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海のめぐみって何だろう 生物多様性・生態系サービス

海のめぐみを損なう要因とは

人間活動の影響による海の生物多様性劣化をくいとめるためには、まずはその原因をしっかりと認識することが重要です。

人間が海の生物多様性の損失にもたらす影響としては、以下の5つの要因があります。特に人間活動の活発な沿岸域においては、これらの要因が複雑に関わり合い、環境の喪失の原因となっています。

(1)生息環境を劣化させる物理的改変

沿岸環境は、もっとも環境や生物の多様性が高い場所ですが、人間活動の影響を受けやすい場所でもあります。 埋め立てや工事、表土の流失や、海と陸のつながりを断ち切る構造物(魚が遡上できないような砂防ダムなど)などによって、生きものにとってすみづらい環境にかわってしまいます。

流れ出す赤土

開発工事等により川から海に流れ出した赤土はサンゴの生育に悪影響を与えます。

 
砂浜を歩くウミガメ

砂浜を歩くウミガメ。彼らの産卵場となる砂浜は埋め立てや浸食が進み、減少しています。

 

(2)海洋汚染

海洋汚染は、陸上での人間活動によるもの(産業排水や生活排水による汚染、赤潮発生など)と、海上での人間活動によるもの(船舶からの油や化学物質の流出など)があります。

死んで海岸に漂着した海鳥

海に流れ出した油で飛べなくなり、死んで海岸に漂着した海鳥

 

(3)漁業に関する問題

乱獲による資源の枯渇、生態系バランスの悪化、希少種の混獲ゴーストフィッシング、利用者であるとともに環境保全の担い手でもある漁業者の減少など、漁業に関する問題もあります。

死んで海岸に漂着した海鳥

魚介類は、私たちにとって大切な海のめぐみ。でも、もし獲りすぎれば、その種が減るばかりか、生態系全体のバランスが崩れるおそれすらあるのです。

 

(4)外来種

もともと地域に生息していなかった生物(外来種)が、在来の生物を食い荒らしたり、駆逐したりすることにより、在来の生態系が変化し、生態系サービスの劣化が起こることがあります。

死んで海岸に漂着した海鳥

「干潟のブラックバス」とも称されるサキグロタマツメタ。輸入のアサリに混じって入ってきた外国産のものが各地で急激に分布を広げ、アサリなどの二枚貝を食い荒らす捕食者となっており、潮干狩りや養殖への被害が出ています。

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(5)気候変動の影響

気候変動の影響としては、海流の変化による漁獲量の減少や、海水温上昇によるサンゴ礁の白化現象などがあげられます。

サンゴ礁

世界規模で起こっているサンゴの白化現象。海水温の急激な上昇が原因と言われています。サンゴ礁が失われてしまえば、多くの生きものたちもすみかを失うことになります。