日時
平成20年3月3日(月) 10:30~12:30
場所
経済産業省別館10階1042号室
出席者
- 委員
- 池谷 奉文 (財)日本生態系協会会長
- 小野 勇一 北九州市立自然史・歴史博物館館長
- 大和田 紘一 熊本県立大学環境共生学部教授
- 近藤 健雄 日本大学理工学部海洋建築工学科教授
- 進士 五十八 東京農業大学地域環境科学部造園科学科教授
- 鈴木 和夫 (独)森林総合研究所理事長
- 辻井 達一 (財)北海道環境財団理事長
- 鷲谷 いづみ 東京大学大学院農学生命科学研究科教授
- 主務省庁
- 環境省、農林水産省、国土交通省から関係課室長等出席
議事
会議は公開で行われた。(傍聴者約20名)
議題 自然再生推進法に関する現状課題・整理
環境省より、資料1~10に沿って、日本学術会議との意見交換結果、自然再生協議会へのヒアリング及びアンケート結果等を踏まえた自然再生推進法に関する現状課題等について説明がされた。
委員からの主な意見は次のとおり。
- 公共事業においてB/Cの算出は必要であるが、自然環境に関してBを明確にすることは困難である。このため、Bを定量的、定性的の両面から評価できないか。
- 環境教育について、自然を理解する次世代の人間育成が重要であり、地域の多様な主体が参加する自然再生はそのプロセスである。
- 循環型農業について、現在、そのメニューがあるもののあまり進んでいない。経済的な話があるからだと思うが、積極的に進めてほしい。
- 自然再生の対象地域については、計画がまとまった段階で一種の特区として考えるべきであり、その中で行政が地元のコーディネーターとなって各省庁の資金をまとめ、それを総合的に扱えるような制度が必要である。
- 社会システムの中に自然再生を定着させることは困難であるが、自然再生や自然との共存が全ての社会システムに当然組み込まれているものと考えれば、個別事業毎にBを算出する必要が無くなる。自然が社会全体のベースであることを踏まえ、考えるべきである。
- 自然再生は、持続可能なものを目標とすることを基本とし、さらに、二次林のように人為との関係を前提としているものを対象とする場合、人との関わりが重要である。
- 経済的価値観にこだわらないことは当然であるが、行政の側から考えれば、貨幣価値で考えることも必要である。
- 自然再生におけるB/Cについては、長期的・広域的観点からの評価分析が必要であり、評価手法に波及効果を取り込んで考えればCよりも自然の存在としてのBが大きくなる。
- 生物多様性総合評価による科学的調査によってホットスポットを特定することになるが、その特定には時間がかかる。このため、全国的な視点に立った自然再生の推進においては、登録時の環境基準が維持されていない危機遺産地域や同様のラムサール条約湿地を優先的に対象とすべき。
- 地球温暖化との絡みで、生物多様性をどう扱うのかを検討する必要がある。地球温暖化を正面から対象とするような自然再生があっても良い。
- 環境教育について、子供達の能力の育成は学校で行うことが可能だが、自然に対する態度の育成については、自然の現場において行う必要がある。
- 2年前、自然再生の取組について「海域を対象とした取組が少ない」と指摘したが、19協議会が設立された現在、海域を対象とした取組も始まり、対象に広がりが出てバランスが良くなった。今後は、流域圏等広がりを持った考え方が必要である。
- 今日の検討結果について、今後自然再生を始めようとしている全国の者に対して広報活動をしていくべき。
- 本来、自然再生は土地利用の問題であるにも関わらず、どこに自然環境を残すのかという議論がなされてこなかった。欧米では、経済上利用しない土地については、自然に戻しており、日本においても土地利用のあり方を検討していくことが重要である。例えば、約38万haの耕作放棄地のどこをどう自然に戻すかという議論が不可欠である。同様の考え方から、河川においてもダム・堤防整備等の治水対策は土地利用の観点から総合的に考えて行く必要がある。
- 自然再生について、国際的な比較を行う必要があり、海外からの視察を積極的に受け入れるべき。