自然環境・生物多様性

第2回「国立公園における協働型運営体制のあり方検討会」議事要旨

日時

12月20日(火)9:30-12:00

場所

環境省新宿御苑管理事務所 会議室

議事

  1. (1)国立公園における協働型運営の必要性及びあり方について
  2. (2)平成23年度調査(中間報告)
  3. (3)地方自治体の取組(三重県志摩市の事例)

資料

資料1-1:
第2回国立公園における協働型運営体制のあり方検討会論点ペイパー
資料1-2:
国立公園における協働型運営の必要性
資料1-3:
総合型協議会のあり方
資料2:
海外の国立公園制度の概要
資料3:
「新しい里海創生」を目指した沿岸域の総合的管理の取り組み
参考資料1
:国立公園における協働型運営体制のあり方検討会設置要綱
参考資料2:
第1回国立公園における協働型運営体制のあり方検討会議事要旨
参考資料3:
アジア国立公園会議準備会合の結果について

環境省挨拶

議題1:国立公園における協働型運営の必要性及びあり方について

委員:
  • 前回は1回目ということもあり、委員の皆様からお一人お一人、ご意見をお伺いした。ご発言については、議事録としてまとめ、参考資料2として配布している。今日は、事務局から、ある程度イメージをご提示いただき、それに対してご議論いただこうということで、資料を準備している。本日の議題は、三つである。最初に国立公園における協働型運営管理の必要性とあり方についてご議論いただきたい。それから、平成23年度調査の事務局の進めておられる調査の中間報告をいただき、それに対して質疑をいただきたい。その後、三重県志摩市の大口市長から国立公園内の地方自治体の取組をご発表いただき、自治体との協働という観点からご意見の交換をしていただきたい。まず「国立公園における協働型運営管理の必要性及びあり方について」、事務局から説明をお願いする。

(事務局資料説明)

委員:
  • 事務局から、国立公園の協働運営の必要性と、実際の取組状況について説明いただいた。協議会が、あるいは協働型の運営というのが、どうあるべきかという議論と、そのために、現行の制度のここを変えたほうが良いというような議論が必要であると思う。本日は、まず、協議会がどうあるべきか、ということを議論し、制度的な変更等については、次回以降、議論をしていきたいと考える。事務局の説明では、総合型協議会というふうにテーマが絞られてきているが、協働型運営のあり方について質疑をしていただきたい。国立公園の管理については、環境省が責任を持って行うべきことと、協働で実施すべきことを区別する必要があると思われるので、そのようなことも踏まえ御議論いただきたい。また、組織形態について、事務局のあり方や、他機関との連携のあり方なども含めて御議論いただきたい。さらに、そのような組織が、国立公園の課題をきちんと解決していけるかというようなあたりについて、ご意見をいただきたい。
委員:
  • 第1回目の検討会を欠席したことお詫び申し上げる。他の委員が第1回目にお話しされたように、国立公園の協働型運営について、全般的な見解を2点申し上げたい。
     一つは、生物多様性条約のCOP10で採択された愛知目標についてである。愛知目標の目標11が保護地域に関する目標である。目標11は、大きく分けると三つになると考えている。一つは陸域17%、海域10%という面積の目標である。もう一つは効果的、衡平に管理されるということである。三番目が保護地域同士の連結と、周辺の景観、海や陸の景観との統合ということである。この三つは、日本はCOP10の議長国であり、これからアジアの公園会議、あるいは世界の公園会議というのが開かれていく中で、こういったものをどう位置づけていくかということを、きちっと整理する必要があると考えている。日本では、途上国で見られるペイパーパーク、つまり指定されたが管理が行われていない国立公園、のような問題があるわけではないが、効果的に管理されているかどうかのチェックはしていく必要があると考える。
     二番目は、現在、地域主権を進めるという議論の中で、国立公園についても、地域に移管すべきというような提案がされている問題である。国立公園の地方への移管に対しては、日本自然保護協会をはじめとする自然保護団体等から反対の意見書が出されている。日本の国立公園は確かに地域とのかかわりによって機能してきたところもあるので、地域でできるという言い分もあるかもしれないが、やはり国立公園というのは、国がきちっと責任を持ってやるべきである。利用については地域に力を発揮してもらう部分は大きいと思うが、保護については、国が責任を持って担保すべきであると考える。協働型の運営体制を議論する際には、国の責任を明確にしておく必要がある。このような世界の流れ、あるいは日本の流れの中で、この地域制国立公園の将来像、あるいは協働運営体制のあり方というのは考えないといけないと思っている。
委員:
  • 最終的なレポートには、吉田委員の意見にあったような点を含めて書き込んでいきたい。 資料1-3では、尾瀬、白山、知床、小笠原の4箇所の事例を紹介いただいたが、それぞれ性格が違っている。やっていることも、形態も違っているが、こういう問題もどう考えるかというようなことを検討する必要がある。例えば尾瀬では、全体で個別の課題をやるということよりもさることながら、ともかく目標像を共有するというところに重点を置いて、それで相互の個別課題に対しての協議会の連絡調整を図っているというところが大きいと見受けられる。それに対して白山では、そういう機能ももちろんあるが、地域別にそ れぞれ動きが出ていて、そういうものとの連携、調整も図られていった上で、それから、徐々に目標共有というか、実務的な方向に重点を移しつつあるように見受けられる。このあたり、この検討会として、どのような全体像を提示をしていくかということも議論になると思うが、いかがか。
委員:
  • 尾瀬、白山、知床、小笠原といろいろなパターンがあるが、この協議会の意思決定としては、ここで決まったものが基本的に最終的なものとして、いろんな課題解決型の協議会におろされて、現場面で実施されるというふうに考えて良いか。
事務局:
  • 協議会での議論を踏まえて、最終的に公園計画に反映する等の権限は環境省にある。例えば、今、尾瀬では利用の分散ということを議論しているが、それはそういう問題が提起されて、その分科会をつくろうということになり、そこの結論が出てきたら、その上の協議会に上げて、さらに協議会で了承されたら、今度はそれを環境省で公園計画の変更の手続きを行うという形になる。
委員:
  • 極端な言い方をすれば、かなりの時間とエネルギーを使って協議会で議論をしても、最終段階で、今の法的な枠組みの中では実現できないということがあり得るのか。
事務局:
  • 理論的にはあり得る。第1回目の検討会で、この検討会の最終的なアウトプットを受けて制度を構築する必要があれば、法律改正を行うと申し上げた。その制度とは、協議会に何らかの機能だけではなくて、権限まで持たせるのか、あるいは、権限までいかなくても、例えば一種の審議会のように、ある案件については、その協議会の意見を聞かなければならないというようなことにするのか、幾つか考えられると思う。
委員:
  • 今の質問の背景には、地元の秋田県で、白神山地、田沢湖周辺、十和田、八幡平をどうしていくかということを、地域の人たちと議論すると、協議会の話は絶えず出てくるが、本当にどこまで実行力を持たせるのかということに疑問がでている。かなりの方々が、忙しい中で時間とエネルギーを使ってやって、でもそれは極めて表層的なものということだったら、あまり意味のないものになってしまう可能性があるので、将来、今、課長がおっしゃったような方向に行くということであれば、裁量権、意思決定のあり方を含めて議論しくべきと考える。
事務局:
  • 協議会の現状について申し上げる。これらの協議会には、何かを規制の決定をするというような法的権限はない。しかしながら、実際的には、環境省などの権限を有する者が協議会に参加し、そこで決定されているということであるから、ほとんどの場合、協議会で決定したことが、最終的に環境省で覆るということはない。
委員:
  • 承知した。
委員:
  • 環境省と協議会の関係は、そのような形で進められると思うが、一方で、協議会で決定したことが、地元の議会で否決されるケースがあるので、協議会の法的権限についてきちんと検討しておくべきと考える。
委員:
  • 協働型の組織に、定常的にすべての権限をゆだねるというのは難しいと思うが、一つの方法としては、ある特定の課題について、1年で議論して結論出してほしいという形にして、そこで出た結論については環境省も尊重するという方法があるのではないか。ずっと権限を預け過ぎると、地元の議会などから協議会が権限を持ち過ぎているというような話にもなる可能性もある。また、今まで幾つの協議会に参加したが、比較的うまくいったのは、ある一定期間、特定のテーマについて、これについては議論した結果を尊重します、というものであった。そのような場合、真剣に議論するし、関係者がみんな本音を出して議論した結果であるため、自分たちもそれを尊重して守るということができるのではないか。
委長:
  • 権限については、この検討会の大きな論点になると思われる。個別課題に対しての場合と、今回、事務局から提示された総合型の場合と、役割と裁量をわかりやすく提示できるかどうかというのは大きい問題であろう。国と協議会との役割分担として、例えば公園計画までは環境省の責任として、管理計画は協議会に委ねるという形もあり得るかもしれない。また、完全に総合型ではなくて、個別型でやるということもあり得るかと思う。
委員:
  • 私の発言趣旨は、総合型協議会を常設しておき、その中で意思決定が必要な部分を、ある一定期間やるということである。
事務局:
  • 法体系的には、いわゆる権限を協議会に持たせることは、恐らく無理であると思う。そのような場合になれば、参加される方には恐らく「みなし公務員規定」が適用される。むしろ審議会的に、ある案件については、協議会の意見を聞くというような形をとって、吉田委員がおっしゃられたような形にするのが良いかもしれない。
  • もう一つは、委員からもご指摘があったが、確かに環境省としては尊重しますと申し上げたところで、林野庁、国土交通省等含め関係行政機関すべてにおいて尊重するというのは難しいであろう。また、地方自治体という観点でいえば、町役場が積極的に関わっても、それを町議会で否定することは、チェック・アンド・バランスの機能からすれば、まさに必然のことなので、ほかの組織にどのような影響を及ぼすかというのは難しい課題だと思う。
委員:
  • 世界自然遺産地域の協議会はかなりの力を持っているように見受けられるが、位置づけはどうなっているのか。
事務局:
  • 世界遺産の管理計画の実行主体である環境省、林野庁、地方公共団体が入った協議会で検討した上で、決定された事項は、これらの実施主体が責任をもって実施するという形になっている。
委員:
  • 小笠原の人の話を聞くと、いくつも会議があって、テーマが重なっていたり、大きなテーマを扱う異なる会議が並立しており、そういうのを、今回の議論を軸に調整できると良いかと思うが、よいアプローチは考えられるか。
事務局:
  • 世界自然遺産について申し上げると、知床は何年かたっているので、役割分担ができているが、小笠原は立ち上がったばかりなので、地域連絡会議と科学委員会との関係や役割分担も余り明確ではなく、個別課題型協議会がたくさんある状態。これから体制を整理していくことになろうかと思う。
委員:
  • 知床と小笠原とは、世界自然遺産といっても、大分違うところがある。まず、物理的な問題として、地域の団体が主体となる地域連絡協議会は地元で開催することが多く、研究者が中心の科学委員会は東京で開催することが多いという物理的な問題がある。また、知床には、知床財団という地域に密着した団体があり、科学的な情報を集めたり、利用規制を行ったりするのに、実施しやすいところがあるが、小笠原はそういった団体がないため、核になるようなところが、知床に比べれば弱いという面がある。一方で、先ほど申し上げた周辺の景観、海や陸の景観との統合という観点からは、知床では管理計画の範囲は世界遺産登録地域に限られているが、小笠原は世界遺産登録地域を越えて、かなり幅広いところを管理計画の対象地域にしており、竹芝桟橋までもが対象に入っている。また、小笠原の父島には国立公園ではないところもあるが、それも管理計画の対象地域にしている。つまり法的な規制は及ばないが、この協議でつくったルールを、関係者が自主的に守るというやり方ができる。先ほど管理計画の位置づけが公園計画の下という説明があったが、下位計画としての管理計画というのは当然あってもいいのかもしれないが、それとは別に、もうちょっと周辺地域まで含めた問題を解決するための広い計画というのが、必要だと考える。知床でも、今問題になっている鹿の問題などは、世界遺産の区域の中だけでは解決できないため、もっと広い範囲を含めて議論する場が必要であるという意見が地域から出ている。
委員:
  • 委員のいうとおり、協議会が独自の計画を持って、調整をしていくという形も可能性としてはあるかと思う。それから、協議会が、連絡調整だけではなくて、目標を共有するというのが大きな役割だと思うので、裁量権、決定権がないとすると、事務局がしっかりしていないと難しくなってくると思われる。もう少し、議論を続けたいところではあるが、時間の都合上、今日の論点を事務局にもう少し整理をしていただき次回も継続するということで、次の議題に移りたい。
  • 二つ目の議題の23年度の調査について、事務局から説明をお願いする。

議題2:平成23年度調査(中間報告)について

(事務局資料説明)

委員:
  • アドバイスを中心に、こういう調査もしたら良いというような御意見をいただきたい。
委員:
  • 対象の国として、ドイツとオーストリアを加えると良いのではないか。特にオーストリアは、ネイチャーパークとナチュラルパークという二つの種類があって、一つは非常に保全に力点を置いたやり方で、もう一つのほうは地域振興とか、いわゆる地域ブランドという形で国と自治体が協力してやっている。また、ガバナンスという観点から各国の状況を調査して欲しい。各国によって公園の性質というのは、かなり違ってくるので、それに準じて、どういうガバナンスをやっているのかというデータがあると良いと思うので、検討してほしい。
委員:
  • ガバナンスとは、具体的にはどのようなイメージか。
委員:
  • 組織形態と言っても良いかと思うが、誰が意思決定して、その下部組織としてどのような執行体制があるのかというようなこと。
事務局:
  • 調査の対象国については、既に決定しているので、来年度に環境に考えていただくことになるかと思う。環境省でも、日本の地域制に近いと考えられるイタリア、フランスについて、次年度に詳細な調査を行うことを考えているとのことなので、ドイツ、オーストラリアも必要に応じて来年度に調査するということはあり得るかと思う。ガバナンスについては、どういう協働形態があるということを考える際に、背景にさかのぼらないと理解できないので、そこは、もう少し整理したい。
委員:
  • 今回、協議会の位置づけがかなり議論になっているので、諸外国において、全体の計画や、意思決定の中で、どういう形に位置づけられているかということを、調査の大きなアウトプットの一つにしてもらえればと思う。
委員:
  • 国立公園が、その国の自然保護制度の中で、どういう位置づけなのかということを調査できないか。すなわち、国立公園以外の保護地域との関係や、同じ国立公園の中でも何々型国立公園というような呼び方があれば、それは非常に参考になると思う。場合によっては、地域制的なものと営造物的なものが両方ある国もあるかもしれない。このようなことを調査してほしい。少なくとも、IUCNの保護地域カテゴリーとしては、どのように分類されているのかを調べてほしい。余り正確な情報にはなっていないのであるが、日本の場合、29の国立公園のうちの7つだけが、IUCNのカテゴリーでは国立公園となっている。他の国の状況を押さえておきたい。あと、スタッフ数を調べていただきたい。レンジャーや、インタープリターとか、そういうスタッフもいると思うが、管理を考える上では非常に参考になる情報だと思うので調査をしてほしい。
委員:
  • 可能な範囲で結構だが、地域における協議会等で具体的な事業を行っている事例、将来像や目標の共有と、それの進捗管理みたいな、いろんな意味でのモニタリングなどを行っている事例が、一つか、二つでも見つかると参考になるかと思う。
事務局:
  • 一般的に、将来像や目標は、指定の際に書き込むのではないかと思われる。日本の国立公園の場合、指定の際に、将来像などは余り書き込んでいないのだが、海外に事例があるか当たってみたい。
委員:
  • アメリカなどでは、国立公園局の職員が協議会を立ち上げる場合に、コーディネートするスキルが非常に求められるが、そのようなスキルを育成するためのトレーニングをやっているのか。また、やっていると場合、どのような内容なのかを調べてもらえると、今後の議論の参考になるかと思う。
事務局:
  • 協働型協議会のコーディネート能力の育成という意味か。
委員:
  • そうである。
委員:
  • 国立公園の管理職員の人材育成をどうしているのかを調べていただき、その中で特に今のようなコーディネーターの役割を果たせる人の育成もどうかというようなことも含まれているか調べていただくとうことでいかがか。
委員:
  • 場所によっては、育成というよりも、そもそもメディエーターの集団があり、そこが人材プールになって、その人たちを派遣するというやり方も散見されるので、そこも含めて調査していただきたい。
委員:
  • 時間の都合上、次の議題に移りたい。志摩市の取組について、志摩市の大口市長からご紹介をいただく。よろしくお願いする。

議題3:地方自治体の取組(三重県志摩市の事例)

志摩市:
  • 本日は、このような機会を与えていただき感謝する。志摩市は全域が国立公園に指定されているが、民有地が9割を占め、まさに志摩市民は国立公園を生活の場としている。自然公園法の規制により、産業の発展や住環境の整備、市民活動において生じる問題点等も少なからずあったことは否めないが、企業誘致に伴う大規模な開発や公害を発生させる工場などの建設がなされなかったことが、今となっては、大きな財産となっている。志摩市は平成16年10月に近隣5町が合併して誕生した町であるが、人口の減少や基幹産業である水産業や真珠養殖業、観光業などの活力が低下するなどのさまざまな問題を抱えている。そのため、町を再起動させるための政策として、「里海創生によるまちづくり」を重点的に取り組むこととし、担当部署として里海推進室を設置して、本格的に推進している。今年度末には、国の海洋基本計画に基づく「志摩市里海創生基本計画」が策定される。来年度からは、「稼げる、学べる、遊べる」をテーマに、沿岸域の豊かな自然の資源の保全、再生、農林水産業と観光業の振興を推進する。また、人材育成を行う場や市民の憩いの場としての沿岸域づくりに取り組む。全域が国立公園となっている志摩市に住む市民が守るものとは何なのかを里海創生によるまちづくりの取組を通して真剣に考えていくことが非常に大切であると考えている。

(志摩市資料説明)

委員:
  • 今の発表に対して、質問等をお願いする。
委員:
  • 最近は国立公園よりも世界遺産とか、そういった新たなものにブランディングを求める動きが多いが、志摩市では、全域が国立公園ということで、その国立公園のブランドイメージとか、ブランド力だとか、そういったものについて、どんなふうにお考えか。
志摩市:
  • ブランディングすることによって、生産物が売れるということと、たくさんの方に来ていただくということ、この二つがある。それに加えて、将来的には志摩市に住んでみたいという人が増えるということを考えている。
委員:
  • そのときに国立公園という名前がついていることが、非常にプラスなのか、それほどでもないということについておうかがいしたい。
志摩市:
  • 我々は、生まれてからずっと国立公園の中にどっぷり浸かっているため、逆に、国立公園を意識することがないという状態である。地域が開発されずに残ったのは国立公園であったからこそであり、そのことを自覚していくことが大事だと思っている。里海創生をしていく中で、国立公園であることの意味が、市民に再認識されればと考えている。
事務局:
  • 里海の創生や地域づくりなどにおいて、施設整備や自然再生など、環境省に協力してもらいたいことはあるか。
志摩市:
  • 国立公園の規則の中で、50年間以上暮らしてきているので、特に要望等はない。規制のおかげで、大きな大工場や大企業が来なかったことはデメリットでもあったが、今となっては、そのおかげで低炭素社会が実現されている。これからは、この現状をいかに活かしていくことが重要だと考えており、そういった面で新たな事業が必要となった際には、改めて相談したいと考えている。
委員:
  • 国立公園は規制だけではなく、エコツーリズムなどの新しい形態の観光の推進なども施策としてあるが、そういう点での国立公園との関わりはあるか。
志摩市:
  • 志摩市の横山展望台という施設からは、英虞湾全体が見渡せる。ここで、展望のために木を伐採しようとすると、自然の木だから切ってはいけないということになる。木を切ることによって、確かに自然を壊してしまうが、そのことによって景観がよく見えて、国立公園の意味がよく見えると、そういう部分がジレンマになっている。これまでは、国立公園を維持する場合、住民との関わりが少なく、上からの目線が多かった。今回、我々はこの自然景観を利用して稼げるということを打ち出して、とにかく国立公園を武器にしながら稼ぐ場所にしようじゃないかということで、面白い取組になると考えている。そういう部分で、住民も巻き込んだ形での景観の維持もできると考えている。
委員:
  • 里海創生に対して、漁業関係者の受けとめ方はどうか。
志摩市:
  • 漁業については、かなり生産高も落ちているし、販売高も落ちている。そのため、里海でも何でもいいから、とにかく海を再生してくれというのが彼らの意見である。我々は海に限っていえば、これまで100年間も傷めてきたわけであるから、特効薬でないけれども、長期的な視点で里海創生を進めることによって、英虞湾、的矢湾の生物を回復させ、それによって、生産が回復すれば漁業もが豊かになるということを目指している。
委員:
  • その認識は漁業関係者も共有しているのか。
志摩市:
  • 漁業者とは常に話し合いをしながら進めており、思い切った形ではないが、随所でそのような話はいただいている。
事務局:
  • 里海創生を進めるにあたり、関係者とどのように調整していく予定か。
志摩市:
  • 志摩市には、水産高校、三重大の実験所、水産研究所などがある。また、「合歓の郷」というリゾートがある。里海創生は、自治体がすべてを行うのではなく、基本方針を作ったあとは、これらの団体と役割分担をしながら実現していくことを考えている。「稼げる、学べる、遊べる」ということで、多くの関係者が協力して取組を進められると考えている。
事務局:
  • 里海創生推進協議会を設立するとのことであるが、どんなメンバーが入るのか。
志摩市:
  • 現在、取組を進めるための里海創生基本計画を策定中。策定のための委員会は、環境省、県の政策部、水産研究所、地元の漁協、観光協会、商工会、公募委員などの約20人で構成されている。推進協議会は、この委員会をベースにしてやっていく予定。それに加えて、地域ごとに分科会を置き、公募などをしながら、水産業者、農業団体、自治会などに集まっていただき、里海創生を前へ進めるための議論をしていただくことを考えている。
事務局:
  • 里海創生基本計画と国立公園の公園計画との調整について、何かお考えがあるか。
志摩市:
  • 国立公園は昭和21年当時の景観を評価して指定された。近代になって、山の手入れもされず、水田もなくなってきて、景観が変わってきている。過去の景観を新しい形で創り出すことによって、国立公園であるということの意識づけをしたいと考えている。そのためには、規制だけはなく、新しい取組が必要ということで、里海創生をしている。
委員:
  • 他に御意見、御質問がなければ、本日の検討会はこれで終了したい。まだ課題をかなり残した感があるので、次回に継続して検討することとしたい。

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