法令・告示・通達

自然環境保全法による都道府県自然環境保全地域の指定等と農林漁業との調整等に関する方針について

  • 公布日:昭和49年12月20日
  • 49総887号

(各都道府県知事あて農林大臣官房長通達)

 自然環境保全法(昭和四七年法律第八五号。以下「法」という。)の施行に伴い、国においては自然環境保全地域等を指定し又はその区域の拡張を行ない、都道府県においては条例の定めるところにより都道府県自然環境保全地域を指定し又はその区域の拡張を行つて、当該区域内における行為の制限等を行うことができることとなつた。
 法の運用については、既に自然環境保全基本方針(昭和四八年総理府告示第三〇号。以下「基本方針」という。)が公表され、「自然環境保全法の運用について」(昭和四九年六月一〇日付け環自企第三一七号)、「自然環境保全地域選定要領」(昭和四九年六月一〇日付け環自企第三二二号)、「自然環境保全地域等保全計画作成要領」(昭和四九年六月一〇日付け環自企第三二二号)、「都道府県自然環境保全地域の指定基準」(昭和四九年六月一〇日付け環自企第三二二号)、及び「都道府県自然環境保全地域保全計画作成要領」(昭和四九年六月一〇日付け環自企第三二二号)が通達されているところであるが、法に基づく指定又はその区域の拡張の対象となる区域の大部分は、農林漁業と密接な関係をもつものであり、農林漁業の計画的振興、国土保全等の諸施策に重大な関連をもつものである。
 このような観点から、法においては自然環境の保全に当たつては、関係者の所有権その他の財産権を尊重するとともに、国土の保全その他の公益との調整に留意しなければならない(法第三条)こと、法に基づく指定の区域内での行為の規制に当たつては、当該地域に係る住民の農林漁業等の生業の安定及び福祉の向上に配慮しなければならない(法第三五条、第四六条)ことが明らかにされている。
 また、国は、自然環境を保全することが特に必要なものを所定の手続を経て、自然環境保全地域等として指定することができる(法第一四条、第二二条、第二五条、第二六条、第二七条)とされ、都道府県は、自然環境が、国の指定に係る自然環境保全地域に準ずる土地の区域で、その区域の自然的社会諸条件からみて、当該自然環境を保全することが特に必要なものを都道府県自然環境保全地域等として指定することができる(法第四五条、第四六条)とされている。この場合において、都道府県自然環境保全地域等の区域の設定は、保全対象を保全するのに必要な限度において行うものとされ(基本方針第二部五の(一))、かつ、当該区域内における行為の規制は、国の指定に係る自然環境保全地域に係る行為規制の規定の範囲内において定めること(法第四六条)とされている。
 なお、都道府県自然環境保全地域の特別地区(野生動植物保護地区を含む。以下同じ。)の指定等については、都道府県は、環境庁長官に協議し、同長官は、関係行政機関の長に協議しなければならないこと(法第四九条)を定め、所要の調整が十分確保されることが期されている。
 以上の趣旨に即し、「自然環境保全法の運用について」においても、既に「自然環境保全行政は、農林漁業(中略)等に関する行政および諸産業に関連するところが大きいので、これらとの調整が十分図られるよう(中略)法の運用の円滑を期されたい。」(第二の二)
とされているところであるが、更に留意すべき事項について、別添のとおり都道府県自然環境保全地域の指定等と農林漁業との調整等に関する方針を定めたので、遺憾のないよう対処されたい。

別表
  自然環境保全法による都道府県自然環境保全地域の指定等と農林漁業との調整等に関する方針

第一 基本的留意事項
 (基本的な考え方)

  1.  一 農林漁業は、自然循環への人為の合理的かつ継続的なかかわり合いによつて、食糧、林産物等を生産するとともに、このかかわり合い自体が森林地帯、農山漁村等における国土の保全、水資源のかん養、自然環境の維持造成等の多面にわたる積極的な環境保全機能を有するものであり、それが有する環境保全の役割を高く評価し、その健全な育成を図る必要がある。
       また、農林漁業は農山漁村等における地域経済の発展のうえで特に重要な役割を果たしており、かつ、その担い手たる地域住民が農林漁業活動を通じ、同時に環境保全の主要な担い手となつていることにかんがみると、効率的な農林漁業の推進を通じて当該住民の生業の安定と福祉の向上を図ることに十分の配慮をすることが必要である。
     (区域の設定)
  2.  二 都道府県自然環境保全地域の指定又は区域の拡張に当たつては、自然環境保全法施行令第五条で定める自然環境保全地域の最低面積の趣旨にのつとり、当該保全地域の保全要件を維持するため面積的にまとまりのある一団地が確保されることとされていること(都道府県自然環境保全地域の指定基準の第三要件参照)にかんがみ、自然環境保全地域の最低面積基準に準ずるとともに、これが、保全すべきものであるか否か、保全対象を保全するために必要な限度であるか否か、農林漁業活動に障害がないか否かの十分な検討を行うものとする。
  3.  三 特別地区は、保全対象を保全するために必要不可欠な核となるものについて、その必要な限度において指定を行うものであり、また、普通地区は、特別地区とその周辺地域との緩衝地帯としての役割をもつものである(基本方針第二部四の(一)及び(三)参照)。従つてこれらの地区の設定は、この趣旨に即して行うよう十分留意するものとする。
     (調整)
  4.  四 都道府県自然環境保全地域の指定若しくは区域の拡張又は保全計画の決定若しくは変更(以下「指定等」という。)に当たつては、あらかじめ、土地利用、水面の利用、農用地の造成、森林資源の造成その他の諸施策の実施状況、今後の計画等をは握するとともに、当該対象となる区域及びその周辺の地域の土地条件、植生、農林漁業の状況等を詳細には握して調整を図る必要がある。なお、これらのは握に当たつては、当面の動向のは握に留まることなく、長期的な展望を踏まえて行うよう努めるものとする。
     (調整手続)
  5.  五 指定等に当たつては、次の手続により協議・調整を行うものとする。
    1.   (1) 都道府県自然環境保護担当部局は、都道府県農林水産担当部局との間で十分協議を行うものとする。
    2.   (2)
      1.    ア 都道府県農政担当部局は、都府県にあつては管轄地方農政局(沖縄県にあつては、沖縄総合事務局。以下同じ。)、北海道にあつては、農林省関係局に(1)の協議の結果及びそれに至る経過を速やかに連絡するものとする。
      2.    イ 連絡を受けた管轄地方農政局は、必要に応じ、都府県と十分協議・調整を行うものとする。
      3.    ウ 管轄地方農政局はイの協議・調整を行つた結果及び意見をとりまとめ、農林本省関係局に報告するものとする。
    3.   (3)
      1.    ア 都道府県は、対象となる地域に国有林野が含まれる場合には当該国有林野の管轄営林局と協議するものとする。
    4.   (4) 都道府県林業水産担当部局は、(3)の協議に係る事項を除き、(1)の協議の結果及びそれに至る経過を、指定等を行う前あらかじめ林野庁又は水産庁に十分説明するものとする。

第二 個別的留意事項

  農林漁業との調整等に当たつては、基本的留意事項に即するとともに、特に以下の事項に留意して行うものとする。
 (農用地等との調整)

  1.  一 特別地区の指定は、既存する農地、採草放牧地又はこれらの造成予定地並びにこれら利用のため必要な土地改良施設、農林漁家集落、農林漁業関係試験研究機関の施設等を極力避けて行うこと。また、農業振興地域内の農用地区域については、当該区域の農業振興上の重要な役割及び農業活動がもつ環境保全機能を評価しつつ、十分に調整を行うこと。
     (関係者との調整)
  2.  二 指定等に係る農林漁業者に対しては、あらかじめ、自然環境保全関係法令等について十分に周知徹底を図るとともに、調整に関する意向の把握に努めること。また、農業委員会その他の農林漁業関係機関及び団体と密接な連絡をとり、意見の一致をみるよう十分に調整を図ること。
     (国土保全機能等との調整)
  3.  三 森林は、適切な森林施業を通じて自然環境の保全にも積極的な役割を果たしていくものである。先般施行された森林法及び森林組合合併助成法の一部を改正する法律(昭和四九年法律第三九号)
    による改正後の森林法第四条及び第五条は、全国森林計画及び地域森林計画は、良好な自然環境の保全及び形成その他森林の有する公益的機能の維持増進に適切な考慮が払われたものでなければならないと、自然環境の保全及び形成と調和のとれた森林施業を行つていくことを明定している。従つて、指定等に当たつては、この趣旨に十分即して調整することが必要であり、特に以下の点に格別の留意をして行うこと。
    1.   (1) 地域森林計画において定められている「老齢過熟林等の理由により伐採を促進すべき森林」及び「樹種又は林相を改良すべき森林」は、森林施業を通じて森林の有する経済的機能と国土の保全等の公益的機能を総合的かつ高度に発揮させるために当該森林計画の計画期間内に積極的な施業の実施を計画しているものであるので、その旨に十分留意して調整を行うこと。
    2.   (2) 都道府県知事の認定に係る森林施業計画は、積極的な投資を伴う施業によつて当該計画の対象となつている森林の保続培養、森林生産力の増進、林業経営の保続等を指向するものであるので、当該計画制度の趣旨に沿うとともに、当該森林所有者の意向も十分踏まえて、指定等又は伐採の方法及び限度につき調整を行うこと。
    3.   (3) 森林法第一〇条第一項第四号又は第五号に該当する場合に係る森林(自家の生活の用に充てるための森林等)を含む指定等に当たつては、当該森林所有者の生活の安定に十分な配慮をして調整を行うこと。
    4.   (4)
      1.    ア 保安林及び保安施設地区(以下「保安林等」という。)は、森林の維持造成と適正な森林施業の確保によつて、水源かん養、災害防備等の公益目的を達成するために指定されたものであるので、これらを含む指定等に当たつては、その指定目的に応じた機能の向上を図るうえで支障を生じないよう十分に調整を行うこと。
      2.    イ 特に、保安林等であつて、崩壊地の周辺で放置すれば崩壊の拡大が予想されるもの、老齢過熟林となつているもの、風害、火災等の被災を受けているもの、土壌の条件が劣悪なためなどの原因で不良な林相を呈しているもの(一〇年以内に不良な林相を呈することが見込まれるものを含む。)等に係る保安機能の維持向上のための林相改良に伴う伐採については、その円滑な実施が確保されるよう、あらかじめ、都道府県自然環境保全地域保全計画において当該伐採の許可を不要とするなど、所要の方法及び限度を定める等の調整を行うこと。
      3.    ウ また、森林法施行規則第二二条の一一第一号に規定する保安施設事業等には、法第二五条第一〇項の適用により同条第四項及び第七項の規定が適用されないこととなつているので、都道府県自然環境保全地域に係る保安施設事業等についてもこれに準じて措置されることとなるが、当該事業の実施に伴い除去されるべき立木竹の伐採等についても、なお環境保全上の観点から、十分な配慮を加えること。
    5.   (5) 法施行令第五条第四項に規定する「樹齢が特に高く、かつ、学術的価値を有する人工林」とは、樹齢が一〇〇年以上であつて、学術的価値が高く、かつ、林業生産を目的としない人工林の区域であることとされている(前掲自然環境保全地域選定要領の〔二〕の第一要件の八参照)ことに留意すること。
    6.   (6) 森林法第一〇条の規定に基づき届出のあつた立木の伐採が自然環境保全地域に関する保全計画及び都道府県自然環境保全地域保全計画において許可を受けないで行うことができるとされている立木の伐採の方法及び限度内において行われるものであるか否かを判断し、必要に応じて、森林法第一〇条の五の勧告を行う等の措置を講ずること。
     (野生動植物)
  4.  三 法第四六条に規定する野生動植物保護地区に係る「野生動植物」には、通常の漁業の対象となる水産動植物は含まないことに留意すること。
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