法令・告示・通達

公害健康被害補償法等の施行について

  • 公布日:昭和49年9月28日
  • 環保企110号

[改定]
昭和56年10月28日 環保業389号

環境庁企画調整局環境保健部長から都道府県・政令市長あて

 標記については、本日別途、環境事務次官及び環境庁企画調整局長より通知〔前掲〕されたところであるが、指定疾病に係る続発症の範囲及び心身の状態に関する障害度の評価に関しては、次の事項に留意のうえ、本制度の適正な運営に努められたい。
 なお、この通知においては、公害健康被害補償法(昭和48年法律第111号)を「法」と、公害健康被害補償法施行令(昭和49年政令第295号)を「令」と、障害度の評価基準(昭和49年8月31日環境庁告示第47号)を「告示」と、それぞれ略称する。

第一 指定疾病に係る続発症

 1 指定疾病の認定に係る続発症の範囲

  1.   (1) 第一種地域の大気の汚染に係る指定疾病には、慢性気管支炎、気管支ぜん息、ぜん息性気管支炎、及び肺気しゆの4疾病のほか原疾患の続発症が含まれていること。
        この「続発症」という用語は、医学的には「合併症」と呼ばれる場合も多く、中央公害対策審議会において、この用語が適切であるかどうかなお検討する必要があるとされているが、旧法の施行以来行政的に用いられてきたこともあり、当面、法の運用にあたつては「続発症」という用語を用いることとしたこと。
  2.   (2) 第一種地域の汚染に係る指定疾病の認定に係る続発症としては、当面、慢性肺性心、肺線維症等に限定されるものであること。また、これらの続発症を認定する際には原疾患との関連を確認し、指定疾病にあたる原疾患名を明示するように努めること。

 2 指定疾病に係る診療報酬の請求及び指定疾病に係る障害度の評価等にあたつての続発症の範囲

  1.   (1) この場合の続発症の範囲については、「続発症とみなされる特定疾患を列挙することなく一括して取り扱い、個別症例ごとに認定されている主病との関連について医学的判断を行う旧法の方式が実際上合理的である。」との意見もあるが、法においては、療養の給付及び療養費のほかに、指定疾病による障害の程度に応じて障害補償費、児童補償手当が支給され、また、指定疾病に起因して死亡した場合に遺族補償費等が支給されることとされているので、制度を適正に運用していくために、続発症の範囲をできるだけ明確にすることとしたこと。
  2.   (2) (1)の趣旨から、次表に示すように、各種の続発症を2群に分け、主治医や公害健康被害認定審査会が実際に遭遇した事例について判断する場合の目安を設けることとしたこと。これは、指定疾病の続発症を同表に事例として示す疾病に限定する趣旨ではなく、従来どおりあくまで主治医等の判断を尊重しつつ、続発症の範囲、名称を明示しない場合の欠点をも補うように配慮したものであること。
    〇大気の汚染に係る4指定疾病の続発症の分類
    1.  1 指定疾病の進展過程において当該指定疾病を原疾患として、二次的におこりうる疾病又は状態
       (例)
      •     慢性肺性心
      •     肺線維症
      •     気管支拡張症
      •     肺炎
      •     自然気胸
    2.  2 指定疾病の治療又は検査に関連した疾病又は状態
  3.   (3) 以下のような疾病又は状態は上記の分類表には加えず、実例集的なものに加えるものとするが、続発症として取り扱われるものであること。
    1.    ア 指定疾病の進展過程におこりうる疾病若しくは状態又は指定疾病が誘因となりうる疾病若しくは状態
          (例)
      1.        ① 気管支ぜん息発作が基盤となつたと考えられる流産、ヘルニア等
      2.        ② 慢性肺気しゆや潰性気管支炎に関連した消化性潰瘍
    2.    イ 指定疾病の治療又は検査に関連した疾病又は状態
          (例)
      1.        ① 気管支ぜん息等の治療のために長期間ステロイドホルモンを用いた時に発生又は悪化した消化性潰瘍等
      2.        ② 慢性気管支炎等の治療のために長期間抗生物質を連用したときにおこつたビタミン欠乏症、血液疾患、肝障害、腎障害等
      3.        ③ 診断確定のために行つたアレルゲンテストや気道過敏性テスト等に引き続きおこつた重症気管支ぜん息発作又はシヨツク状態等

第二 心身の状態に関する障害度の評価

 1 全般的な事項

  1.   (1) 障害補償費及び児童補償費手当は、指定疾病による障害の程度に応じて支給されるものであること。
        すべての指定疾病に共通する障害の程度の区分は、公害健康被害補償法施行令に示されているとおり、日常生活の困難度及び労働能力の喪失度(15歳未満の被認定者にあつては、日常生活の困難度のみ)に基づいて定められていること。
        指定疾病の種類に応じて環境庁長官が定める心身の状態に関する障害度の評価基準は、昭和49年3月31日環境庁告示47号の1―(1)、1―(2)、2、3、4に掲げるとおりであること。
        令第10条及び第20条の表に規定する各等級中、環境庁長官の定める基準に該当するものは、「症状及び検査所見」(1―(2)にあつては「症状」)及び「管理区分」が当該等級に該当するものでなければならないものであること。
        「管理区分」は、主治医の意見を十分きいたうえで判断されたいこと。
  2.   (2) 障害度の評価基準は、それぞれの指定疾病に特徴的な症状及び検査所見等に基づき、できるだけ客観的に障害度が判定されるように、また、その具体的な評価に当たつては、主治医の意見が十分尊重されるように配慮して定められたものであること。
        症状及び検査所見についての基準は、指定疾病ごとに異なつているが、主治医に対して求める障害度に関する意見についての区分は、すべて指定疾病を通じて同一等級については異ならないものとされており、これに基づいて各疾病共通の管理区分を決定するものであること。
  3.   (3) 7つの指定疾病のうちには、症状・検査所見が変化しやすいものやほぼ固定しているものがあり、障害のみられる臓器も呼吸器、神経系、感覚器系、骨、腎臓、皮膚など多彩であるので、各指定疾病の間で均衡が保たれるように配慮して基準が作られていることに留意されたいこと。
  4.   (4) 心身の状態に関する障害度の評価基準を定めるに当たつては、他の制度等で用いられている同様の基準や障害等級に関する報告書も参考として公害補償の特殊性をも考慮のうえ、制度間で均衡を失しないように配慮されていること。
  5.   (5) 障害度を具体的に評価するに当たつては、すべての指定疾病を通じて、指定疾病と関係のない疾病、いわゆる併存症又は随伴症を伴つている場合には、指定疾病による障害のみについて評価することとされたいこと。
        なお、指定疾病との関係又は原因物質との因果関係が解明されていない病変による障害は、現時点においては原則として障害度の評価には使用しないこととしているが、将来得られる知見により因果関係が明らかになれば、そのような病変による障害は障害度基準に追加されることとなるものであること。

 2 大気の汚染に係る4指定疾病の心身の状態に関する障害度の評価基準

  (1) 障害度の評価基準についての全般的な考え方について
  1.    ア 大気の汚染に係る指定疾病には、慢性気管支炎をはじめ4種類の指定疾病があるが、いずれも呼吸器疾患であり、類似した症状、検査所見を示すことも多く、基準の簡素化を図るために4指定疾病に共通の基準が作られていること。
  2.    イ 障害補償費用の障害度は、15歳以上の被認定者にあつては、4つの指定疾病のうち、慢性気管支炎、気管支ぜん息、肺気しゆが多くみられ、ぜん息性気管支炎が殆んどみられないことにかんがみ、息切れ(呼吸困難)の程度、ぜん息発作又はぜん息様発作の頻度と程度、咳と痰の持続期間、痰の量及び痰切れの容易さ、心肺機能検査所見としての指数(1秒量/予測肺活量×100)、PaO2(動脈血酸素分圧)及び心電図所見等の症状、検査所見並びに主治医の管理区分に基づいて総合的に判定することとされたいこと。
  3.    ウ 児童補償手当用の障害度は、15歳未満の被認定者にあつては気管支ぜん息、ぜん息性気管支炎、慢性気管支炎が多くみられ、肺気しゆが殆んどみられないことにかんがみ、気管支ぜん息又は気管支ぜん息様の発作の頻度と程度、咳の強さと持続期間及び喘鳴の持続期間等の症状並びに主治医の管理区分に基づいて総合的に判定することとされたいこと。
         なお、心肺機能検査については小児の場合には実施しがたい場合が多く(特に6歳未満)現時点においては障害度の評価に使用しうるほど信頼性が高い検査方法が開発されていないことにかんがみ、将来の研究の進歩を待つこととし、現時点においては、心肺機能検査は小児の障害度の評価基準には使用しないこととしていること。
  4.    エ 障害補償費用、児童補償手当用の障害度の評価基準は、大気の汚染に係る4指定疾病に共通のものとし、基準の簡素化を図るとともに、一つの指定疾病が一定期間後に他の指定疾病を併発したり、他の指定疾病であることが判明したりした場合にも当初に認定を受けた指定疾病名にかかわらず、当該被認定者の症状、検査所見から障害度を評価し得るようにしたこと。しかし、このような場合には、できるだけ速やかに実態にあつた指定疾病名に変更するように努められたいこと。
  (2) 障害度の評価基準に関する全般的な注意について
  1.    ア 告示の1―(1)及び1―(2)の表に掲げる基準は、第一種地域の大気の汚染に係る4指定疾病に共通したものであること。
  2.    イ 障害補償費に係る障害の程度についての基準(1―(2))の表において、症状及び検査所見が各等級に該当するものは、次の①~④のいずれかであること。
    1.     ① 「息切れ(呼吸困難)」及び「心肺機能」の両方が当該等級の欄に掲げる程度に該当するもの
    2.     ② 「ぜん息(ぜん息様)発作」が当該等級の欄に掲げる程度に該当するもの
    3.     ③ 「咳〈せき〉及び痰〈たん〉」及び「心肺機能」の両方が当該等級の欄に掲げる程度に該当するもの
    4.     ④ ①~③と同等又はそれ以上と認められる程度に該当するもの
  3.    ウ 児童補償手当に係る障害の程度についての基準(1―(2))の表において、症状が各等級に該当するものは次の①~④のいずれかであること。
    1.     ① 「ぜん息(ぜん息様)発作」が当該等級の欄に掲げる程度に該当するもの
    2.     ② 「咳〈せき〉」が当該等級の欄に掲げる程度に該当するもの
    3.     ③ 「喘鳴〈ぜんめい〉」が当該等級の欄に掲げる程度に該当するもの
    4.     ④ ①~③と同等又はそれ以上と認められる程度に該当するもの
  4.    エ 障害等級の決定は、症状及び検査所見等に基づく障害度と主治医による管理区分に基づいて総合的に行われたいこと。被認定者が指定疾病(続発症を含む。)以外の疾病をも併発している場合には、指定疾病に係る部分についての障害度の評価を行われたいこと。
  5.    オ 症状及び検査所見等に基づく等級と管理区分に基づく等級はほぼ等しくなるものとして定められたものであること。
         なお、症状及び検査所見に基づく等級と主治医の管理区分による等級に差があれば、公害健康被害認定審査会が主治医に意見を求める等両方の観点から納得のいく適正な障害度の評価を行うよう配慮されたいこと。
  (3) 障害度の評価基準表の項目、用語について
  1.    ア 症状について
    1.     (ア) 息切れ(障害補償費用)
            労作に伴う呼吸困難と同義と解釈してよいが、老人や寝たきりの患者では運動をしないか、又はできないので注意して問診する必要があること。
    2.     (イ) ぜん息(ぜん息様)発作
            気管支ぜん息患者にみられる発作及びその他のぜん息性気管支炎等の患者にみられるぜん息発作様の発作を指すものであること。
            「重症の発作」とは、著明な呼吸困難を伴い、起座呼吸となり、チアノーゼ、意識障害を伴う発作又は治療に反応しがたく発作累積状態となるものを指すものであること。
            「軽症の発作」とは重症の発作に至らない程度の軽度の発作を指すものであること。
            なお、ぜん息(ぜん息様)発作のために副腎皮質ホルモン剤を使用中で、かつ、離脱できない場合には、副腎皮質ホルモン剤を使用していなければおこりうる状態についても考慮して障害度を評価すること。
    3.     (ウ) 咳と痰(障害補償費用のみ)
            「常に咳及び痰がでる」とは、毎日相当回数の痰の喀出を伴うか、又は喀出が困難な咳があるものを指し、起床時等のみに1~2回の咳と痰がでる程度のものは含まれないこと。
            「痰の量が非常に多い」とは、殆んど毎日起床後1時間の痰量が10ml以上程度のものを指し、「痰の量が多い」とは殆んど毎日起床後1時間の痰量が3~10ml程度のものを指すものとし、痰量については主治医が確認するものとすること。
    4.     (エ) 咳(児童補償手当用のみ)
            「重症の咳」とは、顔面を紅潮する程度の激しい咳で呼吸困難を伴うものを指すものであること。
            「軽症の咳」とは、呼吸困難を伴わない程度の咳を指すものであること。
    5.     (オ) 喘鳴(児童補償手当用のみ)
            性状が、ゼイゼイ又はゼロゼロの喘鳴で、2~3メートル離れていてもきこえる程度以上のものを指すものであること。
  2.    イ 心肺機能検査所見について
    1.     (ア) 指数とは、(1秒量/予測肺活動×100)をいうものであること。予測肺活量はボールドウインの式によつて求めること。
    2.     (イ) 心電図による右室肥大の判定には、次に示すWHOの基準を参考にすること。
      1.      ① V3R、V1のqRパターンがあれば確実であること。
      2.      ② ①がない場合、次の3項目のうち2項目に該当すればよいこと。
        1.       a R/Sv5 <1
        2.       b R/Sv1 >1
        3.       c 不完全 右脚ブロツク
    3.     (ウ) 心電図の肺性Pは、Ⅱ誘導のR高で補正すること。
            例えば、P(mm)/RⅡ(nv)≧2.5の式を使うものとすること。
    4.     (エ) 指数、PaO2(動脈血酸素分圧)、心電図所見は、いずれも発作時及び急性憎悪時に一時的に悪化する所見をとらず、恒常的な所見(たとえば、3ケ月以上にわたりそのような所見が認められる。)を使用すること。
  3.    ウ 主治医による管理区分について
         主治医による管理区分は、指定疾病について基準に含まれている症状や検査所見も参考にしつつ、総合的に判断するものであること。
         「医師の管理を必要とし」とは、対症療法を要しなくても、経過観察、家庭療法の指示、検査、減感作療法等で定期的な受診を要することを指すものであること。

 3 水俣病の心身の状態に関する障害度の評価基準

  (1) 障害度の評価基準についての全般的な考え方について
  1.    ア 水俣病にみられる主要症状としては、知覚障害、求心性視野狭窄、聴力障害及び小脳症状 (言語障害、歩行障害、運動失調、平衡障害、不随意運動等)などが特徴的であるが、比較的重症の水俣病の患者においては、経過中に精神障害を示す患者もあるので、水俣病の障害は、運動障害、視力、視野障害、聴力障害、知覚障害等の感覚器障害及び精神障害に分け、これらの障害と主治医による管理区分に基づいて障害度を総合的に評価することとされていること。
  2.    イ 水俣病のうち胎児性(先天性)水俣病においては、脳性小児マヒの症状を示しつつも後天性水俣病と類似した症状を示すので、運動障害、感覚器障害、精神障害の他に胎児性水俣病に特有の障害についても評価し得るように先天性心身障害をその基準に加え、その程度は脳性小児マヒの症状及びそれに伴う心身の発育の遅延の程度に基づいて判定することとされること。
  3.    ウ なお、水俣病は有機水銀中毒症であり、中枢神経及び末梢神経障害による症状がみられることが特徴的であるが、動物実験等により有機水銀は神経系以外の臓器にも影響を与えるのではないかという報告もあるものの、有機水銀とこれらの神経系以外の臓器障害との関係は完全には解明されていないので、現時点においては水俣病の障害度の評価基準に含まれた病変のみによつて水俣病の障害度を評価するものとし、将来実験医学による因果関係の解明のみならず、疫学的にも有機水銀と水俣病の障害度の評価基準に含まれなかつた病変との関連性が相当明らかになれば、そのような病変を基準に追加されることもあるものであること。
  (2) 障害度の評価基準に関する全般的な注意について
  1.    ア 告示の2の表に示す基準は、障害補償費及び児童補償手当に共通の基準として使用されるものであること。
  2.    イ 水俣病に係る障害の程度の基準において症状及び検査所見が各等級に該当するのは「運動障害」、「感覚器障害」「精神障害」又は「先天性心身障害」が当該等級の欄に掲げる程度に該当するか、又はこれと同等若しくはそれ以上と認められる程度に該当する程度であるものとされていること。
  3.    ウ 後天性水俣病においては、運動障害、感覚器障害、精神障害の程度及び管理区分に基づいて障害度を評価されたいこと。
         胎児性水俣病においては、先天性心身障害の程度を中心とし、15歳以上の胎児性水俣病の患者にあつては更に後天性水俣病の基準を参考とし、これらの障害と主治医の管理区分に基づいて障害度を評価されたいこと。
  4.    エ 症状及び検査所見等に基づく等級と管理区分に基づく等級はほぼ等しいものとされていること。
         なお、症状及び検査所見に基づく等級と主治医の管理区分による等級に差があれば、公害健康被害認定審査会が主治医に意見を求める等、両方の観点から納得のいく適正な障害度の評価を行うよう配慮されたいこと。
  (3) 障害度の評価基準表の項目、用語について
  1.    ア 運動障害 各等級に相当する運動障害の具体例を日常生活における活動能力で示すと以下のとおりであること。
    日常生活における具体例
    特級
    言語不明瞭、寝たきり、独り歩きは困難、外出不能及び身の回りのこともできないこと、その他高度の随意運動障害があること。
    1級
    言語やや不明瞭、独り歩きは可能であるがやや不安定、身の回りの事は大体できること。家のまわりの散歩位はできること。
    その他中等度~高度の随意運動障害があること。
    2級
    言語やや不明瞭、独り歩きは可能、外出して大体の用は足せるが軽度の仕事でも人並みにはできないこと。その他軽度~中等度の随意運動障害があること。
    3級
    家事、軽労働等はほぼできるが、仕事の種類により制限を受けること。その他軽度の随意運動障害があること。

  2.    イ 感覚障害
    1.     (ア) 視力・視野障害の程度は次の基準を参考として評価すること。
      いずれか一眼の視力
      いずれか一眼の視野狭窄
      高度の障害
      0.02以下であること。
      いずれかの経線上で20度以内に狭窄していること。
      中等度の障害
      0.1以下であること。
      いずれかの経線上で30度以内に狭窄していること。
      軽度の障害
      0.3以下であること。
      いずれかの経線上で45度以内に狭窄していること。


            視力測定、視野測定ができない場合は、次の具体例を参考にして視力・視野障害の程度を評価すること。

      日常生活における具体例
      高度の障害
      新聞は見出しも読めないこと。
      外出にも支障があり、仕事には従事できないこと。
      中等度の障害
      新聞の見出しが判読できるかできない程度であること。日常生活で常に不自由を感ずること。仕事に相当支障があること。
      軽度の障害
      新聞がようやく読めること。
      日常生活で時に不自由を感じること。仕事の種類により支障があること。

    2.     (イ) 聴力障害の程度は、次の基準を参考として評価すること。
      聴力低下の程度
      高度の障害
      80dB程度以上であること。
      中等度の障害
      60~75dB程度であること。
      軽度の障害
      35~55dB程度であること。


            聴力障害の程度を判定するに当たつては、生理的な聴力の減退を考慮すること。
            なお、聴力測定が不可能な場合は、次に示す日常生活における具体例から聴力障害の程度を評価すること。

      日常生活における具体例
      高度の障害
      耳元で大声で話しても言葉がわかりにくく、会話に著しい支障をきたすこと。
      中等度の障害
      耳元で話せば言葉がわかるが、会話に相当支障があること。
      軽度の障害
      2~3メートル離れて会話をするときは、大声を出さないと会話に支障をきたすこと。

    3.     (ウ) 知覚障害の程度は、次の基準を参考として評価すること。
      高度障害
      表在知覚の障害がほぼ対称的に四肢及び躯幹の相当範囲にわたつて存在すること。深部知覚にも高度の障害があること。
      中等度障害
      表在知覚の障害がほぼ対称的に主として四肢に存在し、四肢未満よりほぼ肩関節、股関節に及ぶこと。深部知覚にも中等部の障害があること。
      軽度障害
      表在知覚の障害がほぼ対称的に主として四肢末端に存在し、ほぼ肘関節、膝関節に及ぶこと。深部知覚とも軽度の障害があること。


            なお、知覚障害の区分は主として知覚障害のみられる範囲によるが、知覚障害の程度(鈍麻、脱失等)も参考として判定すること。

    4.     (エ) 先天性心身障害の程度について
            1歳半までの患者においては、主として心身の発育の遅延度及び同年齢の普通の乳幼児にくらべてどの程度余分に介護を要するかによつて障害度を評価すること。
            1歳半以上の患者にあつては、年齢に応じて次の判定基準を参考として障害度を判定すること。
      日常活動
      言語理解
      発語
      食事
      歩行
      知能指数
      年齢
      等級
      一歳半から三歳まで
      特級
      不能であること。
      不能であること。
      自分でとれないこと。
      寝たきりであること。
      1級
      ほとんど不能であること。
      ほとんど不能であること。
      自分でとれないこと。
      独り立ちは不能であること。
      2級
      簡単な言語理解は若干可能であること。
      簡単な言語も不明瞭であること。
      自分でとれないこと。
      独り立ちできるが独り歩きはできないこと。
      3級
      簡単な言語理解はほぼ可能であること。
      簡単な言語以外は不明瞭であること。
      匙〈さじ〉でかろうじてとれるがよくこぼすこと。
      独り歩きはできるが不安定であること。
      四歳から六歳まで
      特級
      不能であること。
      不能であること。
      自分でとれないこと。
      寝たきり又は独り立ち不能であること。
      1級
      簡単な言語理解は若干可能であること。
      簡単な言語も不明瞭であること。
      自分でとれないこと。
      独り立ちはできるが独り歩きはできないこと。
      2級
      簡単な言語理解はほぼ可能であること。
      簡単な言語以外は不明瞭であること。
      匙〈さじ〉でかろうじてとれるがよくこぼすこと。
      かろうじて独り歩きができること。
      3級
      言語理解はほぼ可能であること。
      言語やや不明瞭であること。
      箸〈はし〉でかろうじてとれるがよくこぼすこと。
      独り歩きはできるがやや不安定であること。
      七歳以上
      特級
      不能又は若干可能であること。
      不能又は簡単な言語も不明瞭であること。
      自分でとれないこと。
      寝たきり又は独り歩き不能であること。
      40以下であること。
      1級
      簡単な言語理解はほぼ可能であること。
      簡単な言語以外は不明瞭であること。
      匙〈さじ〉でかろうじてとれるがよくこぼすこと。
      独り歩きは困難であり補助具使用により起立又は歩行可能であるが不安定であること。
      60以下であること。
      2級
      言語理解はほぼ可能であること。
      言語やや不明瞭であること。
      箸〈はし〉でかろうじてとれるがよくこぼすこと。
      独り歩きは可能であるがやや不安定であること。
      80以下であること。
      3級
      言語理解は年齢相応に可能であること。
      複雑な言語はやや不明瞭であること。
      箸〈はし〉でだいたいこぼさずにとれること。
      独り歩きは可能であるが走行困難であること。
      81以上であること。

 4 イタイイタイ病の心身の状態に関する障害度の評価基準

  (1) 障害度の評価基準についての全般的な考え方について
  1.    ア イタイイタイ病においては、骨軟化症がみられ、骨変形等の骨障害及び体動に伴う腰背痛、関節痛等により歩行等の日常動作に支障をきたすこと及び腎障害、特に多発性近位尿細管異常をきたすことが知られているので、イタイイタイ病の障害は、運動障害と腎障害に大別して判定し、運動障害の程度は、歩行障害の程度を骨変形等の骨障害及び体動痛による運動障害の指標としてあらわし、腎障害の程度は多発性近位尿細管機能異常症の程度であらわすこととされていること。
  2.    イ イタイイタイ病の進展過程における腎障害と骨障害の関係については未だ完全に解明されていないが、腎障害と骨障害が同一時点で同程度にみられるとは限らないので、運動障害と腎障害の程度を別々に評価していずれか程度の高い障害と主治医による管理区分に基づいて障害度を評価されたいこと。
  (2) 障害の評価基準に関する全般的な注意について
  1.    ア イタイイタイ病の障害等級は告示の3の表に示す運動障害及び腎障害の程度並びに主治医による管理区分から総合的に判定されたいこと。
  2.    イ イタイイタイ病の運動障害と腎障害の程度は必ずしも併行しないこともあるので、いずれか重度の障害により症状と検査所見等に基づく等級を決めるものとされていること。症状及び検査所見が各等級に該当するものは告示の3の表に示す「運動障害」又は「腎障害」のいずれかが当該等級の欄に掲げる程度に該当するか、又はそれ以上と認められる程度に該当するものであること。
  3.    ウ 管理区分は、イタイイタイ病について決めるものであり、イタイイタイ病の症状、検査所見等に基づく等級とほぼ等しくなるものとして定められたものであること。症状及び検査所見に基づく等級と主治医の管理区分による等級に差があれば公害健康被害認定審査会が主治医に意見を求める等、極力両方の観点から納得のいく適正な障害度の評価を行うよう配慮されたいこと。
  (3) 骨障害及び腎障害について
  1.    ア 骨障害の程度は、骨のX線上の所見により判定すること。
    高度の骨障害
    高度の骨変形及び脱灰萎縮像が見られ、かつ、多発性骨改変層(治ゆ過程にあるものを含む。)が認められること。
    特級の場合には上記の所見に加えて明らかな病的骨折が認められること。
    中等度の骨障害
    中等度の骨変形及び脱灰萎縮像が見られ、骨改変層の治ゆ過程像が認められること。
    軽度の骨障害
    軽度の骨変形及び軽度の脱灰萎縮像が見られ、かつ、骨改変層の治ゆ像が認められること。
  2.    イ 腎障害の程度は、多発性近位尿細管機能異常症の程度により判定すること。
    1.     (ア) 燐尿細管再吸収率低下の程度は、次の基準により評価すること。
      %TRP
      高度の低下
      60以下
      中等度の低下
      61~70
      軽度の低下
      71~80

    2.     (イ) 代謝性アシドーシスの程度は、次の基準により評価すること。
      血中HCO3濃度
      高度の代謝性アシドーシス
      20mEg/L以下
      軽度の代謝性アシドーシス
      21~23mEg/L

    3.     (ウ) なお、低分子蛋白尿、腎性糖尿、全般性アミノ酸尿等は、2級以上に相当する腎障害においても認められること。
            慢性系球体腎炎等に続発する腎不全等において代謝性アシドーシス等がみられても、イタイイタイ病の障害度基準には適用されないこと。

 5 慢性砒〈ひ〉素中毒症の心身の状態に関する障害の評価基準

  (1) 障害度の評価基準についての全般的な考え方について
  1.    ア 慢性砒〈ひ〉素中毒症の認定要件に含まれている病変は、皮膚の色素異常、角化症、鼻中隔穿〈せん〉孔、鼻粘膜瘢痕〈はんこん〉、多発性神経炎及び長期にわたる気管支炎症状(その原因を総合的に検討し、慢性砒〈ひ〉素中毒によると認められるものに限る。以下同じ。)であるが慢性砒〈ひ〉素中毒症の障害度を判定する際にも、原則として認定要件に含まれている病変による障害の程度を判定することとされていること。
         認定要件に含まれている病変のうち、皮膚、特に手掌、足蹠〈しよ〉の角化症及び多発性神経炎は運動障害をおこす可能性があるので、慢性砒〈ひ〉素中毒症の障害は、原則として皮膚障害と末梢〈しよう〉神経障害に大別して障害度を判定することとされていること。認定要件に含まれている病変のうち長期にわたる気管支炎症状は、第一種地域の大気の汚染に係る指定疾病の障害度の判定に準じて判定することとされていること。
         認定要件に含まれている病変のうち鼻中隔穿〈せん〉孔及び鼻粘膜瘢痕〈はんこん〉は、それのみでは日常生活における活動能力や労働能力に支障をきたすことは考え難いが、鼻中隔穿〈せん〉孔は明らかな解剖学的な欠損であり、これに伴う障害がある場合には、3級に該当する障害とみなすこととされていること。
  2.    イ 慢性砒〈ひ〉素中毒症においては、皮膚の色素異常、角化症、鼻中隔穿〈せん〉孔、鼻粘膜瘢痕〈はんこん〉、多発性神経炎、長期にわたる気管支炎症状の他、ボーエン病、皮膚癌〈がん〉、肝障害、造血器障害、肺癌〈がん〉などがみられることが知られているが、上記のボーエン病以下の認定要件に含まれていない病変は慢性砒〈ひ〉素中毒症以外の患者にも多く見られ、砒〈ひ〉素との関連は完全には解明されていないこと。しかし、ボーエン病、皮膚癌〈がん〉は皮膚の色素沈着、角化症に続発しておこりうると考えられ、また、慢性砒〈ひ〉素中毒に特徴的な皮膚病変や末梢〈しよう〉神経障害等が認められている場合には、これらが認められない場合よりも肝障害、肺癌〈がん〉等と砒〈ひ〉素との関連が濃厚と考えられるので、慢性砒〈ひ〉素中毒症で認定された患者については、ボーエン病、皮膚癌〈がん〉、肝脾〈び〉症候群、肝硬変、肝癌〈がん〉、肺癌〈がん〉を慢性砒〈ひ〉素中毒によるものとみなして差し支えないとされていること。
         ただし、内臓疾患等と砒〈ひ〉素との関係については、今後更に研究を行い、このような研究から得られる知見に基づき慢性砒〈ひ〉素中毒症の認定要件及び障害度の評価基準等の見直しを行うこととされていること。
  (2) 障害度の評価基準に関する全般的な注意について
  1.    ア 症状及び検査所見に基づく等級は、皮膚障害、末梢〈しよう〉神経障害又は長期にわたる気管支炎症状のうち、いずれか最も重度のもので決められること。慢性砒〈ひ〉素中毒症に係る障害において症状及び検査所見が各等級に該当するものは、皮膚障害及び末梢〈しよう〉神経障害については告示4の表に示す「皮膚障害」若しくは「末梢〈しよう〉神経障害」のいずれかが当該等級の欄に掲げる程度に該当するか、又はこれと同等若しくはそれ以上と認められる程度に該当する程度であり、長期にわたる気管支炎症状に係る障害については告示1の表を準用するものであること。ただし、鼻中隔穿〈せん〉孔があり、かつ、これに伴う障害がある場合には、3級に該当する程度の「症状及び検査所見」があるものとして扱うこと(この場合、その者の「皮膚障害」、「末梢〈しよう〉神経障害」又は長期にわたる気管支炎症状による障害が3級以上に該当するときは、これによるものとすること。)。
  2.    イ 管理区分は慢性砒〈ひ〉素中毒症について行うものであること。しかし、慢性砒〈ひ〉素中毒症で認定された患者については、皮膚の角化症、多発性神経炎、鼻中隔穿〈せん〉孔、長期にわたる気管支炎症状等による障害の他に慢性砒〈ひ〉素中毒に関連していると考えられるボーエン病、皮膚癌〈がん〉、肝脾〈ひ〉症候群、肝硬変、肝癌〈がん〉、肺癌〈がん〉に基づく障害も参酌しつつ管理区分を定めて差し支えないものであること。
  3.    ウ 症状及び検査所見に基づく等級と管理区分による等級とはほぼ等しくなるものとして定められたものであること。症状及び検査所見に基づく等級と主治医の管理区分による等級に差があれば、公害健康被害認定審査会が主治医に意見を求める等両方の観点から納得のいく適正な障害度の評価を行うよう配慮されたいこと。
  (3) 知覚障害の程度の判定基準について

    慢性砒〈ひ〉素中毒性にみられる知覚障害の程度は、次の基準によつて評価すること。

高度の障害
 実在知覚の障害がほぼ対称的に四肢及び躯幹の相当範囲にわたつて存在すること。
 深部知覚も高度に障害されること。
中等度の障害
 実在知覚の障害がほぼ対称的に主として、四肢に存在し、四肢末端より、ほぼ肩関節、股関節に及ぶこと。
 深部知覚も中等度に障害されること。
軽度の障害
 実在知覚の障害がほぼ対称的に主として四肢末端に存在し、ほぼ肘関節、膝関節に及ぶこと。
 深部知覚も軽度に障害されること。


   なお、知覚障害の区分は主として知覚障害のみられる範囲によるが、知覚障害の程度(鈍麻、脱失等)も参考として判定すること。

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