付表3

PCBの測定方法

1 試薬

(1) ヘキサン
ガスクロマトグラフに注入(300mlを約3mlに濃縮し、その10μlを分取して注入する。)したとき、PCBの保持時間にピークを生じないもの
(2) アセトン
ガスクロマトグラフに注入(300mlを約3mlに濃縮し、その10μlを分取して注入する。)したとき、PCBの保持時間にピークを生じないもの
(3) エタノール(95v/v%)
ガスクロマトグラフに注入(300mlを約3mlに濃縮し、その10μlを分取して注入する。)したとき、PCBの保持時間にピークを生じないもの
(4) 硫酸
(5) ヘキサン・エタノール混液
ヘキサンとエタノールをそれぞれ同量混合したもの
(6) 水酸化カリウムエタノール溶液
水酸化カリウム70gをできるだけ少量の水(水1lにつきヘキサン100mlを用いて振り混ぜ、洗浄したもの。以下同じ。)に溶かし、エタノールを加えて1lとし振り混ぜ、二酸化炭素に触れないようにして2~3日間放置した後、その上澄み液を採つたもの又はろ過したもの(耐アルカリ性の瓶に保存する。)
(7) 硫酸ナトリウム(無水)
硫酸ナトリウム(無水)100gにヘキサン50mlを加えて振り混ぜ、ろ別し、ろ別した硫酸ナトリウムに再びヘキサン25mlを加えて振り混ぜ、ろ別した後風乾したものであつて、後者のろ別したヘキサン10μlをガスクロマトグラフに注入したとき、PCBの保持時間にピークを生じないもの
(8) シリカゲル
PCB分析用のシリカゲル粉末をビーカーに入れ、層の厚さを10mm以下にして約130℃で18時間以上乾燥した後、デシケーター中で約30分間放冷したもので、シリカゲルクロマト管によるPCBの分離の操作の空試験を行い、その試験溶液10μlを分取してガスクロマトグラフに注入したとき、PCBの保持時間にピークを生じないもの
(9) フロリジル
フロリジル100gにヘキサン50mlを加えて振り混ぜ、ろ別し、ろ別したフロリジルに再びヘキサン25mlを加えて振り混ぜ、ろ別した後風乾したものであつて、後者のろ別したヘキサン10μlをガスクロマトグラフに注入したとき、PCBの保持時間にピークを生じないもの
(10) 含水アセトニトリル
アセトニトリル(ガスクロマトグラフに注入(300mlを約3mlに濃縮し、その10μlを分取して注入する。)したとき、PCBの保持時間にピークを生じないもの)170mlと水30mlを混合したもの
(11) フェノールフタレイン溶液
フェノールフタレイン0.5gをエタノール(95v/v%)50mlに溶かし、水を加えて100mlとしたもの
(12) 水酸化ナトリウム溶液(4w/v%)
水酸化ナトリウム4gを水に溶かして100mlとしたもの
(13) PCB標準液
試験用PCBのKC―300、KC―400、KC―500及びKC―600を重量比1対1対1対1の割合で混合したものをヘキサン1l中に0.01~1mg溶かしたもの

2 器具及び装置(注1)

(1) 分液漏斗(コック部にワセリン等を使用してはならない。)
(2) 濃縮器
クデルナダニッシュ濃縮器(毛細管を付けないもの)又はロータリーエバポレーター
(3) フラスコ
容量200mlですり合わせ付きのもの
(4) 還流冷却器
(5) カラムクロマトグラフ用ガラス管(以下「クロマト管」という。)
内径約10mm、長さ約300mmのコック付きガラス管
(6) マイクロシリンジ
容量1~10μlのもの
(7) ガスクロマトグラフ
  1. (a) 試料導入部
    温度を200~250℃にしたもの
  2. (b) 分離管
    内径2~4mm、長さ150~200cmのガラス製のものであつて、その温度を180~250℃(トリチウムを用いた検出器を使用する場合は、180~220℃)にしたもの
  3. (c) 分離管充てん物
    酸で洗浄した後シラン処理をしたガスクロムQ、クロモソルブG又はクロモソルブW(いずれも粒径149~177μmのもの)にOV―1又はOV―17を1.5~5%被覆したもの
  4. (d) 検出器
    電子捕獲型のものであつて、その温度を200~250℃(トリチウムを使用する場合は、200~220℃)にしたもの
  5. (e) キャリヤーガス
    99.9v/v%以上の窒素又はヘリウムであつて、流量を毎分30~80mlとしたもの

(注1) ガラス器具類については、あらかじめヘキサンで洗浄し、乾燥したものを用いる。

3 試験操作

  1. (1) 試料を試料容器から分液漏斗に移し入れ、次にヘキサン50mlで試料容器の内壁をよく洗い、洗液を分液漏斗に加え(懸濁物が非常に多い試料の場合は、抽出が不十分になるおそれがあるので、アセトン50mlを加える。)、約10分間振り混ぜた後、ヘキサン層と水層が十分に分離するまで静置する(エマルジョンが生ずる場合は、硫酸を数滴加えて振り混ぜる。)。水層を別の分液漏斗に移し、水層に再びヘキサン50mlを加えて同様に抽出を行い、分離したヘキサン層と先のヘキサン層を合わせる。
  2. (2) 合わせたヘキサン層を硫酸ナトリウム(無水)約10gを用いて脱水した後、濃縮器を用いて約5mlに濃縮する(注2)。
  3. (3) 濃縮液の全量をフラスコに移し入れ、濃縮液の入つていた容器の内壁を水酸化カリウムエタノール溶液25mlずつで2回洗い、洗液をフラスコに合わせ、還流冷却器を付けて沸騰水浴中で約1時間加熱して妨害物質を分解し、約50℃になるまで放冷する(妨害物質の少ない試料では、この操作を行わず、(2)の操作を行つた後、直ちに(6)の操作を行つてもよい。)。
  4. (4) 約50℃になるまで放冷した(3)の溶液にヘキサン100mlを加えて振り混ぜ、室温になるまで放冷し、フラスコから分液漏斗に移し入れ、次にヘキサン・エタノール混液20~30mlでフラスコの内壁を洗い、洗液を分液漏斗に合わせる。次いで分液漏斗に水25mlを加えて振り混ぜた後、ヘキサンが十分に分離するまで静置する(エマルジョンを生ずる場合はエタノール(95v/v%)数mlを加え緩やかに振り混ぜる。)。水層を別の分液漏斗に移し、再びヘキサン50mlを加えて同様に抽出を行い、分離したヘキサン層を先のヘキサン層と合わせる。更にヘキサン層を水100mlずつで激しく振り混ぜながら3回洗浄する。
  5. (5) 洗浄したヘキサン層を硫酸ナトリウム(無水)約10gを用いて脱水した後、濃縮器を用いて約5mlに濃縮する。
  6. (6) 底部にガラスウール(あらかじめヘキサンで洗浄し、乾燥させたもの。以下同じ。)を詰めたクロマト管にヘキサンを加えてガラスウール間の気泡を除去する。シリカゲル2gを容器に採り、ヘキサンを加え気泡を除去した後、クロマト管に流し入れる。更に容器の内壁に付着しているシリカゲルを少量のヘキサンを用いてクロマト管に流し入れる。次に、クロマト管内壁に付着したシリカゲルを少量のヘキサンで洗い落とす。クロマト管中のヘキサンを流下させ、シリカゲル層を安定させた後、硫酸ナトリウム(無水)1gをシリカゲル層に上積みし、クロマト管内壁に付着した硫酸ナトリウム(無水)を少量のヘキサンで洗い落とす。その後、ヘキサンの液面を硫酸ナトリウム(無水)層の上面まで下げる。次に(5)の操作により得られた濃縮液を静かに硫酸ナトリウム(無水)層の上に移し入れる。濃縮液の入つていた容器をヘキサン約1mlずつで数回洗い、洗液を濃縮液に静かに合わせる。更にクロマト管内壁を少量のヘキサンで洗つた後、濃縮液の液面を硫酸ナトリウム(無水)層の上面まで下げる。ヘキサン500mlを入れた分液漏斗をクロマト管の上部に装着し、分液漏斗からヘキサンを流下させ、クロマト管からの流出液の流下速度を毎秒1滴程度とし(必要があれば窒素ガスで加圧する。)、全てのPCBが含まれ、かつ、PCB及びDDE以外の有機塩素化合物が含まれないような流出範囲(注3)の流出液を容器に集める。この流出液を濃縮器を用いて5ml以下になるまで濃縮し、ヘキサンを加えて5mlとする。
  7. (7) マイクロシリンジを用いてPCB標準液5μlをガスクロマトグラフに注入し、得られたクロマトグラムのピークに別図を参考にして番号(以下「ピーク番号」という。)を付ける。次にそのピークごとに、ピーク高さ(mm)を読み取り、その高さ(H1)と当該ピークのピーク番号に対応する別表のCB0(%)から次式によりK値を求める。
         K=CB0(%)/H1
     次に(6)の操作により得られた濃縮液(以下「試料溶液」という。)1~10μlを同様にガスクロマトグラフに注入し、得られたクロマトグラムのピークにその位置に相当するPCB標準液で得られたクロマトグラムの位置のピークのピーク番号と同一のピーク番号を付ける。次にそのピークごとに、ピーク高さ(mm)を読み取り、その高さ(H2)と当該ピークのピーク番号に係るK値から次式によりCB2(%)を求める。
         CB2(%)=K×H2
     以上の結果から、次式により、試料のPCB濃度(mg/l)を求める。
         PCB濃度(mg/l)=PCB標準液の濃度(mg/l)×(PCB標準液注入量(μl)/試料溶液注入量(μl))×(ΣCB2(%)/ΣCB0(%))×(試料溶液の量(ml)/試料採取量(ml))
(注2)
水浴中で行う。ロータリーエバポレーターを使用する場合は、蒸発乾固するおそれがあるので、注意しなければならない。(5)及び(6)において同じ。
(注3)
流出範囲は、試料中のPCBの含有量、シリカゲルの活性度のわずかな差異等によりかなり変動するので、あらかじめ試験用PCBを用いてPCBの流出範囲とその安全性を十分確認しておく。

備考

  1. 1 試料に油分等が多く含まれ、本文3の(3)の操作によつても分解されずにヘキサン層に存在する場合には、本文3の(6)の操作により得られる流出液に油分等が含まれ、ガスクロマトグラフによるPCBの測定においてクロマトグラム上に妨害ピークが生ずるおそれがあるので、本文3の(6)の操作を行う前に、次の操作により油分等を分離する。
     底部にガラスウールを詰めたクロマト管にフロリジル20gを粉末のまま入れ、この上に本文3の(5)の操作により得られた濃縮液全量を移し入れ、少量のヘキサンで濃縮液の入つていた容器を洗い、洗液をクロマト管に合わせ、次に少量のヘキサンでクロマト管内壁を洗う。クロマト管上部から窒素ガスを送入し(最初は流量を少なくして、ヘキサンが急激に流下しないように注意し、ヘキサンの滴下が止まれば、毎分約40mlの流量にする。)、ヘキサン臭が無くなるまで続ける。次に含水アセトニトリル200mlを入れた分液漏斗をクロマト管の上部に装着し、分液漏斗から含水アセトニトリルを流下させ、クロマト管から流出液を自然滴下させる。流出液を他の分液漏斗に移し、ヘキサン100ml及び水500mlを加えて振り混ぜた後、フェノールフタレイン溶液を指示薬として、水酸化ナトリウム溶液(4w/v%)を加えて微アルカリ性とする。再び振り混ぜ、静置した後水層を捨てる。ヘキサン層を水200mlずつで3回洗浄する。ヘキサン層を硫酸ナトリウム(無水)約10gを用いて脱水した後、濃縮器を用いて全量が約5mlになるまで濃縮する。
  2. 2 この測定方法の定量限界は、0.0005mg/lである。
  3. 3 この測定方法における用語の定義その他でこの測定方法に定めのない事項については、日本工業規格に定めるところによる。

別図

1 分離管充てん物の被覆にOV―1を用いたときのクロマトグラム
図:分離管充てん物の被覆にOV―1を用いたときのクロマトグラム

2 分離管充てん物の被覆にOV―17を用いたときのクロマトグラム
図:分離管充てん物の被覆にOV―17を用いたときのクロマトグラム

別表

1 分離管充てん物の被覆にOV―1を用いたときのCB0(%)

ピーク番号1234567891011121314
CB0(%) 1.67 5.78 2.68 7.57 5.23 7.88 4.83 3.30 10.68 2.37 5.70 3.16 4.20 1.24
ピーク番号1516(注4)17181920212223242526
CB0(%) 6.44 6.16 1.68 4.45 3.45 3.15 3.47 1.27 1.54 0.29 0.71 0.21

ΣCB0(%)=99.11

(注4)
ピーク番号16は条件により、16(CB0(%)2.16)及び16′(CB0(%)4.00)に分離することがある。

2 分離管充てん物の被覆にOV―17を用いたときのCB0(%)

ピーク番号1234567891011121314 
CB0(%) 1.69 6.00 3.17 6.60 2.74 1.35 8.62 4.86 2.54 2.09 8.65 7.05 0.99 3.18
ピーク番号151617181920212223242526272829
CB0(%) 5.42 6.35 4.28 4.00 4.75 2.82 0.23 2.26 1.57 3.30 0.08 2.95 0.28 0.71 0.15

ΣCB0(%)=98.68