南極の自然と環境保護

観光の現状と課題

南極地域の観光は1960年代から行われており、1990年代後半までは年間6,000〜7,000人程度が南極を訪れていました。2000年頃を境に観光客数は急増し、2007年のピークには30,000人を突破しました。近年は南極地域の観光客数はピーク時から減少傾向にありますが、年間20,000人近い観光客、冒険旅行者などが訪れるとともに、観光の形態が多様化しています。

南極観光は、航空機を使用するもの、船舶を使用するものの2つに大別されます。航空機による旅行には南米やオーストラリア等から発着する観光飛行と、内陸のキャンプに滞在して南極点や観測基地などを訪問する観光等があります。また、船舶による観光は、船で宿泊しながら航海を続け、目的地に着くと船外機のついたゴムボートで上陸し、観測基地を訪問するものやペンギンやアザラシといった南極の動物を観察するもの等があります。

南極観光には航空機や船舶を使ったさまざまな観光ルートが用意されていますが、南極は自然環境が厳しいだけに、現地での状況を十分に理解した上で観光することが重要です。1979年には南極観光に出た航空機が氷河の上に墜落、2007年11月には観光客船が氷山と衝突、沈没するといった事故が発生しています。このような事故がどこの国の領土でもない南極で起きた場合、沈没船の引き揚げや乗客救助活動などが迅速に行われないおそれがあるだけでなく、船体の破損による重油流出などによる環境汚染も懸念されることから、安全対策とともに環境面でも十分な配慮が必要となります。また、こうした事故が、南極の自然環境に深刻な影響を及ぼすだけでなく各国の南極観測活動の支障になることも懸念されます。

南極観光は、科学的調査活動の場としての南極の価値や南極環境に悪影響を与えないように責任を持って活動されなければならず、本来守られるべき南極環境や科学調査の場が観光活動によって悪影響を受けることは避けなければなりません。しかし、南極観光が南極に対する一般人の意識向上や環境学習の機会を提供しているのも事実ですので、南極観光に際しては、南極地域のもつ原生的な自然環境の保護に対する意識を高く持ち、南極観光のルールやマナーの周知・啓発を心がけることにより野生動植物の生息・生育に影響を与えないよう配慮することが大切です。

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