法令・告示・通達

自然公園法及び自然環境保全法の一部を改正する法律の施行について

公布日:昭和48年12月18日
環自企682号

環境事務次官から各都道府県知事あて
 自然公園法及び自然環境保全法の一部を改正する法律(昭和48年法律第73号。以下「改正法」という。)が、昭和48年9月1日に公布され、10月1日から施行されたので、下記の事項に留意のうえ改正後の自然公園法等の施行に当たつて遺憾のないようにされたく、命により通達する。

第1 制度改正の趣旨

  近時、国立公園等のすぐれた自然環境を有する地域にも、各種開発行為が急速に波及しつつあり、特に、従来これらの開発行為に対する強い規制措置が必ずしも十分講じえなかつた国立公園又は国定公園の普通地域(以下単に「普通地域」という。)において、ますます顕著となる傾向にある。
  これが無秩序に進められた場合には、普通地域における風景の破壊にとどまらず、ひいては当該自然公園全体の風致景観等の自然環境に及ぼす影響も極めて大きいので、このような事態に対処するため普通地域における規制を強化することについての要請が高まつてきた。
  このような現状にかんがみ、今般、自然公園法及び自然環境保全法の規定を整備し、(1) 普通地域における届出を要する行為の範囲を拡大し、新たに土地の形状変更等を追加するとともに、(2) 普通地域又は自然環境保全地域の普通地区(以下単に「普通地区」という。)において届出を要する行為につき、届出をした日から起算して30日を経過した後でなければ当該行為に着手することができないこととする等のいわゆる着手制限制度を設けたほか、(3) 違反行為に対する罰則の強化等の措置を講ずることとした。

第2 普通地域における届出事項の追加

  普通地域において届出を要する行為として自然公園法第20条第1項に新たに追加された行為は次のとおりである。

  1.  (1) 海面以外の水面を埋め立て、又は干拓すること。(第4号)
  2.  (2) 陸域において鉱物を掘採し、又は土石を採取すること。(第5号)
  3.  (3) 土地の形状を変更すること。(第6号)

  これらの改正は、普通地域における別荘地、ゴルフ場の造成、土石の採取等従来届出の対象外となつていた開発行為について、今後届出を要することとし、有効な規制措置を講じるようにしたものである。
  これらの届出を要するとした事項等については、土地利用規制に関する各種法令と関係するところが多いので、その事務執行上十分な調整を保ちつつ適切な運用に努めるとともに、これらの事項について届出が適正になされるよう、その周知徹底を図られたい。

第3 着手制限制度の創設

 1 普通地域又は普通地区において届出を要する行為をしようとする場合には、原則として、その届出をした日から起算して30日を経過した後でなければ当該届出に係る行為に着手してはならないこととなつた。
   改正前の届出制度においては、届出を要する行為をしようとする者は、あらかじめ、その旨を届出さえすれば届出後直ちに届出した行為に着手しても差支えなかつたので、当該行為の内容を審査した後公園の風景を保護するため当該行為を禁止し若しくは制限し、又はその他必要な措置を命じようとする際、すでに当該届出に係る行為が相当進行している場合が多い。このように適法に着手された行為をとらえてその行為の途中ないし完了後に行為の内容を大幅に変更させたり、禁止したりすることは、実際上困難な場合が多く、又、行為者にも相当の不利益を与えることとなるので、届出制度の趣旨が十分活用され難かつた。
   今後においては、届出のあつた行為の内容をすみやかに十分審査し、30日間内に、当該届出のあつた行為が公園の保護に支障を及ぼすおそれがあると認められるときは、必要な限度において、当該行為を禁止し、若しくは制限し、又は必要な措置をとるべき旨を命ずることが必要である。この場合、届出書の処理に当たつては、30日間の着手制限制度の有効な運用を図りうるよう事務処理ルートを明確化し、迅速化するなど事務体制を整備することが必要である。

 2 また、この30日間の着手制限制度の運用に当たつては、届出のあつた行為について、できるだけすみやかに審査することが必要であり、とくに届出のあつた行為の公園の風景の保護に支障を及ぼすおそれの有無の判断に30日を要さないものについては、その期間を短縮し、着手制限制度がいたずらに公共事業又は地域の生業等を制約することがないよう適切に配慮することが必要である。

第4 普通地域における既着手行為の範囲

  普通地域において届出を要することとして新たに追加された行為であつて、改正法の施行の際既に具体的に当該工事の一部に着手していた行為については届出を要しないこととされている。この既着手行為の範囲については、各行為について個々具体的な場合に応じて判断されるべきものであるが、鉱物の掘採、土石の採取等連続的な行為については、客観的に当該行為と一体性を有すると認められる範囲内に限定されるべきもので、具体的には、鉱物の掘採にあつては施業案の届出又は認可の範囲、土石の採取にあつては採取計画の認可の範囲を既着手行為の範囲として運用されたい。
  なお、公有水面埋立についても、これが連続的に行なわれるものである場合には、埋立免許の範囲を既着手行為の範囲とされたい。

第5 鉱業権の設定に関する協議

  陸域の普通地域における鉱物の掘採が今般の改正で届出を要する行為として追加されたことに伴い、鉱業法第24条の規定により鉱業権設定に関し、通商産業局長より都道府県知事に協議がなされた場合には、当該出願鉱区が陸域の普通地域にかかるものにあつては回答に先立ち十分調整を図られたい。

第6 都道府県立自然公園条例

  都道府県は、今般の改正の結果、自然公園法第42条の規定に基づき、条例で都道府県立自然公園の普通地域における届出事項の追加及び着手制限制度の創設ができることとなつたので、これらの趣旨に沿つてできるだけすみやかに現行条例の改正の手続を進められたい。

第7 その他

  以上のほか、届出手続規定等の整備が行われたが、改正法の施行の詳細については、必要に応じ、おつて各事項ごとに指示する予定である。