付表11

ノニルフェノールの測定方法

1 試薬

(1)水
日本工業規格K0557に規定するA1、A2、A3又はA4のもの(注1)
(2)ヘキサン
日本工業規格K8025に定めるもの(注2)
(3)アセトン
日本工業規格K8840に定めるもの(注2)
(4)ジクロロメタン
日本工業規格K8117に定めるもの(注2)
(5)硫酸ナトリウム(無水)
日本工業規格K8987に定めるもの(注2)
(6)4−ノニルフェノール標準原液(100μg/ml)
4−ノニルフェノール標準品10mgを全量フラスコ100mlに採り、アセトンを標線まで加えたもの
(7)4−ノニルフェノール標準液(1μg/ml)
4−ノニルフェノール標準原液1mlを全量フラスコ100mlに採り、ジクロロメタンを標線まで加えたもの
(8)サロゲート溶液(0.1μg/ml)
13C標識化4−(3,6−ジメチル−3−ヘプチル)フェノールサロゲート溶液(10μg /ml)1mlを全量フラスコ100 mlに採り、アセトンを標線まで加えたもの(注3)
(9)内標準原液(1mg/ml)
4−n−ノニルフェノール−d4標準品100mgを全量フラスコ100mlに採り、ジクロロメタンを標線まで加えたもの
(10)内標準液(0.1μg/ml)
内標準原液1mlを全量フラスコ100mlに採り、ジクロロメタンを標線まで加えた後、この溶液1mlを全量フラスコ100mlに採り、ジクロロメタンを標線まで加えたもの
(11)検量線標準液
4−ノニルフェノール標準液を5〜500μlの範囲で目盛付き共栓試験管に段階的に採り、これらにサロゲート溶液0.5ml及び内標準液0.5mlを加え、約40℃の水浴上で窒素ガスを緩やかに吹き付け、約0.5mlに濃縮したもの
(注1)
使用前に空試験を行い、測定を妨害するノニルフェノール等による汚染がないことを確認する。ミネラルウォーターを用いてもよい。
(注2)
各対象物質の保持時間に相当する位置にピークがないことを確認する。
(注3)
サロゲート物質について、回収率が50〜120%で安定的に得られることを確認した上で、直鎖型の13C標識化4−n−ノニルフェノールなどを用いてもよい。

2 器具及び装置(注4)

(1)固相カラム(注5)
内径10mm、長さ30〜50mmのカートリッジ型のものであつて、カラム充てん剤として、シリカゲルに逆相系化合物を化学結合したもの又は、合成吸着剤(多孔性のスチレンジビニルベンゼン共重合体又はこれと同等の性能を有するもの)を充てんしたもの(注6)
(2)目盛付き共栓試験管
容量10〜20mlのものであつて、0.5ml及び1mlの目盛のあるもの
(3)カラムクロマトグラフ管
(a) カラム用管
内径約20mm、長さ約200mmのコック付ガラス管
(b) カラム充てん剤
カラムクロマトグラフ用のシリカゲル(粒径150~250μm)を約130℃で15時間以上加熱し、デシケーター内で放冷した後、95gを共栓三角フラスコに採り、かき混ぜながら水5mlを滴下し、軽く栓をし、発熱が終了するまで静かに混合し、振とう器で約30分間振り混ぜたもの
(c) クロマトグラフ管
底部にガラスウール(あらかじめヘキサンで洗浄したもの)を詰め、少量のヘキサンを加えてガラスウール間の気泡を除去したカラム用管にカラム充てん剤約15gをヘキサンでかゆ状にして流し込み、更に縦横の振動を与え、カラム充てん剤を均一に充てんした後、硫酸ナトリウム(無水)をカラム充てん剤層の上層に約2cmになるように積層し、ヘキサンの液面を硫酸ナトリウム(無水)層の上面まで下げたもの
(4)円筒形滴下漏斗
(5)濃縮器
(6)濃縮器
ロータリーエバポレーター、クデルナダニッシュ濃縮器又はスニーダーカラムであつて、濃縮時における試料溶媒に接触する部分のガラス器具類をあらかじめ水及びアセトンで洗浄したもの
(7)マイクロシリンジ
容量1〜10μlのもの
(8)ガスクロマトグラフ質量分析計
(a) キャピラリーカラム
内径0.25mm、長さ30mの化学結合型溶融シリカ製のものであつて、内面にメチルシリコーン系固定相液体を0.25μm程度の厚さで被覆したもの又は、これと同等以上の分離性能を有するもの
(b) 検出器
電子衝撃イオン化法(EI法)が可能で、選択イオン検出法(SIM法)又はこれと同等の性能を有する方法でクロマトグラム測定が可能なもの
(c) キャリヤーガス
ヘリウム(純度99.9999vol%以上)であつて、線速度を毎秒20〜40cmとしたもの
(d) 試料導入部
スプリットレス方式により試料を導入することができるものであつて、温度を220〜280℃に保つことができるもの
(e) インターフェース部
温度を280℃程度に保つことができるもの
(f) イオン源
温度を230℃以上に保つことができるもの
(g) カラム槽昇温プログラム
50℃で1分保ち、50〜300℃の範囲で毎分8℃の昇温を行うことができるもの
(注4)
ガラス器具類は水で洗浄し、更にアセトンで洗浄した後、放置してアセトンを揮散させ、約200℃で約2時間加熱し、汚染のない場所で放冷し、各対象物質による汚染がないことを確認してから使用する。
(注5)
同等の性能を有する固相ディスクでもよい。その場合、試料の流量及び溶出溶媒の必要量をあらかじめ確認しておく。
(注6)
カラム充てん剤は、あらかじめアセトン約10ml及び水約10mlを順次通して洗浄する。

3 試験操作

(1)試験液の調製
  1. (a) 試料(注7)を振り混ぜて均一化した後、500mlを採り、塩酸(1mol/L)を加えてpHを約3.5に調整し、更にサロゲート溶液0.5mlを加え、固相カラムに加圧又は吸引により毎分流速5〜10mlで流下させる。(注8)
  2. (b) 試料容器を水10mlで洗い、洗液を固相カラムに通水し、約30分間窒素ガスを吹き付け、水分を除去する。(注9)
  3. (c) 固相カラムの上端からアセトン4mlを穏やかに通し、ノニルフェノールを溶出させ、目盛付き共栓試験管に受ける。
  4. (d) 約40℃の水浴中に目盛付き共栓試験管を浸し、溶出液に窒素ガスを緩やかに吹き付けて濃縮し、ジクロロメタンに転溶し約1mlにする。さらに硫酸ナトリウム(無水)約0.3gを用いて脱水する。(注10)
  5. (e) 全量をカラムクロマトグラフ管に流し込み、コックを操作し液面を硫酸ナトリウム(無水)層の上面まで下げる。目盛付き共栓試験管をジクロロメタン0.5〜1mlで洗浄し、洗液はカラムクロマトグラフ管に加える。(注11)
  6. (f) 円筒形滴下漏斗をカラムクロマトグラフ管に装着し、円筒形滴下漏斗からジクロロメタン−ヘキサン混合液(3+7)50mlを毎分流速約1mlで流下させ、液面を硫酸ナトリウム(無水)層の上面まで下げ、流出液を捨てる。
  7. (g) 円筒形滴下漏斗から、ジクロロメタン−ヘキサン溶離液(3+2)100mlを毎分流速約1mlで流下させ、溶出液を濃縮器用フラスコに受ける。(注12)
  8. (h) 濃縮器を用いて、約40℃の水浴上で溶出液を約5mlになるまで濃縮する。(注13)
  9. (i) 濃縮液を目盛付き共栓試験管に移し、濃縮器用フラスコをジクロロメタン2〜3mlで洗浄し、洗液を目盛付き共栓試験管に加える。続いて内標準液0.5mlを加えた後、約40℃の水浴上で窒素ガスを緩やかに吹き付けて約0.5mlに濃縮する。(注10)
(2)空試験液の調製
水500mlを用いて、(1)と同様に操作して得られる液を空試験液とする。(注14)
(3)分析
  1. (a) 表に掲げる質量数を用い、モニターする。
  2. 表 質量数
    異性体番号物質名定量用質量数
    (確認用質量数)
    1 4−(2,4−ジメチルヘプタン−4−イル)フェノール 121(163)
    2 4−(2,4−ジメチルヘプタン−2−イル)フェノール 135(220)
    3 4−(3,6−ジメチルヘプタン−3−イル)フェノール 135(107)
    4 4−(3,5−ジメチルヘプタン−3−イル)フェノール 149(191)
    5 4−(2,5−ジメチルヘプタン−2−イル)フェノール 135(163)
    6 4−(3,5−ジメチルヘプタン−3−イル)フェノール 149(191)
    7 4−(3−エチル−2−メチルヘキサン−2−イル)フェノール 135(220)
    8 4−(3,4−ジメチルヘプタン−4−イル)フェノール 163(121)
    9 4−(3,4−ジメチルヘプタン−3−イル)フェノール 149(107)
    10 4−(3,4−ジメチルヘプタン−4−イル)フェノール 163(121)
    11 4−(2,3−ジメチルヘプタン−2−イル)フェノール 135(220)
    12 4−(3−メチルオクタン−3−イル)フェノール 191(163)
    13 4−(3,4−ジメチルヘプタン−3−イル)フェノール 149(107)
    13C標識化4−(3,6−ジメチル−3−ヘプチル)フェノール 155(113)
    4−n−ノニルフェノール−d4 111(224)
    ※ 異性体番号4と6、8と10、9と13はそれぞれ立体異性体
  3. (b) マイクロシリンジを用いて試験液1μlをガスクロマトグラフに注入し、保持時間が検量線標準液の各対象物質(ノニルフェノールの各異性体)の保持時間と一致していることを確認しておく。各対象物質のクロマトグラムのピークの位置は別図を参考にする。(注15)
  4. (c) 保持時間に相当する位置のピークについて、ピーク面積を測定する。各対象物質とサロゲート物質のピーク面積の比、サロゲート物質と内標準物質のピーク面積の比を求める。(注16)
  5. (d) あらかじめ4により作成した検量線を用い、各対象物質とサロゲート物質のピーク面積の比から各対象物質とサロゲート物質の濃度比を求める。
  6. (e) 空試験液についても(b)、(c)及び(d)の操作を行い、各対象物質とサロゲート物質の濃度比を求める。
  7. (f) 次の式によつて試験液中の各対象物質の濃度(μg/L)を算出する。
    試料中の各対象物質の濃度(μg/L)=(a - b)×f×n×(1000/試料量(ml))
    この式において、a、b、f 及びnは、それぞれ次の値を表す。
    1. a 検量線から求めた各対象物質とサロゲート物質の濃度比
    2. b 空試験について検量線から求めた各対象物質とサロゲート物質の濃度比
    3. f 各対象物質の組成比(注17)
    4. n 添加したサロゲート物質の質量(μg)
    各対象物質の濃度の和をノニルフェノール濃度とする。
(注7)
浮遊物が多いときは、あらかじめろ過する。ろ過は、アセトンで洗浄したろ過材(孔径1μmのガラス繊維ろ紙)で吸引ろ過し、ろ過材ごとビーカーに移してアセトン約10mlを加え、超音波洗浄器を用いて溶出させ、これを2〜3回繰り返し得られた溶出液を全て合わせ、濃縮器を用いて約5mlまで濃縮し、試料に加える。
(注8)
浮遊物が多いときは、本文(1)の(a)から(d)までの操作に代えて溶媒抽出によることができる。溶媒抽出は、塩酸(1mol/L)で試料のpHを約3に調整し、サロゲート溶液0.5mlを加えた後、塩化ナトリウム30gを加え(海水には添加しない。)、十分混合して溶解する。この溶液にジクロロメタン50mlを加え10分間振とう抽出する。この抽出を2回行い、ジクロロメタン層を全て合わせる。硫酸ナトリウム(無水)で脱水後、ロータリーエバポレーターの使用及び窒素ガスの吹き付けにより約1mlまで濃縮する。
(注9)
長時間通気すると、回収率が低下するおそれがあるので注意する。
(注10)
直ちに次の操作を行わない場合は、この濃縮液を−20℃の暗所に保存する。また、窒素ガスを吹付ける操作では、濃縮液が飛散しないように注意する。濃縮液の表面が動いていることが確認できる程度に窒素ガスの流量を調節する。乾固させた場合は、窒素ガスの吹き付けによつて対象物質が揮散することがあるので注意する。
(注11)
妨害物質が無視できる程度に少ない試料については、(1)の(e)〜(h)の操作は省略することができる。
(注12)
事前に既知量の標準物質を添加したものを用いて、各対象物質の溶出パターンを確認し、カラムクロマトグラム操作に必要なジクロロメタン−ヘキサン混合液(3+7)及びジクロロメタン−ヘキサン溶離液(3+2)の量を求めておく。
(注13)
濃縮器にロータリーエバポレーターを用いる場合は、約40℃の水浴上で減圧濃縮し、乾固しないように注意する。クデルナダニッシュ濃縮器を用いる場合は、減圧方式 ではなく、大気圧下、75℃以下で加熱して濃縮する。濃縮終了後、スニーダーカラムを濃縮部 に付けたまま装置から取り外し、スニーダーカラムの上部から少量のジクロロメタンを加えて洗浄し、スニーダーカラムを付けたまま放冷する
(注14)
空試験値は可能な限り低減化を図る。
(注15)
試料中の各対象物質の定量イオンと確認イオンのピーク面積比と標準液中の各対象物質の定量イオンと確認イオンのピーク面積比を比較して±20%以内であれば、同じ物質が存在しているものとみなす。
(注16)
試料中の各対象物質の濃度を算出するときは、試料に添加したサロゲート物質の回収率が50〜120%であることを確認する。回収率は、試料中のサロゲート物質と内標準物質のピーク面積比と検量線標準液中のサロゲート物質と内標準物質のピーク面積比の平均値の百分率とする。
(注17)
異性体の組成比は水素炎イオン検出器を用い、試験液の分析と同様に4−ノニルフェノール標準原液1μlをクロマトグラフに注入する。各対象物質の保持時間に相当するピークについて、ピーク面積を読み取り、得られた面積の合計と各対象物質の面積比から組成比を求める。

4 検量線の作成

検量線標準液1μlをガスクロマトグラフに注入し、各対象物質とサロゲート物質のピーク面積比から検量線を作成する。

備考

  1. 1 この測定方法の定量下限は0.06μg/Lである。
  2. 2 ここで示す商品は、この測定法使用者の便宜のために、一般に入手できるものとして例示したが、これらを推奨するものではない。これと同等以上の品質、性能のものを用いてもよい。
  3. 3 この測定方法における用語の定義その他でこの測定方法に定めのない事項については、日本工業規格に定めるところによる。

別図:キャピラリーカラムにDB-5MS(長さ30m 内径0.25mm 膜厚0.25μm)を用いたときのクロマトグラム

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