総合環境政策

「地球温暖化対策と地域経済循環に関する検討会」第1回検討会議事要旨

日時

2008年12月19日(金)13:00~15:00

場所

内閣府 中央合同庁舎第4号館12F 1211会議室

出席委員

大西委員(座長)、井上委員、小原委員(代理 谷口氏)、倉阪委員、後藤委員、中村委員、西尾委員、藤野委員、村木委員

1.開会の挨拶

 環境省総合環境政策局 小林局長より開会挨拶

2.委員紹介・検討会の運営

 委員名簿により委員紹介、座長の選任
 資料1により、事務局から検討会の運営について説明

3.検討会の背景・趣旨説明

 資料2により、事務局から最近の地球温暖化対策の動向について説明

4.検討内容

(1)温暖化対策の実施による地域経済循環への影響分析について

 資料3により、事務局から検討の背景、調査全体像、現状分析、地球温暖化対策による地域活性化に関する分析の考え方について説明
 また、参考資料により、西尾委員からケーススタディの対象地となる高知県での温暖化対策の取り組み状況等について説明

(2)地域経済循環の観点から都市構造対策を円滑化する手法の検討につい

 資料3により、事務局から検討にあたってのスタンス、検討項目について説明

主な意見

(1)温暖化対策の実施による地域経済循環への影響分析について

  • 大都市のCO2を削減するために、自然エネルギーを地方で導入し、大都市がその対価を支払った場合、自然エネルギーを提供している地域の経済は潤うように見えるが、地域の資金は、ほとんど地域の外に投資されており、地域の資金は地域で使用されていないという課題がある。
  • 地域経済への良い影響を考える際、雇用量の増加に関する視点、新しい形の産業が出てくる視点も重要。
  • エネルギーはコストだけでなく、セキュリティの面にも着目することが重要。単純に地域のコストが下がる部分だけを見るのでは、効果が過小に見積もられてしまう危険性がある。国のエネルギーセキュリティに資する面、超高齢化社会に向けて、まちの安全安心が高まる面に着目することも重要。単純にエネルギーとCO2の問題だけではなく、このような+αの価値をより議論しないと、地域の人にとって魅力は薄れてしまう。
  • 大都市でバイオマスや木質ペレットを利用する際に地方から持ってくる新産業分野に関して、ロンドンのゼロカーボンの住宅地開発において、木質ペレットを提供する会社が倒産してしまい、エネルギー提供ができなくなった事例がある。従って、何か問題が発生した際にバックアップできる体制を合わせて検討する必要がある。
  • 金融システムの循環性、資金循環の視点も重要。都会の方が圧倒的に物質的にもサービス的にも供給量も生産要素も多いため、一方的な資金循環にしかならない。地域間のシステムを検討し、地産地消を上手く実施しないと、供給量の問題、安定的な供給の問題、品質の問題、費用対効果の問題が発生する。
  • 産業連関表は需要サイドの分析であり、供給サイドに関する視点があまり含まれていないことを認識しておく必要がある。需要が増えた場合に需要に対応できる供給構造、産業構造を環境に対して優しい生産構造にしておかないといけない。環境に優しい物を供給できる社会全体でのシステムを構築するべきである。
  • オフセット・クレジットの価格は、キャップをかぶせるなど安定化策が必要。
  • 高知県では、環境省が設定している自主取引ルールの価格を設定。
  • 自然エネルギーの利用には、需要の安定性も重要。東京都では、使用電力量の5%をグリーン電力に変える取組を行っている。東京とでは、グリーン電力の予算要求は光熱費で計上している。光熱費というのは、政策目的経費ではないため、建物が存在する限り、終わることなく続く。これにより、需要が確実に安定的に続くこととなり、供給が安定する。
  • 2010年より東京都では環境確保条例が開始され、大規模オフィスビルは、何%か削減義務を負うようになる設備投資を行うだけではキャップをクリアすることは難しいので、グリーン証書等で、地方との関係性を検討していければいい。
  • ボリューム確保するためには、水力、風力も活用する必要があると思う。

(2)地域経済循環の観点から都市構造対策を円滑化する手法の検討について

  • OECDの経済的施行データベースにおいて、土地利用におけるCO2排出権取引という項目があり、現在5件取り上げられている。
  • 直接的に容積移転を実施しているのは、西海岸シアトル、キング郡において実施していた。制限値(オープンスペース、森林、涵養林)を保全するため、その容積率をシアトル市内のビルの敷地に移転することが実施されていた。前提としては、レシーバーとセンダーとを設定し、容積率を出す側と受ける側の関係を構築しないといけない。
  • ワシントン州では、購入せざるを得ないように一定のルール化をしている。例えば、ボーナス特定を提供する際には、半分はTDRを利用しなければならず、TDRが使用されるような仕組みを導入している。さらに、TDRバンクを絡め、保全をする森林を売りたい土地所有者がいてもすぐに需要がない場合のために、TDRバンクが一旦容積率を購入し、TDRバンクから最終需要者が購入するようになっている。
  • 地方公共団体実行計画に緑地保全・緑化の推進があるが、緑地・緑化を増やすためにはインセンティブや規制が必要。吸収源としての緑について、90年以降に植栽した公園や街路樹などは、カウントされている。しかし、実行計画にある都市緑地法の保全緑地、地区計画の中の保全緑地などは吸収源として効果があるにも拘わらず、吸収源としてカウントされない。こうした問題を解決していくことによって、公共団体の緑地・緑化の推進は上手く働いていくのではないか。都市の中で風の道が創出されるようになり、ひいてはクールアイランド、クールスポットが生まれ、エネルギー需要抑制に繋がってくる。
  • 今後都市がシュリンクして、経済的優位な都心で都市活動が行われる。そのエネルギーを郊外の需要の冷え込んだ土地に循環させ、環境保全を行っていけば地方公共団体にとってもよいと思う。都市の開発権を移転させることは難しいと思うが、何らかのメリットを結びつけること、例えば、緑地の吸収分で削減分の何%かは、企業による植林で認めるといった制度があれば、進展して行くと思う。
  • 東京のエネルギー消費を担保する森林を確保することは難しい。従って、市街地が肥大化している中で、都心に環境性能の高いビルを建てていく際に、安心安全を考慮しつつ都市を集約化したよりコンパクトな街作りを目指すことが重要である。その際、周辺部の開発権が都市部に移ってくるようなことを視野に入れていなかいと、量的なバランスが取れていなかい。
  • 緑は、社会的・環境的な大きな価値を持っているため、緑地の創出を行うのであれば、それは別の費用で維持するべき。市街地の価値を高めるのであれば、同時に疲弊しつつある地方の市街地との連携を考えなければならない。

5. 今後の予定等

 資料5により、事務局から今後の検討会の予定について説明

以上