法令・告示・通達

公害紛争処理法の一部を改正する法律及び公害紛争処理法施行令の一部を改正する政令の施行について

  • 公布日:昭和49年11月1日
  • ・公調委298号

(都道府県知事あて公害等調整委員会委員長通達)

 標記の改正法令は、公害苦情相談員の設置に関する改正規定を除き、昭和四九年一一月一日から施行される。これらの改正の趣旨は、最近における公害紛争の激化、公害苦情の増加等に対処するため、公害紛争処理制度の充実強化を図ることにある。法令改正の主な内容及び留意すべき事項等は、下記のとおりであるので、十分に了知され、遺憾のないようにされたい。

第一 管轄(政令第一条第二号関係)

  法第二四条第一項第一号のいわゆる重大事件のうち生活環境被害に関するものについては、動植物又はその生育環境に係る被害に関する紛争であつて当該被害の申請額が五億円以上であるものと定められた。これは、実務上、動植物被害と生育環境被害との限界が明確でない場合もあるので、両者を総合して管轄を定めることとしたものである。したがつて、漁業被害の例についていうと、魚のへい死損傷による損害のほか漁場の荒廃による漁獲減、養殖不能等による損害も含め、申請額が五億円以上である場合に中央委員会の管轄となる。

第二 あつせん

 一 「あつせん」と「和解の仲介」の相違(法第一条、第二八条第一項、第二九条関係)

   今回の法改正により「和解の仲介」の制度は「あつせん」の制度に改められたが、両者はともに原則として民法上の和解による紛争の解決を目ざすものであるという点では同じであるが、「あつせん」は「和解の仲介」より範囲が広く、当事者の交渉や話合いが円滑に行われるように仲介する行為一切を含むものであり、話合いの場の提供、争点の整理等を含む幅の広い概念である。
   あつせん委員の人数は三人以内とされているので、事件の性質、内容に応じて一人ないし三人のあつせん委員が指名されることになる。

 二 中央委員会におけるあつせん(法第三条、第二四条、第二七条第五項関係)

   あつせんは、従来の和解の仲介と異なり中央委員会においても行うので、都道府県においては、申請に関する窓口指導に当たつては、この点に留意されたい。
   あつせんの管轄は、調停及び仲裁の管轄と同じであるが、中央委員会においてもあつせんを行うことに伴い、連合審査会の設置についての協議がととのわない場合には、当該あつせんは中央委員会において行うことになる。

 三 職権によるあつせん

  1.   (一) 職権によるあつせんの開始(法第二七条の二第一項、第二項関係)
        審査会による職権あつせんは、都道府県知事の要請により行われるものではあるが、審査会としては、実情を調査し、当該紛争が法第二七条の二第一項所定の要件に該当するか否か検討した上、当事者の意見も勘案して、その議決により決すべきものである。
        職権によりあつせんを開始するに当たつては、法第二七条の二第一項所定の要件、すなわち、「被害の程度が著しく、その範囲が広い公害に係る民事上の紛争」であること、「当事者間の交渉が円滑に進行していない」こと及び「当該紛争を放置するときは多数の被害者の生活の困窮等社会的に重大な影響がある」ことという三つの要件が全て満たされていることが必要である。
        当事者の意見は、法律上は審査会を拘束するものでないが、当事者の意思のいかんは、あつせんの性格上、十分しんしやくすべきである。なお、当事者の意見聴取は、職権によりあつせんを開始するための法律要件であるから、当事者の範囲を十分調査した上で手続を進める必要がある。
        なお、知事と審査会とは、職権あつせん制度が設けられた趣旨を生かし、常時緊密な連絡をとつてあつせん開始の時期を失することのないよう十分に配慮されたい。
  2.   (二) 管轄の協議(法第二七条の二第三項関係)
        職権によるあつせんは、その性格上、特に機動的、能率的に行う必要性が高いから、法第二七条の二第三項の規定による協議は、特に迅速に行わなければならない。
        なお、審査会を設置していない府県の管轄する紛争については、中央委員会が当該府県知事と協議し、職権によるあつせんを行うことができることとされているので、当該府県においては、常時紛争の状況を把握し、中央委員会との連絡を密にされたい。
  3.   (三) 職権による調停への移行(法第二七条の三関係)
        職権による調停に移行するのが相当と認める場合とは、一般的には、因果関係、損害額その他の問題について本格的な資料収集を行い、それに基づいて調停案を提示することにより紛争解決を図るのが適当であると認められる場合である。調停に移行した後の手続は、申請による調停手続と同じである。
        なお、申請によるあつせんに係る紛争については職権で調停に移行できないこと及び職権で調停に移行する場合は申請手数料は不要である(法第四五条)ことに留意されたい。
  4.   (四) 職権によるあつせん又は調停の開始の通知(政令第九条第二項関係)
        審査会は、職権によりあつせん又は調停を開始する場合には、政令第九条第二項各号に掲げる事項を記載した書面をもつて、当事者にその旨を通知しなければならない。

 四 和解の仲介に関する経過措置(改正法附則第二項ないし第四項関係)

   現在係属している和解の仲介は、申請時にさかのぼつてあつせんとみなされる。

第三 調停前の措置及び仲裁前の措置(法第三三条の二、第四二条関係)

  調停前の措置とは、調停手続中において、調停の内容たる事項の実現を確保し、手続の円滑な進行を図るための中間的な仮の措置であり、その具体的な内容としては、被害者が生活に困窮している場合のさしあたりの医療費の仮払い、被害拡大のおそれがある場合の原因と目される行為の一時中止(例えば、振動によつて家屋損壊のおそれがある場合の作業方法の変更又は作業の一時中止)、加害者が賠償金の支払いに充てることのできる唯一の資産の処分の中止等が考えられる。これらの措置についての勧告には、法律上の強制力はなく、任意の履行を期待するものであるから、勧告に当たつては、被害者の救済の緊急性、将来の合意成立の見込み、その予想される内容等を十分に勘案し、併せて勧告を受ける当事者の理解と協力を得るように努める必要がある。
  仲裁前の措置についても、ほぼ同様であるが、仲裁はその性格上、勧告の内容となる措置は、仲裁の内容たる事項の実現を確保するための措置が主たるものとなる。

第四 調停案の公表(法第三四条の二関係)

  調停案を公表するのが相当と認められる場合とは、事案の社会性、公共性にかんがみ、調停案の内容を社会一般に正確に周知させることにより当事者の判断に資するのが適当であると認められる場合である。この規定により公表される調停案は法第三四条第一項の規定により受諾を勧告された調停案に限られていること及び調停案の理由を付す必要があることに留意されたい。

第五 調停事件の引継ぎ(法第三八条関係)

  調停事件の引継ぎは、審査会等又は連合審査会から中央委員会への引継ぎのみが認められていたが、中央委員会から審査会等への引継ぎも認められることになつた。これに伴い、法第二四条第一項第一号に掲げる紛争に関する調停事件が中央委員会から審査会等に引き継がれた場合、審査会等の調停委員会においても、当該事件については文書物件の提出の要求及び立入検査をすることができる(法第三三条)。
  また、事件の引継ぎに当たつては、調停委員会の申出を要しないこととされたので、事件によつては調停委員会を設置するまでもなく申請後直ちに引継ぎを行うこともできるが、既に調停委員会が設置されている場合には、十分その意向を尊重すべきである。
  また、事件の引継ぎに当たつては、当事者双方の同意を要することになつたので、この点に留意されたい。

第六 義務履行の勧告(法第四三条の二関係)

  調停又は仲裁で定められた義務の履行に関して、その具体的な履行方法、細目等について当事者間に争いが生じた場合に、必要な勧告を行い、義務の履行を円滑にしようとするものであつて、定められた義務の内容に本質的な変更を加えるようなことはできない。

第七 手続の分離又は併合(政令第八条関係)

  手続の分離又は併合は、従前は審査会等が行うこととされていたが、今回の法改正によりあつせん委員又は調停委員会がこれを行うこととなつた。これに伴い、甲事件を乙事件に併合する場合には、それぞれ、甲事件を乙事件に併合する旨の決定と乙事件に甲事件を併合する旨の決定を行い、乙事件の担当委員が甲事件も担当する。

第八 公害に関する苦情の処理

  1.  (一) 公害苦情相談員の設置(政令第二〇条関係)
       公害苦情の顕著な増加にかんがみ、公害苦情相談員を置かなければならない市の範囲が、人口一〇万以上の市(国勢調査人口による。)に拡大された。これ以外の市町村においても、当該地域の苦情の実情に応じて、積極的に公害苦情相談員を置くことが望ましいので、この点も併せて指導されたい。
       なお、この改正は昭和五〇年四月一日から施行されること及び特別区については地方自治法の改正により同日から市に関する規定が適用されることになつているので、これらの点に留意されたい。
  2.  (二) 公害苦情相談員の職務(法第四九条第四項関係)公害苦情相談員の活動の一層の活発化に資するため、公害苦情の処理のために行う事務を更に具体化し、明確にしたものである。
  3.  (三) 処理状況についての報告(法第四九条の二関係)
       中央委員会と都道府県及び市町村との連絡並びに都道府県と市町村との連絡を密にし、公害苦情の適切な処理に資するとともに、職権あつせん制度の円滑な運用を図るため、必要な処理状況報告を求めることができることを明文化したものである。市町村に対する趣旨徹底をお願いする。

第九 審査会の設置について

  最近における公害苦情及び公害紛争の全国的な拡散のすう勢にかんがみ、今回の法改正を契機に審査会を設置していない府県においては、その設置について再検討されるよう要望する。

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