法令・告示・通達

絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律の施行について

公布日:平成5年04月01日
環自野122号

(各都道府県知事あて環境事務次官)
 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(平成四年法律第七五号。以下「法」という。)が平成四年六月五日に、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律施行令(平成五年政令第一七号。以下「令」という。)が平成五年二月一〇日に、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律施行規則(平成五年総理府令第九号。以下「規則」という。)、特定事業に係る捕獲等の許可の手続等に関する命令(平成五年総理府・農林水産省令第一号)及び絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律第五二条の規定による負担金の徴収方法等に関する命令(平成五年総理府・通商産業省令第一号)が平成五年三月二九日に公布され、本日から施行されたところである。
 また、法の施行に当たっての基本的な事項を定めた「希少野生動植物種保存基本方針」(以下「基本方針」という。)が、平成四年一一月二七日に閣議決定され、同年一二月一一日に、総理府告示第二四号により、公表されたところである。
 本法は、本邦及び本邦以外の地域における絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存を図る体系的な制度を整備するものである。
 法の施行に当たっては、左記事項に留意の上、施行に遺憾のないようにされたく、命により通達する。
 なお、「特殊鳥類の譲渡等の規制に関する法律等の施行について(昭和四八年一月三〇日環自鳥第一二号各都道府県知事宛環境事務次官通達)」は、廃止する。

第一 法の目的について
  本法は、野生動植物が、生態系の重要な構成要素であるだけでなく、自然環境の重要な一部として人類の豊かな生活に欠かすことのできないものであることにかんがみ、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存を図ることにより良好な自然環境を保全し、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的とするものであること(法第一条)。
第二 一般的事項について
 1 希少野生動植物種
   本法の規制等の対象となる野生動植物の種は、国内希少野生動植物種、国際希少野生動植物種、特定国内希少野生動植物種及び緊急指定種であること(法第四条、法第五条)。
 2 希少野生動植物種保存基本方針
   法の施行に当たっては、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する基本構想、希少野生動植物種の選定に関する基本的な事項等法の施行に当たって基本的な事項を定めた基本方針を閣議決定することとされていること。また、法の規定に基づく処分その他絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存のための施策及び事業の内容は、基本方針と調和するものでなければならないものであること。なお、基本方針は、昨年一一月二七日に閣議決定されていること(法第六条)。
 3 財産権の尊重等
   法の適用に当たっては、関係者の所有権その他の財産権を尊重し、住民の生活の安定及び福祉の維持向上に配慮し、並びに国土の保全その他の公益との調整に留意しなければならないものであること。したがって、法の運用は、必要に応じ、関係行政機関及び都道府県の関係部局(教育委員会を含む。)との連絡調整を図りつつ行うこと(法第三条)。
第三 個体の取扱いに関する規制について
 1 個体の範囲
  法の規制対象となる希少野生動植物種の個体には、動物にあってははく製及び標本並びに鳥類の卵を、植物にあっては標本を含むものであること。なお、動物の特定の器官に係る標本は、含まれないこと(法第六条、令第二条、令別表第三)。
 2 個体の所有者等の義務
   希少野生動植物種の個体の所有者又は占有者は、希少野生動植物種を保存することの重要性を自覚し、その個体を適切に取り扱うように努めなければならないこととされたこと(法第七条)。
 3 捕獲等及び譲渡し等の規制
   国内希少野生動植物種及び緊急指定種の生きている個体の捕獲等は、学術研究の目的、繁殖の目的、教育の目的、国内希少野生動植物種等の個体の生息状況又は生育状況の調査の目的その他国内希少野生動植物種等の保存に資すると認められる目的で行うものとして許可を受けた場合及び規則第一条に規定する捕護等の禁止の適用除外に該当する場合を除き、禁止されるものであること(法第九条、法第一〇条、規則第一条、規則第二条)。
   また、特定国内希少野生動植物種以外の希少野生動植物種の個体の譲渡し等については、学術研究の目的、繁殖の目的、教育の目的、希少野生動植物種の個体の生息状況又は生育状況の調査の目的その他希少野生動植物種の保存に資すると認められる目的で行うものとして許可を受けた場合及び規則第五条に規定する譲渡し等の禁止の適用除外に該当する場合を除き、禁止されるとともに、規則第九条に規定する陳列の禁止の適用除外に該当する場合を除き、その販売・頒布目的の陳列が禁止されること。ただし、国際希少野生動植物種のうち絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約附属書Ⅰに掲載された種の個体であって商業的目的で繁殖させたものなどについては、登録制による取引及び販売・頒布目的の陳列が認められること。また、特定国内希少野生動植物種の個体の譲渡し等の業務を伴う事業を行おうとする場合には、あらかじめ、届出が必要であること(法第一二条、法第一三条、法第一七条、法第二〇条、法第三〇条、令第四条、規則第五条、規則第六条、規則第九条)。
 4 輸出入の規制
   特定国内希少野生動植物種以外の国内希少野生動植物種の個体については、法の規定に違反して捕獲等をされ、又は譲渡し等をされたものでなく、かつ、国際的に協力して学術研究又は繁殖をする目的でするものその他の特に必要なものであって輸出によって国内希少野生動植物種の本邦における保存に支障を及ぼさない旨の環境庁長官の認定書の交付を受けた場合を除き、輸出が禁止されるものであること。また、輸出国の輸出許可書又は適法捕獲(採取・繁殖)証明書を添付した場合を除き、輸入が禁止されるものであること。また、国内希少野生動植物種(特定国内希少野生動植物種を除く。)、緊急指定種及び国際希少野生動植物種の個体を輸出入する場合には、外国為替及び外国貿易管理法(昭和二四年法律第二二八号)に基づく輸出入の承認を受ける義務が課せられていること(法第一五条、令第三条)。
   また、通商産業大臣又は環境庁長官及び通商産業大臣は、違法輸入者等に対し、輸入等をした個体を輸出国又は原産国に返送することを命ずることができることとされたこと(法第一六条)。
第四 生息地等の保護に関する規制について
 1 土地の所有者等の義務
   土地の所有者又は占有者は、その土地の利用に当たっては、国内希少野生動植物種の保存に留意しなければならないこととされたこと(法第三四条)。
 2 生息地等保護区
  (1) 生息地等保護区
    環境庁長官は、国内希少野生動植物種の保存のため必要があると認めるときは、その個体の生息地又は生育地及びこれらと一体的にその保護を図る必要がある区域であって、その個体の分布状況及び生態その他その個体の生息又は生育の状況を勘案してその国内希少野生動植物種の保存のため重要と認めるものを、生息地等保護区として指定することができることとされたこと。また、生息地等保護区の指定は、指定の区域、指定に係る国内希少野生動植物種及び指定の区域の保護に関する指針を定めてするものであること。指定に当たっては、あらかじめ、関係行政機関の長に協議するとともに、自然環境保全審議会及び関係地方公共団体の意見を聴くこととされたこと。さらに、異議がある旨の意見書の提出があったときその他指定に関し広く意見を聴く必要があると認めるときは、公聴会を開催することとされたこと。なお、生息地等保護区の区域内で、工作物の設置、土地の形質変更等の行為を行う者は、区域の保護に関する指針に留意しつつ、国内希少野生動植物種の保存に支障を及ぼさない方法でその行為をしなければならないこととされたこと(法第三六条)。
  (2) 管理地区
    環境庁長官は、生息地等保護区の区域内で国内希少野生動植物種の保存のため特に必要があると認める区域を管理地区として指定することができることとされたこと。管理地区の指定の方法は、生息地等保護区の指定の方法に準ずるものであること。管理地区の区域内で工作物の設置、土地の形質変更等の行為を行う場合には、許可を受けなければならないこと。また、特別制限地区(法第三七条第四項の規定により、環境庁長官が、期間を指定して、指定する区域をいう。)において、野生動植物の種の個体の捕獲等及び環境庁長官が指定する動植物の種の個体を放つこと等の行為を行う場合には、許可を受けなければならないこと。
    さらに、環境庁長官は、国内希少野生動植物種の個体の生息又は生育のため特にその保護を図る必要があると認める場所を、立入制限地区として指定することができることとされたこと(法第三七条、法第三八条)。
  (3) 監視地区
    生息地等保護区の区域で管理地区の区域に属さない部分は監視地区とされ、その区域内で、工作物の設置、土地の形質変更等の行為を行う場合には、あらかじめ、届出が必要とされたこと。また、届出があった場合において、届出に係る行為が生息地等保護区の区域の保護に関する指針に適合しないものであるときは、届出をした者に対し、届出に係る行為を禁止・制限し、又は措置命令をすることができることとされたこと(法第三九条)。
第五 保護増殖事業について
  環境庁長官及び保護増殖事業を行おうとする国の行政機関の長は、保護増殖事業の適正かつ効果的な実施に資するため、自然環境保全審議会の意見を聴いて保護増殖事業計画を定めることとされたこと。
  国は、自ら保護増殖事業を行うものとされ、また、地方公共団体は、その事業計画が保護増殖事業計画に適合する保護増殖事業について、環境庁長官のその旨の確認を受けることができるものであること。また、国及び地方公共団体以外の者は、その行う保護増殖事業について、その者がその保護増殖事業を適正かつ確実に実施することができ、及びその保護増殖事業の事業計画が保護増殖事業計画に適合している旨の環境庁長官の認定を受けることができるものであること。
  国が行う保護増殖事業及び環境庁長官の確認又は認定を受けた保護増殖事業は、保護増殖事業計画に即して行われなければならないものであること。また、これらの保護増殖事業として実施する行為については、捕獲等の規制及び生息地等保護区の区域内における行為規制に係る規定の適用が除外されること(法第四五条、法第四六条、法第四七条)。
第六 その他
 1 希少野生動植物種保存取締官
   環境庁長官又は農林水産大臣は、その職員を希少野生動植物種保存取締官に任命して、希少野生動植物種の個体の取扱い及び土地の利用方法等に関する助言、指導等を行わせることができることとされたこと(法第五〇条)。
 2 希少野生動植物種保存推進員
   環境庁長官は、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に熱意と識見を有する者のうちから、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する啓発及び調査等の活動を行う希少野生動植物種保存推進員を委嘱することができることとされたこと(法第五一条)。
 3 国の機関等に関する特例
   国の機関又は地方公共団体については、許可を受けるべき行為及び届出をすべき行為を行おうとするときは、規則第三七条に規定する場合を除き、それぞれ環境庁長官に協議及び通知をすることとされたこと(法第五四条、規則第三七条)。
 4 権限の委任
   法に定める環境庁長官の権限のうち次に掲げる権限であって二以上の都道府県の区域にまたがる事項に係る権限以外のものは、都道府県知事に委任することとされたこと(法第五五条、令第七条)。
  ① 特定事業に係る届出の受理その他の権限
  ② 管理地区におけるダム、幅員四メートル以上の道路若しくは鉄道施設の新築、改築若しくは増築又は水面の埋立て若しくは干拓以外の行為に係る許可権限等
  ③ 監視地区における届出の受理の権限等
  ④ 都道府県知事が許可すべき行為に係る協議の権限及び通知の受理の権限
 5 特殊鳥類の譲渡等の規制に関する法律等の廃止
   特殊鳥類の譲渡等の規制に関する法律(昭和四七年法律第四九号)及び絶滅のおそれのある野生動植物の譲渡の規制等に関する法律(昭和六二年法律第五八号)並びにこれらの法律の施行令及び施行規則は、平成五年四月一日をもって廃止されたこと(法附則第二条、令附則第二条、規則附則第二条)。