法令・告示・通達

公害防止事業費事業者負担法の施行について

  • 公布日:昭和46年6月26日
  • 総公対99号

内閣総理大臣官房公害対策室長から各都道府県知事あて

 公害防止事業費事業者負担法(以下「法」という。)は、第64回国会(臨時会)において成立し、昭和45年12月25日法律第133号をもつて公布され、昭和46年5月10日から施行された(公害防止事業費事業者負担法の施行期日を定める政令(昭和46年政令第145号))。これに伴つて、公害防止事業費事業者負担法施行令(以下「施行令」という。)が、同年5月3日政令第146号をもつて公布され、同月10日から施行されたところである。
 本法に定める事業者の費用負担の制度は、事業者の事業活動による公害を防止するため国または地方公共団体が実施する事業について、当該事業に要する費用の全部または一部を事業者の負担に求めるものであり、今後公害防止事業を推進していくうえにおいて大きな役割を果すものであるので、本法の施行にあたつては下記事項にご留意のうえ、遺憾のないようにされるとともに、管下市町村(港湾管理者である一部事務組合等を含む。)に対する法の趣旨の徹底方よろしくご配慮願いたい。

第1 法制定の趣旨

  本法は、公害対策基本法(以下「基本法」という。)第22条の規定に基づき、公害防止事業の範囲、事業者の負担の対象となる費用の範囲、各事業者に負担させる額の算定、その他事業者の費用負担に関し必要な事項を定めたものであること。

第2 一般的事項

 1 費用負担の性格

   本法の費用負担は、河川法、港湾法等の例にみられるような原因と結果との関係が明確に把握される場合に課される狭い意味の原因者負担とは異なり、基本法第3条の事業者の責務を根拠として同法第22条の規定に基づき事業者に課される公法上の負担であり、広い意味の原因者負担としての性格を有するものであること。

 2 公的負担との関係

   本法は、公害防止事業に要する費用のうち、事業者に負担させる部分について定めたものであること。なお、公害防止事業に要する費用のうち公的負担に関する国と地方公共団体との関係については、別途公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律(昭和46年法律第70号)により地方公共団体が公害防止のための事業を実施する場合の国の負担または補助の割合のかさ上げ、起債における政府資金による引受けの配慮等の措置が講じられていること。

 3 公害防止計画との関係

   基本法第19条に基づく公害防止計画の策定・実施については、昨年12月1日の千葉県千葉・市原地域、三重県四日市地域および岡山県水島地域の三地域に係る公害防止計画の内閣総理大臣による承認に引き続き、本年5月25日東京、大阪、神奈川等の地域に係る公害防止計画の基本方針が示されたところである。
   本法の対象となる公害防止事業は、公害防止計画が策定された地域にあつては通常公害防止計画の一環として実施されることとなるが、公害防止計画に掲げられていない事業であつても本法の対象となる公害防止事業として実施する必要がある場合が考えられるので留意されたいこと。
   なお、公害防止計画が策定されていない地域においても、もとより本法の公害防止事業を実施できるものであること。

 4 個別規制法との関係

   本法の対象となる公害防止事業は、当該地域における公害を防止する必要が生じた場合に実施されるものであり、事業者が個別規制法に定める規制基準を遵守しているかどうかを問うものではなく、規制基準を遵守している事業者に対しても費用負担を求められるものであること。

第3 個別的事項

 1 公害防止事業

  1.   (1) 費用負担の対象となる公害防止事業については、法第2条第2項各号に該当する事業であつて、これまでに事業として実施された実績があるか、または近い将来事業実施の見込みのあるものを対象とする方針に従つて、施行令において定められていること。したがつて、今回施行令で定められなかつた事業についても、今後事業の実施の見込みが生じた場合においては、すみやかに検討のうえ、施行令で追加指定する方針であること。
  2.   (2) 施行令第1条第1項の公害防止事業は、いわゆる緩衝緑地の設置および管理の事業が中心をなすものと考えられるが、そのほかに「公共空地」として工場または事業場の存する区域と住宅等の存する区域とを遮断する機能を有する広場等の設置および管理の事業が考えられること。なお緩衝緑地の設置の事業は、従来から公害防止事業団の事業として実施されているが、本法においては設置事業のほかに管理の事業も含めて対象としていることに留意されたいこと。
  3.   (3) 施行令第1条第2項の公害防止事業のうち、しゆんせつ事業については、しゆんせつされた汚でい等の最終処分に係る事業を含むものであること。また、漁場機能の回復という観点から水底の底質を改良するために行なうしゆんせつ事業、覆土事業または耕うん事業については、個々の事例ごとに関係水産試験研究機関等関係機関と密接な連絡をとり、もつとも効果的と考えられる事業を行なうものとするとともに、これらの事業の実施によつていわゆる二次公害が発生することのないよう十分考慮されたいこと。
  4.   (4) 施行令第1条第3項の事業は実際には農業用水中の有害物を沈澱除去するための沈澱池の設置、事業用水源を転換するためのかんがい排水施設の切替え、汚染農用地の客土、耕土、天地がえしの事業、地目変換の事業および代替農用地の造成(土地の取得を除く。)の事業ならびにかんがい排水施設等の新設、管理、変更の事業等であるが、土壌汚染対策として各種の方法が考えられる場合には、特段の事情がないかぎり、より少ない費用をもつて所期の目的を達成できる方法を選択するよう配慮する必要があること。
        なお、代替農用地の造成の事業にあつては埋立ておよび干拓の事業を除くものであること。
  5.   (5) 施行令第1条第4項第1号の特定公共下水道は、当該施設で排除し、または処理する汚水に占める事業者の事業活動に係る汚水の量がおおむね3分の2以上であるものをいうこと。また、同項第2号の産業廃棄物処理施設については、特定公共下水道と異なり強制供用の制度がないため、一般的にあらかじめ利用者を特定できない事情があり、通常は廃棄物の処理及び清掃に関する法律による利用料金の体系において適正な利用料金を徴収することにより事業者に対し費用負担を求めることとなるが、コンビナート地帯の場合等、事実上利用者の大部分が特定される場合においては、当該施設の設置に要する費用を本法に基づき事業者に負担させることができるものであること。この場合同号の「主として」とは、当該施設において処理される産業廃棄物の総量における当該区域内の事業活動に伴つて生ずる産業廃棄物のうち当該施設において処理されるものの量が大半を占めるような場合をいうものであること。なお、対象となる事業者は、実際の運用にあたつては、産業廃棄物処理施設の設置に関する事業計画の策定の際に当該施設を利用するものとして申込等の方法により把握されるものであること。
  6.   (6) 施行令第1条第5項第1号および第2号の住宅等の移転事業は、法令に基づかないで、移転する者の同意の下に工場または事業場の周辺の地域で公害が著しくまたは著しくなるおそれがある地域(以下「移転等対象地域」という。)からそれ以外の地域へ住宅、学校等を移転させる事業であるが、第1号の事業は、当該地域の大気汚染等による被害の状況、現在および将来における土地利用の状況等を勘案して、その地域に所在する者を集団的に移転させることが適当と認められ、しかも原則として該当者の全部または大部分が移転について同意し、かつ、移転跡地の利用について再度移転事業を実施しなければならないような事態が生じないような適切な計画がある場合に実施されるものであり、第2号の事業は、学校、病院等の公共的な施設について個別移転をはかる事業であり、実施の要件はおおむね第1号の事業に準ずるものであること。移転の態様としては、原則として解体等による移転とするが、その方法によることが困難である場合においては除却(新築)移転を行なうことができるものであり、事業内容としてはこれらの移転事業のほか、移転先の土地の造成、移転跡地の整備事業を含むものであること。
        なお、同項第2号事業の対象となる学校等の施設については、同項第3号の事業として施設を移転しないで二重窓、換気装置の整備(管理を含む。)の事業を行なうことができるものであること。

 2 費用を負担させる事業者の範囲

  1.   (1) 費用を負担させる事業者は、一定の区域、業種等でとらえられた事業者の事業活動が全部または一部の原因となつて公害が発生し、または発生するおそれのある事実があればよく、実際には、費用負担計画において区域、業種、施設の種類および規模等により基準を定めて特定されることとなること。基準の設定にあたつては、事業者の範囲が不明確なため施行者が恣意的に費用を負担させる事業者を決定するとか、または特定の事業者を除外すること等のないよう事業者の範囲が明確かつ妥当なものとなるよう配慮すること。
        なお、小規模発生源を除外するような基準を設定することもありうること。
  2.   (2) 公害の未然防止を目的とする緩衝緑地その他の公共空地の設置および管理の事業、特定公共下水道および特定産業廃棄物処理施設の設置の事業等の場合には、将来公害の原因となる事業活動を行なうことが確実と認められる事業者も、費用を負担させる事業者の範囲に含まれること。
  3.   (3) しゆんせつ、覆土、耕うん事業および導水事業ならびに汚染農用地に係る対策事業および農業用施設の被害の除去に係る事業等、主として過去の事業活動に起因する公害防止事業の場合には、過去に当該公害の原因となる事業活動を行なつたことがあるが現に事業活動を行なつていない者も費用を負担させる事業者の範囲に含まれること。

 3 公害防止事業に要する費用の範囲

  1.   (1) 公害防止事業に要する費用は、現在までに実施されている公共事業の実績等を勘案し、公害防止事業の実施のため直接必要な費用として施行令第2条において定められていること。
  2.   (2) 当該公害防止事業の実施により取得する土地または建物その他の物件で当該公害防止事業の用に供されないものについてこれらを処分するものとした場合に得られる収入により回収されるべき費用は、本法の費用負担の対象とはならないものであること。なお、この場合の費用は、当該土地または建物その他の物件を処分した場合は当該処分価額をいい、処分しない場合は現状のまま処分するとした場合の見込価格をいうものであること。
  3.   (3) 公害防止事業を実施するかどうかを判断するために実施されるいわゆる先行的な事前調査費は、公害防止事業の実施のため直接必要な費用ではないので、本法の費用負担の対象とはならないものであること。
  4.   (4) 緩衝緑地に設置される体育館等の利用施設は、本来公害防止事業の範囲に含まれないものであり、当該施設(土地を除く。)の設置、管理に要する費用は本法の費用負担の対象とはならないものであること。
  5.   (5) 住宅等の移転事業については「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」(昭和37.6.29閣議決定)に準じて算定した建物等の移転料(除却移転の場合にあつては建物等の正常な取引価格)、動産移転料、仮住居等の使用に要する費用、営業補償その他移転等に伴い通常生じる損失の補償のほか、移転先の造成費および跡地の買収、整備に係る費用等も含まれるものであること(造成地については移転者に売却することになるので結果的に事業者の負担はないと考えられる。)。なお、除却移転の場合にあつては、当該除却に係る建物等と同種同規模の建物等を新築するために必要な費用と既存の建物等の正常な取引価格との差額に対する借入金の利子も含まれるものであること。

 4 事業者の負担総額

  1.   (1) 事業者の負担総額は、公害防止事業費の額から費用を負担させる事業者の事業活動以外のいわゆる他原因に属するものに応じた額を除き、さらに法第4条第2項の事情をしんしやくする必要がある場合にはその事情を勘案して妥当な額を減ずることにより算定し、なお当該事情を勘案して定める額の算定が困難である場合の参考値として一定範囲の割合(概定割合)が法定されていること。
        また、法第4条第3項の規定に該当する場合についても同項および施行令第3条の規定による減額が行なわれるものであること。
  2.   (2) 前記減額すべき額の算定にあたつては、法第4条第2項ならびに同条第3項および施行令第3条第2項の規定によることが原則であり、法第7条および施行令第3条第4項の既定割合はその算定が困難な場合に例外的にはたらくものであること。
  3.   (3) たとえば緩衝緑地の設置および管理の事業のように初度の設置事業と毎年の管理事業に区分される場合には、事業者の負担総額は設置費と管理費とに区分するものとすること。

 5 各事業者に負担させる事業者負担金の額

  1.   (1) 事業者負担金の額に、事業者の負担総額を配分して定められるが、配分の基準は法第5条に定める事項を個々の公害防止事業に応じて適切に組み合わせて算定されるものであること。
  2.   (2) 事業者負担金の算定については、後記8の(4)に掲げる共同納付の方法の活用により、事業者側において自主的に配分することを積極的に推進し、事業の円滑な実施を図ることが望ましいこと。

 6 施行者

  1.   (1) 本法の対象となる公害防止事業の施行者は、国が公害防止事業を実施する場合にあつては国の行政機関またはその委任を受けた地方公共団体の長、地方公共団体が公害防止事業を実施する場合にあつては当該地方公共団体の長であること。なお、港湾法第4条第1項の港務局は、この法律の適用については、地方公共団体とみなされていること。
  2.   (2) 緩衝緑地の設置の事業は、従来公害防止事業団が施設を設置し、地方公共団体に譲渡することによつて実施されているが、公害防止事業団法第18条第4号の規定に基づき設置する施設の譲受けは、施行令第1条第1項の公害防止事業に含まれるものとし、当該施設を譲り受ける地方公共団体も本法の対象となる公害防止事業の施行者としたこと。

 7 費用負担に関する審議会

   地方公共団体の長が施行者となる場合の費用負担に関する審議会としては当該地方公共団体に設置される公害対策審議会を活用し、同審議会の設置されていない場合には条例で定めることとされている。
   条例で定める審議会の委員構成については、事柄の性質上公平な判断を要するものであるため、学識経験を有する委員を中心とすることが望ましいものであること。
   また、審議を進める上において専門的知識を必要とすることとなる場合が少なくないと思われるので、専門委員の選任等適宜所要の措置を講ずること。

 8 費用負担計画の策定

  1.   (1) 施行者は、当該地域における汚染の状況、地域住民の要望、土地利用の現状と今後の計画等を勘案し、必要に応じいわゆる先行調査を実施すること等により費用負担の対象となる公害防止事業の実施の可否を検討するものとし、事業の実施を決定したときは、当該公害防止事業に係る費用負担計画案を作成し、審議会の意見をきいて費用負担計画を定めること。費用負担計画案を審議会に諮るにあたつては、あらかじめ汚染の状況、公害防止事業の実効性等に関する資料を整備する必要があるので、これらの資料作成のための調査を実施するとともに、公害防止事業のうちにはその費用について公的負担分が相当程度見込まれるものが多いと考えられるので、国、都道府県、公害防止事業団等の関係機関とも十分連絡協議し、財源の見通しについてもあらかじめ検討すること。
  2.   (2) 地方公共団体が実施する公害防止事業のうち公害防止事業団が公害防止事業団法第18条第4号の規定に基づき設置する施設の譲受けの事業で、あらかじめ当該譲受けの事業を本法の対象事業とするときは、施行者である当該地方公共団体は、当該契約を締結した後すみやかに、譲受けを予定している公害防止事業団が設置する当該施設について費用負担計画を策定すること。
  3.   (3) 施行者は、審議会の意見をきいて費用負担計画を決定したときは、遅滞なくその事業者負担金の額を決定し、法第9条の規定により事業者に対し所定の事項を通知すること。
        公害防止事業の費用を負担させる事業者の全部または一部のグループ(地域、業種等による事業者のグループで、実際上は協議会等を組織している場合が多いと考えられる。)から各事業者が負担すべき額について納付の方法を明らかにして共同で納付する旨の申出があつた場合においてこれを承認したときは、各事業者に係る事業者負担金の額を定めないことができること。これは事業者の負担総額の各事業者への配分について関係事業者間の協議に委ることが事業の円滑な実施が期待できること、および施行者にとつても手続きの簡素化が図られること等の実際的配慮によるものであること。したがつて共同納付の積極的活用が望まれるものであるが、共同納付の不履行があつた場合には承認が取り消されるので、とくに分割納付による場合等においてこのような事態が生じないよう承認にあたつては、納付の方法等について十分審査する必要があること。

 9 不服申立て

   各事業者の決定、事業者負担金の額の決定等本法の規定による行政処分は行政不服審査法の不服申立ての対象となること。

第4 中小企業に対する配慮

  1.  1 施行者は費用を負担させる事業者を定める基準および負担総額の配分の基準の決定にあたつて、たとえば事業者を定める基準において一般的に中小企業に多いと考えられる小規模施設を対象外にするとか、負担総額の配分の基準において従業員数等に重点をおいたものとすることによつて労働集約的業種の多い中小企業者に不利になることのないようにするなどの配慮を行なうとともに、事業者負担金の納付にあたつて、適切な配意をされたいこと。
  2.  2 国および地方公共団体は、中小企業者の費用負担に関して、税制上および金融上必要な措置を講ずるよう努めるものとされており、国はその趣旨にそつてたとえば税制上事業者の支払う負担金を支払時において損金として処理することを認めるほか、中小企業金融公庫等において中小企業の費用負担に係る金融を行ない、また中小企業信用保険法の改正による公害防止保険制度の新設、普通保険の限度額の引上げ等の措置が講じられていること。

第5 その他

  1.  1 本法の所管は本年7月1日環境庁の設置に伴い同庁(企画調整局)に引き継がれる予定であるが、具体的な公害防止事業の実施はそれぞれの事業所管庁が同庁と緊密な連絡をとり所管することとなるので、公害防止事業の実施にあたつては関係省庁と十分な連けいを図られたいこと。
       なお、公害防止事業の費用負担に関する細目については、必要に応じ、別途当該事業に係る関係省庁と環境庁の共同通達として示される予定であること。
  2.  2 施行者が前記第3の8に掲げる費用負担計画を定めたときは、制度運用上の参考としたいので、当分の間、その概要を環境庁(企画調整局)あてに報告されたいこと。
  3.  3 本制度は本年5月10日以後に実施される公害防止事業について適用されるものであること。なお、公害防止事業の実施の時期に関し疑義を生じている向にあつては、個々の事業について協議されたいこと。
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