法令・告示・通達

環境影響評価に係る調査、予測及び評価のための基本的事項

公布日:昭和59年11月27日
環境庁長官決定)

一 目的
  本基本的事項は、環境影響評価実施要綱第二の一(二)に基づいて主務大臣が指針を定める場合に考慮すべき調査、予測及び評価(以下「調査等」という。)のための基本的な事項を定めるものである。
二 一般的事項
 (一) 対象事業の実施が環境に及ぼす影響についての調査等は、主務大臣が対象事業の種類ごとに定める指針に従つて行われるものである。
 (二) 調査等は、公害の防止及び自然環境の保全について以下のとおり行うものとする。
  ア 公害の防止については、人の健康の保護並びに人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含む生活環境の保全に係る事項について調査等を行うものとする。
  イ 自然環境の保全については、原生の自然地域、学術上、文化上特に価値の高い自然物等のかけがえのないもの、すぐれた自然風景や野生動物の生息地、野外レクリエーションに適した自然地域等の良好な自然等のそれぞれの特性に応じた適正な保全に係る事項について調査等を行うものとする。
 (三) 調査等は、対象事業の実施に係る以下の行為等について、調査を行う時点における事業計画等に応じ行うものとする。
  ア 埋立又は干拓以外の対象事業にあつては、
   ① 当該対象事業の実施に係る工事(当該対象事業の実施のために行う埋立又は干拓に係るものを除く。)
   ② ①の工事が完了した後の土地(他の対象事業の用に供するものを除く。)又は工作物の存在
   ③ ②の土地又は工作物において行われることが予定される事業活動その他の人の活動
  イ 対象事業である埋立又は干拓にあつては、
   ① 当該埋立又は干拓の実施に係る工事
   ② ①の工事が完了した後の土地(護岸、堤防、岸壁その他これらに類する工作物を含む。)の存在
 (四) 指針においては、既に得られている科学的知見に基づき、対象事業の実施が環境に及ぼす影響を明らかにするために一般的に必要と認められる調査等の項目及び対象事業の実施が環境に及ぼす影響を明らかにするための合理的な調査等の技術的方法を定めるものとする。
 (五) 指針は、対象事業の特性及び対象事業の実施が環境に及ぼす影響について調査すべき地域(以下「調査地域」という。)の特性に配慮して、調査等が適正に行われるよう定めるものとする。
三 調査等の項目とその取り扱い
 (一) 対象事業の実施が環境に及ぼす影響を明らかにするために一般的に必要と認められる調査等の項目(以下「対象項目」という。)は、別表に掲げる環境の要素に関し対象事業の特性に応じて必要な項目を指針において定めるものとする。
 (二) 対象項目に関する調査等の取り扱いは以下の考え方によるものとする。
  ア 公害の防止に係る項目にあつては、調査の結果に基づき、定量的な予測が可能であるものについては定量的な予測を行い、定量的な予測が困難なものについては定性的な予測を行うことを基本とする。
    また、評価に際しては、調査、予測及び公害の防止のための措置の検討の結果等を踏まえ、環境基準又は科学的知見に基づく判定条件が利用し得るものについては環境基準又は判定条件に照らして評価を行い、同様な評価を行うことが困難なものについては科学的知見に基づいて判断することにより評価を行うことを基本とする。
  イ 自然環境の保全に係る項目については、調査地域における自然環境の現況について調査、解析を行い、その結果を踏まえて調査地域における重要な自然環境の状態を明らかにし、これら重要な自然環境についてその状態の変化を定量的又は定性的に予測し、その重要さに応じた保全の水準を考慮して評価するものとする。
    この場合、環境の要素のうち動物については、必要に応じ生態への影響の観点からの配慮を行うものとする。
四 調査に係る基本的事項
 (一) 調査は、対象事業の実施が環境に及ぼす影響を予測し、評価するために必要とされる情報を収集し、その結果を整理、解析することにより行うものとし、その技術的方法は指針において定めるものとする。
 (二) 調査は、以下の各号に関し、既存資料の収集、現地調査等を行い、その結果を整理、解析することにより行うものとする。この場合において、予測及び評価を行う項目については、そのための必要な水準が確保されるよう配慮するものとする。
  ① 対象項目に関する環境の現状
  ② ①の対象項目に関連して情報を収集する必要がある気象、水象等の自然条件及び人口、産業等の社会条件であつて指針で定めるもの
 (三) 対象項目に関する調査の期間、頻度等又はこれらの設定に関する留意事項は、指針において定めることを基本とする。
 (四) 対象項目に関する調査地域の範囲は、原則として対象事業の実施により環境の状態が一定程度以上変化する範囲を含む区域又は環境が直接改変を受ける範囲とその周辺区域等とし、予め具体的に定めうる場合にはそれを、それ以外の場合には、個別の対象事業に係る調査の実施に際し、当該対象事業の実施が環境に及ぼす影響の程度について予め想定して設定することとし、その趣旨を指針において定めるものとする。
 (五) 対象項目に関する調査手法又は測定方法は、指針において定めるものとする。この場合において、環境基準を定める告示、その他法令等により調査手法又は測定方法が定められている場合には原則としてその手法又は方法とし、それ以外の場合には指針において適切な手法又は方法を定めるものとする。
五 予測に係る基本的事項
 (一) 予測は、調査結果の整理、解析により予測が必要と認められる項目について、対象事業の実施により生じる一般的な条件下における環境の状態の変化を明らかにすることにより行うものとし、その技術的方法は指針において定めるものとする。
 (二) 公害の防止に係る対象項目及び自然環境の保全に係る対象項目に関する予測は以下により行うものとする。
   なお、事業者又は国等が行う公害の防止及び自然環境の保全のための措置又は施策を踏まえて行うことができるものとする。
  ア 公害の防止に係る対象項目に関する予測は、対象事業の特性を勘案して、数理モデルによる数値計算、模型実験、既存事例の引用又は解析等により行うものとする。
    なお、予測の方法の選択に当たつては、その特徴、適用条件、調査地域の特性等に留意するものとする。
  イ 自然環境の保全に係る対象項目に関する予測は、直接的影響については各項目の特性に応じてその消滅の有無及び改変の程度についてできるだけ定量的に行うものとする。また、必要に応じ間接的影響について予測を行う場合には、主として定性的に行うものとする。
 (三) 予測の対象時期は、対象事業の特性に応じ環境影響を的確に把握できるよう指針において定めるものとする。
 (四) 予測すべき地域(以下「予測地域」という。)の範囲は、対象項目に関する調査地域の範囲内で指針において定めるものとする。
六 評価に係る基本的事項
 (一) 評価は、対象項目に関する調査、予測並びに公害の防止及び自然環境の保全のための措置の検討の結果等を踏まえ、対象事業の実施が予測地域の環境に及ぼす影響について科学的知見に基づいて事業者の見解を明らかにすることにより行うものとし、その技術的方法は指針において定めるものとする。
 (二) 公害の防止に係る項目についての評価は、人の健康又は生活環境に及ぼす影響について、科学的知見に基づいて、人の健康の保護又は生活環境の保全に支障を及ぼすものかどうかを検討することにより行うものとする。この場合、公害対策基本法第九条の環境基準が定められている項目にあつては当該環境基準に照らし、人の健康又は生活環境への影響に関する判定条件等を利用し得る項目にあつてはそれらに照らし、評価を行うことを基本とする。
 (三) 自然環境の保全に係る項目についての評価は、予測地域における自然環境に及ぼす影響について、科学的知見に基づいて、それが自然環境の重要さに応じた適切な保全に支障を及ぼすものかどうかを検討することにより行うものとする。
 (四) 評価に当たつては、必要に応じ、当該対象事業以外の事業活動等によりもたらされる地域の将来の環境の状態(国又は地方公共団体から提供される資料等により将来の環境の状態の推定が困難な場合等においては、現在の環境の状態とする。)を勘案するものとする。また、国又は地方公共団体等が実施する公害の防止及び自然環境の保全のための施策を勘案することができるものとする。
七 その他
  指針は常に適切な科学的判断を加え、必要な改定を行うものとする。


別表
     環境の要素
 Ⅰ 公害の防止に係るもの
   大気汚染
   水質汚濁
   土壌汚染
   騒音
   振動
   地盤沈下
   悪臭
 Ⅱ 自然環境の保全に係るもの
   地形・地質
   植物
   動物
   景観
   野外レクリエーション地