法令・告示・通達

鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律施行令の一部を改正する政令および鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律施行規則の一部を改正する省令の施行について

公布日:昭和46年06月28日
46林野造702号

(各都道府県知事あて農林事務次官通達)
 最近における鳥獣保護に対する要請の増大および狩猟に伴う人身事故の多発傾向に対処するため、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律施行令の一部を改正する政令(昭和四十六年政令第百五十八号。以下「改正政令」という。)が昭和四十六年五月二十四日公布され、同日から施行されるとともに、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律施行規則の一部を改正する省令(昭和四十六年農林省令第五十一号。以下「改正省令」という。)が昭和四十六年六月二十八日公布され、同日から施行(改正省令の第四十四条を改正する部分にあつては、昭和四十六年七月二十日から施行)されたところであるが、これらの運用にあたつては、左記事項に留意のうえ、事務処理に遺憾のないようにされたい。
 なお、改正政令の施行に伴い、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律施行令(昭和二十八年政令第二百五十四号)第四条第一項の規定による農林大臣の定める講習要目が別紙1のように定められるとともに、関係通達が別紙2のとおり改正されたので、講習の実施にあたつては、遺憾のないようにされたい。
 以上、命により通達する。

第一 政令改正事項について
  近年狩猟に伴う人身事故が増加しているが、これらの事故例の大半は、狩猟経験の浅い初心者と銃器取扱いと不慣れ、不注意によるものによつて占められている現状にかんがみ、乙種および丙種の狩猟免許に係る初心者課程の講習会の猟具取扱いにおいて、銃器の取扱いに関する実技の訓練を行なうこととし、これに要する時間について講習時間を延長したものであるから、この趣旨にそつて十分に実技の訓練を行なうものとすること。
  なお、これに伴い乙種および丙種の狩猟免許に係る初心者課程の講習会の手数料が、現行七〇〇円から一、一〇〇円に改められた。
第二 省令改正事項について
 1 狩猟鳥獣の指定について
   鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律(大正七年法律第三十二号)第一条ノ四第二項の規定による狩猟鳥獣の指定は、鳥獣の生息数、農林水産業に対する益害の程度、鳥獣の学術上の価値等を考慮してなされるものであるが、今回の狩猟鳥獣の指定の変更は、近年生息数の減少が著しく、また学術上の観点からも保存を要すると考えられる鳥獣の保護を図ろうとする趣旨によるものであり、具体的には、従来オシドリを除きすべて狩猟鳥とされていたカモ類のうち、ツクシガモ、カンムリツクシガモ、アカツクシガモ、トモエガモ、オカヨシガモ、アメリカヒドリ、シマアジ、オオホシハジロ、アカハジロ、メジロガモ、アカハシハジロ、ケワタガモ、コケワタガモ、アラナミキンクロ、シノリガモ、ホオジロガモおよびヒメハジロが、狩猟鳥から除外され、オナガガモ、コガモ、ヨシガモ、マガモ、カルガモ、ヒドリガモ、ハシビロガモ、ホシハジロ、キンクロハジロ、スズガモ、ビロウドキンクロ、クロガモおよびコオリガモが狩猟鳥として残された。
   また、カモ類以外についてはミコアイサ、ヒシクイ、マガン、ジシギ、ワタリガラスおよびツシマテンが狩猟鳥獣から除外されたものである。
   今回の改正により狩猟鳥獣の指定が解除された前記の鳥獣のなかには、永年狩猟鳥獣として広く狩猟者の間に親しまれたものも含まれているので、今回の措置の内容およびこれらの措置を講ずるに至つた事情等については、とくに狩猟関係者に十分周知徹底を図り、違法捕獲の防止に万全を期すること。
   また、とくにカモ類等については、狩猟者講習会における講習、狩猟免状の交付時におけるカモ類判別のための図鑑等の交付等を通じ、その識別について十分な指導教育を行なうとともに、その種名が判別できない場合においては捕獲しないものとするよう指導の徹底を図ること。
 2 猟法の制限について
   狩猟鳥獣の保護繁殖を図るため、次のとおり猟法の制限がなされたので、狩猟者講習会および狩猟免状の交付の際に周知徹底を図り違反行為の防止に万全を期すること。
  (1) 構造の一部として四発以上の実包を充てんすることができる弾倉のある散弾銃を使用する方法の禁止
    多連発の散弾銃の使用は、狩猟鳥獣の多獲、負傷鳥獣の発生等鳥獣保護上好ましくない点が多く、かつ、危険でもあるので禁止されたものである。
  (2) 口径(山径)の長さが五・九ミリメートル以下の装薬銃たるライフル銃を使用する方法の禁止
    口径の長さが五・九ミリメートル以下のいわゆる小口径ライフル銃は、大型獣に対して、これを用いる場合には負傷獣を多く生じさせるおそれがあり、鳥獣の保護繁殖上好ましくないのみならず、またこれらの負傷獣による人畜に対する加害予防の観点からも好ましくなく、また小型獣については、散弾銃によつても十分捕獲の目的を達しうるものでありとくに射程距離が長く強力なライフル銃を使用する必要が認められないため禁止されたものである。
    なお、現に小口径ライフル銃を所持している者については、昭和四十八年二月十五日までは従前どおりその使用を認めることとされている。
  (3) おしを使用する方法の禁止
    おしは、鳥獣を無差別に捕獲するのみならず、鳥獣に長時間苦痛を与え、鳥獣保護上好ましくないため、禁止されたものである。
  (4) とりもちを使用する方法の禁止
    とりもちの使用については、従来ははご(千本はごを含む。)またはもちなわを使用する方法のみが禁止されていたが、とりもちを板または網に塗布して鳥類を捕獲する方法が行なわれ、鳥類保護上弊害が多いので、これらの猟法を排除するため、今回とりもちを使用する猟法のすべてが禁止されたものである。
  (5) 弓矢を使用する方法
    弓矢は、その命中精度および威力からみて、これを鳥獣の捕獲に用いるときは、負傷鳥獣を生じさせる等鳥獣保護上悪影響があるのみならず人身に対し危険であるので、これらの弊害の発生を未然に防止する観点から禁止されたものである。
  (6) クマ、ヒグマ、イノシシおよびオスジカ以外の狩猟鳥獣についての装薬銃たるライフル銃(口径(山径)の長さが五・九ミリメートル以下の装薬銃たるライフル銃を除く。)を使用する方法の禁止
    小口径ライフル銃以外のいわゆる大口径ライフル銃は、元来大型獣の捕獲を目的として製造されたものであり、これを小型獣の捕獲に使用するときは、鳥獣の保護上あるいは危険予防上好ましくない結果をまねくので、大口径ライフル銃の使用を銃の性能に適合した用法の範囲内に限定することとされたものである。
 3 捕獲数量の制限について
   狩猟鳥獣の生息数の減少傾向にかんがみ、狩猟鳥獣の生息数の維持を図るため、ウズラ、エゾライチヨウ、カモ類、バン、オオバン、タシギおよびヤマシギの一日当たりの捕獲数の制限が強化されたので、狩猟者講習会および狩猟免状の交付の際に周知徹底を図り、違反行為の防止に万全を期すこと。
 4 農林大臣の定める猟具について
   従来甲種の狩猟免許者の法定猟具として、わなのなかにおしが指定されていたが、今回、狩猟獣をおしにより捕獲する方法を禁止したことに関連して農林大臣の定める猟具からおしが除外されたので、狩猟者講習会および狩猟免状の交付の際に十分周知徹底を図ること。
 5 輸出入の際に適法捕獲証明書を添付すべき鳥類について
   最近における飼い鳥および羽毛製品等の輸出入の実態にかんがみ、輸出入の際に適法に捕獲した旨の証明書を添付する必要のある鳥類およびその加工品の範囲が拡大されたので、鳥類等の輸出入関係業者にこの旨の周知徹底を図ること。


別表
   鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律施行令第四条第一項の規定による農林大臣の定める講習要目
1 講習会の区分
  鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律第七条ノ二第一項の講習会は鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律施行令第四条第二項本文に規定する場合の者(以下「初心者」という。)および同項ただし書きに規定する者(以下「経験者」という。)の別に行なうものとするが、共通する講習科目については同一会場で行なつてさしつかえない。
2 講習時間
  鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律施行令第四条第二項に定めるところにより講習を行なうものとするが、講習科目の細部における時間の配分については、必要に応じて適宜決定すること。ただし、乙種および丙種の狩猟免許に係る講習会の初心者課程の講習における銃器の取扱いに関する実技の訓練は、三時間以上行なうものとすること。
  なお、講習の後に行なわれる考査に要する時間は、施行令第四条第二項に規定する講習時間には、含まないものとすること。
3 講習科目
 (1) 甲種の狩猟免許に係る講習会
  ア 初心者課程
   (ア) 狩猟に関する法令
    a 鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律、同法施行令、同法施行規則および都道府県規則
    b わなおよび網に関する事項
    c 文化財保護法および自然公園法中鳥獣に関する事項
   (イ) 狩猟鳥獣の判別
    狩猟鳥獣ならびにこれに近似する非狩猟鳥獣の生態、形態、食性ならびに識別の概要
   (ウ) 猟具の取扱い
    a 網およびわなの種類、構造および装置方法の概要ならびに使用上の注意事項
    b 使用禁止の猟具と法定猟具との区別
  イ 経験者課程
    講習科目は、アに準ずるものとし、とくに改正に係る法令事項、法令違反および狩猟に伴う人身事故の実例をあげての違反および事故の防止に関する注意事項、誤認されやすい鳥獣の判別等に重点をおくこと。
 (2) 乙種および丙種の狩猟免許に係る講習会
  ア 初心者課程
   (ア) 狩猟に関する法令
    a 鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律、同法施行令、同法施行規則および都道府県規則
    b 銃砲刀剣類所持等取締法および火薬類取締法中の銃器および火薬の所持等狩猟に関する事項
    c 文化財保護法および自然公園法中鳥獣に関する事項
   (イ) 狩猟鳥獣の判別
     狩猟鳥獣ならびにこれに近似する非狩猟鳥獣の生態、形態、食性ならびに識別の概要
   (ウ) 猟具の取扱い
    a 銃器の種類、構造および威力の概要
    b 銃器の操法ならびに保管、携帯および運搬の要領
    c 実包の製造方法の概要および製造上の注意事項ならびに取扱い上の注意事項
    d 火薬類の貯蔵方法および残火薬の処置
    e 銃猟上のマナーおよび注意事項
    f bおよびeに関する実技の訓練
  イ 経験者課程
    講習科目はア((ウ)のfを除く。)に準ずるものとし、とくに改正に係る法令事項、法令違反および狩猟に伴う人身事故の実例をあげての違反および事故の防止に関する注意事項、誤認されやすい鳥獣の判別、銃器および火薬類についての注意事項等に重点をおくこと。
4 講習要領
 (1) 講習開催前に受講申込書に貼付してある写真と照合すること。
 (2) 狩猟に関する法令については、つとめて平易に、実例および判例をとり入れて指導すること。
   また、法令の趣旨を尊重し積極的に法令を遵守する精神をかん養すること。
 (3) 狩猟鳥獣の判別については剥製、スライド、掛図等をもつて行ない、識別すべき特徴について特に強調すること。
   また、とつさの場合の狩猟鳥獣の判別は熟練を要するものであることを徹底させ、ふだんの自己研修に努めることを要請すること。
 (4) 猟具の取扱いのうち実技の訓練については、講習会専用の模造銃および空ケースを用いて、受講者ごとに装填、脱包の方法、射撃の姿勢、銃器の保持方法等について反復訓練すること。
 (5) 講習中に狩猟をなすに必要な適正を欠いていると認められる者があるかどうかについて留意し、これに該当する者があると認められる場合は、その者につき狩猟者講習修了証明書の備考欄にその旨を記載すること。
5 考査要領
 (1) 考査は、講習直後に実施するようにすること。
 (2) 考査時間は、初心者課程についてはおおむね一時間程度で筆記解答のできる問題を、経験者課程については三〇分程度で筆記解答のできる問題とすること。
 (3) 考査は、比較的簡単に採点のできる〇×式試験要領によることを旨とすること。
 (4) 考査のための出題は、あらかじめ数種類用意し、会場ごとに変えること。
 (5) 考査終了後は、模範解答を発表し、正確な知識を得しめるようにすること。
 (6) 講習課程の修了者と認めるに足る考査成績はおおむね七〇点以上とすること。
 (7) 考査の採点は早急に行ない、不合格者が再度受講するのに支障のないように配慮すること。