自然環境・生物多様性

自然再生基本方針(案)説明会の結果について

文責:環境省

日 時

平成15年2月1日(土) 第1回1300~,第2回1530~

場 所

新宿御苑インフォメーションセンター(2階会議室)

出席者

一般参加者(第1回69名、第2回59名)、報道関係者6名

説明者

環境省自然環境局自然環境計画課
農林水産省大臣官房環境対策室
国土交通省総合政策局国土・環境調整課

  1. 環境省自然環境計画課長より挨拶
  2. 環境省より自然再生推進法及び自然再生基本方針(案)について説明
  3. 質疑概要
    説明内容について、次のような質疑応答を実施。

今までの取組との違い

(問)自然再生事業の実施個所はどのように決められるのか。特に現に事業が進んでいるもの、これから事業を進めていくものの自然再生推進法上の取り扱いは違ってくるのか。

(答)環境省では自然再生事業を平成14年度から予算化し、直轄事業として釧路湿原の再生を、補助事業では埼玉県のくぬぎ山地区の雑木林の再生を進めている。これら以外にも実施に向けて調査を進めているところがあるが、こうした事業についての自然再生推進法に基づく自然再生事業としての適用は、今後検討していく予定。

(問)自然再生推進法がなくても、従来より、行政機関も関与して自然再生のような取組をやってきているものものある。これとどう異なるのか。

(答)確かに行政機関が関わって自然再生的な取組を進めているものもあるが、これらも含め、関係行政機関や関係地方公共団体の取組への参加の仕組みを明文化したのが、自然再生推進法である。
 

実施者について

(問)中海や宍道湖の自然再生のように大規模なものになれば、民間では無理で、国が実施者でなければできない。このようなものについては、環境省など国がイニシアティブを取るべきだが、どういう場合に誰が実施者となるべきなのかを基本方針に書くべきではないか。

(答)自然再生推進法の趣旨は、地元からの発意によるボトムアップであり、その中で、国が担うべき部分があれば、国が行うことになる。あらかじめ、どこか担うべきかを規定することはできず、ケースバイケースの判断となろう。なお、過去の工事でできた施設を取り除く内容の自然再生を行うことはありえるが、現実には、施設の管理主体(国なり都道府県)の理解抜きには動かない。3省庁が主務省庁として一緒になってやっていくので、その中で調整していくこともあると考える。

(問)国土交通省は、実施者として自然再生事業を進めていく気はあるのか。

(答)自然再生推進法は、地域からのボトムアップにより自然再生事業を進めていく枠組みを設けたものであり、地域において自然再生をやっていくという判断があれば、国土交通省も積極的に対応していく。地域には、地方整備局や各工事事務所もあり対応できる。

(問)実施者の範囲はどのようになるのか。実施者には、企業も含めて誰でもなれるのか。また、自然再生事業は、営利を目的としたものを排除するよう書くべきではないか。

(答)営利を目的に自然再生事業を行うということは想定しがたいため、何らかの措置をとることは考えていない。また、実施者には誰でもなることができる。
 

自然再生協議会の立ち上げ・参加者について

(問)自然再生協議会に参加したい人が集まって来るというのは分かるが、自然再生協議会に参加するメンバーの選定は実施者の裁量にまかされているのか。

(答)自然再生協議会への参加の呼びかけを行うのは実施者であるが、誰がメンバーとなるかは、関係機関も含む集まってきた人達が話し合って決める。自然再生協議会の立ち上げにあたって、参加の機会の公平性を確保することは、国会の審議でも強く求められたところである。

(問)釧路湿原の自然再生では上流側で農林水産省が行っている農地整備が問題と言われている。自然再生協議会について関係行政機関の参加は必須になっているが、(開発事業者としての性格も持つ)行政機関が参加を拒むことによって自然再生が上手く進まないということになるのではないか。

(答)釧路の上流で行われている農地整備は、釧路湿原の自然再生を目的としているわけではないが、農地整備によって、下流の湿原に影響が出ないよう沈砂池の設置などの配慮をする予定。自然再生協議会が立ち上がれば、関係行政機関の参加は必須であり、現実に、釧路湿原での自然再生事業においては、農林サイドも含む関係行政機関、NPO、専門家等による検討委員会が組織されている。

(問)自然再生協議会の立ち上げを呼びかける際、実施者は、どの程度の準備をしておけばよいのか。漠然とこうしたいというもので良いのか、それとも具体的な計画まで必要なのか。

(答)実施者は、ある程度、具体的な自然再生事業のイメージを紙として持っているべきであろう。さもないと、自然再生協議会を立ち上げる際に、周囲に説明できないのではないか。その際、実施者に自信がなければ、国の相談窓口までご相談していただきたい。

(問)「自然環境が損なわれた原因を科学的に明らかにした上で」とあるが、原因者を明らかにした上で、責任をとらせるということはないのか。自然再生協議会に自然環境を損なわせる原因となった者を参加させることはありえるのか。

(答)強制的に行わせることはない。自然再生協議会には、自然再生に賛同する関係者が集まる。自然環境を損なわせる原因となった開発事業を行った者であっても参加は可能であり、合意形成をしていく中で、役割分担を決めていくべきもの。

(問)2(1)アで「自然再生事業の事業の目的や内容等を明示して協議会を組織する旨広く公表し。」とあるが、具体的にどのようにすれば良いのかイメージがわかない。

(答)国であれば、官報告示、都道府県であれば公報への公示などが考えられるが、民間団体については、特にこれというものはない。各団体のホームページなどを使って広く募集することが考えられる。環境省で検討中であるが、自然再生事業の掲示板的なホームページを開設しようと考えている。現に実施している活動内容の紹介だけでなく、新たな協議会の立ち上げについて参加者の募集などを行ってもらっても構わない。
 

自然再生全体構想(自然再生協議会での協議内容)等について

(問)自然再生全体構想の場所の広がりのイメージはどのようなものか。どの程度のまとまりを持つのかが不明である。最初は小さくても、追加して、どんどん広がっていくことも可能なのか。

(答)自然再生の目的や対象などその内容によって異なってくると思う。例えば、湿原の再生であれば、集水域全体で考えるといったことも必要になる。自然再生の対象となる自然と関係している生態系全体を対象にするのが基本だが、実際上、大きな川の上流から下流までを一度にやるのは難しい面もある。自然再生協議会の最初の立ち上げは話し合いが可能な範囲となろう。

(問)自然再生全体構想の対象とする区域を国等に登録するのはいつか。

(答)特に登録と言った手続はないが、実施者が自然再生協議会の立ち上げの呼びかけをする際に、ある程度の対象区域を公にすることになるはず。また、関係地方公共団体や国の出先機関が入った自然再生協議会において自然再生全体構想を定める際にも、対象区域が議論されるはず。

(問)自然再生といいながら、防波堤で囲まれた中で養浜をして砂浜を取り戻すなど、箱庭的な自然の再生がなされるのではないかということを危惧しているが、これについてどう考えるか。

(答)自然再生事業は、損なわれた自然環境を取り戻すことを目的とするものであり、NPO等も入った自然再生協議会での合意形成により、その内容を決めていくことになる。その中で関係機関と調整されることになる。

(問)自然再生は、狭い範囲ではなく、広い範囲で行うべき。ただし、広い範囲で行うとなると、様々な法律が関わってくる。その場合、既存の法律との調整をどうするのか。

(答)自然再生は、できるだけ広範囲で考える必要があるが、広い範囲となれば、関係する人も多くなり、全員の同意を得て自然再生協議会を立ち上げるのも難しくなる。まずは、できる範囲からやって、自然再生協議会を順次広げていくべきではないか。

(問)丹沢をはじめ、関東の森林が荒れているのは大気汚染の影響を受けたもの。このような広域的な観点から考えていなければ、本当の自然再生にはならないのではないか。

(答)自然再生事業は、はじまったばかりで、まだまだ時間がかかる。まずは、できるところから一歩ずつはじめることが必要。

(問)自然再生協議会での協議は行われることになるが、全体構想の策定にあたって、環境アセスメントのように、広く意見を集めていくという姿勢に乏しいのではないか。

(答)自然再生推進法では、環境影響評価法での準備書の縦覧にあたるような規定はないが、自然再生協議会は原則公開にするなど透明性の確保を図っており、外部から意見を寄せることもできると考える。

(問)既存の施設の撤去も対象になるとのことであるが、今までのその施設で恩恵を受けていた人達の既得権や生活の問題がある。今までの権利をどう守っていくのかということになると、地域で合意形成をしろといっても難しい。自然再生のために既存施設を撤去する場合に基準のようなものを国が策定しておくべきではないか。

(答)自然再生をどのように行うかは、個々の自然再生協議会において合意形成を行いながら決めていくべきもの。個々の事業の実績を積み重ねていくことが重要。
 

自然再生推進法での自然再生事業の対象について

(問)自然再生の対象となる自然環境に、砂浜は含まれるのか。

(答)含まれる。

(問)自然再生の中には、今まで公共事業で作ってきた施設などを壊すことも含まれているのか。

(答)既存の施設の撤去も自然再生事業に含まれるが、現実には、施設管理者の理解と協力が不可欠である。

(問)1(2)カ「地域の環境と調和のとれた農林水産業を推進することが必要」と記されているが、例えば、環境保全に役立つ農林水産業を行っている人への直接補償を自然再生事業の一つの手段として含めていくのかどうか。

(答)この部分は、自然再生事業そのものではなく、周辺の農林水産業における配慮を記述したもの。

(問)森林の中に使わない林道もいっぱいあるので、必要なもの以外を撤去するようなことも自然再生事業で行えるのか。

(答)この法律に従って関係者の合意形成により自然再生をすることとなるが、全く役に立たない林道というのはそもそも存在しないはず。

(問)都市部の里山がどんどんなくなっている。都市計画法の中では、市街化区域の里山を壊しても違法ではない。この自然再生推進法の定義には「保全」が入っているが、里山を自然再生推進法を使って保全できないか。

(答)新・生物多様性国家戦略では、保全の強化、自然の再生、持続可能な利用を三本柱として書いており、里地里山の保全を強化していくことも当然必要である。しかし、この自然再生推進法は、自然の再生に関しての枠組みを定めた法律であり、保全の強化はこれとは別の柱になるが、一体として考えていくべきこと。ちなみに、里地里山に関する自然再生事業としては、埼玉県くぬぎ山地区の雑木林の自然再生を進めているが、周辺地域の保全と合わせて地域の検討会の中で議論される予定。

(問)観光業者の行っているいきすぎた開発なども、自然再生事業の対象になるのか。

(答)強制的な撤去は無理だが、議論の対象になりえる。
 

自然再生事業の進め方について

(問)自然再生基本方針の中で、環境アセスメントの関わりをどうするのか。科学的知見に基づく実施など、環境アセス的なことは良くかかれているが、明快に環境アセスメントを行うとは書かれていない。

(答)環境アセスメントを行うと明文化はされていないものの、自然再生推進法は、環境アセスメントの考え方が内包されているものだと考えている。なお、環境影響評価法に基づく環境アセスメントを行うか否かは、環境影響評価法の対象事業になるか否かによる。(例えば、河川事業として行われる自然再生事業であって、環境影響評価法の対象になるものであれば、同法に基づく環境アセスメントが行われることになる。)

(問)科学的評価の客観性、生物多様性の観点からの妥当性は誰がどのように担保するのか。

(答)自然再生協議会の中で専門家による評価がなされることが重要。また、国においても、自然再生事業実施計画や自然再生全体構想の写しの送付を受けた際に、必要な場合には、自然再生専門家会議の意見を聴いた上で助言を行うことになる。

(問)自然再生基本方針案1(2)ウ「自然環境が損なわれた原因を科学的に明らかにした上で」とあるが、実際に損なわれた原因を明らかにすることは難しい。損なわれた原因については仮説をたて、それを検証しながら進めていくことになるはずであり、明らかにした上でと記述するのは適当ではないのではないか。

(答)損なわれた原因について仮説をたててやっていく必要があるという点は御指摘のとおりである。

(問)順応的な進め方について、期限を切ってはいけないのか。また、順応的に進められているかどうかについて、内部又は外部の監視を受けることも必要である。

(答)自然再生事業の内容によって様々であり、特に期限を切るべきことを決めることはしない。自然再生協議会の中で専門家も含めて議論する中で順応的に進めていくことができる。

(問)自然再生事業の開始は、どの段階か。自然再生協議会の立ち上げの段階なのか、自然再生事業実施計画を策定した際なのか、それとも、資金面の手当てをしたときなのか。また、調査段階で国からの資金が出ることはあるか。

(答)いろんなケースが想定されるが、自然再生事業実施計画を主務大臣等に送付してから事業に着手することとなる。調査段階であっても、調査や全体構想の合意形成のために必要な経費について環境省から(地方公共団体に)補助はできる。
 

自然再生推進法の施行に向けた体制整備等について

(問)自然再生推進法ができて仕事が増えるが、環境省は、予算や人員の確保はできるのか。

(答)自然再生事業については、予算対応しており、きちんとやっていく。自然再生推進法の運用については、十分な体制を取れるよう頑張っていきたい。

(問)自然再生協議会には、国の関係機関が入ることになると思うが、各省それぞれどういう機関が入ることになる予定か。

(答)環境省は全国11ブロックを管轄する自然保護事務所が担う。農林水産省は、対象となる地域と自然再生の内容に応じて異なるが、例えば農地関係については、地方農政局ないしその下部機関が想定される。国土交通省については、地方整備局のもとにある各工事事務所が関わっていく予定。

(問)三番瀬の円卓会議の運営を見ると、様々な思惑や利害が絡み、県が非常に苦労している。自然再生基本方針に書いてるというだけでは現実に現場で動かしていくのは厳しいので、自然再生推進法の運用について、マニュアルを出す予定はないか。

(答)自然再生事業については、始まったばかりで、試行錯誤がある。法律自体も5年後に見直されることになっており、まずは、それぞれの地域地域での実績の積み重ねが必要。

(問)国は自然再生専門家会議を設置し、意見を聴くことになっているが、都道府県が、独自に専門家の会議を設置することは可能か。

(答)法律上は、明記されていないが、県が自主的に設置することは可能。
 

国による民間団体等への支援について

(問)すでに活動を始めている団体も対象になるのか。自然再生協議会を作って、改めて調査をやってとなると費用面の負担がかなりかかる。このような団体の事業に対し、補助は行われるのか。また、活動への支援としてどのようなことが考えられるのか。

(答)環境省の実施している自然再生事業では、補助ができるのは都道府県や市町村までであり、直接、民間団体に補助することはできない。これまでの事例の整理を行い、地方の出先機関やホームページで情報を一元的に提供するなどの支援をしていきたい。

(問)自然再生を行うには、20~30年の長いスパンで維持管理を行うなど息の長い活動が必要になるが、このような活動を行うNPOに補助は行われないのか。

(答)連携の仕方について、いろいろ工夫の仕方はあるが、現時点で直接補助する仕組みはない。

(問)自然再生事業を行っていく上では、土地の確保が重要。自然再生事業を行う土地の担保について、国の支援はないのか。自然再生のために国が土地を取得することはできないのか。

(答)土地所有者に限っての支援は考えていない。また、国が直轄で自然再生事業を行う場合など必要であれば、国が土地を取得していく。
 

主務省庁自身による自然再生事業の実施について

(問)土地改良事業の中には、環境配慮を行っているにすぎないものもあるが、農林水産省は、土地改良事業を自然再生事業と位置づけるのか。

(答)この法律に基づき、自然再生を目的として、協議会で構想され実施計画が協議される事業であれば、それは自然再生事業となる。土地改良事業自体は、まさに農地等の改良・整備を目的とするものであるが、地元の意向によって、自然の再生を求めるのであれば、自然再生のために色々な工法を採用することも可能である。

(問)平成15年度の国土交通省や農林水産省の予算の考え方は?

(答)農林水産省では、自然再生事業と銘打っての予算計上はしていないが、自然再生協議会ができて、農林水産省がメンバーに入り、農林水産省として行うべきものがあれば、既存予算を活用していくという考え方。
 国土交通省も基本的に同じであり、地域の自主性を尊重しつつ、地元の意向も踏まえて、積極的に取り組んでいきたい。

(問)環境省は、国立公園・国定公園内で、自然を守る名目で山岳地に石畳の舗装道を作ったり、過剰な整備をしている場所がある。これらの施設を撤去して自然の回復を図るべきではないか。

(答)過剰整備となっている場所があるという批判については、環境省としても深く反省している。国立公園等の自然再生は、環境省が率先して取り組むべきと考えており、既存の施設を取り壊すことも含めて、地域の意見を聴きながら検討していきたい 。
 

その他

(問)自然再生協議会に設計や施工の業者を選定する権限があるのか。そうでないとすれば、業者を選定するのは誰なのか。

(答)自然再生協議会は、実施者の趣旨に賛同する人が集まってきて、自然再生全体構想や実施計画についての協議や連絡調整を行う場である。実際の設計や工事に際してどの業者に頼むかというのは、実施者の判断になろう。

(問)3月末に閣議決定を行うとのことであるが、第3回の水環境フォーラムの開催と関係はあるのか。また、自然再生基本方針案について、国土交通省の土地・水資源局はどれだけ関与しているのか。

(答)第3回水フォーラムとは直接の関係はない。自然再生基本方針案の作成にあたっては、国土交通省の土地・水資源局も内容を承知している。

(問)1(2)[1]の「その他の自然環境」とは何か。

(答)法律の規定をそのまま書いたものであるが、その他の自然環境としては、例えば、景観が該当する。