の概要
砂漠化とは、乾燥地域、半乾燥地域等における土地の劣化のことです。これには、土地の乾燥化のみならず、土壌の浸食や塩性化、植生の種類の減少等も含まれます。
砂漠化の影響を受けている土地は、世界の陸地の4分の1に当たる36億haに達します。そして、世界人口の6分の1に当たる9億人が砂漠化の影響を受けています(図6-11-2)。

図6-11-2	砂漠化の現状

砂漠化の原因として、干ばつ等の自然現象のほか、過放牧、過度の耕作、過度の薪炭材採取、不適切な灌漑による農地への塩分集積等が挙げられます。その背景には、開発途上国における貧困、人口増加、対外債務の増加等の社会的・経済的要因が絡んでいます。

(2)対策
平成17年10月、「砂漠化対処条約(UNCCD)」の第7回締約国会議(COP7)が開催され、砂漠化・干ばつの早期警戒体制の開発支援、基準と指標に関する作業を優先事項として取り組み、最終レポートがCOP8に提出されること等が決定されました。
日本は、同条約により設けられている科学技術委員会へ貢献するため、砂漠化の評価と早期警戒の方法や、砂漠化対処のための伝統的知識の活用方法等について検討しています。
また、同条約に基づくアジア地域行動計画の一環として、テーマごとに情報交換等を目的としたネットワーク作り(TPN)が進められています。日本は、「砂漠化のモニタリングと評価」をテーマするTPN1及び「干ばつの影響緩和と砂漠化の制御のための能力強化」をテーマとするTPN5に参加しています。
このほか、二国間協力として、JICA等を通じ、農業農村開発、森林保全・造成、水資源保全等のプロジェクト等を実施しました。例えば、ブルキナファソやマリにおいて砂漠化に対処するための農村開発の調査を実施しました。民間部門の活動に関しては、砂漠化対処活動を行っている民間団体に対し、(独)環境再生保全機構の地球環境基金等により支援が行われました。

4 国際的に高い価値が認められている環境の保全

平成17年7月に「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」に基づき知床が世界遺産一覧表に記載されました。海氷が育む豊かな海洋生態系と陸上生態系の相互関係に特徴があり、オオワシ、オジロワシ、シマフクロウといった絶滅のおそれのある種の重要な生息地となっている点が評価されたもので、わが国の世界遺産のうち自然遺産として初めての海域を含んでの登録となりました。
白神山地及び屋久島の自然遺産について、関係省庁・地方公共団体による連絡会議の開催等により適正な保全を推進しました。
環境保護に関する南極条約議定書」を適切に実施するため制定された南極地域の環境の保護に関する法律(平成9年法律第61号)に基づき、南極地域における観測、観光、冒険旅行、取材等に対する確認制度等を運用するとともに、ホームページ等を通じて南極地域の環境保護に関する普及啓発、指導等を行いました。
また、南極地域で環境上の緊急事態(例えば、大規模な油流出事故等)を生じさせた場合の責任について定める議定書附属書の作成に関する交渉へ参加する(同附属書は、平成17年6月の第28回南極条約協議国会議で採択)等、南極地域の環境の保護に関する国際的な枠組みづくりに貢献しました。


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