南極の自然と環境保護

南極の自然環境その2

南極地域における環境問題

南極上空では、8月から11月にかけて、オゾン層が部分的に著しく少なくなる現象(オゾンホール)が見られ、オーストラリアやニュージーランドの南部にまで広がることがあります。これが発生すると、オゾンが激しく減少することにともない、有害な紫外線を除去する働きが小さくなります。

オゾンは大気中では微量な存在に過ぎませんが、太陽から放射される紫外線の大部分を吸収し、地上にほとんど紫外線を到達させない役割を担っています。このオゾンが減少すると、地表へはより多くの紫外線が到達することになり、紫外線にさらされることで肌が荒れたり、強度の紫外線は皮膚がんを誘発する要因であるとされているなど、人類の健康に無視できない影響を及ぼします。

一方、地球温暖化による温度上昇は、寒冷環境に適応した南極の生物に致命的な影響を与えるものと考えられています。プランクトンは基本的に水温・塩分濃度などの変化に弱く、特に植物プランクトンの減少は大気中の温室効果気体である二酸化炭素の量を増やす直接の原因となり、温暖化を加速させる可能性が高くなります。また、地球温暖化で南極海の氷が減少すると、ナンキョクオキアミの生物量も減少するともいわれており、南極海の生態系のキー・スピーシーズ(鍵種)であるナンキョクオキアミの減少は、南極地域の生態系全体に多大な影響を与えるかもしれないと懸念されます。

また、南極地域は一年中氷点下の低温と、乾燥、強風などの過酷な自然環境に置かれているために、動物、植物を問わず、他の大陸から入ってきた生物が南極で生きていくことは非常に難しいと考えられていますが、昭和基地の近くでは、日本にも分布するオオスズメノカタビラが岩間に根を下ろしているのが発見されています。

現在の南極には、特別の許可を受けない限り、外部から動植物を持ち込むことは禁じられていますが、人間が立ち入ることで、偶然に機材などに昆虫や微小生物が混入していたり、目に見えない細菌類などが持ち込まれることも考えられ、これら動植物の持ち込み、繁殖による生態系への影響も懸念されます。

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