自然環境・生物多様性

第1回「国立公園における協働型運営体制のあり方検討会」議事要旨

日時

10月20日(木)9:30-11:30

場所

新宿御苑 インフォメーションセンター レクチャールーム

出席

(検討委員)

海津 ゆりえ
文教大学国際学部国際観光学科・准教授
熊谷 嘉隆
国際教養大学地域環境研究センター・教授
下村 彰男
東京大学大学院農学生命科学研究科・教授
土屋 俊幸
東京農工大学大学院農学研究院 自然環境保全学部門・教授
寺崎 竜雄
財団法人交通公社・観光調査部長
吉田 正人
筑波大学大学院人間総合科学研究科・准教授(欠席)

(事務局)

環境省自然環境局国立公園課
自然ふれあい推進室
自然環境整備担当参事官室

議事

  1. (1)検討委員会の設置
  2. (2)国立公園における協働型運営の経緯と現状
  3. (3)平成23年度国立公園における協働型運営推進業務調査計画

資料

資料1:
国立公園における協働型運営体制のあり方検討会について
資料2:
国立公園における協働型運営の経緯と現状
資料3:
平成23年度国立公園における協働型運営推進業務調査計画
参考資料1:
自然公園法の概要
参考資料2:
「国立・国定公園の指定及び管理運営に関する提言」
参考資料3:
平成23年度国立公園における協働型運営推進業務調査計画

環境省あいさつ

議題1:検討委員会の設置

(事務局資料説明)

事務局:
  • 設置要綱で「座長は、委員の互選により選出する」とされていますので、座長の推薦があればお願いします。
委員:
  • これまでの検討経緯を最も御存じの下村先生にお願いしてはいかがか。
事務局:
  • 下村先生を座長にとの御推薦がありましたが、いかがでしょうか。
全委員:
  • 異議なし

議題2:国立公園における協働型運営の経緯と現状

議題3:平成23年度国立公園における協働型運営推進業務調査計画

(事務局資料説明)

委員:
  • 今の説明に対して、質問をお願いしたい。
委員:
  • 海外事例調査として、アメリカやイギリスなどの国立公園の調査を行うこととしているが、今回の検討では、アメリカやイギリスの国立公園のように、国立公園内の土地利用計画の権限をすべて環境省が行うような形を目指しているのか。
事務局:
  • 国立公園制度は、各国の社会的・歴史的背景及び自然環境の状況によって異なるもので、我が国の国立公園がアメリカ型やイギリス型を目指すという趣旨ではありません。海外の国立公園の制度を調べた上で、日本の社会状況も踏まえ、取り入れられるところを取り入れていきたいということです。また、調査検討の中で、日本の国立公園制度の特徴を明らかにして、どういった分野であれば国際貢献ができるのかということも考察したいと考えています。
委員:
  • それぞれの国の中の制度で、社会制度などと絡めて、参考になる情報はできるだけ集める予定です。参考になると思われる事例がありましたら、情報提供をお願いします。
委員:
  • 委員会の名称が、「協働型運営体制のあり方検討会」となっているが、ここでいう「運営」には、利用は含まれるのか。
事務局:
  • 「運営」には、「利用のあり方」も含めて考えています。これまで、「協働型管理運営」という言葉をよく用いてきましたが、管理という言葉に「規制」のイメージが強いと考えられるので、あえてはずして「協働型運営」としています。
委員:
  • そのほかに、御質問があればお願いしたい。無いようであれば、今回は、初回でもあるということで、委員一人一人から御意見を賜りたい。
委員:
  • これまで様々な場所でエコツーリズムの計画づくりに携わってきた経験を踏まえて考えると、 国立公園として戦略的にこんな利用の仕方をしてほしいというようなことが、方針として打ち出せると、民間の人たちもすごく入りやすいと感じている。
委員:
  • 世界保護地域委員会日本委員会(WCPA-J)の委員長をしている。WCPA-Jでは、日本の地域制公園のあり方、協働型管理運営のあり方がアジアの国に技術移転できるのではという検討をしていたが、まずは、自分の国の現状をしっかり分析して何が機能していて何が機能していないのか、国内で勉強しようということになった。そこで、去年と今年、「地域制自然公園の有効性・課題検証国内専門家会合」を開催したので、そこでの議論を紹介したい。
  • まず、日本の国立公園では、少ないレンジャー数と限られた予算の中で自然が保全されているのは、協働型運営体制というのがあるがゆえであると考えられる。ただ、細かく見てみると、全国の国立公園で協働型管理運営は地域の事情によりうまくいきやすいとことといきにくいところがあることが分かってきた。知床・屋久島・小笠原のように世界遺産の登録を目指すとか、世界遺産地域としての管理運営を強化していくという共通の目標があるところというのは、比較的やりやすい。また、協働型管理運営には事務局機能が極めて大事であり、しっかりした事務局がないと、協働管理型の運営が困難であろうというのはかなり共通した認識として出てきた。「国内専門家会合」は、来年も開催する予定であり、この検討委員会も来年度も続くということなので、絶えず情報交換しながら進められたらと考えている。
委員:
  • まず、協働型管理運営にとっては「三位一体の構造改革」による体制は、協働体制という考え方になじまないということを指摘したい。
  • また、国立公園の事務所の重要性を強調したい。日本では、地方環境事務所という名称で中核都市に事務所が出てきており、国立公園の現場は、自然保護官事務所が対応することになっている。諸外国では、アメリカなどの営造物制の国立公園だけでなく、イタリアやイギリスなどの地域制の国立公園でも、国立公園事務所というのがあるのが普通である。日本でも国立公園ごとに事務所があるべきであると考える。
  • 次に、国立公園の類型化の必要性について指摘したい。今回の資料の中に、協議会の類例化がされているのは非常によかったと感じているが、29公園それぞれ体制も条件も異なる。国立公園や地域の類型化を行って、その上でタイプごとにどういうふうに対応するかということを具体化の中で考えていくべき。研究者も、類型化の試みはしているがなかなか難しい。是非、今回の検討委員会を通じて、公園管理のための地域の類型化をしていただきたい。その際には、国有地率や、都道府県が法定受託事務を受けているかどうかなどによって、協働の難易度にかなり違いがあると思われるので、それらの条件を絡めてマトリックスをつくるのが良いのではないかと考えている。
  • 委員から紹介があったWCPA―Jの国内専門家会合では、管理運営体制構築に必要な3つの条件を挙げられている。1番目は、しっかりした事務局。2番目が具体的なテーマ。3番目が、イニシアチブをとる主体である。国有林の事例ではあるが、「赤谷プロジェクト」ではみんなで基本構想を考えていくなかで、合意形成も進み、信頼関係も構築され、具体化も進んだ。尾瀬の場合だったら尾瀬ビジョンに当たると思うが、法定の計画とは別の次元で、将来の50年とか100年とかの間に、何をこの公園ではやっていくのかということをみんなで議論していくと、少し明るい展望を考えていけるのではないかと思っている。
委員:
  • これまでの御意見に対して、事務局から回答すべきことはあるか。
事務局:
  • 国立公園の類型化について考えを申し上げます。今回の資料では、協働の目的をもとに協議会を類型化したものです。資料で総合型としているのが、土屋先生のお話にもでてきたように、関係者が協力してビジョンを作成し、その後、ビジョンに基づき関係者が協働していくという形で、一つの理想型であると認識しています。知床なども、世界遺産としてですが、同じような形で協働が進められています。一方で、この総合型の協議会は、なかなか全国展開ができていません。箱根や志摩などでは、尾瀬や知床とは違う手法をとらなければならないのではないかと考えており、そういった意味で、土地所有、利用状況、地域のまとまりなどの社会環境条件や、原生的な自然なのか、里山的自然なのかなどの自然環境条件を踏まえ、地域を類型化して、それぞれの地域にあった協働の手法を示したいと考えています。
委員:
  • 今のことに関連しますが、今回の調査で3箇所設定されたモデル地域については、どのような観点で区域の範囲を決定したのか。また、集落の社会状況等で分類したほうが、バリエーションが出てくるのではないかと思うが、そのようなことに配慮しているのか。
事務局:
  • 協働のためにどの程度の広さの地域で区切るのが良いのかは非常に難しいですが、管理計画の区分が一つの目安になるかと考えています。現在、29の国立公園を約130に分けて管理計画を策定しています。昨年、協働のための区域分けの検討をしたところ、おおむね管理計画の区分でよさそうですが、利用のまとまりとして考えると、分離や統合をしたほうが良いと思われる地域もありました。今回、3箇所のモデル地域で調査や協働の準備を進め、その状況を検討会に御報告させていただき、改めて適切な区域分けをしていきたいと考えています。
委員:
  • 各先生がおっしゃったのは、タイプの分け方について別の切り口が有効ではないかという趣旨だと思うので、モデル地域の調査等において、念頭に置いて進めてほしい。
委員:
  • 地域振興やエコツーリズムという観点から、いくつかの地域で利害関係者が集まる協議会等の仕掛けや運営に携わってきた。私は、このような会合をうまく進めるために、アメリカで開発された"LAC"というシステムを常に念頭に置いて取り組んでいる。"LAC"とは、関係者の合意のもと、地域の目標を立て、指標を作成し、それに対する到達度、目標値、許容範囲を決定し、それをモニタリングしていこうというようなシステムである。LACは、日本の国立公園の協働型運営の有効な手段になるのではないかと思う。LACで、重要になってくるのは、公園利用や地域経済の情報を含む客観的データである。オーストラリアのカンガルー島でよく実践されているので情報収集してほしい。
事務局:
  • 昨年度の調査の一環として行った有識者による懇談会の中での一番の意見は、環境省の国立公園は、保護はまあまあやってきたが利用は何もやってこないということだった。これまで、国立公園では利用についての明確な目標を設定していない。今回の検討の中で、利用の目標や計画のあり方が打ち出せたらと思っています。
委員:
  • 初回でもあり、意見を申し上げたい。大きく二つあって、一つは利用の問題、もう一つは組織論の問題である。まず、利用に関しては、公園計画で保護計画はゾーニングをしているが、利用計画はネットワーク型、すなわち点と線の計画である。利用のゾーニングをすることで、ゾーンの目標を示すことになり、公園全体のビジョンにもつながっていく。利用計画をどう考えていくかということが重要であると認識している。組織論に関しては、熊谷委員、土屋委員からも指摘があったように、事務局をどうするかが課題である。保全や利用の目標が決まった後に、それを実現していく協働を調整するためには、事務局的機能が必要になってくる。事務局は、環境省がすべて担うということではなく、民間的な色彩を持った事務局をどう形成し、育てていくかというような考え方もあってもいいのかなと考えている。
    事務局から意見はあるか。
事務局:
  • 2年にわたる検討を踏まえ、システマチックなアウトプットを出していきたいと考えたところです。
委員:
  • 本日の検討会はこれで終了させていただきます。

以上

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