法令・告示・通達

自然環境保全法の運用について

  • 公布日:昭和49年6月10日
  • 環自企317号

[改定]

平成2年11月30日 環自企第640

(各都道府県知事宛自然保護局長通知)

 自然環境保全法(昭和47年法律第85号。以下「法」という。)及び自然環境保全法施行令(昭和48年政令第38号)は、昭和48年4月12日から、自然環境保全法施行規則(昭和48年総理府令第62号。以下「規則」という。)は昭和48年11月9日から施行されたところである。
 国においては、法に基づく自然環境保全行政の推進を図るため、法第5条の規定に基づく自然環境保全基礎調査を昭和48年度に各都道府県に委託して実施し、近く、その結果を取りまとめる予定であり、また、法第12条第1項の規定に基づく自然環境保全基本方針は、昭和48年10月26日に閣議決定し、11月6日に公表したところである。さらに、自然環境保全地域等選定要領、自然環境保全地域等保全計画作成要領及び「自然環境保全地域の特別地区内の木竹の伐採の方法及びその限度について」を定め、近く、原生自然環境保全地域及び自然環境保全地域の第1次指定を行うことを予定している。
 各都道府県においては、法に基づく都道府県自然環境保全条例の制定、改廃等の整備を行い、都道府県自然環境保全地域の指定の事務を鋭意進めているところと思われるがこれら自然環境保全基本方針並びに昭和49年6月10日に通知した都道府県自然環境保全地域保全計画作成要領ほか、下記事項に留意のうえ遺憾のないようにされたい。

目次

Ⅰ 基本的事項

  1.  第1 法の基本的目的について
  2.  第2 一般的事項
  3.  第3 自然環境保全基礎調査について
  4.  第4 自然環境保全基本方針について
  5.  第5 原生自然環境保全地域及び自然環境保全地域について
  6.  第6 都道府県自然環境保全地域について

Ⅱ 個別的事項

  1.  第1 原生自然環境保全地域及び自然環境保全地域の指定等について
    1.   1 指定の基準及び保全計画について
    2.   2 公聴会等について
  2.  第2 原生自然環境保全地域内における行為の制限等について
    1.   1 原生自然環境保全地域内における行為の許可について
    2.   2 原生自然環境保全地域内における行為の制限とならない行為について
  3.  第3 立入制限地区について
  4.  第4 自然環境保全地域特別地区及び海中特別地区について
    1.   1 許可基準について
      1.    (1) 特別地区の許可基準について
      2.    (2) 海中特別地区の許可基準について
    2.   2 一般的事項
  5.  第5 野生動植物保護地区について
  6.  第6 普通地区内における規制について
    1.   1 着手制限制度の創設
    2.   2 届出を要する工作物の基準について
  7.  第7 自然保護取締官の設置について
  8.  第9 原生自然環境保全地域及び自然環境保全地域における既着手行為の範囲について
  9.  第10 自然環境保全地域内における許可、届出等を要しない行為について
    1.   1 特別地区及び海中特別地区
      1.    (1) 特別地区内における森林施行及び保安林の区域又は保安施設地区との調整について
      2.    (2) 海中特別地区における漁業活動との調整について
    2.   2 普通地区
      1.    (1) 普通地区内おける保安林等との調整について
      2.    (2) 普通地区内における漁業活動との調整について
  10.  第11 都道府県自然環境保全地域について
  11.  第12 関係地方行政機関等との調整について
    1.   1 自然環境保全地域について
    2.   2 都道府県自然環境保全地域にかかわる協議等について

    Ⅰ 基本的事項

第1 法の基本目的について

  我が国は地形、地質、気候、その他の自然的諸条件に恵まれた美しい豊かな自然環境に恵まれ、こうした自然環境の中で、日本独自の繊細で秀れた文化と人間性が培われてきたが、近時の急速な社会、経済の発展に伴つて、ややもすると経済的利益が優先し、自然がもともと持つていた復元力あるいは浄化力を越えた無秩序な開発行為により、我が国の良好な自然環境が随所に改変され、破壊されるなど環境の悪化が急速に進行してきた。
  ところで、自然環境の保全に直接的あるいは間接的に関連する既存の法令は、自然公園法をはじめ各種の諸法令があるが、何れも法令の目的の点において、あるいは保護対象の点において、急速かつ全国的に進行しつつある自然環境の破壊を未然に防止する制度としては不十分である。
  本法律は、このような事態に対処し、自然環境の保全の基本理念を明らかにし、その他自然環境の保全に関し基本となる事項を定めるとともに、自然公園法、その他の自然環境の保全を目的とする法律と相まつて自然環境の適正な保全を総合的に推進することを目的として制定されたものである。

第2 一般的事項

  1.  1 自然環境の保全を図るためには、何よりもまず、広く国民が自然の価値を高く評価し、保護保全の精神を身に付いた習慣とすることが、あらゆる対策の第一歩であると考えられるので、法の施行に当たつては、その趣旨及び規定の内容を広く国民一般に周知させることはいうまでもないが、教育活動、広報活動等を通じて、自然環境の確保の必要性について国民の理解を深めるよう適切な措置を講じることが必要である。なお自然環境保全地域等の区域に係る住民及び利害関係者は、法の施行に直接関係があるので、これらの者に対する周知、理解方については、特に配慮されたい。
  2.  2 自然環境保全行政は、農林漁業、鉱業、電源開発、電気事業、ガス事業、都市計画、道路、河川、文化財、運輸、通信等に関する他の行政及び諸産業に関連するところが大きいので、これらとの調整が十分図られるよう、営林局、地方農政局、通商産業局、地方建設局及び教育委員会等と連絡を密にし、法の運用の円滑を期されたい。

第3 自然環境保全基礎調査について

  自然環境保全行政を推進していくためには、国土の自然環境の状況を把握しておくことが不可欠の前提であるが、これまでかかる面における調査に欠けるきらいがあつたので、法第5条において、自然環境の保全のために講ずべき施策の策定に必要な基礎調査に関する規定が設けられた。
  昭和48年度に実施した調査においては、これまでに行政の面で考慮されることが少なく、資料も少なかつた生態学的な意味での自然環境、学術的に重要な自然環境及び生活環境の保全のために必要な自然環境に焦点をあわせて実施されたものである。今後この調査の結果は、原生自然環境保全地域、自然環境保全地域及び都道府県自然環境保全地域の指定をはじめ、各種の自然環境保全施策の基礎資料として活用されることとなるが、この調査は国土の自然環境の概要を把握するためのものであり、個々の地域指定や各種の開発行為が自然環境に及ぼす影響に関する事前調査等のために用いるには、必ずしも充分なものではないので、必要に応じ、個別的な事例ごとに詳細な調査が必要である。

第4 自然環境保全基本方針について

  自然環境保全行政を推進するには、人間の社会生活における自然の役割、自然環境保全の意義を明らかにし、今後の自然環境保全施策の基本的な方向課題を展望するとともに、自然環境保全地域等の指定の考え方及び保全施策のあり方、並びに自然環境保全地域等と自然公園その他の自然環境の保全を目的とする法律に基づく地域との調整に関する基本方針を明らかにする必要があるが、先般閣議決定された自然環境保全基本方針は、かかる観点から定められたものである。
  この自然環境保全基本方針は、自然環境の保全についての国民の理解と協力を期待するとともに、国、地方公共団体等が行う自然環境保全施策や各種開発行為に対する1つの指針ともなるものであり、今後の自然環境保全行政の推進に当たつてはこの自然環境保全基本方針の趣旨を十分尊重されたい。

第5 原生自然環境保全地域及び自然環境保全地域について

  1.  1 原生自然環境保全地域及び自然環境保全地域は、自然環境を適正に保全し、将来の国民に継承していくという性格の地域であり、すぐれた自然の風景地を保護するとともにその利用を増進を図るという性格の地域である自然公園とは、その性格を異にする。
       このため、法附則第7条により加えられた自然公園法第40条の2の規定及び法第22条第2項の規定により各々は重複しないこととされた。したがつて法の運用に当たつては、原生自然環境保全地域及び自然環境保全地域の有する性格に特段の配慮を払い、法の適正な運用を図られたい。
  2.  2 原生自然環境保全地域及び自然環境保全地域の指定に当たつては、関係都道府県の意見を聞く等の措置をとることとされているが、原生自然環境保全地域においては、原生の状態を維持するため、自然環境保全地域においては、すぐれた自然環境を保全するためそれぞれ厳しい行為の制限を行つていくこととしており、また、当該地域における土地利用のあり方等と関連するところも大であるので、各都道府県に設置される自然環境保全審議会の意見を聞く等の措置を講じ、適正な指定がなされるよう配慮されたい。
  3.  3 原生自然環境保全地域の保全のための規制については、すべて環境庁長官が処理することとなつているが、自然環境保全地域の保全のための規制については、相当部分が都道府県知事に権限委任されているので、規制及び当該地域に関する保全計画に基づいて、また、前記1の趣旨を没却しないよう留意し、法の適正な運用に確保するよう配慮されたい。

第6 都道府県自然環境保全地域について

  都道府県における自然環境の保全については、従来各都道府県独自の条例に委ねられていたところであるが、都道府県自然環境保全地域の制度を設け、法律の根拠を要する事項及びこれに関連して必要な事項に限つて、法の明文の規定が設けられたものである。したがつて、各都道府県においては、法の規定に基づく条例を定めるほか、下記に留意して各都道府県における自然環境保全施策の総合的な推進に努めるとともに、都道府県自然環境保全地域の適正な保全に努められたい。

  1.  1 自然環境の保全を相互的に推進していくためには各都道府県における自然環境の実態を十分把握するとともに、各都道府県のおかれている自然的社会的諸条件に即した自然環境の保全を図つていくため、その基本的な方針を明らかにすることが重要であるので、かかる基本的な事項に特段の配慮を払い、これら施策の推進に努められたい。
       なお、都道府県自然環境保全地域の指定の基準その他の地域に係る自然環境の保全に関する施策の基準に関する基本的な事項、及び都道府県自然環境保全地域と自然公園、緑地保全地区等との地域調整については、法第12条の規定に基づいて48年度に決定された自然環境保全基本方針に定められているので、これら指定及び保全に当たつては、自然環境保全基本方針の趣旨を十分遵守されたい。
  2.  2 保全計画の決定及び保全事業の執行は、都道府県自然環境保全地域の保全上極めて重要な事項であるので、国の自然環境保全地域の場合に準じて措置されたい。
       なお、法が保全計画及び保全事業について特別な規定を設けていないのは、その決定又は執行自体は、法の根拠がなくても都道府県が本来有する機能に基づいて行うことができるものであるからであつて、保全計画及び保全事業を欠いた都道府県自然環境保全地域の保全を予想しているものではない。
  3.  3 都道府県自然環境保全地域の指定又は拡張及び都道府県自然環境保全地域に関する保全計画のうち特別地区の指定に関する事項又は当該地域における自然環境の保全のための規制に関する事項についての決定若しくは変更は、当該区域に係る住民及び利害関係人の生業及び財産権等に影響するところが大であるので、国の自然環境保全地域に関する場合に準じて、公聴会等の措置を講ずるよう配慮されたい。
       なお、法が公聴会等について特別な規定を設けていないのは、それがもつぱら手続上の問題にすぎないという考えによるものであり、公聴会等の慎重な手続きを欠いた都道府県自然環境保全地域の指定等を予想しているものではない。
  4.  4 都道府県は、都道府県自然環境保全地域の特別地区(野生動植物保護地区を含む。)の指定又は拡張をしようとするときは、法第49条の規定に基づく協議が必要であるので、予め、営林局、地方農政局、通商産業局、地方建設局、都道府県教育委員会等必要な関係地方行政機関と協議するとともに、環境庁と十分な連絡調整を図られたい。
  5.  5 都道府県自然環境保全地域における規制は、「自然環境保全地域の特別地区(野生動植物保護地区を含む。)又は普通地区における行為に関する第4章第2節の規定による規制の範囲内」に限られるものである。この場合の「第4章第2節の規定による規制の範囲内」とあるのは、法の第4章第2節に基づく総理府令の規定による規制の範囲内ということを当然に含むものであるから、都道府県自然環境保全地域の行為の許可基準、行為の制限の対象とならない行為及び許可、届出を要しない行為等に関する規則の制定に当たつては、自然環境保全法施行規則に定める範囲を逸脱しないよう留意されたい。
       なお、都道府県自然環境保全地域における規制については、自然環境保全地域における規制に準じた規制とするのが望ましいので念のため申し添える。

   Ⅱ 個別的事項

第1 原生自然環境保全地域及び自然環境保全地域の指定等について

 1 指定の基準及び保全計画書について

   原生自然環境保全地域及び自然環境保全地域の指定並びに保全計画については、48年度に決定された自然環境保全基本方針で、その指定方針及び保全施策が定められているので、その趣旨に則り、当該地域の特性に応じて指定及び決定を行うこととするが、具体的な基準は別途通知した「自然環境保全地域等選定要領」及び「自然環境保全地域等保全計画作成要領」において定めることとし、48年度に実施した「自然環境保全基礎調査」の結果を勘案しつつ進めていくこととする。

 2 公聴会等について

   自然環境保全地域を指定若しくは拡張する場合、又は自然環境保全地域に関する保全計画のうち、特別地区若しくは海中特別地区の指定に関する事項若しくは、当該地域における自然環境保全のための規制に関する事項について決定若しくは変更する場合において、縦覧に供された案について異議がある旨の意見書の提出があつたとき、又は広く意見をきく必要があると認めたときは、公聴会を開催するものとなつている。この公聴会の開催の方法等については、自然環境保全法施行規則(以下、「規則」という。)に定めているもののほか、下記に配慮して行うこととする。

  1.   ① 公聴会は、原則として、自然環境保全地域ごとに開催するものとする。
  2.   ② 公述人の選定にあたつては、異議のある旨の意見書を提出した者全員を公述人にする必要はないが、提出された意見書の要旨のうち、同趣旨のものについては、まとめてそのうちから適宜選定するとともに、その他広く各般の意見を聞くため必要と認めた者を選定するものとする。
  3.   ③ 開催場所及び開催時間は、公述人、住民及び利害関係人の参集の利便を十分考慮して定めるものとする。
        住民及び利害関係人からの正式な意見聴取は、公聴会において行われるものであるが、事前の十分な意見聴取及び調整が必要であると考えられるので、必要に応じて都道府県又は市町村ごとに事前に説明会を開催し、十分な理解、協力が得られるよう努めることとする。

第2 原生自然環境保全地域における行為の制限等について

 1 原生自然環境保全地域内における行為の許可について

   原生自然環境保全地域内においては、原則として各種の行為は禁止されているが、非常災害のために必要な応急措置として行う場合のほか、環境庁長官が学術研究その他の公益上の事由により特に必要と認めて許可した場合又は原生自然環境保全地域が指定され、若しくはその区域が拡張された際の既着手行為を当該行為又は区域の拡張の日から起算して3月以内に行う場合に限り行うことができるとされている。
   原生自然環境保全地域の特性にかんがみ、この許可の運用にあたつては厳しい方針で臨み、著しく人命等に危害を及ぼすおそれのある災害の防止に関する場合、学術研究に関する場合等で必要最小限のものについては、許可の判断の対象となりうるものとする。

 2 原生自然環境保全地域内における行為の制限の対象とならない行為について

  1.   (1) 原生自然環境保全地域内において行為の制限の対象とならない総理府令で定める行為は、概ね次のとおりである。
    1.     ① 砂防、地すべり防止、治水、その他国土の保全のための標識、くい、警報器、雨量観測施設等、小規模な工作物を設置することで、自然環境の保全に資するもの
    2.     ② 気象、地象等の観測施設等当該行為の場所が限定され、他に代替することが困難であり、かつ、小規模なもので、原生自然環境保全地域の自然環境の保全に支障を及ぼすおそれがないもの
    3.     ③ その他、森林の保護管理、野生鳥獣の保護増殖のための標識の設置、従来から行われていた漁業権又は入会権の行使等で、原生自然環境保全地域における自然環境の保全に支障を及ぼすおそれがないもの

第3 立入制限地区について

  立入制限地区は、原生自然環境保全地域における自然環境を保全するため、人の立入りまでも規制する必要がある場所であるので、規則第3条第5号及び第6号に掲げるような権利が存し、かつ、現にかかる権利に基づいて規則第3条第5号及び第6号に掲げるような行為が行われている実態が存する地域についても、立入制限地区の性格上立入を許容することが適当でないと考えられる。かかる点にかんがみ規則第3条第5号及び第6号に掲げる行為は、規則第5条の立入制限地区内への立入りの制限の対象とならない行為から除外したものである。
  ただし、立入制限地区の指定にあたつては、あらかじめ、規則第3条第5号及び第6号に掲げるような権利及びその権利の行使の実態の存否等を十分調査し、これらの推利の行使をさまたげることがないように特段の配慮を払うこととする。

第4 自然環境保全地域特別地区及び海中特別地区について

 1 許可基準について

   特別地区及び海中特別地区は、自然環境保全地域の核心的な地域であるので、特別地区及び海中特別地区における自然環境の保全に与える影響をできるだけ少なくするよう適切な許可の運用を行うことが必要であるので、その許可基準は、行為の種類、形態等の別にできるだけ具体的、かつ明確な基準を定めることとした。

  (1) 特別地区の許可基準について
    ① 工作物の新築等について
  1.      (ア) 仮設のもの、地下に設けるもの、公益性の高いもの及び農林漁業、その他生業に関するものは、審査の対象とする。
  2.      (イ) (ア)に掲げるもの以外の建築物については、自己の居住の用に供するために行われる場合等以外は原則として現存の建築物の敷地内又はその隣接地に限定して審査の対象とする。
           また、その規模については、高さ10メートル床面積の合計200平方メートルの範囲内のものを審査の対象とする。
  3.      (ウ) その他の工作物についても、高さ10メートル水平投影面積200平方メートルの範囲内のものを審査の対象とする。
          これらのことから、規模の大きい工場、店舗、ホテル、保養所、レジャー施設等は、認められない。
    ② 土地の形質変更について

      農業のための土地の開墾、試験研究、埋蔵文化財の発掘、河川管理等のために土地の形質を変更することは、審査の対象とする。
       したがつて、ゴルフ場造成、宅地分譲又は別荘地分譲等のための土地の形質の変更は認められない。

    ③ 鉱物の掘採、土石の採取について

      試験研究、地質調査、温泉ボーリングのためのもの、又は坑道掘りによる鉱物の掘採又は土石の採取、水路内での土石の採取等については、審査の対象とする。
      したがつて、露天掘りによる採石、鉱物の掘採は、認められない。

    ④ その他の行為について

      当該行為の方法及び規模等が行為の行われる土地及びその周辺の土地の区域等における自然環境の保全に支障を及ぼすおそれが少ない場合に限り審査の対象とする。

  (2) 海中特別地区の許可基準について
    ① 工作物の新築等について
  1.      (ア) 仮設のもの及び海底下に設けるものは審査の対象とする。
  2.      (イ) その他の工作物については、漁業に関するもの、公益性の高いもの及び試験研究等に関するもの等について、審査の対象とする。
    ② 海底の形質変更について

      試験研究、史跡名勝天然記念物の保存、船舶の交通安全等のために海底の形質を変更することは、審査の対象とする。

    ③ 鉱物の掘採、土石の採取について

      試験研究、地質調査、温泉ボーリング、海底下の鉱物又は土石の採取、船舶の交通安全等のためのものについては、審査の対象とする。

    ④ 熱帯魚、さんご等の捕獲若しくは殺傷又は採取若しくは損傷について

      教育又は試験研究のためのものについては、審査の対象とする。

    ⑤ その他の行為について

      当該行為の方法及び規模等が行為の行われる海域及びその周辺の海域等における自然環境の保全に支障を及ぼすおそれが少ない場合に限り審査の対象とする。

 2 一般的事項

  1.   (1) 許可を要する行為の処分を行うにあたつては、他の各種法令に関連する事項については、当該法令による処分との連絡を十分図り、許可、不許可について極力一括処理するよう努めるとともに、国土保全、気象、地象等の観測、史跡名勝天然記念物、公益事業、交通通信等の公益性を有するもの及び農林、漁業等については、その公益性又は生業の安定を十分考慮することとする。
  2.   (2) 自然環境保全地域及び港湾区域等の有する特性にかんがみ、自然環境保全地域と港湾法第2条第3項に規定する港湾区域、同法第2条第4項に規定する臨港地区、同法第37条第1項に規定する港湾隣接地域、同法第56条第1項に規定する知事が公告した水域、公有水面埋立法施行令第32条第4号に規定する甲号港湾及び乙号港湾及び港則法第2条に規定する港の区域とは重複しないこととしている。なお、このため規則第17条第1号ハ及び第23条第1号ハにおいては港湾施設等を規定しなかったものである。
  3.   (3) 特別地区及び海中特別地区においては、鉱物の掘採は規制の対象となっていることにかんがみ、鉱業法第24条の規定に基づいて通商産業局長から都道府県知事に協議があったときは、設備設計書の変更、その他の方法によって自然環境保全地域の保全上重大な支障を除去することが可能な場合には、かかる措置を十分採ったうえで、協議に応じることとされたい。
  4.   (4) 法第25条第4項第3号に規定する湖沼又は湿原の指定及び同項第4号に規定する乗入れ規制地区の指定は、法令上は保全計画に基づかなくても指定はできることとなっているが、当該湖沼又は湿原の周辺1キロメートルの区域内及び当該乗入れ規制地区の地区内において、特別の規制が加わることにかんがみ、これらの指定は保全計画に基づいて行うこととする。

第5 野生動植物保護地区について

  1.  1 野生動植物保護地区は、特別地区内における特定の野生動植物の保護のために、保護すべき野生動植物の種類ごとに指定するものであるが、当該野生動植物の保護地区において保護すべき野生動植物は、複数であることもありえる。
  2.  2 野生動植物保護地区と鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律に基づく鳥獣保護区特別保護地区とは、その保護対象が相互に重複する場合がありうるが、この場合鳥獣保護については、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の体系に基づいて保護していくことを基本とするが、当該自然環境を保護する必要がある場合には、両地区を重複して指定することとする。
  3.  3 野生動植物保護地区においては、何人も、当該保護に係る野生動植物(動物の卵を含む。)を捕獲し、若しくは殺傷し、又は採取し、若しくは損傷してはならないが、規制の対象とならない行為のうち、総理府令で定めているものの概要は次のとおりである。
    1.   (1) 特別地区内における行為の制限の対象とならない国又は地方公共団体の行為に係るもの
    2.   (2) 工作物の新築等、木竹の伐採、農林漁業活動等のうち、特別地区内における許可等を要しないものに係るもの
    3.   (3) その他、国又は地方公共団体の試験研究機関が行う試験研究
          大学における教育又は学術研究等に係るもの

第6 普通地区内における規制について

 1 着手制限制度の創設 

   普通地区内において届出を要する行為をしようとする場合には、自然公園法及び自然環境保全法の1部を改正する法律(昭和48年法律第73号)により、原則として、その届出をした日から起算して、30日を経過した後でなければ当該届出に係る行為に着手してはならないこととされた。これは自然公園の普通地域において届出制の趣旨が十分活用され難かった点を勘案して、着手制限制度を創設したことに伴い、併せて自然環境保全地域の普通地区についても整備したものであり、これが運用については、先に通達した「自然公園法及び自然環境保全法の1部を改正する法律の施行について(昭和48年12月18日環自企第682号各都道府県知事宛環境事務次官依命通達)第3着手制限の創設」を参照されたい。

 2 届出を要する工作物の基準について

   普通地区内については、工作物の新築等、土地の形質の変更、鉱物の掘採又は土石の採取、水面の埋立て又は干拓等は届出を要するとされているが、そのうち、工作物の新築等については、総理府令で定める規模の基準をこえるものとされており、この総理府令の概要は、次のとおりである。

  1.   (1) 陸域にあつては、建築物の高さ10メートル又は床面積の合計200平方メートル、道路幅員2メートル、鉄塔、煙突等は高さ30メートル、ダムは高さ20メートル、送水管、ガス管等は長さ200メートル又は水平投影面積200平方メートル、その他の工作物は、高さ10メートル又は水平投影面積20平方メートルとされている。
  2.   (2) 海域にあつては、おおむね陸域における半分の規模としている。

第7 自然保護取締官の設置について

  1.  1 原生自然環境保全地域及び自然環境保全地域内において、自然環境の保全を図つていくためには、機動的、かつ、効果的な処置を行うことが望ましいが、このためには、中止命令等の権限を自己の名で直接行使しえる自然保護取締官を適切に配置することが有効であると考えられる。このような観点から自然保護取締官の権限として政令第4条第2項及び第3項に規定されているものは、違反行為を発見した場合等に現場において直ちに発することが有効であると考えられる中止命令及びこれに関連して必要な原状回復命令その他必要措置命令等の権限である。
  2.  2 自然保護取締官は、前述したとおり、違反行為者に対して自己の名において中止命令、原状回復命令その他必要措置命令の権限を行使しうるので、その権限の行使が恣意に流れず適正に行われるよう、その任命にあたつては、法令上定められた学識経験上の資格を有することはもちろん、その人格等についても特段の配慮を払うこととする。

第9 原生自然環境保全地域及び自然環境保全地域における既着手行為の範囲について

  原生自然環境保全地域、自然環境保全地域の特別地区、海中特別地区が指定された際既に具体的に当該工事の1部に着手していた行為については、法第17条第4項、第25条第8項及び第9項並びに第27条第7項及び第8項の規定の適用があり、法的安定の観点から配慮が払われている。この既着手行為の範囲については、各行為について個々具体的な場合に応じて判断されるべきものであるが、鉱物の掘採、土石の採取等連続的な行為については、客観的に当該行為と一体性を有すると認められる範囲に限定されるべきもので、具体的には、鉱物の掘採にあつては施業案の届出又は認可の範囲、土石の採取にあつては、採取計画の認可の範囲、また、電源開発については工事施行認可又は工事実施認可の範囲を既着手行為の範囲として、運用することとする。    また、公有水面埋立についても、これが連続的に行われるものである場合には、埋立免許の範囲を既着手行為の範囲として運用することとする。

第10 自然環境保全地域内における許可、届出等を要しない行為について

 1 特別地区及び海中特別地区

  1.   (1) 特別地区内における森林施業及び保安林の区域又は保安施設地区(以下「保安林の区域」という。)との調整について
    1.     ① 特別地区が森林の区域に指定される場合にあつては、自然環境を破壊しない限度において、健全な林業経営が持続できるよう、特別地区を指定し、若しくは拡張する場合又は特別地区に係る保全計画を変更する場合に、あらかじめ、その区域内において許容しうる木竹の伐採について定め、自然環境の保全と健全な林業経営との調和を図つておくことが適当と考えられるので、かかる観点から法第25条第3項により、環境庁長官の許可を受けないで行うことができる木竹の伐採の方法及びその限度を農林大臣と協議して指定することとしたものである。
    2.     ② 特別地区と保安林の区域が重複して指定された地域にあつては、法第17条第1号若しくは第3号に掲げる行為で、森林法第34条第2項の許可を受けた行為についても、法第25条の許可は要しないとされている。
            これは森林法第34条及び第44条の許可の運用をみると、保安林等の機能を失わしめるような相当大規模な行為について許容されることはなく、保安林等として存続させることを前提とした小規模な行為又は仮工作物の設置等の暫定的な行為に限り許容されることとされているので、重ねて自然環境保全法上の許可を受けることを要することとしなくても、とくに自然環境の保全に支障を及ぼすものではないと考えられることによるものである。
            なお、保安林等の区域において、相当程度大規模な行為の許可申請があり、かつ、他の公益からみて、保安林等として存続させるよりも当該行為を優先させるべきものと判断され保安林等の指定が解除された場合には、当該自然環境保全法にその可否の判断が任せられることになる。
            なお、法第25条第4項但書の中段に掲げている行為のうちには、規則第19条第8号イに掲げる行為は含まれないと解されるので総理府令において許可を要しないと明記したものである。
  2.   (2) 海中特別地区における漁業活動との調整について
         海中特別地区と漁業活動との調整については、海中特別地区の自然環境の保全と健全な漁業活動との調整を図り、海中特別地区における自然環境の円滑な保全を確保するため、海中特別地区の自然環境の重要な構成要素である熱帯魚、海そう、その他これらに類する動植物で、海中特別地区ごとに環境庁長官が農林水産大臣の同意を得て指定するものの捕獲又は殺傷若しくは損傷については、環境庁長官の許可に係らしめることとするが、法第27条第3項第1号から第3号まで及び第6号に掲げる行為で漁具の設置その他漁業を行うために直接必要とされるものについては、法第27条第3項により許可は要しないこととしたものである。
  3.   (3) 特別地区、海中特別地区内における行為の制限の対象とならない国又は地方公共団体の行為及び許可等を要しない行為の総理府令で定められるものの概要は、おおむね次のとおりである。
    1.     ① 原生自然環境保全地域内において行為の制限の対象とならない行為
    2.     ② 国土保全施設、その他公益性の高い施設であって、既存のものの改築又は増築
    3.     ③ 農業、林業又は漁業を営むために行う行為のうち、自然環境保全地域の自然環境の保全に支障を及ぼさないもの、その他通常の管理行為又は軽易行為のうち自然環境保全地域の自然環境の保全に支障を及ぼさないもの

 2 普通地区

  1.   (1) 普通地区内における保安林等との調整について
         普通地区と保安林等の地域が重複している場合には、第10-1-(1)-②で述べた趣旨にかんがみ、法第28条第一項第1号から第3号までに掲げる行為で、森林法第34条第2項本文の規定に該当するものを保安林等の区域内において行う場合には、すべて森林法上の体系に任せ、自然環境保全法上の規制には係らしめないこととした。
         この場合、規則第29条に規則第19条第8号イに掲げる行為を掲げていないのは、法第28条第1項ただし書前段に掲げる行為で森林法第34条第2項本文の規定に該当するものには、森林法第34条第2項各号に掲げる場合に係る行為も含まれることによるものである。
         なお、第10-1-(1)-②で述べたところと同様、保安林等が解除された場合には、当然、自然環境保全法にその可否の判断が任せられることとなる。
  2.   (2) 普通地区内における漁業活動との調整について
         海域に普通地区が指定されている場合には、漁業活動との調整を図るため、法第28条第1項第1号から第3号までに掲げる行為で海面内において漁具の設置その他漁業を行うために直接必要とされるものについては、届出を要しないこととしたものである。
  3.   (3) 普通地区内において行為の制限の対象とならない行為及び届出等を要しない総理府令で定める行為の概要は、おおむね次のとおりである。
    1.     ① 特別地区又は海中特別地区内において、行為の制限の対象とならないとされた国又は地方公共団体の行為
    2.     ② ①以外の工作物の新築、改築又は増築については、特別地区又は海中特別地区における許可等を要しないもの
    3.     ③ 土地(海底を含む。)の形質の変更、鉱物の掘採又は土石の採取にあつては、特別地区又は海中特別地区内における許可基準の対象としたもののうち、普通地区内における自然環境の保全に支障を及ぼすおそれのないもの
    4.     ④ 水面の埋立て、干拓にあつては、面積が200平方メートルをこえないものとし、海面の場合にあつては、100平方メートルをこえないもの
    5.     ⑤ 特別地区内の河川、湖沼等の水位、水量に増減を及ぼさせる行為については、特別地区内における田畑内の池沼等に及ぼさせるもの及び既着手行為に係る工作物の操作によるもの
    6.     ⑥ 農業、林業又は漁業を営むために行う行為のうち、住宅、一定規模以上の工作物の新築等、宅地の造成、土地の開墾、水面の埋立て、干拓等以外の行為

第11 都道府県自然環境保全地域について

  1.  1 都道府県自然環境保全地域については、各都道府県のおかれている地理、気象等の自然条件、あるいは経済活動等の社会的条件等が多様性を有していることにかんがみ、条例で定めるところにより、その区域における自然環境保全地域に準ずる土地の区域で、その区域の周辺の自然的社会的諸条件からみて当該自然環境を保全することが特に必要なものを指定することができるとされている。したがつて各都道府県の自然的社会的諸条件を十分勘案し、その実情に応じ当該地域の自然環境を保全していくことが可能な程度の一定のまとまりのある自然環境を有する土地の区域を指定するよう配慮されたい。
  2.  2 都道府県自然環境保全地域における保全の運用に当たつては、自然環境保全地域における規制に準ずる規制を定めることが適当であると考えられるので、自然環境保全地域における保全の運用について述べたところに準拠して、適正な運用がなされるよう配慮されたい。
  3.  3 都道府県自然環境保全地域における森林施業及び保安林等との調整については、下記の点に配慮されたい。
    1.   (1) 都道府県自然環境保全地域内に特別地区を指定した場合においては、自然環境保全地域の特別地区における行為に関する規制の範囲内において必要な規制を定めることができるとされているが、森林施業との調整を図るため、特に木竹の伐採については、国の自然環境保全地域の特別地区における場合に準じて、あらかじめ、当該特別地区内において許容できる木竹の伐採の方法及びその限度を保全計画に基づいて指定しておくことが適切であると考えられる。
           この場合、森林施業計画及び地域施業計画等との調整が必要である場合も予想されるので、関係行政機関等と十分協議するよう、格段の配慮をされたい。
    2.   (2) 都道府県自然環境保全地域が、保安林等との区域と重複している場合の保安林等との調整については、国の自然環境保全地域の特別地区(野生動植物保護地区を含む。)又は普通地区における行為に関する規制の範囲内において必要な規制を定めることができるとされているので、法第25条第4項ただし書及び法第28条第一項ただし書の例により森林法に基づく規制との調整について定めることが必要であるので留意されたい。
  4.  4 都道府県自然環境保全地域の管理については、保全計画に基づいて適正に行われる必要があるが地域の実情に応じ、現地管理体制について配慮するとともに、必要に応じ、国の自然保護取締官に準じて自然保護取締員を設置することが適当であると考えられるが、その資格及び権限については国の自然保護取締官に準ずることとし、その運用について遺憾のないようにされたい。
  5.  5 法第58条の規定は、地方自治法第14条第5項に規定する法令の特別の定めに該当する者であり、都道府県自然環境保全地域に関する条例には条例に違反した者に対して、その違反行為の態様に応じ、それぞれ、法第53条から第57条までに定める罰則の範囲をこえない限度において罰則を設けることができる。この場合、法の規定に準じた罰則を設けることが適切と考えられるが、各都道府県の他の条例の罰則に関する規定との均衡を勘案して定めても差支えない。
  6.  6 都道府県自然環境保全地域の地域指定及び保全計画についての具体的な技術的細則については、別途通知した「都道府県自然環境保全地域指定基準」及び「都道府県自然環境保全地域保全計画作成要領」を参照されたい。

第12 関係地方行政機関等との調整について

   自然環境保全行政は、他の公益、農林漁業その他の諸産業及び財産権に関連するところが大きいので自然環境保全法に関する都道府県の事務の遂行にあたつては、以上に述べたほか、次の点に留意し、他の公益、農林漁業その他の諸産業及び財産権との調整について配慮されたい。
   この場合、自然環境保全行政の重要性にかんがみ本来の自然環境保全行政の趣旨を没却し、安易な調整の措置を講ずることのないよう十分配慮されたい。なお、連絡調整すべき関係地方行政機関等とは、概ね、営林局、地方農政局、通商産業局、地方建設局及び都道府県教育委員会等である。

  1 自然環境保全地域について

  1.    (1) 法第25条から第30条までに規定されている環境庁長官の権限のうち、法第43条の規定に基づき都道府県知事に委任されている権限の行使に際して、他の行政に重大な影響を及ぼすおそれのある行政処分等を行う場合には、関係地方行政機関と十分連絡調整をするよう配慮されたい。
  2.    (2) 前記権限の行使に際し、審査請求等の不服申立てが予想される場合、不許可処分を行い、若しくは重大な条件を附することが適当と認められる行為であつて損失補償の対象となることが予想される場合、その他自然環境の保全上重大な影響が予想される場合にあつては、あらかじめ、当庁と連絡を図られたい。

  2 都道府県自然環境保全地域にかかわる協議等について

  1.    (1) 法第49条の協議にあつては、事前に環境庁と十分連絡をとるとともに、あらかじめ、関係地方行政機関と十分協議を行うこととされたい。
  2.    (2) 都道府県自然環境保全地域の指定、若しくは区域の拡大又は保全計画の決定若しくは変更については、都道府県の関係部局の間において十分連絡協議のうえ、必要に応じ、あらかじめ、関係地方行政機関と連絡し、調整をすることとされたい。
          なお、国有林野にかかわる地域の指定については、当該国有林野の管轄営林局に対し、あらかじめ協議することとされたい。
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