法令・告示・通達

第四次鳥獣保護事業計画の作成要領について

公布日:昭和51年08月16日
環自鳥121号

(各都道府県知事あて環境庁自然保護局長通達)
 昭和五一年八月一六日付け環自鳥第一二〇号で第四次鳥獣保護事業計画を樹立する場合の基準が示されたが、この計画を樹立するにあたつては、別冊第四次鳥獣保護事業計画の作成要領を参考とされたい。
 なお、環境庁長官への報告は、別記様式により昭和五二年三月一〇日までに提出されたい。
    第四次鳥獣保護事業計画の作成要領
第一 基準第二について
 一 鳥獣保護区の設定
  (一) 鳥獣保護区の態様
   ① 森林鳥獣生息地の保護区は、その形状をなるべく円形又は正方形に近い矩形とし、次のアイいずれかの場所に設定するものとする。
     自然環境保全法、自然公園法、文化財保護法、森林法等の法令によつて保護されている森林をできるだけ含むよう考慮すること。
    ア 鳥獣の生息密度の高い地区
    イ 植生及び地形等が鳥獣の生息環境に適している以下のような地区
     (ア) 天然林があること。
     (イ) 林相地形が変化に富むこと。
     (ウ) 渓流又は沼沢があること。
     (エ) 食餌となる動植物の現存量が豊富であること。
   ② 大規模生息地の保護区は、次の要件を満たす場所を選定し、低山帯から高山帯に及ぶように設定するものとする。
     自然環境保全法、自然公園法、文化財保護法、森林法等の法令によつて保護されている森林をできるだけ含むよう考慮すること。
    ア 鳥獣の種類及び個体数が多く、かつ猛禽類、大型獣類又は学術上貴重な鳥獣が生息すること。
    イ 鳥獣の繁殖地、採餌場所、避難場所、休息場所等鳥獣の行動圏を区域内に含むこと。
    ウ 暖帯林、温帯林、亜寒帯林等のそれぞれの特徴的な樹種、林相を有し、地形が変化に富みできるだけ河川、湖沼を含むこと。
   ③ 集団渡来地の保護区は、シギ、チドリ類、ハクチヨウ・ガン・カモ類等の種類又は個体数の多い渡り鳥の渡来する干潟、河口、湖沼、湿地帯に設定するものとし、探餌又は休息のための後背地及び水面を含めるものとする。
   ④ 集団繁殖地の保護区は、ウミスズメ類、ミズナギドリ類、アジサシ類、チヨウゲンボウ等が集団で繁殖する島しよ、砂地、断崖等又はオオシギ、オオジユリン、コジユリン、セツカ等が多数繁殖している草原、湿地等に設定するものとし採餌又は休息のための後背地または水面を含めるものとする。
   ⑤ 鳥獣の誘致地区の保護区は、人工を加えることにより野生鳥獣の生息地となりうる都市部の既設公園、社寺有林等に設定するものとすること。
   ⑥ 特定鳥獣生息地の保護区は、特殊鳥類(特殊鳥類の譲渡等の規制に関する法律に基づいて指定された鳥類)オオワシ、オジロワシ等の生息数の少ない鳥類又はカワウソ、ヤマネコ等の生息数の少ない獣類が生息するに十分な広さがある場所に設定すること。
   ⑦ 愛護地区の保護区は、森林だけでなく草地又は池沼等の場所にも設定するものとすること。
  (二) 鳥獣保護区の区画
    鳥獣保護区は、河川、海岸線、鉄道又は行政区界等の界線により区画して設定するものとする。ただし、国有林野にあつては、事業区界又は林班界を界線としても差し支えない。
  (三) 鳥獣保護区の設定期間
    鳥獣保護区の設定期間は、一〇年以上二〇年以内において、できるだけ長期間とするものとする。
 二 特別保護地区の指定
  (一) 特別保護地区の態様
    特別保護地区の指定は、鳥獣保護区の区域内において、特に生息環境の保全を必要とする場所について指定するが、その場合においては次の事項に留意するものとすること。
   ① 特定鳥獣の生息地の保護区については、当該鳥獣の繁殖、採餌、避難及び休息に必要な区域を保全するため、広範囲に特別保護地区を指定するものとする。
   ② 大規模生息地の保護区については、その区域内に生息する鳥獣のうち、猛禽類又は大型獣類等のうちから特に保護を要する鳥獣を定め、その鳥獣の保護繁殖のために環境の保全を図る必要のある繁殖区域、採餌区域等について特別保護地区を指定するものとする。
   ③ 集団渡来地の保護区については、主として採餌区域(繁殖する鳥類にあつては、繁殖区域を含む。)及び休息区域について特別保護地区を指定するものとする。
   ④ 集団繁殖地の保護区については、保護対象となる鳥類の繁殖区域について特別保護地区を指定するものとする。
   ⑤ 森林鳥獣生息地の保護区については、生息する鳥獣の種類が豊富でかつ個体数の特に多い地区について特別保護地区を指定するものとする。
   ⑥ 愛護地区の保護区及び誘致地区の保護区については、鳥獣の愛護又は、誘致上特に必要と認められる地区に特別保護地区を指定するものとする。
  (二) 特別保護地区の指定期間
    特別保護地区の指定期間は、鳥獣保護区の設定の期間にあわせるものとすること。
 三 休猟区の設定
  (一) 休猟区は、可猟地区の九分の一程度を三カ年の休猟区として毎年設定し、この計画期間中は、常時可猟地域の三分の一程度を休猟区に設定するものとする。
  (二) 休猟区は、狩猟鳥獣の減少の著しいとこから順次設定するものとするが、休猟区の期間満了後は、当該休猟区に隣接する地区を新たな休猟区に設定するよう努めるものとする。
  (三) 休猟区は、原則として行政区界の界線により区画するものとする。
 四 鳥獣保護区の整備
   鳥獣保護区及び特別保護地区については、その境界線が明らかになるよう、必要な標識を設けるほか、区域内にも必要に応じ、標示板を設けるものとする。
   さらに、次の施設を整備するものとする。
  (一) 案内板
    鳥獣保護区の区域を示す区域図及び区域内に生息する主な鳥獣の種類を図示する案内板を人目にふれ易い場所に建てるものとする。
  (二) 給餌施設
    給餌は、冬期間において特に餌が不足する場合に行うものとし、それぞれの鳥獣保護区の保護対象とする鳥獣の種類、生息数に応じ、給餌量及び給餌場所を定め、そのために必要な給餌施設を設置するものとする。
  (三) 給水施設
   ア 給水施設は湧水又は水流のない場所において、現地の実情に応じて設けるものとする。
   イ 給水施設は、雨水がたまるよう天然の岩石をくぼめるか、又は陶製若しくはコンクリート製の浅い水槽を設置するものとする。
  (四) 食餌植物の植栽
    食餌植物は区域内においてできる限り天然性の食餌植物の保存を図るほか、食餌植物の乏しい場所には周辺に自生する食餌植物の分布状況を考慮して植栽を行うものとする。
  (五) 営巣材料の供与等
    営巣材料の供与等は、鳥類の営巣に適するよう地衣植物、又は潅木類を群状に保存し、営巣樹の育成、空洞木の残置又は巣箱の架設を行うものとする。
第二 基準第三について
 一 キジの人工増殖
  (一) キジの人工増殖は、放鳥計画に対応する生産量の確保を目標として、生産体制の整備、拡充を図るものとする。
  (二) 優良種の生産確保のため必要な血液の更新は、三年に一回程度を目標とし、野外で採卵し、ふ化したものを種キジとして使用するものとする。
 二 その他の鳥類の人工増殖
  (一) ヤマドリ、カモ類、ウズラ等の人工増殖については、養殖試験を行うものとする。
  (二) ヤマドリについては、養殖試験又は放鳥によつて亜種間の交雑が行われないよう種鳥の産地、放鳥場所等に特に注意するものとする。
 三 放鳥獣
   放鳥又は放獣にあたつては、可能なかぎり事前調査及び放鳥又は放獣後の追跡調査を実施するものとし、その際下記の点に留意すること。
  (一) 放鳥獣する鳥獣が在来種に対し、生息地及び、餌の競合、病原菌の伝播等の見地から悪影響を及ぼすおそれのある場合は放鳥又は放獣しないものとする。
  (二) 鳥獣が人間の疾病の中間宿主であるおそれのある場所は当該鳥獣が生息する地域内から放鳥又は放獣用の鳥獣を捕獲してはならないものとする。
  (三) 放鳥又は放獣しようとする場合は亜種間の交雑を防止するため、放鳥又は放獣しようとする地域に生息する鳥獣の亜種と同一の亜種を放鳥又は放獣するものとする。
  (四) 特有の生態系を有する島しよ等であつて生態系保護上悪影響を及ぼすおそれのある場合には放鳥又は放獣しないものとする。
  (五) 放鳥場所には、必要に応じ食餌となる植物等を植栽するものとする。
第三 基準の第四について
 一 鳥獣による被害発生予察表の作成にあたつては、被害状況、農林作物の作付状況、養殖漁業の現況等の推移、鳥獣生息状況の推移を勘案して、加害鳥獣、被害農林水産物の種類、被害発生地域、被害発生時期を予察するものとする。
 二 有害鳥獣駆除の許可基準を設けるにあたつては、原則として農林水産物に被害を与える鳥獣を対象とし、その種類ごとに許可すべき駆除数量及び時期の基準を定めるものとする。
 三 駆除後の編成指導にあたつては、駆除技術の秀れた者、駆除のための出動の可能な者等を隊員として編成するものとする。
 四 鳥獣による被害防除方法の確立は、必要に応じて学識経験者に委託して、効果的な防除方法を解消するとともに、その方法を普及することによつて行うものとする。
第四 基準の第五について
  鳥獣の生息状況の調査は都道府県が直接実施するほか、必要に応じ学識経験者に委託して実施するものとする。
 一 市町村別分布調査
   本調査は鳥獣行政を進めるための基礎的資料となる生息分布図及び生息台帳を作成するためのものであり、鳥獣の種別、生息期間、繁殖の有無、生息数の多少等について、既存の資料をもとに、必要に応じてアンケート調査、聞込み調査又は現地調査によつて行うものとする。なお、過去に生息していた鳥獣についても資料があれば、その資料を記録しておくものとする。
 二 環境別増減調査
   本調査は、既存の鳥獣生息調査の調査定点において定点調査を実施するものとし、併せて調査結果の解析を行うものとする。
  (一) 調査地はつぎの区分ごとに選定するものとする。
    森林の鳥獣/天然林の鳥獣、都道府県内に二か所程度/人工林の鳥獣、〃/
    耕地周辺の鳥獣 〃 一カ所程度
    草原、原野の鳥獣 〃 〃
    海岸又は湖沼の鳥獣 〃 〃
  (二) 調査の方法は定線調査及び区域調査によるものとする。
 三 都道府県民の鳥獣保護調査
   本調査は、都道府県民の鳥獣に指定された鳥獣及び都道府県の条例等により天然記念物に指定された鳥獣について、分布区域、生息概数、生息条件等を明らかにするため、生息地域内に標準地を設けて行うものとする。
 四 狩猟対策基礎調査
   本調査は、狩猟鳥獣の保護増殖対策に必要な資料を得るため、狩猟鳥獣の生息地域、生息概数、生息環境の改変状況等について、既往の捕獲数の解析、アンケート調査、聞込み調査又は標準地法による現地調査によつて行なうものとする。
 五 鳥獣保護区、休猟区、捕獲禁止区域における効果測定調査
  (一) 本調査は、鳥獣保護区、休猟区及び捕獲禁止区域の設定効果を調査するため、鳥獣保護区及び休猟区についてはそれぞれの設定数の二割に相当する地区内に設けた調査地(捕獲禁止区域については当該区域内に設けた調査地)とこれに接する可猟地域に設けた調査との鳥獣の生息数と比較して行うものとする。
    また、新たに鳥獣保護区等を設定する場合にあつては、設定前の鳥獣の生息数との比較をも行うものとする。
  (二) 調査対象鳥獣は、鳥獣保護区にあつては、当該鳥獣保護区において保護対象となる鳥獣、休猟区にあつては当該休猟区において増殖を図る狩猟鳥獣、捕獲禁止区域にあつては、捕獲禁止の対象鳥獣について行うものとする。
第五 基準第六について
 一 都道府県が行う愛鳥週間の中心的行事は、年度ごとに開催地を変えて実施するものとし、広く都道府県民に鳥獣保護思想の普及を図るものとする。
 二 鳥獣保護センターは、原則として都道府県の代表的な鳥獣保護区内にモデル的な保護施設、観察施設、探鳥路を設置し、さらにその近くに展示施設(ビジターハウス)、救護施設等を設置するものとする。
   なお、展示施設には、鳥獣保護に関する絵画、写真、映画フイルム・スライド、図書等を整備するものとする。
 三 愛鳥モデル校の指定は、都道府県教育委員会と協議して、指定予定校の意見を尊重し必要に応じて、期間を定めて行なうものとする。
   なお、愛鳥モデル校指定に際しては、鳥獣に関する図書、掛図、スライド、展示品等を貸与し、必要に応じて都道府県職員又は鳥獣保護員が指導助言を行うものとし、その巡回指導計画を樹てること。
 四 法令の普及徹底については、年度別に重点項目を定めて計画的に推進するものとする。
 五 鳥獣保護団体の育成指導は、愛鳥週間行事、鳥獣保護施設の整備、鳥獣調査、鳥獣保護思想の普及について民間協力体制の整備を旨として行うものとする。
 六 鳥獣保護実績発表大会は、都道府県内の小、中学校、鳥獣保護団体又は個人(鳥獣保護員を含む)が行つている鳥獣保護に関する実績を発表する機会を与えることを旨として都道府県教育委員会の協力のもとに行うものとする。なお発表内容は印刷に付して愛鳥モデル校等に配付する。
第六 基準第七、第八について
 一 鳥獣保護員については、職務に適格性を目する人材をあてることを旨とし、必要に応じ、資質向上のための実施研修を実施するものとする。
 二 取締りについては、警視庁又は道府県警察本部と協議して計画をたてるものとする。
 三 狩猟関係の調査は、主としてアンケート方式により実施し、可猟地域における狩猟者の狩猟実態を分析し狩猟密度分布図を作成するものとする。
   なお、アンケート調査の内容としては、狩猟期間中における狩猟日数集中率、回転率、狩猟者一人一日当たり狩猟面積、狩猟回数、捕獲鳥獣の種類別数量、狩猟事故発生件数とする。
 四 放鳥を主体としたモデル猟区は、必要に応じ一部委託方式を採用して開猟日数、入猟者数を積極的に増加することを旨とする。