法令・告示・通達

公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律および同法施行令の施行について

公布日:昭和46年11月15日
自治導162号

[改定]
昭和56年4月30日 自治調55号

(各都道府県知事(財政課・地方課・公害担当主管課扱)あて自治事務次官通知)
 公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律(昭和四六年法律第七〇号。以下「法」という。)は、さきの第六五回国会において成立し、昭和四六年五月二六日に公布施行され、これに伴い、公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律施行令(昭和四六年政令第三二五号。以下「令」という。)は、昭和四六年一〇月四日に公布施行された。
 本法は、昨年以来の公害関係諸法の制定改正により公害防止関係事業等公害対策の促進を図ることとされたことに対応し、公害対策の推進に関する国の財政責任を明らかにし、地方公共団体による公害対策の一層の推進を図るため、国庫補助負担の特例等国の財政上の特別措置を定めたものである。ついては、次の事項に留意のうえ、遺憾なきを期せられたい。
 おつて管下市町村に対しても、この旨示達のうえ、法の趣旨を徹底し、十分にご指導願いたい。

第一 趣旨

  本法は、公害の防止に関する施策の一層の推進を図るため、地方公共団体が行なう公害防止対策事業に要する経費に対する国の負担または補助の割合の特例その他国の財政上の特別措置について定めたものであること(法第一条)。

第二 本法の概要

 一 適用地域

   本法は、公害対策基本法(昭和四二年法律第一三二号)第一九条の規定による公害防止計画の策定地域を主たる適用地域とし、それ以外の地域においては、一部の公害防止対策事業につき適用されるものであること。

 二 特別措置の内容

   国の財政上の特別措置は、次のとおりであること。

  1.   (一) 国庫補助負担金に関する特別措置として、国庫補助負担率の引上げおよび国庫補助負担金の新設を行なうこととしたこと。
  2.   (二) 地方債に関する特別措置として、適債事業の拡大および政府資金の優先充当を行なうこととしたこと。
  3.   (三) 地方交付税に関する特別措置として、元利償還金の基準財政需要額への交付税算入を行なうこととしたこと。

第三 国庫補助負担金に関する特別措置

 一 対象事業および国の負担割合

  1.   (一) 地方公共団体が公害防止計画に基づいて実施する次に掲げる公害防止対策事業に係る経費について、国は、それぞれ次に定める国の負担または補助の割合(以下「国の負担割合」という。)により、その一部を負担し、または、補助するものであること(法第二条第三項、第三条第一項、令第一条、第三条)。また、国が公害防止計画において定められた公害防止対策事業を地方公共団体に負担金を課して実施する場合においても、次に定める国の負担割合によるものであること(法第三条第一項)。
    1.    ① 特定公共下水道、都市下水路(公害の原因となる物質のたい積を排除する目的をあわせ有するものに限る。)および終末処理場の設置または改築の事業 二分の一
    2.    ② 緩衝緑地およびこれに類する広場その他の公共空地の設置の事業 二分の一
    3.    ③ 廃棄物処理施設の設置の事業 二分の一
    4.    ④ 公立の義務教育諸学校の移転又は施設整備の事業 三分の二
    5.    ⑤ 河川、湖沼、港湾その他の公共用水域において実施されるしゆんせつ事業、導水事業、覆土事業、耕耘〈うん〉事業および水質汚濁による水産動植物の被害を防止するための防油塵〈じん〉さくの設置の事業 二分の一
    6.    ⑥ 公害原因物質により被害が生じている農用地または農業用施設について実施される客土事業、排土事業、かんがい排水施設その他の施設の設置改築事業、代替農用地造成事業等の土地改良事業

          ア 農業用施設に係る事業

      1.      (ア) 農用地の土壌の汚染防止等に関する法律(昭和四五年法律第一三九号)に掲げる事業等 三分の二
      2.      (イ) その他の事業 一〇〇分の五五

          イ 農用地に係る事業

      1.      (ア) 農用地の土壌の汚染防止等に関する法律に掲げる事業等 一〇〇分の五
      2.      (イ) その他の事業 二分の一
    7.    ⑦ 公害に関する監視、測定、試験または検査に係る施設および設備の整備の事業 二分の一
    8.    ⑧ 公立の幼稚園、児童福祉施設および老人福祉施設その他の施設の移転または施設整備の事業で自治大臣が主務大臣および環境庁長官と協議して指定するもの
      1.     ア 通常の国の負担割合(間接補助金に係る国庫補助負担金の場合にあつては、間接補助事業に対する国の負担割合)が二分の一以上三分の二未満である事業 三分の二
      2.     イ 通常の国の負担割合が二分の一未満である事業 二分の一

          前記⑥の事業のうち、農業用施設に係る事業で三分の二の国の負担割合が適用されるもの(⑥のアの(ア)の事業)は、農用地の土壌の汚染防止等に関する法律第五条第二項第二号イに掲げる事業(農用地の土壌の特定有害物質による汚染を防止するためのかんがい排水施設その他の施設の新設又は変更)及び主務大臣が指定する令第一条第三項第二号に掲げる事業(水質の汚濁により被害が生じている農業用施設について実施されるかんがい排水施設その他の施設の新設又は変更)であり、農用地に係る事業で三分の二の国の負担割合が適用されるもの(⑥のイの(ア)の事業)は、農用地の土壌の汚染防止等に関する法律第五条第二項第二号ロ及びハに掲げる事業(農用地の土壌の特定有害物質による汚染を除去するための客土その他の事業及び汚染農用地の利用の合理化を図るための地目変換その他の事業(農用地間における地目変換の事業及び農用地の造成の事業に限る。ただし、埋立て及び干拓の事業を除く。))並びに主務大臣の指定する客土事業であること。
          また、⑧の事業に係る自治大臣指定については、今後策定される公害防止計画の内容、事業の実施の状況等を勘案して行なう予定であること。

  2.   (二) 公害防止計画が策定されていない地域において実施される公害防止対策事業で、(一)の⑤から⑦までに掲げるもののうち自治大臣が主務大臣および環境庁長官と協議して指定するものに係る経費についても、国は、(一)の国の負担割合により、その一部を負担し、または補助するものであること(法第三条第三項)。

    (一)の⑤から⑦までに掲げる事業については、公害防止計画が策定されていない地域においても、人の健康、生活環境に著しい被害が生じていること等により、または当該地域の公害対策推進の前提として、緊急に実施することが必要となることにかんがみ、とくに本法の特別措置を適用することとしたものであるので、これら事業に係る自治大臣の指定は、当該事業の実施の緊要性を考慮し、主務大臣および環境庁長官に協議して、順次行なう予定であること。

 二 適用除外事業および他の法令による国の負担割合との関係

  1.   (一) 本法の特別措置は、維持、修繕その他の管理に係る事業(しゆんせつ事業を除く。)その他小規模なものとして主務省令で定める事業については、適用されないものであること(法第三条第一項、令第三条)。
  2.   (二) 公害防止対策事業について他の法令が適用される場合において、当該他の法令による国の負担割合が、本法による国の負担割合をこえるときは、当該他の法令の国の負担割合によるものであること(法第三条第二項)。

    この場合においても、地方債および地方交付税に関する特別措置は適用されるものであること。

 三 国の補助負担金の算定方法

   本法による国庫補助負担金の額は、公害防止対策事業に係る事務を所掌する各省各庁の長の定める算定方法に従い算定した事業費に本法による国の負担割合を乗じて算出するものであること。この場合において、公害防止事業費事業者負担法(昭和四五年法律第一三三号)により事業費の一部を事業者に負担させるときは、事業実施年度に係る事業者負担金を控除して算出するものであること(法第七条、令第四条)。

 四 国の補助負担金の交付の特例

  1.   (一) 本法による国庫補助負担金は、公害防止対策事業の実施年度に交付されるものであること。したがつて、年度の中途において公害防止計画について公害対策基本法第一九条第二項の規定による内閣総理大臣の承認があつた場合においても、当該公害防止計画に基づく公害防止対策事業で承認年度分の事業として実施されるものに係る国庫補助負担金は当該承認年度に交付されるのが原則であるが、国において所要の予算措置を講じえないこともあることにかんがみ、本法による国庫補助負担金の特例額(通常の国の負担割合によつて算定した国庫補助負担金の額をこえる額(新設の国の補助負担金の場合にあつては、その全額)をいう。)については、承認年度の翌年度に交付することができるものであること(法第七条、令第五条第一項)。
  2.   (二) 公害防止計画に基づく公害防止対策事業で承認年度の翌年度分の事業として実施されるものに係る国庫補助負担金についても、当該事業実施年度(承認年度の翌年度)に交付されるのが原則であるが、予算編成後において上記の内閣総理大臣の承認があつたとき等特別の理由によりやむを得ない事情があると認められるときは、本法による国庫補助負担金の特例額については、事業実施年度の翌年度(承認年度の翌々年度)に交付することを妨げないものであること(法第七条、令第五条第二項)。

第四 地方債に関する特別措置

  1.  (一) 公害防止対策事業で本法による国庫補助負担金に関する特別措置の適用を受けるものについては、適債事業の範囲が拡大され、地方財政法(昭和二三年法律第一〇九号)第五条第一項各号に規定する経費に該当しないものについても、地方債をもつてその財源とすることができるものであること(法第四条第一項)。
  2.  (二) 公害防止対策事業で本法による国庫補助負担金に関する特別措置の適用を受けるものについての起債充当にあたつては、資金事情の許す限り、政府資金(資金運用部資金または簡易生命保険及郵便年金特別会計の積立金)をもつて引き受けるよう特別の配慮をするものであること(法第四条第二項)。また、とくに公共下水道および流域下水道の設置改築事業については、当該事業の公害対策における重要性にかんがみ、公害防止計画に基づくものについては、本法による国庫補助負担金に関する特別措置の適用如何に関係なく、政府資金の優先引受けについて、上記同様特別の配慮をするものであること(法第四条第二項)。

第五 地方交付税に関する特別措置

  1.  (一) 公害防止対策事業で本法による国庫補助負担金に関する特別措置の適用を受けるものならびに公害防止計画に基づいて実施される公共下水道および流域下水道の設置改築事業に係る地方債のうち自治大臣が指定したものの元利償還金については、普通交付税の算定に際し、その基準財政需要額に算入するものであること(法第五条、法附則第四条、第五条)。
       なお、前記措置を講ずる地方債の自治大臣の指定については、別紙のとおり指定されたものであること。
  2.  (二) 交付税算入率は、元利償還金の二分の一(一、〇〇〇円につき五〇〇円)であること(法附則第四条)。

第六 公害防止事業団および港務局への適用

  1.  (一) 緩衝緑地の設置の事業は、従来公害防止事業団が公害防止事業団法(昭和四〇年法律第五六号)第一八条第四号の規定により施設を設置し、地方公共団体に譲渡する方式によつて実施されているので、この場合にも本法による国庫補助負担金に関する特別措置は適用されるものであり、公害防止事業団に対して本法による国庫補助負担金が交付されるものであること(法第六条第一項)。
  2.  (二) 港務局については、これを地方公共団体とみなして、本法が適用されるものであること(法第六条第二項)。

第七 法律の適用および関係法令の改正

 一 法律の適用

  1.   (一) 本法は、公布の日から施行し、昭和四六年度分の事業として実施される公害防止対策事業に係る国庫補助負担金から適用されるものであること(法附則第一条第一項、第二条)。ただし、昭和四六年度の国庫補助負担金の特例額は、昭和四七年度に交付されるものであること(法附則第三条)。
  2.   (二) 本法は、昭和六六年三月三一日限り、その効力を失うものであること。ただし、公害防止計画に基づく公害防止対策事業及び法第三条第三項の規定により自治大臣が指定した公害防止対策事業に係る経費のうち、昭和六五年度までの予算に係るもので昭和六六年度以降に繰り越されるものについては、同日後においても、なおその効力を有するものであること(法附則第一条第二項)。

 二 漁港法、港湾法および港湾整備緊急措置法の一部改正

   本法により漁港および港湾におけるしゆんせつ事業、導水事業等に対する国の補助負担金の制度を新設したことに伴い、漁港法(昭和二五年法律第一三七号)および港湾法(昭和二五年法律第二一八号)を改正し、漁港管理者および港湾管理者が各種公害防止事業を漁港修築事業、港湾工事として実施できることを明定し、また、公害防止のための導水施設その他の浄化施設を漁港施設、港湾施設として管理しうることを明らかにしたものであること(法附則第七条、第八条)。
   なお、港湾整備については、港湾整備緊急措置法(昭和三六年法律第二四号)により港湾整備五箇年計画を作成し、同計画に基づく予算について港湾整備特別会計に一括計上しており、港湾における公害防止事業についても同様の取扱いをする必要があるので、同法について所要の改正を行なつたものであること(法附則第九条)。

別表

  公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律(昭和四六年法律第七〇号)第五条の規定により、次のとおり指定する。

   昭和四六年一一月一五日
自治大臣 渡海 元三郎

  公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律第三条の規定の適用を受けて実施する事業並びに公害防止計画に基づいて実施する下水道法(昭和三三年法律第七九号)第二条第三号に規定する公共下水道及び同条第四号に規定する流域下水道の設置及び改築の事業に係る経費(下水道法施行令(昭和三四年政令第一四七号)第二四条の二第一項ただし書に規定する特定公共下水道及び廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四五年法律第一三七号)第一五条第一項に規定する産業廃棄物処理施設の設置及び改築の事業に係る経費を除く。)に充てるために許可された地方債(公害防止事業費事業者負担法(昭和四五年法律第一三三号)第四条の規定により事業者が負担する費用に相当する経費に充てるために許可されたものを除く。)