南極の自然と環境保護

南極の生きものたち

南極大陸のほとんどが氷に覆われていて、一年のある一定期間、雪や氷がない露岩地域は大陸の数%です。この露岩地域に生きる生物は、厳しい環境のために種類も量もごくわずかです。一方、大陸を取り囲む南大洋は、最低でも水温が−2℃あり、豊かな生命を育んでいます。たくさんの植物プランクトンが繁殖し、それを餌とする動物プランクトンも多く、これを食べる魚や鳥、海産哺乳類などによる食物連鎖を構成しています。

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ジェンツーペンギン(Pygoscelis papua )ペンギン目ペンギン科

南極半島周辺から南大洋の島々の広い範囲で観察されます。南極半島の南緯65度以南では繁殖しません。繁殖期は地域によって異なりますが、南極半島周辺では11月に産卵します。体長75cm程度、体重5〜5.5kg。オキアミ類と魚を主食とします。

ヒナに給餌する親

ヒナに給餌する親

ジェンツーペンギン

出典:ペンギンたちの不思議な生活 青柳昌宏 1997年、南極海の海鳥類・鰭脚類・鯨類 国立極地研究所 1983年

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アデリーペンギン(Pygoscelis adeliae ) ペンギン目ペンギン科

氷や雪が溶けた地表に小石を積み上げて巣をつくります。南半球の夏季に2卵を産み、産んだ夏のうちに雛を巣立たせるという典型的なペンギンの繁殖を行います。体長約70cm、体重3.7〜4.0kg。オキアミ類を主食とします。現存数は少なくとも260万つがい、幼鳥1,000万羽。

アデリーペンギンのヒナ

アデリーペンギンのヒナ

アデリーペンギン

出典:ペンギンたちの不思議な生活 青柳昌宏 1997年、南極海の海鳥類・鰭脚類・鯨類 国立極地研究所 1983年

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ナンキョクオオトウゾクカモメ(Catharacta maccormicki ) チドリ目トウゾクカモメ科

翼を広げると140cmほどにもなります。ペンギンの集団繁殖地(ルッカリー)周辺の見晴らしの良い岩場に巣をつくり、親ペンギンの隙をねらって卵やヒナを捕食します。他の海鳥が餌をとった直後に襲って横取りすることもあります。夏以外の季節には魚などを捕食します。南極大陸と周辺の島でのみ繁殖し、北半球で越冬、10月下旬までに繁殖のため南極に戻り、11月半ばから12月末にかけて、2個の卵を産みます。子育てを終え、5月中には北に旅立ちます。

ナンキョクオオトウゾクカモメの親子

ナンキョクオオトウゾクカモメの親子

出典:南極海の海鳥類・鰭脚類・鯨類 国立極地研究所 1983年

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マユグロアホウドリ(Diomedea melanophris ) ミズナギドリ目アホウドリ科

全長83〜93cm、翼開長230〜240cm。成鳥は白い頭部にアイシャドーをつけたような眼をしています。主食は魚類、イカ類、オキアミ類。毎年繁殖します。現存数は200万羽以上であり、アホウドリ中最多です。

空を飛ぶマユグロアホウドリ

アホウドリ類は、グライダーのような細く長い翼と洋上の風を利用して、ほとんどはばたくことなく、最小限のエネルギーで飛行を続けることができる。

コロニーでヒナの世話をする親鳥

コロニーでヒナの世話をする親鳥。巣は泥と草を樽型に盛り上げたもので、高さは約60cm。抱卵期間は2ヶ月半。ヒナは4ヶ月で巣立つ。

出典:南極海の海鳥類・鰭脚類・鯨類 国立極地研究所 1983年

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ウェッデルアザラシ(Leptonychotes weddelli ) 食肉目アザラシ科

体長は雄が280cm、雌が330cmで、体重は400〜450kg。体色は季節的に変化し、春は全体的に茶褐色となり、斑紋が不明瞭になりますが、その他の時期は、黒褐色に淡黄白色の斑紋が全身に見られます。

体型は頭部が比較的小さく体幹部が大きく見えます。南極大陸の縁辺部に生息していて、その多くは定着氷域に分布しています。繁殖期である春・夏は氷上に出現しますが、冬期間は氷下で生活し、犬歯で海氷に呼吸孔を設けるなどして呼吸を確保するため、他種と比較して犬歯が激しく摩耗します。現存数は75万頭と推定されています。昭和基地付近で最もよく見られるアザラシです。

氷の上で気持ちよさそうなウェッデルアザラシ

氷の上で気持ちよさそうなウェッデルアザラシ

氷から顔を出すウェッデルアザラシ

氷から顔を出すウェッデルアザラシ

出典:南極海の海鳥類・鰭脚類・鯨類 国立極地研究所 1983年

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カニクイアザラシ(Lobodon carcinophagus ) 食肉目アザラシ科

体長は雌雄とも200〜240cmで、体重は200〜300kgに達します。比較的細長い体型、ウェッデルアザラシより小さい体幹部、ヒョウアザラシより小さい前後肢、体色は個体変異が多くありますが、ウェッデルアザラシより明るい体色を示し、成長に従って明るくなります。

南極海のパックアイス域を中心に分布し、定着氷域や開氷域には多く出現しません。オキアミを捕食し、時にイカ、魚も捕らえます。現存数は2,500万頭と推定されています。

カニクイアザラシ

カニクイアザラシの生息数(推定2,500万頭)は、他の鰭脚類全種を合計した頭数に匹敵し、ナンキョクオキアミの最大の消費者である。カニクイアザラシと呼ばれるものの、主食はナンキョクオキアミである。

カニクイアザラシ

出典:南極海の海鳥類・鰭脚類・鯨類 国立極地研究所 1983年

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ナンキョクオットセイ(Arctocephalus gazella ) 鰭脚(ききゃく)類アシカ科

ナンキョクオットセイとアナンキョクオットセイの形態は似ていて、ナンキョクオットセイは体全体が黒褐色になりますが、アナンキョクオットセイは胸から顔、耳後方にかけて明るい黄色を呈します。ナンキョクオットセイの雄は体長180cm、体重130kg、雌は130cm、体重40kgで、雄が遙かに大くなります。アナンキョクオットセイは、やや小型です。ナンキョクオットセイは南極収束線以南、南緯65度以北の海域で見られ、アナンキョクオットセイは南極収束線以南には出現しませんが、一部の地域で両種の分布域が重複します。両種とも、オキアミ、魚類などを捕食します。

アシカ科の形態的な特徴は、

  1. 後ろ足が体の前方を向いていて、体の下に折りたたむことができ、外側に開いた前足と、その後足で体を支えて陸上を歩くことができること
  2. 耳介(じかい)というかざりのような耳がついていること

で、これらはアザラシ科との形態上の相違点です。

ナンキョクオットセイは18世紀後半に発見されて以来、良質な毛皮を目的とした乱獲にさらされ、19世紀末には絶滅寸前にまで追い込まれました。その後、完全な保護下におかれ、奇跡的な回復を遂げました。

デセプション島で撮影

デセプション島で撮影

ナンキョクオットセイの親子 アイチョウ島で撮影

ナンキョクオットセイの親子 アイチョウ島で撮影

出典:南極海の海鳥類・鰭脚類・鯨類 国立極地研究所 1983年

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クラミドモナス(Chlamydomonas ) 緑藻植物 オオヒゲマワリ目クラミドモナス科

雪解けの頃、シャーベット状になった雪面が赤や緑に色づくことがあります。凍っていた雪が溶けて、中に含まれていた藻類が表面に現われたものです。この藻類はクラミドモナスという緑藻で、細胞が休眠状態に入るとヘマトクロームという赤色の色素が葉緑体をおおってしまうので赤く見えます。

赤く染まった雪

赤く染まった雪

赤く浮き出たペンギンの足跡

赤く浮き出たペンギンの足跡

出典:南極海の海鳥類・鰭脚類・鯨類 国立極地研究所 1983年

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