総合環境政策

「地球温暖化対策と地域経済循環に関する検討会」第2回検討会議事要旨

日時

2009年1月27日(火)10:00~12:00

場所

内閣府 中央合同庁舎第4号館1F 123会議室

出席委員

大西委員(座長)、井上委員、小原委員(代理 谷口氏)、倉阪委員、後藤委員、中村委員、西尾委員(代理 松村氏)、村木委員

1. 開会

  •  開会の挨拶、および前回議事要旨の確認があった。

2. 検討内容

2-1 温暖化対策の実施による地域経済循環への影響分析について     

  • 事務局より、前回委員会の主な指摘と対応方針、温暖化対策導入のシナリオ想定、温暖化対策実施による経済波及効果の算定方法、算定結果・考察、および今後の検討課題について説明があった。

主な意見

地域経済を活性化する仕組みの検討について
  • 地域を活かすということは、地域の事業や技術を全国に展開することで経済効果をもたらすといった視点も必要。
  • 環境対策への投資リスクを回避するための仕組みの想定が必要。
  • 対策を実施する主体が動く動機が必要であり、それが動く仕組みを考えなければならない。
  • 持続的なシステムとして続いて、環境財を用いることにより、中山間地域と都市部との格差を解消していくためには、何かインセンティブがないと続かない。例えば、地域で生まれたお金を地域の住みやすい住宅に投資する、バリアフリーのまちづくりに投資するなどの、地域に付加価値をつけるようなメカニズムを導入すれば格差が縮まる。メカニズムの中に環境対策を位置付けたほうが継続される。
  • 温暖化対策に関するお金の流れに関する想定が必要。
温暖化対策の地域への効果について
  • 温暖化対策を実施した結果としてエネルギー自給率の向上やバックアップ電源の追加など、持続可能性から見て地域の経済に効果があることも視野に入れて欲しい。
  • 森林を吸収源として捉え、健全な生態系の保全にも効果があることも捉えることが必要。
  • 環境対策を実施することによる付加価値効果として、県民総生産や県民所得がどの程度引き上げられるのか、同規模の公共事業や観光対策と比較し、経済効果がどのくらい異なるかを見ると分かりやすい。投資コストに見合う効果が出ているのかを検討するべき。
域外の需要地との連携について
  • 自治体の中には、自然エネルギーや再生可能エネルギーの供給がほとんどない自治体もあるので、供給サイドをほとんど持たない自治体に対しても参加できる仕組みが必要。
  • 都心でできる選択肢として、地域連携による生グリーン電力の導入(東京都と連携し、風力発電など地方で得られた再生可能エネルギーを都心で利用)がある。都心では、オンサイトでできることは限られているため、地方の電力を直接買い取るスキームの検討等が必要。
  • 需要が大きい都心ビルの対策費用を地域に還元できるような仕組みを作り、大都市圏と地方双方が共生しながら反映するような取組が重要。
排出権クレジットの想定について
  • どこまでが削減責任分で、どの部分がクレジットとして売れるかを想定することが必要。
  • CO2クレジットについては、誰がどう使うのか、お金と財の流れをしっかりと組んでおくことが必要。
  • 国際取引上での価格と新たに国内でバイオマスや自然エネルギーを作る場合の価格は全く異なるため、どちらを想定するかの検討が必要。
  • 東京都の制度では国内CDMまでを認めている。海外CDMは認めていない。森林吸収も認めている。例えば、高知でグリーン電力証書を発行したものを東京で使用することは認める。
  • 排出権取引は、価格設定など難しい問題があるため、まずは地域で実施するべき温暖化対策の効果を検討し、クレジットに関しては、一部を実施検討する方がよい。
温暖化対策に伴う事業者側での光熱費削減効果の取り扱いについて
  • 光熱費削減または、将来に渡り自然エネルギー発電を生み出すものとして捉え、何らかの経済波及効果を計ることできるのではないか。
対象となる対策種類について
  • 対象となる対策の種類に小水力と風力を入れてもよいのではないか。特に小水力は建設需要により地域雇用創出になる。

2-2.地域経済循環の観点から都市構造対策を円滑化する手法の検討について

  • 事務局より、既存の開発権取引の概要、事例紹介等が行われた。

(2)意見交換

  • CO2の削減ということを大上段に掲げるとTDRは間接的。アメリカでもCO2削減の目的でやっていない。ニュージャージー州でもスマートグロース政策と連携して実施。農地保全や緑地保全には適しているが、CO2削減効果というと疑問。東京都が実施している都市開発手法での位置づけの方が、CO2排出量を見ているため、ストレート。
  • 都市開発手法の中で容積率のUPは大きなインセンティブとなっているため、容積率とCO2排出量の削減を取引すると良い。
  • コンパクトな都市構造とするため、容積移転する。間接的にCO2が削減されるのはわかるが、直接CO2を取引するのは分かりにくいと思う。
  • 緑地保全とセットとして検討することが必要。この方法の場合、地域全体の開発のキャパシティの制御や、都心の追加的な開発により生じるデメリットを解消できる。デメリットを解消できればいいため、必ずしも開発権移転ではなくてもよい。
  • 切り口が様々に混じっているため、何をやりたいのか、開発権はどこまで請求するのかを整理して検討する必要がある。
  • 郊外をどこに設定するかにより話が変わる。郊外の開発権は、土地なのか容積なのか。容積の場合、郊外の土地の開発可能性はどのように算出すればよいのか。そこが調整区域なのか都市計画区域外なのかによっても話が変わる。空間の価値をどのように計算すればいいのか、それとも個別の土地の価格と都市の土地の価格との差で考えるのか。最終的には、間接的ではあるが、郊外の方が、地価が安いため、都市に乱開発が起きた場合に、結果的にCO2の排出量が増えてしまうことを未然に防げることはいいと思うが、何が一番ポイントか言えない状況。
  • 風の道の確保は都市内、農地の保全・創出は都市外のことになる。今のスキーム全体でいうと、風の道の確保と矛盾する部分がある。都市内の緑地需要は非常に高い。都市は、防災に非常に弱い。都市内の緑地の需要を無視して都市外に目を向けているのは非常にもったいない。
  • 都市は森林まで含めて都市。市街地区域外があり、はじめて都市は支えられている。都心部から郊外に資金が循環する仕組みが非常に重要であり、それを実施しないと都市の持続的な維持はできない。
  • 実際に実証的に分析するところまで持っていくかによって、どのようなエリアを設定するかが全く異なってくる。市町村単位でやるのか、大都市圏DIDの圧倒的に多い市街地でやるのか、地方都市でやるのかによって定義の仕方が全く違う。
  • 交通結節点で既存のインフラも含め、省CO2化のキャパシティを持っているところを高密度化していくこと、全体的に都市をコンパクト化する効果もあると思っているが、定量的な評価がない。
  • 吸収量では都市部の排出量を賄いきれないため、郊外の開発との関係をイメージするのがよい。UR都市機構が実施し始めているが、スプロール化した地域を、インセンティブを与えながら優良な都市開発に持っていくかという話とリンクさせるのがよい。都心は高密度化、郊外はニュータウンで空いてきているところに低層だが非常に価値のある開発を誘導し、その分の容積から減築分を都心とのバーターで使用するというケーススタディも考えられる。ただ、その際に緑がバランスしていない。郊外の優良な宅地開発、地域作りとの関係でCO2を使用し、双方の開発を誘導していく考え方もある。
  • 農地の保全や緑の保全という観点から広めれば、TDRは使用可能。日本もイギリスのようにマイナスの経済成長となる。さらに人口減少によりパイは小さくなるため、地方はより疲弊してしまう。これを平準化するため、東京都のような大都市から疲弊している地方都市に持っていくことを考える必要がある。これをTDRで実施するのか、交付税で実施するのかである。
  • 緑の保全や都市内農地を保全するために、開発権を販売することは考えられる。コンパクトシティ化する手法に取り入れることも考えられる。
  • 富山もコンパクトシティ化することは計画しているが、それでCO2が削減されるかどうかまでは話を詰めていない。駅の近くに住んだ人が車を放棄するかどうかは、わからない。地方都市で都市形態がコンパクトになったからといって、自動車依存度が少なくなるかどうかは疑問。CO2削減に関しては、開発を実施した際にCO2削減を求めるような直接的な方法のほうがより効果があると思う。
  • 緑地保全については、TDRが有効であると思う。
  • 緑地保全の観点で考えると、既成市街地の中の生産緑地が地域にとっても非常に意味がある。既に容積率も指定されているため、立ち上がる可能性を計算し、それを都心に売却する際には床面積のやり取りがあるため、発生されるCO2に換算できる。
  • シアトルの例では、容積のボーナスを与える際に必ず半分はTDRで実施しなければならないと決められている。そうすれば、指定容積を下げなくてもボーナスを認めることにより、半分はTDRが使用される。
  • 時間的に2020年までのCO2削減目標に間ない合わないと思う。この政策は、都市の緑地保全に使用することは役立つと思う。建築物に対するCO2削減は、これとちょっとバッティングする。住宅に関しても今後8割ほどCO2削減することを提案しているため、計算が難しい。都心部が加速するリスクが高いため、東京都としては、分散型にして頂くのが望ましい。
  • TDRの受け手地域を都心にするとは限らない。郊外の拠点部でもよい。
  • 緑の保全だけでは、コンパクト化は進まない。周辺全てをグリーンベルト化することは実現不可能ではないか。地方の郊外の宅地開発を低炭素型で再生可能エネルギーだけで賄うニュータウンを開発するようなプロジェクトを実施できないだろうか。アメリカならば、非常に価値の高い取引を誘導するような郊外の宅地とセットでないと、お互いWin-Winになるような政策がないと、郊外の緑を保全するだけでは上手くいかない。

4.今後の予定

  •  次回以降の検討方針が確認された。

以上