自然環境・生物多様性

平成27年度世界自然遺産候補地詳細調査結果について

1.世界自然遺産候補地詳細調査結果

  • 平成26年度調査における海外専門家からの助言を踏まえて、「飯豊・朝日連峰」、「奥利根・奥只見・奥日光」の2地域を含む全国に分布する多雪環境下に優占するチシマザサ-ブナ群集について、広域性、連続性、自然性等の観点から詳細な情報収集・解析等を実施。
  • 情報収集・解析の結果、ブナ林全体の面積が20,000ha以上で、チシマザサ-ブナ群団の面積割合が高い値を示す(約80%)地域は白神山地のみであり、白神山地が全国の広域ブナ林の中で、最もチシマザサ-ブナ群団が大面積かつまとまって分布していることが明らかとなった。
  • また、「飯豊・朝日連峰」や「奥利根・奥只見・奥日光」についても、ブナ林の面積は大きいものの、ブナ林が偽高山植生や雪食地形とモザイク状に分布するなど、ブナ林が白神山地のように、大面積に均一的に分布しておらず、白神山地とは異なる特性を有していた。さらに、白神山地と比較すると、人為の影響が比較的大きく、自然性の高いブナ林は、小面積のものが点在している程度とされる。
  • 以上のことから、各地域の広域ブナ林は、白神山地と比較して、面積、連続性、自然性において、顕著な優位性や補完材料を有しているとはいえないと評価され、白神山地とのシリアル・アプローチ(飛び地状に連続した遺産推薦の取組)の現実性は低いものと判断される。
  • 今後は、白神山地の世界遺産としての価値を含めて、多雪環境下に成立するブナ林の研究がさらに進むことが期待されるとともに、そういった研究成果等の新たな知見や情報の収集が必要。

2.今後について

  • 平成27年度調査をもって、現時点で白神山地とのシリアル・アプローチの現実性は低いと結論。
  • 今後は、幅広く情報収集等を行い、将来新たな知見や情報が得られ、登録基準や完全性の条件への適合可能性が出てきた場合に、候補地の調査・検討をあらためて行う。

報告書:全体版 [PDF 13.5MB]
(分割:1/3 [PDF 3.4MB], 2/3 [PDF 4MB], 3/3 [PDF 4.5MB]

参考:これまでの検討経緯

①平成15年「世界自然遺産候補地に関する検討会」

  • 詳細検討対象として19地域を選定し、その中から「知床」「小笠原諸島」「奄美・琉球」の3地域を世界自然遺産としての価値がある可能性が高い地域として選定。
  • その後、「知床」(H17)及び「小笠原諸島」(H23)が登録。「奄美・琉球」は平成25年1月に世界遺産暫定リストへの掲載を政府として決定し、推薦に向けて準備中。

②平成24年度「新たな世界自然遺産候補地の考え方に関する懇談会」

  • 平成15年検討会の詳細検討対象地域を中心に、既存の自然遺産登録地域の拡張も視野に入れて候補地を検討することが妥当と整理。
  • 懇談会の結論を踏まえ、平成15年検討会の詳細検討対象地域のうち3地域(知床、小笠原諸島、奄美・琉球)を除く16地域(以下「16地域」)を対象として、情報の収集・分析・検討を進めた。

③平成25年度調査

  • 自治体アンケート及び専門家ヒアリングを実施し、以下の通り結論。
    • 16地域のうち11地域は、対応する顕著な普遍的価値を有する既登録地が存在し、世界自然遺産としての価値の証明が極めて難しい。
    • 残る5地域(「阿寒・屈斜路・摩周」、「日高山脈」、「飯豊・朝日連峰」、「奥只見・奥利根・奥日光」、「南アルプス」)については、「世界自然遺産としての価値の証明は容易ではないが、その可能性について更に精査する。」と結論。

④平成26年度調査

  • 平成25年度調査で「更に精査する」とされた5地域について、世界自然遺産関係の海外専門家*を招聘して現地調査を実施。以下の通り助言を得た。
    • 「阿寒・屈斜路・摩周」、「日高山脈」、「南アルプス」については、「世界遺産としての可能性は認められなかった」と結論。
       * ティルマン・イエーガー氏(海外専門家として、2012年までIUCNの世界遺産部局に所属。その後も世界自然遺産登録審査ミッションに参画し、近年の自然遺産の登録審査傾向に精通する世界自然遺産関連コンサルタント)
    • 残る2地域(「飯豊・朝日連峰」「奥利根・奥只見・奥日光」)のブナ林に関しては、「既存の白神山地との類似性により、飯豊・朝日連峰と奥利根・奥只見山地の共同推薦あるいは個別推薦のいずれも見込みがあるとは言えない。」とする一方、白神山地とのシリアル・アプローチ*については「検証するためには信頼性のある強固な情報が必要」であり、また「他の地域がシリアル要素となる可能性を除外すべきではない」と考えられ、今後「すべての既存情報を用いて、チシマザサーブナ群集のレベルで分断化されていない主な森林の保全状況評価を精緻化すること」を勧めると結論。
       * 飛び地状に連続した遺産推薦の取組。

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