付表2

アルキル水銀の測定方法

1 試薬

(1) 塩酸
予期保持時間付近にピークを生じないもの
(2) アンモニア水
予期保持時間付近にピークを生じないもの
(3) 塩化ナトリウム溶液(20w/v%)
塩化ナトリウム200gを水に溶かして1lとしたものであつて、予期保持時間付近にピークを生じないもの
(4) ベンゼン
予期保持時間付近にピークを生じないもの
(5) L―システィン・酢酸ナトリウム溶液
塩酸L―システィン1g、酢酸ナトリウム三水和物0.8g及び硫酸ナトリウム(無水)12.5gを水に溶かして100mlとしたものであつて、予期保持時間付近にピークを生じないもの(使用時に調製する。)
(6) 塩化メチル水銀標準原液又は塩化エチル水銀標準原液
塩化メチル水銀0.125g又は塩化エチル水銀0.132gをベンゼンに溶かして10mlとしたもの(この溶液1mlは水銀10mgを含む。)
(7) 塩化メチル水銀中間標準液又は塩化エチル水銀中間標準液
塩化メチル水銀標準原液又は塩化エチル水銀標準原液をベンゼンで100倍に薄めたもの(この溶液1mlは水銀0.1mgを含む。)
(8) 塩化メチル水銀標準液又は塩化エチル水銀標準液
塩化メチル水銀中間標準液又は塩化エチル水銀中間標準液をベンゼンで100倍に薄めたもの(この溶液1mlは水銀0.001mgを含む。使用時に調製する。)

2 器具及び装置

(1) 分液漏斗
容量500ml及び20~30mlのもの(コック部にワセリン等を使用してはならない。)
(2) 共栓付き試験管
容量5~10mlのもの
(3) マイクロシリンジ
容量1~10μlのもの
(4) ガスクロマトグラフ
  1. (a) 試料導入部
    温度を140~240℃にしたもの
  2. (b) 分離管
    内径3mm、長さ40~150cmのガラス製のものであつて、その温度を130~180℃にしたもの
  3. (c) 分離管充てん物
    酸で洗浄した後シラン処理をしたクロモソルブW(粒径177~250μmのもの)又はこれと同等以上の性能を有する担体にこはく酸ジエチレングリコール又はこれと同等以上の分離性能を有する液相を5~25%被覆したもの(シラン処理とは、トルエンにジメチルクロロシランを1%溶かしたものに担体を浸し、水浴上で約1時間保つた後乾燥させることをいう。また、担体にあらかじめ5~10%の臭化カリウム又は塩化ナトリウムを含浸させた後、液相を被覆するとガスクロマトグラムのピークの尖鋭度が向上する。)
  4. (d) 検出器
    電子捕獲型のものであつて、その温度を140~200℃にしたもの
  5. (e) キャリヤーガス
    99.8v/v%以上の窒素又はヘリウムであつて、流量を毎分30~80mlとしたもの
  6. (f) 装置の感度
    (a)から(e)までの条件下で塩化メチル水銀又は塩化エチル水銀0.04ngを導入したときのS/Nが3以上であること

3 試料の採取及び保存

 試料の採取及び保存は付表1の3に定める方法による。

4 試験操作

  1. (1) 試料200mlを分液漏斗(容量500ml)に採り、アンモニア水又は塩酸で中和した後、塩酸酸性(2moI/l)とする(注1)。この溶液にベンゼン50mlを加えて約2分間激しく振り混ぜ、静置した後(必要があれば遠心分離を行う。)、水層を別の分液漏斗(容量500ml)に移し、ベンゼン層を保存する。水層に再びベンゼン50mlを加えて約2分間激しく振り混ぜ、静置した後、水層を捨てる。ベンゼン層を合わせ、塩化ナトリウム溶液(20w/v%)20mlを加え、約1分間振り混ぜて洗浄し(注2)、静置した後水層を捨てる。
  2. (2) 残つたベンゼン層にL―システィン・酢酸ナトリウム溶液8mlを加えて約2分間激しく振り混ぜ、静置した後(必要があれば遠心分離を行う。)、水層を分液漏斗(容量20~30ml)に移し、塩酸2mlとベンゼン5mlを加えて約2分間激しく振り混ぜ、静置した後水層を除き、ベンゼン層を共栓付き試験管に移す(注3)。
  3. (3) マイクロシリンジを用いてその一定量をガスクロマトグラフに注入し(注4)、ガスクロマトグラムを記録する。塩化メチル水銀又は塩化エチル水銀の保持時間に相当する位置のピークについて、ピーク面積又はピーク高さを測定する(注5)。
  4. (4) 測定の結果得られたピークがメチル水銀化合物又はエチル水銀化合物によるものかどうかを判定するため、測定に使用した共栓付き試験管内のベンゼン層の残部の1mlを別の共栓付き試験管に採り、L―システィン・酢酸ナトリウム溶液1mlを加えて約2分間激しく振り混ぜ、静置した後、ベンゼン層から、先にガスクロマトグラフに注入したベンゼンと同量のものをマイクロシリンジに採り、ガスクロマトグラフに注入する。この結果、先に得られたピークの位置にピークが認められない場合には、先のピークはメチル水銀化合物又はエチル水銀化合物によるものと判定する。
  5. (5) (3)の操作により得られた測定値から、あらかじめ5により作成した検量線を用いて水銀量を求め、別に水200mlについて全操作にわたり空試験を行い、次式によつて試料の水銀濃度を算出する。
        水銀濃度(mg/l)=(a-b)×1,000/試料量(ml)
        この式において、a及びbは、それぞれ次の値を表す。
    1.     a 検量線を用いて求めた試料中の水銀量(mg)
    2.     b 検量線を用いて求めた全操作にわたる空試験により得られた補正値(mg)
(注1)
試料中に硫化物やチオシアン酸塩が含まれているときは、塩酸酸性(2moI/l)とした試料に塩化銅(I)粉末100mgを加え、よくかき混ぜてしばらく静置した後ろ過し、ろ紙上に残つた沈殿物を塩酸(1+5)を用いて2~3回洗浄し、ろ液と洗液を合わせる。
(注2)
多量の無機水銀が存在する場合には、電子捕獲型検出器を用いたときにメチル水銀の位置に無機水銀によるピークを生ずることがあるので、入念に洗浄を繰り返す。また、洗浄後のベンゼン層中に塩酸が残留しているとシスティンによるアルキル水銀の抽出が不完全になるので、洗液が中性になるまで洗浄を繰り返す。
(注3)
水分が存在しているとガスクロマトグラフに注入したとき異常なピークを生ずることがあるので、硫酸ナトリウム(無水)等を用いて脱水する。
(注4)
ガスクロマトグラフへの試料注入量と得られるピーク面積又はピーク高さとの関係が直線となる範囲をあらかじめ求めておき、測定されるピーク面積又はピーク高さがこの範囲となるように試料注入量を調節する。
(注5)
測定時に標準液の一定量をガスクロマトグラフに注入して検出器の感度の経時変化を補正する。

5 検量線の作成

 分液漏斗(容量20~30ml)にL―システィン・酢酸ナトリウム溶液8mlを採り、塩化メチル水銀標準液又は塩化エチル水銀標準液を検出器の感度に応じて段階的に加える。以下それぞれ4の(2)のL―システィン・酢酸ナトリウム溶液添加後の操作及び4の(3)の操作を行い、得られた測定値をもとに水銀量とガスクロマトグラムのピーク面積又はピーク高さとの関係線を求めることにより検量線を作成する。

備考

  1. 1 試料中にアルキル水銀化合物のベンゼン抽出を妨害する成分が含まれている場合には、測定に用いた試料と同量の試料を採り、これに一定量の塩化メチル水銀標準液又は塩化エチル水銀標準液を加えて、本文4の操作を行い、その回収率を求めて本文4の(5)の算出結果を補正する。
  2. 2 この測定方法による測定は、試料中のメチル水銀化合物及びエチル水銀化合物についてそれぞれ行う。
  3. 3 この測定方法の定量限界は、0.0005mg/lである。
  4. 4 この測定方法における用語の定義その他でこの測定方法に定めのない事項については、日本工業規格に定めるところによる。
図1 アルミナカラム
図1 アルミナカラム
  1. A1、A2:ガラスウール
  2. B:活性アルミナ
  3. C:ガラスろ過板
  4. D:すり合わせ
単位 mm