国際的な取り組み
ICRI総会の開催記録

第19回ICRI総会

メキシコ合衆国の国旗
メキシコ合衆国の国旗

メキシコ総会

日本-パラオICRI事務局による第2回目のICRI総会が、メキシコのコズメルで開催されました。今回の総会は、第3回国際熱帯海洋生態系管理シンポジウム(ITMEMS3)の直後に同じ場所で開催することによって、ITMEMSの結果を、時間をあけないでICRIで議論することを大きな目的として開催されました。

今回の総会のもう一つの特徴としては、総会の形式を大幅に変更したことが挙げられます。メンバーからの報告事項が多かった従来の形式から、具体的な活動につながる結果を出すための参加者同士の議論を中心とした形式に変更しました。

メキシコでICRI総会が開催されたのは今回で2回目になります。スウェーデン・フィリピン事務局期間中の2002年6月にメキシコのカンクンで、カリブ海地域最初のICRI総会が開催されました。その後同地域では、イギリス・セイシェル事務局期間中の2003年11月にターコス・カイコス諸島でもICRI総会が開催されています。

コズメル、会場

今回ICRI総会とITMEMS3の開催場所に選定されたコズメルは、ユカタン半島の沖合20キロメートルに位置するメキシコ最大の島で、世界の5大ダイビングスポットにも数えられます。島の中心地のサン・ミゲルから南へ9km行ったところに、チャンカナブ国立公園があります。世界でも有数の美しい海を求めるダイバーや、マヤの遺跡トゥルムを訪れる観光客に人気があります。

詳しくは

ITMEMS3とICRI総会はコズメルにあるEl Cozumeleno Beach Resort ホテルで開催され、両会議の多くの参加者がこのホテルに宿泊しました。ホテルはコズメルの町から車で15分ほど離れたいわゆるリゾートホテルで、周囲には娯楽施設などがなにもなかったため、会議参加者はほとんどホテルに缶詰状態でした(写真1~4)。

コズメルの風景:「カリビアンブルー」の海に囲まれています。 コズメルの風景:陸地は乾燥した低い木々で覆われています。   
El Cozumeleno Beach Resortホテルの全景。 ホテルと前のビーチ。
写真1.コズメルの風景:「カリビアンブルー」の海に囲まれています。(左上)
写真2.コズメルの風景:陸地は乾燥した低い木々で覆われています。(右上)
写真3.El Cozumeleno Beach Resortホテルの全景。(左下)
写真4.ホテルと前のビーチ。(右下)

会議の様子

総会には21カ国、25機関から総勢59名が参加しました。特に中南米地域からは、バルバドス、バミューダ、ブラジル、キューバ、ハイチ、メキシコ、オランダ領アンチルの7カ国から参加がありました。日本からは、議長として国連大学高等研究所の名執芳博さん、環境省から3名(渡邉綱男、谷川潔、高橋啓介)、(財)自然環境研究センターから2名(木村匡、日比野浩平)の総勢6名が参加しました。

また、今回の総会で、バミューダ(写真5)、ブラジル(写真6)、韓国(写真7)が新たにICRIメンバーに加わり、キューバ(写真8)がメンバーに復帰することが決定しました。

新たにICRIメンバーになったバミューダを代表して挨拶するJack Ward。 新たにICRIメンバーになったブラジルを代表して挨拶するAna Paula Leite Prates。
新たにICRIメンバーになった韓国を代表して挨拶するHeung Sik Park。 ICRIメンバー復帰に際してキューバを代表して挨拶するAylem Hernandez。
写真5.新たにICRIメンバーになったバミューダを代表して挨拶するJack Ward。(左上)
写真6.新たにICRIメンバーになったブラジルを代表して挨拶するAna Paula Leite Prates。(右上)
写真7.新たにICRIメンバーになった韓国を代表して挨拶するHeung Sik Park。(左下)
写真8.ICRIメンバー復帰に際してキューバを代表して挨拶するAylem Hernandez。(右下)

総会の開会式では、コズメル市長(Gustavo Ortega)、キンタナロー州知事(Felix Arturo Gozalez)、環境天然資源省大臣(Jose Luis Luege Tamargo)、メキシコ保護区委員会長(Ernesto Enkerlin Hoeflich)、および総会共同議長(名執芳博、Fabian Iyar)が参列してそれぞれスピーチを行いました(写真9)。会議は「コ」の字形に配列されたテーブルにABC順にメンバー国・機関が並び、各メンバーの代表者のみがテーブルに着いて後の人たちはその後方に座る形式をとりました(写真10)。会議は共同議長が司会・進行を行って、事務局代表と議事記録係がそれに並びました(写真11)。

今回の総会のハイライトは、何と言ってもITMEMS3で採択された結果(レコメンデーション=提言)に対してICRIとしてどう対応できるのかを、3つのワーキンググループに分かれて討議したセッションでした。セッションでは、ITMEMS3のレコメンデーションにICRIとして対応すべき優先事項をまず抽出し、それらについて、さらに具体的な対応策を検討しました(写真12)。

ICRI総会開会式の様子。左から挨拶するRobert Cundney(コズメル海中公園局)、Fabian Iyar(パラオ側議長)、Ernesto Enkerlin Hoeflich(メキシコ保護区局長)、Felix Arturo Gozalez(キンタナロー州知事)、Jose Luis Luege Tamargo(環境天然資源省大臣)、Licensiado Gustavo Ortega(コズメル市長)、名執芳博(日本側議長)、渡邉綱男(ICRI事務局代表。)(左上) 全体会合の様子。
議長テーブルの様子。左からEmily Corcoran(議事記録)、Fabian Iyar(パラオが側議長)、名執芳博(日本側議長)、高橋啓介(事務局代表)。 ITMEMS3の結果を討議するグループ・ディスカッションの様子。
写真9.ICRI総会開会式の様子。左から挨拶するRobert Cundney(コズメル海中公園局)、Fabian Iyar(パラオ側議長)、Ernesto Enkerlin Hoeflich(メキシコ保護区局長)、Felix Arturo Gozalez(キンタナロー州知事)、Jose Luis Luege Tamargo(環境天然資源省大臣)、Licensiado Gustavo Ortega(コズメル市長)、名執芳博(日本側議長)、渡邉綱男(ICRI事務局代表。)(左上)
写真10.全体会合の様子。(右上)
写真11.議長テーブルの様子。左からEmily Corcoran(議事記録)、Fabian Iyar(パラオが側議長)、名執芳博(日本側議長)、高橋啓介(事務局代表)。(左下)
写真12.ITMEMS3の結果を討議するグループ・ディスカッションの様子。(右下)

結果概要

会議では、2日間に渡って多くの議題について議論が展開されました。以下に各議題の結果概要を記します。

議題 結果概要
オープニング(1.0)
  • メキシコ環境資源省大臣、キンタナロー州知事、メキシコ保護地区局長、コズメル市長、ICRI総会議長(名執芳博、ファビアン・イーアール)からそれぞれ挨拶がありました。
議題の採択と新規メンバー(2.0)
  • バミューダ、ブラジル、韓国が新規にメンバーに加入しました。
  • キューバーがメンバーに復帰しました。
事務局活動報告(3.1)
  • 事務局から、前総会から今総会までの活動が報告されました。
  • メンバーのフォーカルポイント表が提出され、まだ指定していないメンバーはフォーカルポイントを指定するよう要請がありました。
  • 今後の予定として、2006年12月に東アジア海会合でブース展示をすることと、2007年4月に東京で総会を開催することが報告されました。
次期総会(3.2)
  • 日本から次回総会を2007年4月22日~24日に東京の池袋で開催する提案があり、承認されました。
次期事務局(3.3)
  • メキシコから、次期事務局を米国とメキシコが2007年7月から2009年6月まで共催したいとの提案があり、採択されました。
ICRIロゴに関する決議(4.0)
  • ICRIロゴの利用を規定した決議案が事務局から提出されました。
  • ICRIはサンゴ礁だけでなく関係する生態系(マングローブや海草藻場)との関連性も強調するためにロゴに「緑色の波」を追加すべきとの意見が出ました。 また、決議案中の文言について訂正案が出たため、総会中にワーキンググループが作成され議題13.0で再検討されました。
  • 決議案は修正の上採択されました。
  • ロゴのデザインを変更する是非についてはICRIForum上で議論をして次回総会で再度検討することとなりました。
法の執行に関する特別委員会(5.1)
  • 委員会がこれまで実施した、サンゴ礁の破壊原因を特定するためのツールキットの作成、ITMEMS3でのフィールド・ワークショップの実施結果について報告がありました。
  • 今後委員会をさらに継続し、いくつかの地域でフィールド・ワークショップを2007~2009年に実施することなどが提案され、承認されました。
冷水性サンゴ礁特別委員会(5.2)
  • 2003年に設立された当委員会のこれまでの活動が総括され、今後委員会の形式を取らずに冷水性サンゴに関する保全に関する活動を継続していくことが提案され、委員会の解散が承認されました。
  • UNEPサンゴ礁ユニットが行なってきた冷水性サンゴに関する活動が報告されました。
スコアカードに関する特別委員会(5.3)
  • スコアカードを修正するためにメンバーにコメントを求めていましたが、日本以外から反応がなかったので、スコアカードを修正できなかったことが報告されました。
  • 現状のスコアカードを廃止し、その代わりにスコアカードの中の基本的な質問項目をメンバーレポートの書式に組み込むことが提案され、承認されました。
  • 委員会は解散し、フランシス・スタブと事務局が共同で新しいメンバーレポート書式を作成することになりました。
国際サンゴ礁年に関する特別委員会(5.4)
  • 事務局から、2008年を国際サンゴ礁年と宣言する決議案が提出され、議題10.0のディスカッション・セッションで文言の修正の後採択されました。
  • 次回総会までの計画が提出され、事務局が議長を務めることと含めて承認されました。
海洋保護区(MPA)に関する特別委員会(5.5)
  • 議長を務めていたロバート・カドニーから、議長を事務局と交代したい旨の発表があり、その後、事務局から新たな計画案が発表されました。
  • 計画は、次回総会までにMPAの2012年目標に関するレビューを行い、ICRIのMPAネットワーキングに関する声明案を提出するとともに、メンバーの取組状況をとりまとめると内容で、承認されました。
CBDサイドイベントに関する特別委員会(5.6)
  • 事務局から、2006年3月にブラジルのクリチバで開催されたCBD COP-8においてICRIのサイドイベントを開催されたことが報告されました。
ICRAN(6.1)
  • ICRANの活動報告が行なわれ、特にITMEMS3の事務局としての活動がメンバーからも評価されました。
GCRMN(6.2)
  • 津波レポートの発行など、GCRMNの活動が報告されました。
  • カリブ海の白化現象のレポート(2007年)および世界サンゴ礁現況報告書の発行(2008年)が承認されました。
  • 社会経済的モニタリング(Socio-economic Monitoring)、新しいサンゴ礁モニタリングデータベース(COREMOIII)などについて報告と提案があり、それらにICRIメンバーが協力していくことが合意されました。
CORDIO(6.3)
  • CORDIOがインド洋、東アフリカ地域で実施した諸活動が報告されました。
リーフチェック(6.4)
  • リーフチェックの活動が報告されました。
USカウンターパート・ファン報告(7.0)
  • UNEPから、アメリカがUNEPに拠出している支援金(カウンターパート・ファンド)の中のICRI関係事項の使途に関する報告が行なわれました。
  • 事務局から、アメリカに対してICRI事務局活動支援について感謝の意が伝えられました。
ITMEMS3結果報告(8.0)
  • ITMEMS3の議長リチャード・ケンチントンからITMEMS3の結果が報告され、ICRI総会でITMEMSの結果をどのように議論し対応していくかについて説明がありました。
  • コズメル市長から、ITMEMS3での地方自治体長会議の結果が報告されました。
ITMEMS3結果に対するICBIの対応:グループ・デスカッショん(8.1)
  • ITMEMS3で採択された様々な提言(Recommendation)に対して、ICRIとしてどのように対応できるかを議論するため、3つのワーキンググループに分かれて議論を行ないました。
  • 「総合沿岸管理」(Integrated Coastal Management)、「能力向上と業績評価」(Capacity building and performance evaluation)、「研究とモニタリング」(Research and Monitoring)のテーマで3つのグループに別れました。それぞれのグループでは、該当するテーマに関連する提言のうち、ICRIとして重要だと考 えるものを選択し、それらについてさらに具体的な対応(誰がいつまでに何をするかなど)を検討しました。
ITMEMS3結果に対するICRIの対応:全体会合(8.2)
  • 前日に各グループでとりまとめたICRIとしての対応リストは、さらに別のワーキンググループで①次回総会までに対応が可能な事項、②さらに検討が必要な事項、に分類されました。
  • ①のリストは全体会合でさらに検討され、採択されました。リストに含まれる活動事項は、各担当者が次回総会までに実施し、報告することとなりました。
メンバーレポート:質疑応答(9.0)
  • 10カ国(バミューダ、ブラジル、フィジー、フランス、インド、日本、南アフリカ、パラオ、タイ、ケニア)、7機関(UNEPカリブ海地域プログラム、 コーラルケイコンサーベーション、グレートバリアリーフ海中公園局、IUCN、RAMSAR、SPREP、UNEP)からレポートが提出され、それらにつ いて質疑応答が行なわれました。
ICRI重要課題:グループ・デスカッショん(10.0)
  • [1]国際サンゴ礁年、[2]ICRI10年レビューの2つのグループに分かれて議論が行われました。
  • [1]国際サンゴ礁年グループでは、2008年を国際サンゴ礁年とする決議案、今後の行動計画が議論されました。
  • [2]ICRI10年レビューグループでは、ICRIの過去10年間の成功点と失敗点が議論されました。
ICRI重要課題:全体会合(11.0)
  • [1]国際サンゴ礁年グループの結果が報告され、決議案が一部訂正の上採択されました。また、次回総会までの行動計画が合意されました。
  • [2]ICRI10年レビューグループの結果が報告されました。ICRIの過去10年間の成功点と失敗点をとりまとめた文書案は、ICRIフォーラム上で引続き議論されることとなりました。
他の議題(12.0)
  • IUCNからサンゴ礁における魚類産卵群集に関する声明文が提出され、修正の上採択されました。
総会総括(13.0)
  • 本総会の決議事項、採択事項を確認、総括しました。

レセプション

総会初日のセッション終了後、ICRI事務局とコズメル海中公園局が主催するウェルカム・レセプションがホテルのプールサイドで開催されました。レセプションでは、渡邉綱男(環境省自然環境局自然環境計画課・課長)とRobert Cudney(コズメル海中公園局)が代表で挨拶しました(写真13、写真14)。

ウェルカム・レセプションでICRI事務局を代表して挨拶する渡邉綱男(環境省) ウェルカム・レセプションの様子。
写真13.ウェルカム・レセプションでICRI事務局を代表して挨拶する渡邉綱男(環境省)。(左)
写真14.ウェルカム・レセプションの様子。(右)

メキシコ総会公式議事録と決議、決定、声明

メキシコ総会のICRI公式議事録(概要)と、総会中に採択された決議、決定、声明は以下のとおりです。

メキシコ総会公式議事録(概要)

  •  - Summary record (準備中)

メキシコ総会で採択された決議、決定、声明

決議

決定

声明